異世界大戦   作:ア・ラ・カルト

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 人は、何故戦うのだろうか。

 誰かの為? 人の為? 自分の為? ううん、どれも違う。

 僕らは常に、世界の為に戦っている。

 

 そう、生きる為に。そう、願いを叶える為に。

 今日も明日も、世界を生かす為に戦っている。

 

 

「殺せ殺せ!!」

「我らはアナザイーター! 異界の神とグリフォン王様の為に全ての異世界人を駆除するのだ!」

「この世界全ての豚共を討伐しろ!!」

 

空を見上げれば、無数の戦闘機が飛び交い、地上では機動兵器に乗った兵士達が暴れまわっている。

ここはとある世界における戦場。今、沢山の人々が殺されている。

逃げ惑う人々を次々と殺す兵士達。無惨に殺されていく僕らの仲間達。

「嫌ああぁっ!? 助けてえぇッ!!」

「痛いっ!! ママァアアアアア!!」

「た、頼む! 息子だけは、俺の息子だけは見逃してくれェーッ!!」

目の前で人が死んだことで発狂する女性。泣き叫ぶ女の子。必死に逃げようとする親子連れの男性。そして、そんな無抵抗な人々に容赦なく銃弾を撃ち込む兵士とロボット。

「ハッハァ! 見ろよこいつらの顔! 最高じゃねぇか!」

「ヒャハハ! おいおい、あんまり撃ちすぎるんじゃねえぞ? 弾だってタダじゃないんだからよォ?」

「分かってるっての! それよりさっき殺した家畜はどうした? 新鮮な内に捕獲して置けよ! 食糧は大量に用意しておかなきゃなァッ!!」

 

―― ババババババババッ

 

鳴り止まない銃声の音、飛び散る肉片や血痕、次々と死していく生命たち。

異界の神の使徒『アナザイーター』にとって、この世界の異世界人は喰い物でしかない。

奴らは人肉を積極的に捕食しているカニバリズムだ。だから、こうして人を殺すことに何のためらいもない。

 

この異世界は奴らの思うがまま、僕らは奴らに殺されるのを待つだけの餌でしかなかった。

それでも、僕は諦めない。こんなところで死ぬわけにはいかない。

僕の命は、他の誰でもない、僕自身のものだから。

「行くよ、クリストフ」

「あぁ、分かっているさ」

例え、負ける事が確定しても、僕には仲間達がいる。僕らの世界が無名であっても、僕にとっては大切な故郷にして惑星だ。

絶対に、壊してなるものか……!

 

「行くぞおおおぉぉ!! 我らの世界を、奴らに渡してなるものか! ルミナリア皇国第一皇子にして白光騎士団団長クリストフに続け!」

 

空に剣先を向け、騎士達を導く。その声に答えるかのように、四人の臣下が騎士団長の後に続く。

「応ともさ! 皆、気合を入れていくぜ!」

「アタシ達も続くわよ! 総員、突撃いいぃっ!!」

「おう、野郎ども! 俺達の力を見せつけてやれ!!」

「アナザイーターの好き勝手にさせてたまるか! 俺たちの力を見せてやる!!」

後ろからは、大勢の騎士達が続く。彼らは僕と同じ志を持つ同士であり、僕と共に戦う同志だ。

僕らはこの世界で、平和と自由を取り戻す為に戦っている。その為なら、どんな困難にも立ち向かって見せる。

たとえ、それが異界の神との絶望的な状況であろうとも、僕らは戦い続ける。何としてでも……必ず!

 

 

「クソッ、思ったよりも手こずっているな」

「ノーマルワールドとはいえ、戦闘能力はトップクラスですからねぇ。これが昇格した異世界だったらもっと時間が掛かっていました」

「たかが人間如きがアナザイーター様を舐めやがって……!」

アナザイーターの上層部からは苛立ちの声が上がっていた。

それもそのはず、相手は異世界の中でも最弱レベルであるノーマルワールドの住人。本来ならば、彼らが苦戦するような存在ではないからだ。

 

だが、相手が悪かった。その世界の人々は異能力を持たない、ただの無能力者である人間ばかりなのだ。その世界では異能力者は非常識の存在。故に、彼らは知らなかった。無能力者たちの生き甲斐を――

 

彼らの世界では、たった一人の英雄によって救われた事を。

 

彼らの世界では、彼らの知らない英雄が存在していたことを。

 

彼らの世界では、彼らの世界を脅かす脅威が存在するということを。

 

彼らは、それを知らずにいた。

そして、今まさに一人の英雄が――

 

「ア…アルバート?」

 

無惨にも、一人の少年に負けることになるとは……初めから分かっていた頃であろう?

