こちら疫病神   作:花火師

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にわかの書いたデスノ二次ですの♡(激ウマギャグ
まーた新しいの書き始めやがって、とか言わないで。
見切り発車、ぶーん!!


それでも

 

「すまんすまん。間違えて殺しちゃった」

 

「間違いか、なら仕方ない」

 

見れば見るほど不気味なドクロが、金銀の豪奢な首飾りをじゃらじゃら鳴らして笑った。

 

まぁ、間違いくらい誰にでもある。そりゃ神様だって間違えるさ。

なんなら、人間なんてモノを創った時点で間違いだと言っても過言じゃない。

それを踏まえて言ってしまえば、間違わない生き物なんていないのだ。

 

「って許せるか!!ふざけんな死ね!!」

 

落ちていた石ころを拾い上げて投擲(とうてき)してみたものの、骸骨男には当たらない。まるでホログラムのように、その()身……の体をスッと通り抜けた。

神様に物理攻撃は効かねえらしいチクショウ。

なおも騒ぎ立てる俺を前に、5メートル程の長身骸骨男はケタケタと笑うだけ。

 

「悪かったって。最近異界に興味があってなぁ、そしたら疫病神みたいな人間がいるじゃない。こりゃどうにか関与できないかと思って、アレコレしてたら間違って殺しちゃった」

 

誰が疫病神だコラ。

 

「あんたみたいな、見るからに死神みたいなヤツがアレコレ関与したらそりゃ死人も出るるだろうよ」

 

「カカカッ。そう正解だ。何を隠そうこの儂こそ死神、そしてその中の王。死神大王である!」

 

死神大王、ねぇ。

普通なら鼻で笑うような状況だが。この()()ちにこの現実感。死んだ記憶も確かに残ってる……。

まぁ納得するしかないか。

 

「死ね死神大王」

 

「カカカっ面白いこというねぇ疫病神クン。死神に死ねとはナイスブラックジョーク」

 

「親指立てて笑ってんじゃねーよクソ骸骨」

 

なにがブラックジョークだ。ブラックジョークみたいな存在にブラックジョーク褒められたかねえわ。

 

「うーん。儂、一応死神の中で一番偉いんだけど。ミスリルみたいな心臓してるねーキミ。死際はさっくり心臓麻痺だったけど」

 

「お手軽みたいな副詞を使うな。こっちは死んでんだぞポンコツ死神」

 

「カカカッ、ポンコツか!骨だけにな!」

 

「うるせえなあコイツ!」

 

あーあ。

おれ、死んだのか……。そっかあ……。

テンプレみたいな、ツラいことばかりの人生だった。

 

……にしたってさぁ。

 

目の前でいまだ愉快そうにカタカタ揺れる髑髏にため息を溢した。

 

「にしたって、これはないでしょうよ……」

 

「そう落ち込むな。ほれ、りんごでも食うか?」

 

骨ばった指……否、骨の指で摘んだ謎の物体を俺へ押し付けてきた。

灰色の謎果実。

 

「なにこれ。なにこのカビピーマン」

 

「いいから食べてみろ。イケるぞ」

 

と言われましても。

どっかの神話によれば、死の世界で美食などの誘惑に負け、地獄の物を食べると二度と人の世に戻れないとか聞くが……。別にいいか。生きててもいい事なんて何もないんだし。

 

自棄っぱちな思考に陥る。が、手元のリンゴ?を見てそんな気も失せてしまう。

こんな不味そうなもので誘惑……?こんなんで死後の世界に留められると本気で思ってる?

 

躊躇う俺へ何を思ったのか死神王さんはケタケタ笑う。

 

「大丈夫だ、毒なんか入っちゃいないし人間に有害なんてこともねえ」

 

「そういう問題じゃないんだが……」

 

ま、いいか。こちとら料理人の端くれ。生前の話だけど。

死後の世界の珍味なんて、文字通り生きてる内じゃ食えない。見た目にそぐわず、とんでもなく美味いなんてこともあり得るかも知れない。

 

いざ行かん。

 

グジョリ……。

 

「……んん。砂みてえ……。食えないことはないけど人様に出せるもんじゃないなコレ」

 

食感はゴムのようだった。

ぐにゃぐにゃと干からびた果物の内側には果汁なんてものは無く、ジャリジャリと水の代わりに砂を吸い上げて育ったような過程を空見した。

 

「口に合わねえか?贅沢な舌だ、死神たちにゃ評判良いんだが」

 

