『黒腕』の孫として転生したんだけど……   作:赤い靴

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久しぶりの投稿です。
今までの振り返りも入っているので、少しだけ説明が多いかも知れません。
誤字脱字など有りましたら報告頂けると嬉しいです!



第24話 南の海

 三週間ぶりに女帝と再会した。

 相も変わらず、ドギツイ性格で僕等を歓迎した。

 

「このわらわを()として使うとは……。お主も、偉くなったのだな???」

「すみません、でもしょうがないんです。本当に悪いと思っています、でも断ったら大将に殺されちゃうの」

「はぁ…まぁ良い。あ奴の手がかりが得られるのなら……安いのもだ。早う乗りなさい」

「ありがとうございます」

 

 前回同様に僕の後ろには、石化した海軍のクールが。それに対し舌打ちするモモンガ中将。

 だが今回は僕の部下であるアルターとエレナは、九蛇の石化を逃れている。というのも、九蛇海賊団と会う前に連絡を取っているのだ。『僕の部下も同船したい』と──

 その情報があってか女帝は、僕の可愛い部下の石化を回避させてくれたのだ。…本当に感謝しか浮かばない。

 

「ほら行こうぜ? アルター大尉、エレナ()()

 

 大将のもとでの活躍や『新世界でも仕事は果たした』として昨日にエレナに対し、少尉の位が授与された。よほど嬉しかったのだろう。一晩中僕に自慢をしていた。

 そんな彼女は満面の笑みを浮かべて「はい!」と返事をした。その際、薄い緑色の髪が揺れた。

 僕は目の下の薄っすら伸びるクマを摩りながら、九蛇海賊船に誘う巨大な毒蛇の頭に移動した。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

「そうか…。で、どうじゃった? 新世界の海は冷たかろう?」

「えぇ、まるでコッチの海が穏やか過ぎて違和感すら感じる程に……あははは」

 

 そう僕は、頬に貼られた絆創膏を掻きながら言った。

 新世界の海。その初陣で負った傷の一つだ。…あの兄弟は本当に手強かったな。

 未だ左肩の刺傷は完治せず、満足に腕を上げられはしないが稽古は出来る。稽古が出来る程に治ったのならば、ほぼ完治と言えよう。

 

「お主、ゼラよ。どうしてお主は何時も何時も傷だらけなのじゃ? …もう少し利口に立ち振る舞えば良いと言うモノに」

「それが出来たら苦労はしませんよ……。僕だって日々、一生懸命なんですよ…」

「あははは」

 

 ハンコックは手に持ったグラスを飲み干すと、侍女に向かってソレを差し出した。

 その侍女はハンコックが望むであろう酒を新しいグラスに注ぎ、空のグラスと交換した。

 阿吽の呼吸とはこの事か。いや、この場合は全然違うな……。

 しかしまぁ、今回はあの女帝を足として使っているのに掛からわず、こうも酒を呑み上機嫌だ。その肴が僕であっても、彼女の機嫌が良い方向に行くならば安いモノだ。

 

「さて…」ハンコックは赤ワインを一口含み香りを楽しむ。その後「2人きりで話がしたい」と侍女を部屋の外に追いやった。

 絢爛豪華な部屋の中。その空間には女帝と大蛇が1匹。そして海軍の僕。

 およそ話の内容は分かっていた。だからこそ僕は、彼女が再度口を開けるのを待った。

 

 部屋の外ではドタドタと慌ただしい足音と、アルター大尉の叫び声が響いた。

 きっと彼が男だから注目されているのだろう。まぁ僕は女ヶ島では『女性』扱いなので無縁だが。

 

「あー、僕の部下の叫び声ですね…。すみません…叱ってきますね……」

「よい。そこまで煩わしいモノでは無いからの」

「そうですか……」

「それで…ゼラ」

「はい!!」

 

 女帝の名指しに反応して背中を伸ばす。

 

「お主には覚悟はあるのか…? そのダリウスと言う男の“正義”を砕く程の覚悟が……」

「覚悟……」

「そうじゃ、覚悟じゃ」

 

 そう言って深紅のワインを小さく飲んだ。

 

「わらわは、その男の過去を知らぬ。しかし…しかしだな、世界を陥れようとする覚悟を、その男から感じたのじゃ。きっと、今回向かう島では、その者の覚悟の源を知る事となるじゃろう。それを知ってゼラよ、お主の『世界を守る』というその“正義”……簡単には汚れぬよな?」

「それは……」

 

 つまり彼女は……女帝ボア・ハンコックはこう言いたいのだろう。

 所詮この世は正義と正義のぶつかり合い。己が正義を掲げれば、おのずと邪魔者が現れる。その邪魔者が今回のケースだと僕である、と──

 僕の意図を受け取ったのかハンコックは、更に続けた。

 