それに気づかない、無名の惑星はやはり愚かとしか言うしかない。

 

――ピピッ

『イレギュラーNo.7、遅いぞ! 早く任務にかかれ!』

「了解しました。任務を遂行します」

十二歳ぐらいの少年が、側近の一人である副団長の首を一瞬で……落としたのだ。

 

「う、うああああああっ!?!?」

「ふ、副団長ぉおおおおおお!!」

動揺する騎士たち。当然だ、相手はまだ子供だ。それが一瞬に内に、No.2であった副団長を切り刻んでしまったのだから。

 

「おいおい、なんなんだよあいつ!イレギュラーの分際で俺達の手柄を横取りしやがって!」

「放っておけ、イレギュラーが来てくれれば我々の勝利は確実だ。お前達はそのまま周辺のゴミ共を片付けておけ」

「チッ、ラジャー」

少年の活躍にアナザイーター側の兵士が不満げに舌打ちをする。

 

「まさか、我が友を一撃で葬り去るとはな。貴様、イレギュラーだな!」

「…………」

「返答は無しか、ならば言うまでもない。分かっているな……?」

騎士団長は剣を少年に向けた。無論、親友である副団長を殺された怒りからではない。

既に誓いは済んでいた。例え、誰が死んだとして、この五人の内の何人かが生き延びてでも、国を再興させると。未来の子供達の為に、明日への人々の為に、この世界に平和を齎す為に――

五人の騎士達は誓いを立てた。

 

「最後に何か言う事はないか?」

「……………特にないよ」

「では、ここで死んでもらうぞ! 今まで殺された同胞の怨み! 晴らさせてもらう!」

「……そうか、残念だよ」

「はああああああッ!!!」

国の為に、世の為に、ただ只管に、無慈悲に、騎士団長は少年に剣を振り上げた。

 

 

「勝ったぞぉおおおおおお!!」

「うおおおおおおお!!」

「よっしゃあああ!! 俺達の勝ちだぁああああああ!!」

 

激闘を制したのは――

 

「アナザイーターの勝利だぁあああああ!!」

 

騎士団長の生首を片手に持ち、血塗れになりながらも傷一つなく勝利した少年。

そして先程、イレギュラーと呼ばれた彼こそが、この物語の主人公なのである。

 

 

「(あぁ、後何人くらい殺せば良いんだろう……)」

 

時は少し遡り、数時間前。

グレン達が、ルミナリア皇国を目指して約2時間後……

 

――

――

―――

――――

―――――

 

「へぇ~、ここがアルセニア魔法神殿かぁ……。なんか思ってたよりも大きいですね」

No.7と上司であるアイシアは今、ルミナリア皇国の首都にある巨大な建物の前にいる。

その建物は神殿と言うには大きすぎるし、かといって宮殿というほど豪華でもない。

「まぁ、ここは信者たちが日々祈りを捧げている場所だしな。これでもアウトラインよりか小さい方だぜ?」

アウトラインとは、現実世界とは途中までは歴史と同じ運命を辿り、抑止力によって分岐した異世界のことである。

「それよか、私の後ろにピッタリ着いて来いよ」

「はい」

No.7はアイシアの後に続いて行くように、建物の奥の中へと入っていく。

「良いか、我々はわざわざ無名である、このオリジン・ノーマルワールドを侵略しに来たのだ。この世界は膨大な魔力に溢れている、それを搔き集める為にこの世界を破滅させ、その魔力の源を手に入れる」