「それはいいけどさ、これから俺はどうなるの?ここで一生暮らして……ああいや、死んでるんだけど、ここから出られないの?」

 

リンゴをヘタと種らしきモノだけ残して完食する。ご馳走さま。美味しくなかった。でも紛争地帯の軍用レーションよりはマシかな。

……そう言えば、空腹も満腹も、欲らしきものを感じない。不思議な感じだ。

 

「お前には選択肢がある」

 

「ほぉ、選択肢」

 

もういっそ押し付けられた方が楽なんだけど。

何を選んだとしたって結局後悔しか残らないんだ。どっちだっていいさ。

 

「ひとつ、ここで俺の補佐としてノートの管理を手伝う。永遠に」

 

「永遠、なんつーブラック。……ん、ノート?」

 

「管理と言っても基本やることぁ無い。殆どぼけーっとしてるかボードゲームやらギャンブルしてるだけの仕事だ」

 

「わー、ホワイトー」

 

で、ノートって何?

もしかしてアレか?……閻魔様のアレ……。そう、閻魔帳みたいなやつ。死んだ人間の善行悪行で天国地獄振り分ける。それの管理?

 

「もうひとつは、こちらの人界へ人間としての転生」

 

「……転生ねぇ」

 

「あれ?興味ない?」

 

「えーと、まぁ。……生きてた時、いい事なんにも無かったんで。正直、また人生やり直せますよーとか言われても……微妙?」

 

「じゃ、じゃあ特典とか付けちゃうぞ!ほら、今そっちの人界じゃ流行ってるんだろう?なんだっけ……ナーロー系?」

 

「ああ、なろう系ね。ほら、俺あんなんだからさ、又聞き程度しか知らん」

 

「……あ、そうだよな。なんかすまん」

 

死神様にシュンとされた。なんて貴重な体験。

正直、俺が知っているサブカルチャーは専門学生のころまでだ。

海外に行くまでは母国のサブカルには大変お世話になっていたが、ネット小説の文化は流石に曖昧だ。

 

「それで特典って?」

 

「お、興味ある?」

 

「そりゃな。日本人は“特典”と“特売”と“期間限定”って言葉に弱いからな。お得でかつ、平和に過ごせるやつなら尚の事嬉しいけど」

 

「ま、取り敢えず特典については生まれ直してからのお楽しみにしとけ、後でこっちでくじ引きで決めるから。その方がスリルがあっていいだろう!それを贈らせてもらおう」

 

「まさかのガチャシステムかよ」

 

これまでの人生いい事なかったって言ってんのに、ここまで来てガチャはクソ過ぎないか?

 

「ゴミみたいな配慮、痛みいるよ。……あれ?生まれ変わるなんて俺まだ言ってないんだが……」

 

「ん?ここで永遠に暮らす?」

 

その言葉に俺は首を傾げる髑髏男を見上げた。

表情こそ伺えないが、本気?とでも言いたげなのは伝わった。

 

「…………」

 

「…………」

 

灰色の空の下で無駄に着飾った骸骨の外套が、ただただぬるい風に吹かれていた。

 

「ワシと永いこと一緒になる?」

 

「…………じゃ転生で」

 

なんで髑髏と永遠を共にしなきゃならんのだ。まだ美少女、美女だったら救いがあったものを。

笑える……死神の世界に救いなんてある訳ないか。

 

「なんか不躾な視線が気になったけどいいか。転生ね!一名様ごあんなーい!」

 

手足が砂のように崩れた。

唐突な衝撃体験に、一瞬にして脳内が真っ白になった。

 

ちょ!これ死ぬんじゃ!

 

「大丈夫、痛くはない筈だ。生まれついた不幸の呪いから死して開放されたお前なら、次は幸せに生きて行けるかもな。あとはお前次第だ。幸あれ、藍野(あいの)(はつり)

 

ごめん、聞こえない。

 

髑髏が、揺れている事しか理解出来ない。

もう砂となってこぼれ落ちた耳に、自分のくずれる以外の音が入ることはない。

最後に崩れた目玉と訪れる暗闇の中で、骸骨がカタカタと。

虚しく、どこにも届かない言葉を鳴らしているようだった。

 

俺を殺した張本人。

だが、同時に俺のクソみたいな人生から開放してくれて、その苦しみを知ってくれた骸骨の言葉を聞きたいだなんて。

 

そんな益体もないことを考えている自分に呆れた。

 

 

ほんと、しょうもな。

 

 

 

 

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さあさあ!幸せな人生の幕開けだ!!