「別にお主の正義を悪く言うつもりはない。こうして、わらわが足を運んでいるのはゼラ、お主に期待してるからじゃ。しかし、ダリウスという男の過去を知り、己の正義を地に落とすのならば……」

「……」

「わらわはお主に『裏切られた』として、地の果てまで追い…そなたを殺しに行こう。…よいな?」

「えぇ、その時は……」

 

 宜しくお願いします、と深く深く彼女に頭を下げた。

 きっと女帝は、僕が()()()()に堕ちる事を危惧しているのだろう。

 事実僕は、環形のダリウスの思想には賛同出来はしないが、ほんの少しだけソレに対して夢を見てしまう。

 だって、彼もまた…世界は平和になる道を模索し、それを実行しようとする人間なのだから……

 

「そこは事実でも『そんな事は絶対にありません』など否定すれば良いものを……。まぁそれが…その不安定な“正義”がお主自身なのだろうな…」

「そう言われると……なんだか優柔不断だと言われている様な気に…」

「実際にお主はそうじゃろて……。まぁ、存分に迷えよな若者(わこうど)。この世には答えが無い問題が五万とある。盲目とならず、かといって妄信とならず、酸いも甘いも噛み分け、己が道を進みなさい…」

 

 僕はその言葉に心を打たれた。

 あの自己中心的な女帝が、よもや哲人のような事をいうなんて……

 

「…なにをキョトンとしておるゼラ。…わらわも一国を背負う者。その程度の座学は既に済ませておるわ」

 

 優しく怒られた。少し頬が赤いのは、酒と僕の態度からだろう。

 先の傷が無ければ今頃、僕は石化しているだろう。その自信しかない。

「あぁ……いや」と茶を濁し、息を整え、先程の言葉に見合う言葉を探した。そして……

 

「はい、必ず……。海兵として、己の正義を貫いてみせます」

「ならば、その先の結末は……地獄じゃと分かっておるな? 海兵よ」

「最初からそのつもりです」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 目的地である南の海(サウスブルー)、マラカシ島に着いたのは2日後であった。

 その間は九蛇海賊のクルー。それもサンダーソニアとマリーゴールドに覇気の稽古をつけて貰うと言う、好待遇であった。

 最初に相まみえた時よりも着実に実力が付いているらしく、彼女たち曰く「貴方は色の偏りがなさそうだから、満遍なく鍛えた方が良いわね」と──

 ……頑張ってやってるんですけどね。

 

 まぁともあれ、僕らを乗せた九蛇海賊船はマラカシ島の付近に停泊し、南の海(サウスブルー)を管轄する海軍、その軍艦に俺は乗り込んだ。

 

「どうも海軍本部少佐、ゼラです。……話は大将青キジ並び元帥センゴクから聞いています」

「えぇ。私は南の海(サウスブルー)、それもこの海域を管轄する海軍第21支部、大佐のベーテです。……大佐と銘が付いておりますが、支部は本部と比較すれば3つ下の階級です。ですので気楽にベーテをお呼び下さい」

 

 よく焼けた褐色の肌に銀色の短い髪をオールバックにしたベーテは「ははは」と軽く笑った。

 恐らく30手前の年齢なのだろうが、頬についた傷跡と切り込みが入った耳が、彼の厚い歴史を語っていた。

 

「では船内で。そちらはゼラ少佐の?」

「そうです。……ほらほら自己紹介」

「アルター大尉です」

「え、エレナしょ…少尉です…よ、宜しくお願いします…!」

「あははは、元気そうで良い! …まぁ今やこの状況ですから。肩の荷は、降ろせるときに降ろした方が良いですからね。さぁこちらです」

 

 そう言ったベーテの案内によって僕たちは軍艦、その作戦室に招かれた。

 海軍の軍艦は大量生産の為、作りが同じものが多い。今回もそのケースで、何百回と行き来した造りだったので危うくベーテの先に出そうになってしまった。

 それほど僕は、ダリウスの情報を得ることに必死……いや、彼に執着しているのかもしれない。

 

 会議室。椅子が隅に片づけられ、2メートル四方のテーブルが床に固定されている。

 その机上には、数枚の資料があった。そのどれもが僕が一度目を通した資料…つまりは海軍本部に一度通されたモノだった。

 しかし資料に直に書かれた文字。それは僕が知らないモノだった。

 

「マラカシ島には、幼いダリウスを知る老婆…クレスが一人住んでいます。まぁ、個人で住むには手ごろの大きさな島ですがね…」そう言ってベーテは、資料に手を取った。

 