オリジンとは、抑止力から独立した異世界。アウトラインとは完全な別世界で、ノーマルワールドで言う一般的な異世界のイメージはオリジンにあたる。

「ア、アイシアさん。僕なんかで良かったんですか? 他にも優秀な人は沢山いるのに……」

「安心しろ、私は異世界人の肉を喰わないイレギュラーであるお前達を差別しない。異世界人は死ぬほど大嫌いだが、我が世界の連中は別だ。故郷が大好きだからな、私は!」

「そうじゃなくて、どうして自分なんですかね……?」

「決まっている、お前は特殊な部類であるイレギュラーの中でも、特別に、いやトップクラスに優秀だからに決まっているだろう! イレギュラーでありながら、大幹部にも匹敵する潜在能力と才能……このまま肥やしにしては勿体ないではないか!」

「そ、そうなんですか……」

「すまんな、もっと良い言葉を期待していたか?」

「あっ、いえ…。それで、この神殿でどうしろと……?」

「決まっているだろう。王都を乗っ取る。所謂、テロみたいなもんだ」

この世界に来てからというもの、No.7の心の中にはずっと疑問があった。それは、なぜこの世界の人々が異能力者の事をあんなにも恐れているのかということ。

確かに、アナザイーターの持つ力は強力だ。だけど、アナザイーター異世界人の関係は決して対等ではない。

遠い遠い昔、アナザイーターがかつて虐げられてきたように、異世界の人達はきっと自分達を怖がっているはずだ。

「それで、どうして乗っ取りなんかを……」

「決まっているだろう、神王グリフォン様からの命令だ」

「神王直々に!?」

アナザイーターの世界における五大陸。赤の大陸、青の大陸、白の大陸、黒の大陸、そして四つの大陸の中心部には一つの神域があった。

その全ての大陸を纏める統一王『グリフォン』。アナザイーターからは最高神と崇め建てられ、異世界人からは最悪の暴君と罵られた冷酷非道の王である。

神王の為に、僕達は日々戦い続けている。

 

―― ドンッ

 

「あっ」

曲がり角で、黒いローブを深く被った長身の男にアイシアはぶつかった。だが、男は無視して颯爽と行ってしまった。

「どうしたんでしょうか、あの人……」

「知らねぇ、多分だけどこの神殿の奴だろ。ローブがこの神殿のものだったからな。そんな事はどうでも良い、ホラ行くぞ」

 

 

「着いたぞ、ここが神殿の地下洞窟。『Xコア』が眠る場所だ」

「『Xコア』……」

「そうだ、『Xコア』さえ乗っ取れば我々のミッションは終わりだ」

「でも良いんですか? こんな卑怯な真似で……」

「そうでもなきゃこんな警備の硬すぎる所を突破できないだろう。本来ならば、この神殿を守る管理者が『スターライン』の連中に渡す筈だったらしいが、元々は神王のものだったらしい。私達はそれを取り返しに来ただけだ」

「それじゃあ、最初からその管理者さんに頼めば――」

「あのなぁ、話し合いで解決するほど柔じゃない。この世界の人間がアナザイーターなんて信用すると思うかぁ?」

「……お、思いませんね」

「だろ? まっ、どうせもうすぐこの神殿も我々のものになるんだがな!」

「……この世界も滅ぼすんですか?」

No.7は心配そうに呟く。だが、アイシアは首を横に振った。

「神王は私達と関係のあるものは全て確保せよとのことだ。要するに、この惑星は我々の新たな植民地になるって事だな」

No.7アイシアさんがニヤリと笑みを浮かべる。

僕たちは階段を下りて地下へと進む。すると、そこには大きな扉があった。

「門よ、開け。我らは神の御使いである」

アイシアさんがそう唱えると、門は一人でに開いた。

 

――ゴゴゴゴゴゴ……

 

「この門はこの世界の皇族とアナザイーターにしか開けられない様になっている」

「ア、アイシアさん、そろそろ効果が切れる時間じゃないですか?」

「大丈夫だ、まだ気付かれていない。面倒ごとになる前にさっさと用を済ませるぞ」

アイシアさんの異能力の一つ『無関心化』。二十四時間も触れた人間以外からは注目されず、誰にも無関心状態にさせることが出来る、諜報系の異能力だ。ただし、効果が切れたら二十四時間は再起動できない。