ビバ今世!グッバイ前世!俺の人生は光に満ち溢れている!

優しい両親、裕福な家庭、やんちゃな友達に、お調子者のご近所さんたち、羽振りのいい行きつけの店主たち。

毎日笑顔が耐えず、明日は何をしようか、どこへ行こうかと期待に胸を高鳴らせ眠る静夜。

前はギターを貰った。その前は欲しがっていた本を。今年の誕生日は何をプレゼントしてもらえるのだろうか。

結局、特典なるものが何なのか未だに俺は知らない。だが、そんなものがなくたって幸せに生きていけるのならば些末な問題だ!

 

夕食の時間らしい、母さんがお呼びだ。

 

 

 

 

 

家族は死んだ。

爆撃された家は跡形もなく、ご近所さんの丸焦げになった生首が1キロも先に転がっていた。

通りがかった友人宅は外から見ても血塗れで静まり返り、中を覗く気にもなれなかった。

目的もなく歩き、悲鳴と死屍累々に溢れる街の中で、見知った顔の人たちに押し退けられて路地裏のごみ溜めに倒れ込む。

なんて気の利いた誕生日プレゼント。ありがたいね。

 

兵士たちが流れ込んで来る。

飛び出す鉛玉に貫かれて死んでいく住人を、俺はゴミに塗れて眺めているだけだった。

「あぁ、前に見た光景だ」なんて、どこかの下らない男の人生を思い返した。

そして悟ったように、いつか死神王と出会った時とまるで同じ空を見上げた。

 

見えてるか死神大王。こちら疫病神。依然、変わりなく生きてるよ。

 

 

 

ホント、しょうもな。

 

 

 

 

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不幸中の幸い……なのか。俺は戦禍の中で長銃を握った男に拾われた。

いったい俺の何を気に入ったのか「いい拾い物をしたと」彼の建てたらしい孤児院へと保護された。

孤児院の名前は、ワイミーズハウス。

 

これまた一風変わったというか、個性的な子供ばかりで俺としても対処に困ることがしばしば。

これでも総合的な精神年齢は30そこそこのはずなんだが、ここはどうにもマセたキッズが多いように思う。

どう見ても小学、中学生並みの子供が容易く大人を論破し、手玉に取り、上回るのだ。

 

「私にはアイドが何を考えているのかは分かりません。超能力者(ESP)ではありませんから。むしろそこが気になるんですよ。アイド、貴方は人の機微に敏い。その歳でその人格に至るというのは些か興味があります」

 

真っ黒な目で俺を見透かすように、膝を抱えて俺を見据える子供が一人。

この孤児院で一番厄介かつ扱い辛い少年。

 

「その歳って……同い年じゃねえか。どちらかと言うとお前の方が年上に見えるよ、ライト」

 

この少年、ライトは非常に聡明だ。

実は俺と同じく転生してるんじゃないかと思うくらいに頭の回転が早く、変態的なまでに優れた頭脳を持っている。

この孤児院にいる子供たちは俺を除いて全員が何がしかの才能に秀でていた。

戦闘、計算、演技、美術、器用さ、交渉、学習、交流能力、歌、観察眼、etc.etc。

子供であるが故に末恐ろしい集団だ。一般的な感性を持つ大人たちであれば恐怖するかも知れない。そう言う俺だって、見た目こそガキだが中身はいい大人だ。傍から見れば普通に怖いだろう。

ワイミーさんと、ロジャー(園長)さんの好意で生活は出来ているが、ここがどこかの勢力やらテロリストに利用されないことを祈るばかりだ。ここの天才キッズたちが悪党に走るなんて怖すぎる。

 

なーんか、俺のような疫病神がこの施設にいるとまた悪いことが起こりそうで気が気じゃない。

早いところ一人立ちしたいところだ。

 

が、取り敢えず。

 

「おっっら!野菜も食えこの糖分ジャンキー!」

 

「嫌です!そんなものを摂らなくても栄養剤があれば十分でしょう!」

 

俺たちは取っ組み合いをしていた。

 

この不衛生キッズを更生してからでなければ出ていくに出ていけない。

俺とて子供だがこれでもいい大人。放って置くことはできない。

 

「成長期舐めんなボケ!この前学んでた人体学の知識はどこ行ったんだよ!」

 

