『黒腕』の孫として転生したんだけど……   作:赤い靴

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6話目です。

楽しんで読んでもらえればうれしいです。


第6話 DEAD OR ALIVE ②

 

 少し薄暗いと感じるほどの森の中。僕は大男に睨みを効かせている。

 

 さて、ここまでの状況確認といこうじゃないか。

 拉致された子供は1人を除き14名。部下から保護の連絡を受けた。

 僕の任務はあくまでも『救出』。戦闘じゃない。

 この島を襲った海賊の特定は出来ている……がこの『大男』の情報は一切ない。

 モモンガ中将の話では、戦闘した海賊達に違和感を感じた、と言っていた。

 

 何かの『悪魔の実』の能力者……?? 

 

 なら一層、少女と大男との距離をかせがなくては……。

 

 信号弾を撃った所為で火薬臭い。血の匂いよりましか、と下らないことを呟き考える。

 

 どうしたらいいのか。先の1発で大男のヘイトは完全にこっちに向いた。

 かと言ってこのままグダグダしていられない。

 この大男の目的は『子供攫い』。いまや失敗に終わり、早々に退散したいはず……。

 でもこの男、面白いことを言ったいた。

 

 少女に向かい、勧誘したのだ。2度3度の否定など彼にとっては別に問題はないのだろう。

 精神を折って奴隷にする──

 そんなような事件を2回程見てきた。

 

 つまり僕と大男との、少女を賭けた争奪戦!! 敵の能力は未知数……!! 

 

 あぁ、俄然やる気が湧いてきたとも……!!!! 

 

 

「剃!!」

 

 一瞬、地面を10回蹴り大男の首元まで移動する。体をねじり、足に鉄塊を張り、限界まで引いた弓のように力強く蹴り飛ばす。

 首元にクリーンヒットした。

 普通の人間ならひとたまりもない……が……。

 

「あんちゃん……まだまだ若いのに『体技』が使えるとは……見事だ。……だが!!!!」

 

 ガシッ!! 

 

 僕の足首を大男は掴む。

 

「まだまだ威力が足んねぇよ!!」

 

 まるで僕を斧のように……あたかも薪割りをするが如く3度地面に叩きつけられ、そして近くの大木に投げつけられた。

 

 全身が痛い……が、ジジィ程じゃねぇ……。

 

「……立つのか、海兵。これでも本気だったんだぜ? と、いってもまだまだ……だがな」

 

「さっきから、まだまだまだまだって……五月蠅いなぁ!! こちとら『その辺の海兵とは育ち方が違う』んだ!! 絶対(ぜってー)ぶっ飛ばしてやる!!」

 

「いいね~若い海兵。まだまだいけそうだな? じゃあ遊んでやるよ……さあ『お前ら』……仕事だ仕事だ!!!!」

 

 大男は天に両手を上げ叫んだ。

 森が、木々が彼に共鳴したかのようにさざめく……。

 

「お前が死ぬ前に教えてやろう……。俺の名は、ダイエウ・ロス。震えて死ね……」

 

 

 だい、え、う・ろす……聞いたことない名前だ……。……? 

 あれ……なんて言っていた……け。頭打って耳鳴りが……僕の勝手の記憶が……混ざる…………。

 ん? ダイマオウ? ……ここはドラ●エの世界か……。いや違うだろ! 

 

 

 下の名前…………。ん? あり???? 

 

 

 

「大魔王エロス? ……やべぇ名前だな!!!!」

 

 あははははは、と僕は痛みを忘れ転がり笑う。

 

「くぅ……このクソガキ!! 死ねぇ!! 嵐の黒鳥群(ストームクロウズ)!!!!」

 

 ストームクロウズ????? どんだけ厨二なんやん?! 脳内エロ、心は厨二……。尚更やば過ぎる……! 

 

 しかしその言葉通り、大魔王エロスの後方には大群のカラスの群れが……。

 カラスを操る能力……? それではモモンガ中将が感じていた違和感は一体……。

 

「串刺しにしろぉぉ!!」

 

 そんな一声でカラス共は次々と、鋭いクチバシをこちらに向け突撃してくる。

 幾度となく飛んでくるカラス。その僅かな隙間を紙絵と剃、月歩で抜けていく。

 目の前が暗闇に覆われる。その暗闇の原因が夥しいほどのカラスだ。

 

 カラス程度の攻撃なら紙絵で避けられる……。しかし問題はアイツだ……。一体なんの…………ッ!? 