「ここまで良く離れずに着いて来たな。褒めてあげるぞ、No.7」

「あ、ありがとうございます……」

「これが終わったら戦争の準備に取り掛かれ。後の事は任せろ」

「分かりました」

アイシア達は、扉の先へ入って行く。

 

 

だが、そこには『Xコア』など微塵の欠片も無かった。

「どういうことだ!? コアが盗まれているだと!?」

「そんな、どうして……!」

「しまったっ! やられた!さっきの男か!」

先程の男、黒いコートを深く被った長身の男である。そうだ、先程からおかしいと思った。あの男はアイシアの異能力に気付いていた。

「こ、これからどうしますか!?」

「クッソォオオオ!! 追うぞ、No.7!!」

「は、はいっ!」

 

アイシア達は急いで神殿の外に出たが、既に黒いコートの男は居なかった。

「クソッ、見失ったか……」

「そ、そうですね……」

「何者かは知らんが、あの男は間違いなく我々と同じ匂いがした。恐らく、我らの同胞であろう」

「でも、そんな人がどうして……」

「分からん。とにかく、上層部に連絡だ。『Xコア』が盗まれたのだ。私は先程の男の行方を追う。お前は先に戦場へ戻ってろ。良いな」

「は、はい」

No.7は俯きながら返事をした。

―――

――

―――

――――

――――――

―――――――

「いやぁ~、勝った勝った~!」

「大収穫だったな!」

「風呂、入りに行こうぜ!」

 

この世界がアナザイーターに乗っ取られてから一週間後。

あの後、すぐに上層部の人間が大勢やって来て、戦争の後始末を命じられた。

だが、『Xコア』を盗んだとされた男は未だに見つからなかった。

既に上層部には知れ渡っているが、周知には知らされていない。アイシアさんが神王の城に呼ばれていたが、大丈夫であろうか……。

 

「はい、報酬3000万!」

「っしゃー! 今日は大金だぜ!」

「良いなぁ、俺なんか500万だぜ?」

「今日は大収穫だったからなぁ、これでも大サービスしたんだぜ?」

 

僕は居心地が悪そうに、会計に向かう。

「あ、あの……」

「ん? 何だ、またイレギュラーか」

会計窓口のおじさんが嫌そうな顔で此方を睨んで来る。

「ほらよ、お前の報酬は5分の1の……1億2000万だ」

報酬を受け取ると、そそくさと周囲から離れようとする。

「嘘だろ、また億越えかよ……」

「クソッ、イレギュラーの分際で……っ!」

「いつも戦果を横取りしやがって」

「死ねよ、クソがっ」

僕に聞こえない様に、皆が陰口を叩いている。

(そうだよね、しょうがないよね……自分はイレギュラーだから)

僕は心の中で何度もそう言い聞かせていた。

 

 

場所は変わってNo.7が所属する部隊の拠点となるコロニーでは、祝勝会が行われていた。

「ヒャー! 肉だ肉だ!」

「やっぱ、牛肉や豚肉よりも異世界人の肉だよなぁ!」

 異世界の英雄の一人は、今や串に刺されて丸焼きにされてしまっていた。

「ウッメェ!! やっぱり足は最高だぜ!」

「腕も肉質があって美味いぞ! やっぱ一番美味いのは腕だな!」

「頬の肉も柔らかくて美味しいわ!」

こんがりと良い具合に焦がされた彼らの体の一部が次々と食べられて行く。

――ガブッ

――ジュルルル……

――ムシャムシャ……

――ゴクン……

――バキッ

――グチャ……

――ベキィ……

――ゴリ……

――ブチ……

――ズチュ……

(どうしてみんな、あんな美味しそうに食べるんだろうか……)

 

「今日はたんと食べておくれ! 大収穫だから沢山料理を作っちゃうよ!」

料理担当のおばさんが嬉しそうに声を張る。各テーブルには異世界人の肉を使った料理が皿に沢山盛られていた。

 