「あれは人体に影響を及ぼす毒物が薬に転用出来ないかという研究論文を読んでいただけです!事件の概要は貴方も知ってるでしょ……っ」

 

「じゃこのアイドお兄さんが経験則から教えてやる、過度な糖分は劇薬だ!炭水化物、脂質、たんぱく質!それとビタミンもバランス良く摂れ!」

 

「同い年でしょうがッ!まったく愚かと言うより他ないですね。糖分がなければ脳は回りません。人体において最も効率よく手軽に取れるエネルギーはブドウ糖!それを手間なく摂れる甘味を好んで何が悪いんですか」

 

「るせえ!精魂込めて作ったんだ食え!!」

 

「嫌です!!」

 

テーブルから離れようとするライトを引っ掴み、取っ組み、言い合う俺たちを横目に見もしない年下のキッズたちは、まるでこちらを意に介さない。

彼らは彼らで俺たちに興味なさ気にキャッキャと夕食を楽しんでいた。

 

くっそ、何なら食うんだよコイツ。カビたピーマンでも食わせてやろうか。

いや、まだまだ料理人としての腕が未熟な俺が悪いんだけどさ。

……ええ、頑張りますよ!!何としてもこいつにまともな飯を食わせてやる。こいつに影響されて下の子たちも甘い物ばっかり食べるようになってきたし、俺がどうにかこの施設のキッズたちの食生活を改善させなければ。

年若くして糖尿病になんてさせる訳にはいかない。俺は外見こそ子供。だが、これが中身大人妖怪としての責務だ。

 

「ホント、アイド兄さんって“オカン”みたいですよね」

 

「おいニア、オカンなんて余計な語彙誰から教わった。つか俺はオカンじゃねえ、世話係だ。お前らのような人間として終わってる異食生活モンスターをそのまま世に出せるか」

 

片膝を椅子の上に抱えてこちらを観察している様子の少年、ニアが言った。

髪の色こそ珍しいアルビノだが、ライトと瓜二つの少年だ。少年というか……ギリギリ幼児?

小学生かどうかの年齢だよな、そろそろ。

年がら年中通して着ているパジャマであざとく萌え袖をしている。将来が不安だ。あとその座り方骨格歪むぞ。背ぇ伸びないぞ。

ライトと違って濃いクマもなければ爪を噛む癖もないが、その雰囲気はまさしく双子といった様相。もしかしたら本当に同じ親なのではなかろうか。どっちも頭いいしな。

 

「“異食”とは、何でも口に入れてしまうという意味です。言葉は正しく使って下さいアイド兄さん」

 

「ありがと勉強になった。じゃあその話は置いといてちゃんと飯は食おうな?ほら、ニアの苦手な人参も美味しく調理してやったから……逃げんなあああ!!」

 

ニアに逃げられた。

いつの間にかライトにも逃げられてた。

クソガキどもめ……!

 

「あとでとっちめてやる」

 

得にライト。

 

「にしても、全員がメシ嫌いじゃなくて良かったよ」

 

チョコの方が好きだが大人しくご飯も食べてくれるメロ。うめえうめえと品なくかきこんでいるマットやビヨンド。

ちょっと嬉しい。

……確かに嬉しい、美味しそうに食ってくれるのは嬉しいんだが、あまりに食べ方に品がない。まるで猿だ。

綺麗、とまでは言わないが、せめて人としてのご飯の食い方もちゃんと教えていかないとな。

頭が痛い。

 

なんで保育士みたいなことやってんだ俺。

 

 

 

 

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「アイド、君の料理人としての腕は天才的だ。どうだろう、パティシエとしての勉強もしてみないか?」

 

次の日、唐突にロジャーさんからそう持ちかけられた。

ははーん、このオッサン、さてはスイーツ作れるやつを側に置いといてライトやらニアやら天才甘党変態集団の舵を俺に切らせるつもりだな?