 

「死ねぇい!!」

 

「!? 鉄塊!! ……ゴフッ……!?」

 

 黒い影の中、彼の大きな拳が──

 直前に鉄塊を張ったが、それは僅かな軽減にしかならなかった。

 地面に叩きつけられて砂煙が舞う。

 

 カラスの群れの中、的確に当ててきやがった……。見聞色の覇気持ちか……それとも『そういう』能力なのか……。

 

 ケホケホと口に手を当て咳き込む。手のひらには点々と赤い血が。

 

「お兄さん……ホント、強いね……。それ『悪魔の実』の能力でしょ……本当にまいったな……」

 

 身体の部位ごとに力を込める。軋む音はするが骨は折れていないみたいだ。改めてこの肉体の強靭さに感心する。

 でもまぁ、痛いには痛いのだが……。

 

「そうだとも。俺は『コトコトの実』の能力者……『契約』をすることによって下僕を作ることができる……。と言っても……色々制約があるのだけどな。だが、アホな海賊、考える脳が無い動物を下僕にするのはいとも簡単だがな」

 

 首をボキボキと鳴らしロスは歩いてくる。

 

「あと、何故俺がここまでゆっくりしているか教えてやる。下僕に『簡単な命令』、『断片的な視覚の共有』が出来る。逃げた子供……お前の部下の海兵の動きは『確認済み』だ。向こうの海兵も同様だ。お前がさっき撃った信号弾……その対策も十分にできている。海軍の装備程度、裏のルートで幾らでも買える……」

 

 用意周到すぎる!! なんだコイツは!!! 

 恐らく……コイツの言いようでは、僕の信号弾に合わせて『島の各地』で複数の下僕を使い、信号弾を撃った──

 

 もしコイツが遠隔操作が使えるなら、今まさに僕の部下を襲撃しているのだろう。そっちには『子供』が居る。十分に動けない状況なら電伝虫の使用も阻害されている。

 

 僕らはコイツの手のひらで踊らされる……のか……。この状況なら……できるのか……?? 

 

 

「ようやく今の状況が理解したな……。どうした若い海兵、まだまだいけるんじゃねぇのか? ほらほら早く決断しろよ!! そうしねぇとこの小娘は死んじまうぞ!!!?」

 

 僕は少女を横目で見る。出血がひどい所為なのか、小刻みに震えている。

 

「で、だ。俺と契約しろ!! 俺からお前に渡す条件は、ガキ共は諦める。そこの小娘を荒技だが治す。そして、この島から早々に出ていく……」

 

 いきなり気味の悪いベールに包まれるような感触に襲われる。

 契約の持ちかけ……? 悪魔の実の能力……? 

 

「で、僕は何をしたらいい? 契約なのだろ?」

 

 口の周りにべたりと付着した血を拭う。

 

 今……この状況ならできるかもしれない……!! これは賭けだ!! 

 

「ああそうだ……。お前は一生俺の『お気に入り』として生きる──。俺の最高級の奴隷だ──。さあ、一()、そう言え……」

 

 より一層重圧がかかる。

 だが、僕にはもう応えは決まっている。

 

 

「断る。誰がクソみたいな名前のヤツの元に行くものか」

 

 

 交渉決裂。僕にかかるベールは無くなった。

 

「なら!! 俺が直々に殺してやる!!」

 

 身体の差は明らか……。戦況は向こうが圧倒的に優勢……。悪魔の実の力もある……。

 だが……この状況……心から待ち望んでいた! 

 

 すかさず信号弾を地面に向けて放つ。煙幕のように濃い赤が辺りを覆う。

 まずはカラスの視界を奪う。

 

「めんどくせぇガキだ!! 正々堂々戦え!!!!」

 

 練度は低いがこれでも六式使い。煙幕の中でさえ多少は敵の存在を感知できる! 

 

 ロスの荒ぶる攻撃を紙絵で避け、鉄塊で防ぎつつ、こちらも負けじと拳を打ち付ける。が、レベル差が激しいのか大ダメージを与える感触が無い。

 

 煙幕が薄まり視界が晴れかかる──

 

 僕は腰袋から小銃を取り出し、再び地面に銃口を下ろす。

 それに気づくロスは止めようと僕のほうに駆けりだした。

 

 そりゃあそうだ。煙幕内では対等(と、いってもかなり語弊があるが……)に戦えた。それを阻止する。その判断は確かに正しい。僕が君の立場なら、きっとそうする。間違えなく。

 だからこそ……だからこそ君は今から負けるのだ。

 

「ここまで油断してくれて、本当にありがとう」

 

 僕はボソリと呟き、ロスをギリギリまで引きつけ、小銃を撃つ。

 地面に向けた銃口を相手の太ももに狙いをつけて──

 

 放たれた銃弾はロスに命中した。

「ヴゥゥ!!」と呻き声を上げ、自らの勢いに負け崩れ落ちた。

 