「あ、あの……」

「ん? どうし……何だ、イレギュラーかい! アンタにやる飯はないよ! あっちへ行きな!!」

「そうじゃなくて、いつものアレを……」

「フンッ、いつもの奴だろ。受け取んな!」

そう言うと、僕はいっぱいに詰められた麻袋を受け取る。

「全く、何で普通の肉や野菜を好むんかねぇ~。イレギュラーの考える事は全く分かんないよ!」

料理担当のおばさんは深いため息をつきながら、僕を無視して再び厨房で仕込みに入った。

「これでまたカレーが作れる」

それでも僕は嬉しかった。ここ最近は戦争続きで食事なんてまともにしていないからだ。あるとしても、それは軽食ぐらいである。

そして、僕は人気のない調理場へと向かう。

 

――ガサガサ……

 

僕は貰ったばかりの麻袋を開ける。すると、中にはじゃがいもやニンジン、たまねぎなどの野菜や豚肉とお米が入っていた。

僕は、早速調理に取り掛かる。

 

――トントン……

 

まずは、豚バラ肉を切り落とす。

 

――ジャァアアー……

 

次に、鍋の中に水を入れて沸騰させる。そこに切った具材を入れていく。暫く煮込むと、灰汁が出てくるので丁寧に取って行く。

 

――コトコト……

 

更に、弱火にして30分ほど煮込んでいく。

 

――ジュー……

 

良い感じに具材に味が染みてきたら、隠し味にカレー粉を入れる。

(本当はもう少し時間が欲しいけど……まぁいいか)

最後に仕上げにバターを溶かして、ルーを作る。

 

――トロッ……

 

うん、我ながら上手く出来たと思う。

後はこれを炊きたてのお米を乗せた器に盛り付ければ完成である。

その時だった。

 

 泣き叫ぶ声が聞こえる。恐らく、異世界人だろう。

 

「いやぁあああああああ!! やめてぇええええええ!!」

「死にたくない、死にたくないよぉおおおお!!」

「誰か、誰か助けてくれぇええええええ!!」

「コラッ、大人しくしろっ!」

 

 僅かに残った生き残りが叫んでいる。

 

「うるせぇな、大人しく出来ねぇのかアレ」

「負けた分際でギャーギャー騒いでんじゃねぇよ」

「これだから異世界人は……」

 

侵略国家もとい侵略世界である『アナザイーター』達は、異世界人の事を露骨に嫌っている。特に負けて生き残った異世界人には容赦がない。

彼らは捕虜となった者を殺すのは当たり前の事であり、酷い時には拷問の末に殺される事だってあった。

 

――ドクン……ッ!

 

心臓が大きく跳ね上がる感覚に襲われた。

 

「うっ……」

 

このお米だって、カレー粉だって、スパイスだって、野菜だってそう。元々は全部、異世界の人々から奪い取ったものだ。

自分の今までして来た事は、とんでもなく恐ろしい事であると今にも思い知らされる。

 

「早く食べよう……」

 

―― あんな光景、見たくない。

 

僕は目を背けながら、カレーライスを一口食べると、それが忘れる様に顔が高揚した。

 

「うん、美味しい……! 我ながら上手く行ったかも!」

 

僕は無邪気な子供の様に、夢中でカレーを食べ進めて行く。

 

――モグモグ……

 

――ゴッキュン!

 

完食したことで久しぶりに満腹感を得る事が出来た。

だが、すぐに兵士がやって来てしまい、すぐに冷める事となってしまう。

 

「おいっ、そこのお前!食事が終わったのならすぐさま就寝しろ!良いな!」

 

「あ、はい!」

 

兵士に言われて僕はそそくさとテントに戻る。

 

 

布団に入ると、僕は昔読んでいた絵本の事を思い出していた。

勇者が魔王を倒し、姫と結ばれるどこにでもある在り来たりな話。僕はそんなお話が大好きだった。

だが、ただ倒しただけではなかった。その勇者は魔王を倒すことは無く、魔王を許したのだ。優しい勇者は、虐げられてきた魔族を守る為に戦って来た魔王の気持ちを誰よりも理解していたからだ。