 

……うむ。しかし奴等の大好物を作ることが出来れば……。そう、胃袋を掴んでしまえば主導権は奪えるかも。

やってみる価値はあるのかも知れない。

 

 

「やってみます」

 

 

お菓子作りというのは案の定、奥が深かった。

料理人とパティシエがなぜ別の職業なのかを痛感させられた。これは全くの別物。水と油とまでは言わないが、灯油と食用油くらい違う。

そして何故かワイミーさんまでお菓子作りを学びたいと言い出したので、俺たち二人で試行錯誤した。

ワイミーさんが稼いだという資金を元にプロへ師事し、技術を磨いた。

 

だが、俺と違ってワイミーさんは多忙な身だ。

俺は若さの力も相俟って、技術的に一歩先を行くことが出来た。

まぁ、ワイミーさんはワイミーさんでライトと二人で資金の荒稼ぎをしてるらしい。楽しそう。

けど、あんま目立たないでくれよ。あの子たちが世間に晒されるのは早すぎるし心配だ。ただでさえ俺という疫病神がいる、心配は尽きない。

 

 

ま、取り敢えずこのお菓子作りを利用してライトたちを脅迫してみよう。

デザートを食いたきゃ飯を食え!と。

 

 

 

 

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「ほんとお前らは手が掛かるよな」

 

椅子にライトの全身を縛り付けて散髪を行いながら言う。

 

「ったくなんでお前はそんなズボラなんだよ。せっかく顔はイイんだ、見た目には気を使え」

 

猿轡を噛ませた口からフゴフゴと反論が帰ってきた。

 

「余計なお世話?はいはいそうですか、ちっとはメロを見習え。大人しく切られるだけじゃなく注文までしてくんだぞ、モテるよーにってな」

 

チョキチョキと作業を継続する。

 

「あ?まぁ確かにあいつの才能はあの異様なコミュ力とカリスマ性だからなぁ。自分でも容姿が武器になるって分かってるんだろうな。可愛くねえよホント」

 

ある程度切り揃え、違和感の無いように整えていく。

 

「私には必要ないって?あのなあ、別にメロ程になれって訳じゃないんだ。でも『人を動かすのに必要なのは説得力』とか言ってたろお前。大いに賛成だ。そんで、人は見た目にだって説得力が伴うだろ。やれる事はやっといた方が得だぜ。……あと、そんなんじゃお前、一生彼女できねえぞ」

 

最後に全体をチェックをし、かけていたクロスを外した。

よし、綺麗に切り終えたし拘束も解いてやるか。

 

「ぷは……っ。問題ないです。彼女なんて作るつもりは到底ありませんから」

 

「…………え?彼女、作るつもり、ないの?」

 

「ええ。必要とも思えませんし、家事は貴方がやってくれています。そうでなくとも、感情面や痴情のもつれ等の面倒事の危険性、それと根本的に女性は感情が第一な生き物です。私は守秘義務が発生する事案に触れる事も多いですから、余計な関わりは減らしたいですし、そんな存在を作るのはリスクでしかありません。そもそも、私には貴方がいれば十分……ってちょっとどこに行くんですか。…………あの〜……!…この拘束は…………外して貰ったの、まだ猿轡だけなんですが……」

 

 

拘束されたままの友人を放って逃げてしまった。

トラウマを刺激したあいつが悪い。俺は悪くない。

 

 

 

 

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「あのなぁニア、これはお前の玩具じゃないだろ?」

 

「いいえアイド兄さん。その電車は僕の物です。いったい何を根拠に言っているのでしょうか」

 

「何をって、アイツ泣かせてるじゃねえか。ひとつ上とは言えお前の兄の一人だぞ。泣かせんなよ」

 

「彼は僕の兄ではありません。それよりも、僕を疑う根拠は“彼が泣いている”という只それだけですか?情に絆されて人を疑うとは愚かですね。もし間違っていたら?彼が僕が持つ玩具への嫉妬による嘘泣きをしていたら?アイド兄さんはどう責任を取ってくれるのでしょう」

 

「るせっ」

 

「……痛いです。証拠不十分で拳骨とはどういう了見でしょうか。事実が明るみになった際、貴方が不利という」

 

「るせっ」

 

「…………痛いです」

 

「本当にお前が悪いことをしてないなら……俺が間違ってるんならごめんなさいって謝ってやる。そんで、釣り合いがとれる謝罪を全力でしてやるよ」

 

「……なるほど。アイド兄さんを上手く冤罪で絡め取れば謝罪でサグラダファミリアサイズのお菓子を作ってもらえると」

 

「材料費だけで国家予算レベルを要求すんな」

 

「…………なるほど」

 

「理解した?」

 

「はい、ありがとうございます。いい事を学べました。確かに悪党より正義の方がいい。今回は僕が悪者です。彼から奪いました、ごめんなさい」

 

「呑み込みが早くて結構。じゃ俺じゃなくて、あっちに謝ってこような?」

 

謝罪してきた。うむ、よろしい。

 

「アイド兄さん。悪党より正義の方がいい。今日の良き学びに感謝します」

 

