『黒腕』の孫として転生したんだけど……   作:赤い靴

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9話目です。

本来なら天竜人の回をしたかったのですが、もうきりが良いので投稿することにしました。

蛇足のような1話です。

楽しんで読んでいただければ嬉しいです。


第9話 願望

「ゼラくん!どう!カッコいいでしょ?」

 

 エレナがクルリと一周。新品の軍服を披露するように回る。シンプルに可愛い……。

 どのぐらい可愛いのか皆様に伝える為、『公平で第三者的目線』で採点しようか。

 まず容姿。モネ似!!満点!!!!

 軍服。似合うに決まってんだろう!!プラス100万点!!!

 

 合計、100万100点。そういうことだ。

 

「ほら、行きますよ?ゼラ少佐。大将青キジが待ってます……多分」

 

 アルター大尉が僕に向けて言う。

 今日は『天竜人』護衛の当日。といっても、聖地まで2日かけて行き、回収。そして丸1日かけてシャボンディ諸島に行くそうだ。

 聞いた話だと、『魚人島』に行きたいそうだが……現在そこは『白ひげ』のテリトリーだ。

 流石に頭の中が終わってる野郎でも、この深刻さは理解するだろう……。

 

 どうせシャボンディ諸島への目的は『奴隷』だろう……。

 僕も天竜人への想いはジジィや、ガープさんと同じだ。

 もし僕が海賊ならルフィと同じくぶん殴っている。確実に。

 しかし今は海兵。状況が違う……。

 

 弱きを救う──。

 僕の誓いがこんなところで崩れ去るなんて……。100%ジジィの企みだ。

 

 ……。せめて、僕の可愛い……。たった2人の部下を守らなければ……。

 

 何やら言い争いする2人に僕は言った。

 

「よし!!行くとしますか!!……で、なんで喧嘩してんのよ?」

 

「少佐!!この娘!!少佐のことを気安く呼んでいて……ッ!!」

 

「ゼラくん!?あたし、この人好きじゃない!ちょっとゼラくんと一緒にいたからって、偉そうに!!!」

 

 クソくだらねぇ……。天竜人天竜人、と思考をグルグル回す僕がまるで馬鹿みたいじゃないか……。

 

 僕はいがみ合う2人を置いて、停泊する軍艦のタラップ。乗り込む為の一時的な階段を上がる。

 

「あららら……元気よさそうじゃないの……」

 

 上り終えた先。大将青キジが立っていた。

 普段は寝ているのに……。珍しい……。

 

「元気が良すぎて少し困ってますよ……。それもこれも全て貴方の所為ですからね????」

 

「……。ま、それはそうと……その刀。似合ってるじゃねぇか?形見だろ?大切に『使わねぇといけねぇ』な」

 

 知ってか知らずか……。おちょくって来やがった。この大将。

 僕は横目で刀を見る。

 

 刀身はまだ直接見れていないが、名の通り綻び……ボロボロなのだろう。鞘ですら傷だらけだ。

 しかし何と言うのだろうか……。

 全体的に黒い刀で、重そうに見えたが実際のところ軽い。

 もはや感覚の域なのだが、鉄の重さではなく、生き物のような重さなのだ……。

 

 何故か時折温かい。これが亡きお祖母ちゃんのぬくもりなのか!?

 

「はいはい。使えるようになった暁には青キジさん。貴方を斬りに行きますからね?

 いまから覚悟した方がいいですよ????」

 

「……ふッ……。よく言う……」

 

 青キジが言い終わると同時に、階段をダッシュで駆け上がったエレナが間に割り込んできた。

 

「これは大将青キジさん!!!この度はあたしを推薦してくださいまして、ありがとうございます!!!頑張ります!!」

 

 まぁなんて丁寧にお辞儀をするのだろうか……この娘は……。

 

「ん?……あぁ、ゼラ少佐の新しい部下か……。まぁガンバンなさいや……。……では、少佐。これにて失礼……」

 

 青キジは言い終わるとどこかに行ってしまった。

 絶対意識して言いましたよね?普段そんな口調じゃないですよね、クザンさん?つうか逃げんなや……。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 聖地につくまで2日ある。

 と、言うことは……つまり……。そう、言い換えれば『お休み』である。

 稽古も無い。なぜなら今は任務中だからだ!!!!

 

 そういうことで僕は、毎度おなじみ。医務室に忍び込んでいた。

 医務室には勿論、人はいる。だが僕の稽古内容を知っている『コチラ側』だ。

 医療処置の大義名分で僕は此処に居る!!サボりじゃないよ?身体を休憩させているのだ!!!