結末は何処にでもあるハッピーエンドだった。勇者と魔王が和解した事で、全ての種族が長く平和な時代を築き上げていた。

でも、お話の世界と現実の世界は違う。

 

(神様、僕はどうやら正義のヒーローにはなれそうにないです……)

 

異世界と自由に行き来出来るようになってから五年の月日が経つ。

自分も12歳のまま成長が止まっている。いや、変化していないと言うのが正しいだろう。

自分のやっている事は最低な事だ。人々を殺して、殺して、殺しまくって、蝕んで、蝕んで、異世界を蝕んでいく……。

『アナザイーター』とはそういう生き物だ。そもそも、神王グリフォンの信者である限り、アナザイーターはこれからも異世界を侵略し続けるであろう。

(明日また頑張ろう)

 

 

――― 虹水晶の城

アナザイーターの頂点にして神王グリフォンが住むとされている城である。

 

「それで、『Xコア』は何者かに盗まれたと言うのか」

「はっ、我々が潜入した頃には既に……」

「何と言う事か! 貴様を責任者として送り出したと言うのに……!」

 

神王の側近である太った大臣は、この失態に機嫌を損ねていた。

 

「これでは神王様もお怒りどころではないぞ! どう責任を取ると言うのだ!」

「分かっております。この失態、何なりと処罰の方を……」

アイシアはカーテンの向こう側にある玉座に佇んでいる神王に自らの処罰を告げる。

「良かろう、その『コア』を盗んだとされる男は放って置け」

「グ、グリフォン王! よろしいのですか!?」

「構わん。もとより『Xコア』は、元々は我のものだ。居場所など疾うに把握出来る」

「グリフォン王様の予知!?それでは、『Xコア』の居所は既に知っていると!?」

「当たり前である! 我らがグリフォン王の予知を疑わしいとは言わせんぞ! グリフォン王様の予知が当たる確率は100%なのである!」

「我の中の声が告げているのだ、『神託が来る』と…」

「まさか、伝説の魔法使い!?」

「あぁ、我の予言の中に現れた8人の魔法使い。既に5人が覚醒している。そして、また一人が目覚めようとしている」

「その者の名は!?」

「………既にお前と会っている」

 

神王はアイシアにそう答えると、静かに笑い出した。

まるで何かが可笑しくて仕方がないとでも言うように。





・異能力者
 異星の神に選ばれた者。元々強かった者は更に強く、戦う力を持たない者は戦う者へと変化する。主に漫画の主人公やヒロイン、主要キャラクター、敵キャラクターなどの英雄に該当するキャラクター達。

・一般人
 要するに漫画・アニメキャラに出てくる戦わないサブキャラやモブキャラ。英雄に該当しないキャラクター達。戦う力は持たないが、グリフォン王の影響下を受けている。

・アナザイーター
 世界最強の霊長類と亜種族が済む場所とされている異世界。『吸血鬼の住まう惑星』とも言われている。元々は貧しく弱い世界であったが、他の異世界から『奪う』事によって強くなり、惑星も繫栄し豊かになった。現在は神聖地と四つの大陸が統治している。選ばれた異能力者育成の為の士官学校がある。全種族が異世界人を喰らうカニバリズムの習慣があり、食べた異世界人の知識やスペックを得ている。特に血液はアナザイーターの戦闘能力を増大に上げる効果があるらしく、本来ならば王族にしか口に出来ない。同じアナザイーターの肉はマズいと感じるらしいので共喰いは起きない。
 ちなみに、人肉を使わない料理に限れば、異世界美食ランキングでは、数ある異世界の中で堂々の第二位を獲得している。ちなみに、アナザイーター人類の一日の平均食事量は100kg程度と、重度の健啖家。
 序列は王族→特級貴族(上級貴族よりも更に上位の貴族)→上級貴族(王都周辺で暮らせる)→下級貴族(決められた領地で暮らせる)→騎士(主に貴族の周辺で暮らせる)→平民→下民(王都や領地に住めず周辺の村で暮らす)→イレギュラー&異世界人の順番。
 下民に結婚の概念はなく、イレギュラーの女性に至っては子供を産む機械と化している。