「おう」

 

「悪党は欲を叶える代わり敵が増える一方です。が、正義ならば多くの味方を得られる上に誰にも恥ずかしげ無く強く出られる。拳骨しても許される。確かにそちらの方が気持ちよさそうですし、楽しそうです」

 

「おい」

 

「それになにより……」

 

「ん?」

 

濁った二つの黒目が、俺を横目に見ていた。

だが、どこか子供らしく無く、しかし安心したようにニアは笑った。

 

「アイド兄さんはそんな僕なら“味方で居てくれる”ということですよね?」

 

「んまぁ……そうなるな」

 

「それだけ聞ければ結構です。それでは僕はこれにて……」

 

ニアは背を向けて歩き出した。

持っていた玩具をポケットにねじ込み、確固たる目的を果たす勇士のように。強い足取りで。

 

「ロジャーさんワイミーさんとその他に、300件ほど謝罪してくる事があるので」

 

「なにしてんのお前」

 

 

こいつは賢いのか馬鹿なのか……。

 

 

 

 

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「次のLに相応しいのは俺だ、ニア」

 

「さて、それはどうでしょうメロ」

 

深夜、いつもなら誰も居ないはずの食堂。

咄嗟にふらつきそうになった足で踏ん張り、俺は扉の前に背を預けて隠れた。

朝食の仕込みをしておこうと思ったんだが……。

 

「お前を殺してでも俺は譲る気はない」

 

「怖い事を言わないでください」

 

何やらニアとメロが子供らしく喧嘩しているようだ。聞こえてくる言葉のひとつひとつはまるで可愛げがないが。

チラリと覗けば、メロに胸ぐらを掴まれ飄々とした態度を示しているものの、ニアも剣呑な視線で確かな怒りを発していた。

 

「Lの座はひとつ。お前は俺の補佐でもすればいい」

 

「困りましたね、それは君の役職ですよ。メロ」

 

L……?

Lってなんだ?

 

……あー。あ、そう言えば前世で見たアニメにそんなキャラクターいたなぁ。流し見だったから薄っすらとしか覚えてないけど……。

確か、デスノート……だったか。キラを名乗る歴史上最悪の殺人鬼、主人公夜神月のライバル。

姿を隠した天才的な探偵であり殺人鬼主人公と探り騙しの頭脳戦を繰り広げる男。

あれ?……主人公の名前って夜神月。ライト……。

 

……ん?流れ変わったな。

 

いやいやいや!だってあの夜神月はれっきとした日本人!そりゃうちのライトだって日系のクォーターだけど!

でもあっちは茶髪ハンサム天才陽キャだった筈。ライトは少なくとも陽キャではない、陰キャも陰キャもはやダークマターだ。それじゃまるで夜神月のライバルである、世界一の名探偵『L』。

…………。

 

 

ライト……Lite……。頭文字L……。

 

 

「……そう言えば死神が、ノートがどうのってのと……それにニアとメロ……」

 

その時、ガツンと頭を殴られたような衝撃と共に、これまで記憶のタンスに入っていたモノが溢れ出して線を結んだ。

 

 

「…………あ」

 

 

この世界、まさかデスノート……。

 

 

 

「はあああああああああああああああ!!??」

 

 

バラバラだったピースがカチリと噛み合った。

噛み合ってしまった。

 

ぐっ……うぉおおおお。

頭を抱えて蹲った。

これまで!まったく!微塵も!

微塵も微塵も微塵も、考え付きもしなかった!!

 

死んで次の世界が、あのポンポン死人が出る世界、デスノートって。そりゃねえでしょうよ。どんな仕打ちだよ。考えつくかよくそったれ。でもそれ以外あり得ない。

死ねって言うのか、俺にもう一回死ねって言ってんのか。疫病神っつーか、俺が死神に憑かれてんじゃないのコレ。

 

やっぱ俺はロクな人生を送れないのか。

 

「オイオイ、何してんだアイド」

 

気がつけばメロが蹲る俺の前に立っていた。

そりゃあれだけ大きい声出したんだ、聞こえてたよな。目の前だし。

 

「……まさか、クスリでもやってるんじゃないだろうな?」

 

しゃがんだメロに頭をガシッと乱暴に掴まれ、瞳孔が見えるよう目を開かされた。

追随するようにニアも屈んでは覗き込んで来る。

 

「瞳孔も正常。問題なさそうですね。怖い夢でも見ましたか」

 