 

「あぁ、少佐。新しい包帯とハサミと軟膏。それから飲み薬は此処に……。では、私は甲板で日光浴でもしてますんで。医務室なんて貴方以外来ませんから……ではお先!!」

 

 意気揚々とメディックはそう言い残すとドアを開け出て行った。

 

『自分の傷は自分で処置しろ』。ジジィが僕に課した言葉だ。

 おかげでかなり包帯を巻くのが上手くなってきている。

 

 僕はコートと上着を脱ぎ、ベットに置く。

 次に赤イヌとの訓練で、低度に火傷した右手の処置に移る。

 包帯を丁寧に取り外し捨てる。新品のガーゼで、前日塗った軟膏を軽く拭う。

 左手で新しい薬が入っている桶を取る。

 

 詳しいことは分からないが、これは『抗生物質軟膏』と言うらしい……。

 

 抗生物質……。そう、この世界では只今絶賛捜索中の『環形のダリウス』が生み出したのも。

 

「……。会ったことも無いですが……ダリウスさん……。貴方の怒りは、世界を危機的状況に陥れる程なのですか……?……。僕はこれのお蔭で日々、健康に生きてます……」

 

 何というか……やるせない気持ちだ。飲み込めない。そんなにも頭がいいのなら……もっと……こう、皆が幸せになるような道が…………。

 

 ガチャ!!!いきなり、勢いよくドアが開く。

 

「ここが医務室……。メモメモ……。あ!?ゼラくん!!」

 

 手を小さく振りながら、エレナはこちらに寄る。

 

「うわ……。上裸だ……。…………。お、ベットのお隣、よ、よろしいですか?」

 

『うわ』ってなんだ……流石に泣くぞ?

 

「いいですケド…………。大尉は?船内の見学を命じたけど……」

 

「あっ!……アルター大尉は迷子です。……こっ、困りましたね……えへへ」

 

 んなことあるか!……。まぁいいか……。……でも良くねぇよな?一応、大尉に連絡をしなければ……。

 僕は脱いだ上着。その胸ポケットから電伝虫を出し、大尉に連絡を入れる。

 

「あ、もしもし。僕です。ゼラです。大尉。こっちにエレナが来てるから安心して…………。ん?叱る?…………。あぁ、僕がやっとくから、船内の手伝いをお願いします……。きっと人手が足りないと思うから…………。何故って??そりゃあ、この船のトップが青キジさんだからだよ。…………うん、そうゆうこと。じゃ」

 

 大尉メチャクチャ怒ってた……。初めて聞いたぞ……アイツの怒り声。何したらそうなるんや……。

 

「まぁ、そういうことだから。君は僕と一緒に行動になりました……。あまり大尉を怒らせちゃダメだよ?温厚な奴ほど、怒らせると怖いんだから……」

 

 僕は電伝虫を再びポケットに戻す。そしてそのまま彼女に視線を移す。

 

 …………。まるで聞いていないようですね。この子は。

 

「……あ、あの……ゼラくん。その傷は……?まだ治っていないの……?」

 

 僕をまじまじ見ながらエレナは言った。声のテンションは分かり易く下がっている。

『まだ』。きっとアイツだ。大魔王のことだ。

 

「あー違う違う。アイツのはもう治ってるよ。稽古、稽古だよ」

 

「稽古?良かった……。……でも良くない……わからない……。大尉にやられたの?」

 

「大尉じゃないさ。右手のやけどは大将赤イヌ。マグマを斬ろうとしたけど無理だった。左腕の内出血してるのが大将黄ザル。光の速度を味わった。……あと身体中の細かい傷どかはゼファー教官。爆発に巻き込まれた」

 

「え……。みんな身内じゃん……」

 

「そうだよ?だから稽古だって……。こんだけしないと……『誰にも負けない海兵』になれないからね……」

 

 僕は笑って言った。

 にしてもいい体験をした。痛かったが『光の速さ』を疑似的に体験できた。早すぎる……。今、思い出しても笑えてくるほどに僕の力量が分かってしまった。

 まだまだ足りぬ。より高みに……。もっと強く。もっと強く!!

 

「それ!おかしいよ!!!!」

 

 エレナが声を上げた。

 

「何故そこまで頑張るんですか!?」

 

 彼女の張り詰めた一声。『何故頑張るのか』……。

 

 何故って……それは、僕は海兵の家系で、可愛い推しが上官で、変えたい未来があるから……。この第2の人生。どうせ死ぬならカッコよく死にたい……から。

 

 その問いかけに対し、僕の想いは徐々に沢山浮かんだ。

 頭の中で整理し言葉にしようと口を開けるが、彼女に阻まれる。

 

「きみを『そうたらしめている』モノ……そう……願い。望みはなんなんだ?」

 

 悲痛な目で僕を見る。

 きっと僕の状況が理解できないのだろう……。

 海軍に入隊した、まだ月の浅い時期。アインさんも似たような事を言っていた。

 

『君の望みは?』と──

 

 願い……望み……僕の願望……。

 そんなものこの世界に転生した瞬間から既に決まっている!!!