・四大陸
 妖精を中心に様々な亜種族が集う自然豊かな赤の大陸、機械技術と和文化が融合した武力国家が集う青の大陸、魔法と芸術文化が盛んな国家が同盟を結んだ白の大陸、氷雪に覆われ医療技術と科学技術が進歩した黒の大陸。それぞれ、神域を守る王によって統治されている。
 四大陸同士はグリフォン統治下なので諍いや戦争こそしないが、仲は極めて悪い。特に自己中心的で傲慢な赤の大陸は、他の大陸から酷く嫌われている。
 そして、四つの大陸の間にある五番目の大陸こそが統一王『グリフォン』が治める聖地セフィロトである。

・赤の大陸
 『妖精の大陸』の異名を持つ。四大陸の中で亜種族の数が最も多い。砂漠や渓谷が多く、火山や密林なども存在している。中華風やオリエンタルな建物が立ち並ぶ国家が多く、赤の大陸の住民からは観光地や避暑地としても知られている。
 他の大陸とは相容れず、ある異世界人曰く「四大陸の中で最も性格が終わっている」とのこと。その悪評以上に、性格は四大陸の中で最も残酷にして最悪。
 四大陸の中では美食のみならず珍味も好む傾向があり、他の大陸曰く「赤の大陸の種族共は世界中の美味いものを食べ過ぎたからだ」と皮肉られている。中華料理とエスニック料理が人気。激辛好きが多く、刺激を求める挑戦者が多数。

・青の大陸
 『武力の大陸』の異名を持つ。四大陸の中で亜種族の数が最も少ないが、ハーフの数は多い。和文化と機械技術が融合したスチームパンク風な建物が多い。中心国家であるエド皇国を始め、執行隊本部があるメイジ帝国、貴族などの富裕層が住まうヘイアン王国、電気街と工業地帯が立ち並ぶショーワ王国、武力で権力を底上げしたセンゴク帝国、宗教国家として知られるナラ王国、レトロな雰囲気の繁華街が立ち並ぶタイショウ王国など、その他にも様々な国家が揃っている。
 赤の大陸と対立することが多い黒の大陸の宥め役となっているが、実は内心では赤の大陸を最も憎んでいる者が圧倒的に多い。
 四大陸の中では最も美食に力を入れており、繊細な和食文化が根強い人気を誇っている。機械技術のみならず農業も盛んで、新鮮な野菜や果物を他大陸にも輸出している。喫茶店やカフェの数も多く、タイショウ王国やメイジ帝国ではアニメ文化やメイド喫茶が流行っており、白の大陸との共同でコスプレショーも開催された事もあった。

・白の大陸
 『美しき大陸』の異名を持つ。西洋風の建物と美しい光景や街並みが美の大陸。種族・性別問わず、優れた容姿をしたアナザイーターの中でも、ひときわ美しい種族達が住んでいる。特に白の大陸の女性は美しさや可愛らしさから非常に人気が高く、他の大陸の種族からも愛されているなど、地位に高い職に就くこともある。性格も社交的な種族が多いが、他の大陸からは「周囲を見下しているのが気に喰わない」「信用出来ない」と言う理由から悪く取られてしまうこともある。
 赤の大陸の住民を世界で“心が最も醜い大陸”と呼んで蔑んでおり、酷く見下し嫌っている。
 芸術文化が盛んで、ファッション文化の流行地としても知られている。青の大陸ほどではないが美食や農業に対するこだわりも非常に強い。スイーツ文化としても知られており、スイーツの生産量は四大陸の中でも一番である。

・黒の大陸
 『科学の大陸』の異名を持つ。
 赤の大陸の種族と真っ向から対立しており、表向きは敵対関係。青の大陸や白の大陸ともお世辞にも仲が良いとは言えないが、彼らとはFTFの開発で関わった事もあり、互いの開発力だけは素直に認めている。
 四大陸の中ではファストフードとデカ盛料理が流行っている。