「アイドがそんなタマかよ」

 

怖い夢。それだよ本当。

 

「あはは、悪い悪い。バランスを崩して床で小指を捻っただけだ。危うく折れるところだったぜ。ふぅー、九死に一生、九死に一生ぉー」

 

いま、俺の心は折れたけどな。

 

しかしそうか。

この二人はあのLの……ライトの後継を争う二人だったか。

正史通りであれば、ライト……Lは夜神月との頭脳戦に破れ命を落としてしまう。そしてその後、世界的に有名であるLの名前を夜神月が継ぐことになる。世界的名探偵と世界的大量殺人犯の二足の草鞋。

が、形式的な物なんてどうでもいい。Lに代わって夜神月を打ち破ることになるのがこの少年、ニアだ。

 

L……。ライトが。

あの生意気な友人が、死ぬ……。

 

でも、相手は夜神月だぞ!

あの超イカレ殺人鬼だ。どうしろってんだ。一介の料理人に何が出来る。どれだけ原作の知識があろうと俺に出来ることなんて、ライトを健康体にして頑張れよと尻を引っ叩くことだけだ。

それに、あんなのに近付こうものなら殺される。すぐにではなくても、利用されて殺される。鼻で笑われ、足蹴にされ、殺される。

ノートの存在を誰かに仄めかしてもあの天才イカレ野郎にはすぐ情報の発信源として見つかるだろう。殺される。

殺される……。

殺される……?

また死ぬのか……。

また心臓麻痺で殺されるのか……?

それは嫌だ。絶対に嫌だ。関わりたくない。死にたくなんてない。

 

「……ったく、何が小指だ。そんな土みたいな顔色して取り繕っても丸わかりだ」

 

「はぁ。まったくです。僕は肉体労働なんて嫌なんですけど、ねっ」

 

軽く目眩を起こしていた俺の両肩を、二人が支えてくれていた。

メロは年の割にしっかりした体をしてる。知らないうちに成長しているんだな。

ニアは相変わらず細い。転んだだけで折れてしまいそうだ。それでも、大きくなっていることは確かだった。

 

「アイド。俺はあんたは嫌いじゃない。なんせ、俺よりも頭が回らない馬鹿で、人の面倒を見る意外能力がないポンコツだからな」

 

「そーかい。そりゃ嬉しいね」

 

「……俺は嫌いな人間は多いが、嫌いじゃない奴は少ない。だから……もう少し自分を労れ」

 

「おやメロ、今日は素直ですね。ならばもっと素直にアイドお兄ちゃん大好きと言ってしまえばいいんです」

 

「殺されたいならそう言えよニア」

 

「可笑しいですね、さっきもそれは聞きました。こうも繰り返されると軽さのあまり寧ろ甘えてるようにしか聞こえません」

 

「お前も今日はやけに饒舌じゃないか。普段は見れないアイドの弱ったところを見れてウキウキか?」

 

「まぁ意外ではありましたが、メロ程ではありません」

 

「なんだと?」

 

「……うるさいぞお前ら。いま夜だ」

 

両耳の近くでギャーギャー喚かんでくれ。 

……いやごめん。たぶん一番うるさかったの俺だったけど。

もうなんか、頭痛までしてきた。

 

「すみません」

 

「……ハァ」

 

この可愛い弟分たちを守るためにも、俺に出来ることはあるんだろうか。

Lを……。ライトを助ける為に出来ることは、俺にあるんだろうか……。

 

 

この、疫病神に。

 

 

 

 

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我が物顔で俺の椅子を占領していた。

外からは子供たちの声が聞こえる。

 

ライトは俺に興味を示さず、コルクボードに貼られた写真を無感動な瞳で眺めたまま、シュークリームを齧っている。

 

 

「話があるんだ」

 

 

言ってしまえばいい。何も秘匿する必要なんてない。悩む必要なんてなかった。

ここには力強い仲間が大勢いて、頼れる大人も友人もいるんだ。独りで抱え込む必要なんてない。

そう、それだけで終わる話だったんだ。

 

原作では誰もライトの本名を知ることなく終わった。ならば、こんな日本から遠く離れた僻地で俺がノートの話をしたとて、いったい誰が突き止めてくると言うのか。神を自称するあの凶人、さしもの夜神月とて人の子だ、限界がある。

 

「それでアイド。話、とはなんでしょう」

 

 

俺の改まった雰囲気を感じ取ったのか、特に茶化すこともなく、ライトは齧りかけのシュークリームを机に起き、俺へ向き直った。

 