「彼女は我々海軍には一切、口を割らずにいます。このままでは世界政府の役人たちの刺客が訪れると思いますが…その前に情報を聞き出したい。政府の人間は、薬、脅迫、拷問と良い話は聞きませんから…」

「そう…ですね。出来るだけ被害が無い様に。穏便に済ませたいと、僕は思ってますが…」

「ええゼラ少佐。いくら相手が世界を脅かす存在だとしても、流れる血は一滴でも少ない方が良い、と私は信じています。…どうやら私たちは、その手の意見が合致する様で。安心しました」

「では始めましょうベーテさん。出来うる限り、そのクレスと言う名の女性から受けた雰囲気を…僕たちに聞かせてください」

 

 こうして小二時間ほど彼の口から、クレスが語った最小限の問答と、その推理を聞いた。

 なんでも環形のダリウス、その出身地は資料にあった地域では無いと、ベーテは直感的に感じたそうだ。

 資料には、その地域て生まれ、海軍の学者として勤め、退役後は地元に帰り没した…と。ではその全てが間違っているとでも言うのか? 

 

「了解です。おおよそ頭に入りました。ではこれから僕達も、クレスの元に…」

「はい、お願いします。良い話が聞ければいいですね」

 

 一通りの質問と情報収集を終え、僕らは九蛇海賊船に戻った。

 向かうはマラカシ島。付近に錨を降ろしているとは言え、到着までは30分ほどかかる。

 アルターとエレナには資料作成の準備を、と命を下し自室待機して貰った。…でなければ、九蛇の船員が外部の存在である2人に集り、大変な事になるのだから。

 かくいう僕は、女帝の命令もあり穏やかに過ごせている。甲板、その船首で微かに浮かび上がった島を見つつ、脳内で問答の練習をしている。

 そこに……

 

「大変ね、貴方も」

「?」

 

 後ろを振り返ると、女帝の妹であるサンダーソニアとマリーゴールドが居た。

 その双子の前にはニョン婆が杖をついている。……説教タイムか? 

 

「覇気で聞いたわよ? 海軍のヒトって何時もそんな固いモノ言いなの?」

「一応、仕事なもんで……。階級は大事なんですけど、同じ職場の人間なので敬意を、と…。…そういう意味ですね、サンダーソニアさん」

「ソニアでいいわよ?」

「そうそう、私もマリーでいいわよ」

「じゃあわしは『ニョンお姉様』と呼んでも良いニョ?」

「うげー」

 

 ニョン婆の一言で吐き気を催した。しかし、こみ上げたソレを何とか抑えて話を続けた。

 

「ところで…ソニアさん、マリーさん。どうしてここに? あと婆も」

「まぁまぁ、いいじゃない。貴方の次の就職先は九蛇海賊団(ここ)だから、副船長として貴方を労ってもさ。姉様も淡く期待しているのよ?」

「……ソニアさん。僕、男って分かって言ってますか? ここは九蛇海賊、男子禁制では?」

「切っちゃえばいいじゃない?」

「ひぃ…」

 

 ホルホルの実を食べたイワンコフならばまだしも、切るだなんてそんな事……無理や。

 

「それとねゼラちゃん」とマリーが申し訳なさそうに呟いた。あれ? ちゃん付け出来る程、僕たちは近しい関係でしたっけ? 

 恐る恐る「なんでしょうか?」と聞き返した。

 結論を知った今ならば、断っとけばよかったと思ったが、全てが遅すぎた。

 

「じ…じつはね」

「うーん、これはどんな風の吹き回しじゃにょな…」

 

 ソニア、マリー、ニョン婆は困った顔を浮かべた。

 その後、ガン!! と勢いよく船長室にドアが開く音が耳に入った。僕はそこに視線を向けて驚愕した。

 

 白い服、否、海軍の軍服に身を纏い、堂々とコートを靡かせてコチラに向かってくる女帝の姿が……

 頭には『MARINE』と書かれた帽子に、何処かの王族を彷彿とさせる黒色のフェイスベールを下げていた。

 

「わらわも行くぞ、ゼラよ」

 

 どこかその声色は少女の様に楽しそうであった。

 不安しかない……

 

 

 





お疲れさまでした。

いかがでしょうか?

ハンコックの服は、その辺の海兵を拉致して貰ったモノです。
ベールは自前です。ゼラの任務に自身の美貌が影響を与えてしまう!と考えた末のものです。とはいえ、その行動原理の9割は私欲なのですが…

今回はここまでです。
次回はダリウスの過去話です。どうして彼が狂ったのか、それを綺麗に書けるように頑張ります!!
この先の展開は凡そ溜まっているので、文として投稿できるようにしたいと思ってます。
ここまで読んで頂きありがとうございます。

では、また~
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