・士官学校
 11歳~28歳までが入れる2年制の士官学校が王都に在り、学園周辺は高い壁に囲まれている程、厳しい規律によって守られている。それぞれ能力別に四つの寮に分けられており、赤組、青組、白組、黒組と大陸別になっている。入学出来るのは平民まで。

・FTF(フェアリーテール・フレーム)
 四大陸の合同開発によって製造された機動兵器。機体の中に内蔵されている魔力で動いており、その機動力、汎用性、高い攻撃力などの凄まじい戦闘能力を有している。パイロットの魔力数値でその機能精度が大幅に変わる。全大陸で実用化されており、中でも高性能な量産機である『ウィザード』シリーズは大人気を誇る。

〇アナザイーターについて
・男女共通
 男女問わず非常に美しい容貌をしている。
「通常種族の外見と精神の皮を被った化け物」と呼ばれている。実際、その通りである。
異世界人の肉を積極的に食すカニバリズムと言う性質を持つ。異世界人を家畜としか認識しておらず、過剰なまでに、そして蛇蝎の如く、見下し露骨に忌み嫌っている。
 だが、それらを除けば普通の人間らしい感性であり、性格の異常なまでの悪さと異世界人の事を蛇蝎の如く忌み嫌っている所を除けば普通の人間である。
 平均寿命300歳。30歳を過ぎると年を取らなくなり、250歳を過ぎると再び年を取るようになる。
 異常なまでの健啖家。一日の食事量は100kgである。また、料理が得意な者が非常に多い。
 意外にもアナザイーター貴族はテーブルマナーや礼儀作法がなっており、下手な貴族よりも上品である。
 アナザイーター全てが両性愛者。自分好みの者なら男女問わず犯しまくる。特に男性は性欲に対して異常なまでに貪欲で、男色も積極的に行う。
・男性について
全てのアナザイーター男性が毛色の違う美男子・美男。老若男女問わず魅了させる。
二十歳を過ぎると次第に殆どが筋骨隆々で彫刻の様な美しいムキムキマッチョ体型になる。
アナザイーターの成人男性のペニスは勃起時のサイズで平均20cm以上で、禍々しい巨根を持ち合わせている。
十三を過ぎると筋力量が大幅に増え、女性を遥かに超える性欲となり、繁殖率が高くなる。
・女性について
全てのアナザイーター女性が毛色の違う美少女・美女。老若男女問わず魅了させる。
二十歳を過ぎると殆どが胸がDカップ以上に成長しスタイル抜群なボディになる。
アナザイーターの子宮はとても活発的で出生率が高く、繁栄力も非常に良い。その為、出生率が99.9%と限りなく高い。
性欲は高いが、男性に比べると大人しめである。アナザイーター女性は性欲に関しては慎ましいのだ。

・イレギュラー
 人肉が食べらず迫害視されるアナザイーターの事を指す。当然ながら、戦闘能力は異世界の一般人と同程度。異世界人を喰うことで強くなり、国王に貢献する事に反目することから、世界中のアナザイーターから怒りと侮蔑の念を抱かれ差別の対象にされている。セブンの住む赤の大陸にある火の国では徹底的な差別を強いられてきた。数は非常に少なく、集落に住むか傭兵として酷使されるかの道しかないが、十年前に起きた事件で集落が滅ぼされてしまい、集落に住む人々は皆殺しにされ、生き残った人々も世界中に散らばってしまう。
 規格外に善良な心の持ち主達で、異世界人に対する悪感情は一切抱いていない人格者の集い。

・エレメンタラー
 イレギュラーの中でも更に希少種で特殊な個体。異世界人の肉を喰わなくても成長する特別な存在。その戦闘能力や潜在能力は並のアナザイーターを遥かに超える規格外の強さを誇る。あまりにも希少な為に、アナザイーターからもその存在をあまり認知されていない。

・オメガ/アルファ
 アナザイーターの中でも希少種である男性。オメガは男性器の代わりに女性器を持つ男性で妊娠する事が出来る。アルファはその逆の女性である。アナザイーターの中で一万人に一人の確率で産まれてくる突然変異の稀少種。人間・亜人問わず存在している。オメガが産まれてくる場合が多く、アルファは更に少ない。イレギュラーは存在していない。
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