「あ、いや。なんつーか……。これから荒唐無稽な話をするんだが、聞いてほしい。ほんと、信じらんないかもしれない話でさ。痛いと思ってくれても構わない」

 

「ライト、いや……L」と俺は緊張を飲み込んで、彼の黒く濁った瞳を正面から捉えた。

 

「“L”。これは誰にも漏らさないでくれ。メモに残すのも、ボイスレコーダーに残すのも駄目だ。今はお前以外には知られたくない」

 

今は(・・)ですか。わかりました、聞きましょう」

 

例えライトにとってどれだけぶっ飛んだ話であっても、数年後には理解できるようになる。

例えいま馬鹿にされたとしても、精神疾患だと言われようとも、俺の言葉があの殺人鬼を止める役に立つのなら……。

 

デスノートの存在を知らせるべきだ。

この天才に、詳らかにすべきだ。

 

こいつらの為に。

そして俺の為に。

 

 

 

「L。正確には分からないが数年後、デスノートという馬鹿げた代物が日本に落ちてくる。そいつは──」

 

 

 

 

 

俺は、その続きを口に出来なかった。

何が起こった訳でもない。

俺が倒れた訳でも、記憶が飛んだ訳でも、ましてや死んだ訳でもない。

何かが起きたわけでもない。

 

 

否……。

 

 

「それでアイド。話、とはなんでしょう」

 

特に茶化すこともなく、ライトは齧りかけのシュークリームを机に起き、俺へ向き直った。

 

 

 

 

なにも、起こっていなかった。

 

 

なにも、“起こっていなかった”。

 

 

 

「……どうなってんだ」

 

「どうか、しましたか?」

 

訝しげにライトはこちらを見つめている。

 

喉が渇く。口の水分はいつの間にかなくなっていた。

握った拳の中で嫌な汗が滲んでいる。

 

「よ、よく聞いてくれ」

 

「はい」

 

「デスノートという代物が──」

 

 

嘘、だろ。

 

 

「それでアイド。話、とはなんでしょう」

 

ライトは齧りかけのシュークリームを机に起き、俺へ向き直った。まるで何事もなかったかのように。ずっとコルクボードを見ていたかのように。

 

時間が、巻き、戻った……?

理解が追いつかなかった。

認められる訳がなかった。

だから俺はまくしたてるように、前のめりに言った。

 

 

「デスノートとかいう馬鹿みたいな──」

 

「それでアイド。話、とはなんでしょう」

 

戻った。

 

「だからデスノートっていう兵器が──」

 

「それでアイド。話、とはなんでしょう」

 

戻った。

 

「人を殺せるノートを死神が人間界にポイ──」

 

「それでアイド。話、とはなんでしょう」

 

戻った。

 

「名前書く!書かれた人!死ぬ!イッツ紙束!エマージェンシーオレオマエ!──」

 

「それでアイド。話、とはなんでしょう」

 

戻った。

 

俺は深く息を吸い込んだ。

それはもう肺一杯に。

眉を潜めるライトを目の前に。それはもうヤケクソに。

 

「デス!ノォオオオオオオトォオオオオオオ!!っていう代物があああああああああああああああ──」

 

 

「それでアイド。話、とはなんでしょう」

 

 

戻った。

 

俺は激情に任せてライトの胸ぐらを掴んで頭突く。

そして射殺さんばかりに睨みつけた。

 

「い“ッ!?アイドなにを……!!」

 

「おい、てめえふざけんなよ!だから!デスノートだって言ってんだろうが!いい加減に──」

 

 

掴んでいた筈のライトは座っていて、その襟にはシワひとつ付いていなかった。もちろん頭突きの跡もダメージもない。

 

 

「それでアイド。話、とはなんでしょう」

 

 

……戻った。

 

どれだけやっても。どれだけアピールしても。

ここでは。なにも、起こっていなかった。

 

 

「……どうか、しました?」

 

「…………」

 

「……アイド?」

 

「……ああ。うん」

 

 

間違いなく、俺がデスノートの存在を暴露する寸前へと戻されていた。

その存在を他人に伝えると、時間を巻き戻される……ようだ。

 

まさかとは思うが、このとんだ縛りプレイみたいな事象が、死神大王の特典と言うヤツなのか。

余りの事態に思わず天を仰いでしまった。

 

 

どうすんの、コレ。

 

 

 




詰んだね!
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