 

「カッコいい人生!!この為なら僕は、どんな荒波だろうと突き進む!!…………。こんなくだらない、子供みたいな理想が、僕の願望だよ」

 

 一言の迷いなく、一切の躊躇なく、僕は言い放つ。これだけは相手が『誰であろうと』譲れない。そう決めたのだ。

 

「そうさ……この今は無価値なこの刀も、いつか使いこなして……鷹の目と『世界一の剣豪』の座を巡って争ってやる!……今は覇気を使えないが、ジジィよりいつか極めて『黒腕』の名を襲名してやる!!『サシでやるならカイドウだろう』だぁ?いいぜ、やってやる!!19回目の捕縛!僕の名を刻んでやる!!」

 

 徐々にヒートアップしてしまった。気づいたら右手を力強く握っていて、脳内で先ほどの演説じみた内容がグルグルと回っている。

 

 ま た や っ て し ま っ た !

 

 うおおおおお!!!これで2回目ですよ!?ゼラ君!?何やってるんですか!?いい加減学べ??君の脳みそは鳥以下か??

 

 急に現れたもう1人の僕が言った。……もうどうしようもないでしょ?一体、どんな弁解をしろと???

 そうだ……そうさ!!これが僕の願望なんだ!!僕は誠実にただ答えただけだ!!なにも間違っていないはず……だ!!!

 

「きみは……そういうヒトなんだね……」

 

 なんと言われようが覚悟はできている……。

 これは『きも』どころじゃねぇよな……。ドン引きだわな……。普通。

 

「うん……理解した……分かった……わかった……」

 

 エレナは小さく、言い聞かせるように呟き、続けてこう言った。

 

「ねぇ、ゼラくん。その傷の処置、あたしにやらせて?こう見えて手先は器用なんだ」

 

「え?ん?あ……ん????まぁ、いいですけど……。え????」

 

 予知していた結果と大きく異なり、困惑した。

 

 エレナはベットに沈んだ腰をヒョイと浮かして立ち、軍靴を鳴らしながら僕の目の前にゆっくり移動した。

 

「はい、ちょうだい」

 

「な、なにをですか??」

 

「腕よ。他に何があるのよ」

 

 あぁ、腕ね……腕ね……。

 

 どうぞ、と言って僕は腕を伸ばす。

 

「軟膏はあまり付け過ぎない方が良いよ……。包帯巻くときに少し大変だから……」

 

「そっ、そのくらいあたしだって知ってるぞ」

 

 まぁなんと不安にさせる言い草なのだろう。

 まあいいか。これでさっきのコトが吹っ切れるのなら。しかし、この先の展開、どっちに転んでも僕の大勝利確定。

 可愛い子に介抱してもらえるなんて……感激の極み……。

 

 ベチャッ!!!

 

 僕の甲。その上に山のように盛られた軟膏が降って来た。

 

「あ……。て、手が滑りました……」

 

「………………」

 

 フラグ回収ってやつですか。フォローしてあげるのが上司の役目!!

 

「あー、別にいいんじゃない?ほら……」

 

 左手でヘラを掴み、山と化すソレの上澄みをすくい、樽のもとに戻す。

 そのまま、胴体の包帯をスラスラと流れるように外す。

 

「戻してあげればいいだけだし……腕の分には少し多いけど……。ココの火傷にも使わせて貰うね。これで丁度良し」

 

 いただき!と遊び心を入れ、奪うように軟膏を取り胴体の火傷部に塗る。

 

 

「……ずるじゃん!それ!!」

 

 エレナは力強く薬を塗りたくる。

 

「いでてててててててててててて!!!」

 

 敏感な肌にソレは効く。思わず痛いと叫んでしまった。

 しかし……まぁ……悪くない……。

 未知なる扉を開きかけたが……やめた。まだ開く時では無い。つうか、何が『ずる』なんだ?

 

 エレナに処置してもらった右手、右腕。いつもよりも治りが早くなったと感じた。

 プラシーボ効果???

 

 まぁいいや。

 

 

 




お疲れさまでした。

誤字脱字など有れば、報告貰えればうれしいです!

ではまた~


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