「ジジィの試作品……海楼石弾丸……と、いっても小さな破片を使用した、散弾みたいなモノなんだけどね」

 

 そう決め台詞を言い、僕は倒れている相手の方に視線を向ける。

 

「な……。誰……!?」

 

 そこにはさっきまで戦っていた筋肉モリモリの大男でななく、えらく痩せた男が一人……。そのブカブカの服を見る限り、能力を解除したせいで萎んだのか……。

 辺りに居るカラスはカァカァと泣き、遠い空に向かっていった。

 

「これは勝ちでいいんですよね……? 通常の能力者ならまだまだ粘ると思うのだけど……。まるでオール●イトみたいだ……どういう仕組み、だ?」

 

 痩せた男に顔を近づける。完全に気絶している。

 取り合えず、その辺の蔦でぐるぐる巻きに捕縛する。

 で、つぎは…………。

 

 倒れている少女の元に駆け寄る。

 息はある。肌は冷たく色も悪いが、しっかり脈は打っている。

 

 

 

「ゼラ少佐。大丈夫か?」

 

 声の元に首を動かす。そこにはモモンガ中将が──

 

 うわ────、この人軍服めっちゃキレイじゃん……。僕、ボロボロなんですが……。交換しませんか? その服。つうか、来るの遅すぎ……。

 

「……首謀者とみられる人物を撃退しました。そこで蔦にグルグル巻きになってる野郎です。……この少女は発見時から負傷していました。早く治療を施せば助かると思います……多分……」

 

 僕は少女の傷口をハンカチと切り破いた服で応急処置をし、ゆっくり持ち上げる。

 背の高さだけなら、この少女の方が少し高い……まぁ、今、僕、成長期ですし。……とくに問題はないでしょう……。

 

「では、モモンガ中将。僕は一足早く戻ります。船医に診せないといけませんしね」

 

「そうだな。急いで診て貰え。……最優先でな……。ところで、この男……見覚えがないが……何というヤツだ……?」

 

「あぁ、そいつの名前は大魔王エロスです」

 

「……そんな馬鹿なことがあるか! 聞き間違えじゃないのか!?」

 

「確かに聴きましたよ! 大・魔・王・エ・ロ・スっって!!」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 船の甲板に出した椅子に座り、医務室から(もら)った消毒液やガーゼ、包帯を並べる。

 

 時は昼過ぎ。軍艦の近くの浜には捕らえられた海賊共がキレイに並び、数十人の海兵が見回りをしている。

 

 血まみれの包帯をペリペリと外し、消毒を施し包帯を巻く。小さな傷は絆創膏で補う。

 

「お疲れ様です。ゼラ少佐……」

 

 振り向くとアルター大尉が。なにやら持ってきてくれたようだ。

 お盆。その上に香り高い紅茶が入っているポット、そのカップ、そして透明なグラスにてんこ盛りの角砂糖。

 

 ミルクは?????? 

 

 アルター大尉は器用に片手でお盆を支え、もう片方の手でお茶を淹れる。まぁなんと器用な事か……。

 

「モモンガ中将からサボりの情報を聞いて参上しました。……一杯いかがですか?」

 

「サボってねぇし。休んでるだけだし……。そこんところ間違えないで欲しいなぁ。ね、大尉もそうおもうでしょ?」

 

 僕はカップをもらい、一口飲む。口の中を切っていて沁みる。けど、この香りが心地良い……。

 

「確かに……では私もそうさせて貰いますか。あ、モモンガ中将に見つかったら少佐の所為にしますからね」

 

「ばか。お前も僕と一緒に怒られるんだよ……」

 

 ははは、と大尉は軽く笑う。

 

 

 

 そんな僕らの後ろ。室内に入るドアの隙間からは、子供たちの泣く声が漏れていた。

 

 




お疲れさまでした!!

誤字脱字・感想等ありましたら頂ければ嬉しいです!

今更人物紹介を挟みたいと思います。

ロスについては皆さんが思い描くキャラで大丈夫です。
もう少し掘り下げると、ロスは非常に憶病な人物でした。
悪魔の実を食べた後も性格は変わらりませんでした。
縮んだ理由は次回少し触れますが、「寿命」と「力」を引き換えで手に入れました。
まさか海楼石の銃があるだなんて思いもしなかった、と嘆いたりして。


アルター大尉ですが、若い海兵です。22歳です。男です。17歳で海兵になりました。
この若さで大尉まで昇りつめた才ある海兵です。物理(拳)で戦います。
背の高さは180程度(ゼラは現在158)。いい筋肉してます。
金色の髪で、流し髪のイケメンです。
やや騎士道よりの優しいお兄さんです。

以上になります。
ではまた~
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