自分を悪役令息と勘違いしたままロマサガ3で駆け抜ける   作:オリーブ冷麺

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男衆だけの歓談と湯上がり姫君

「あの二人の事について話したい」

 

「二人、とは?」

 

 分かっていてはぐらかしているのか、素でどの二人の事か理解していないのかは分からない。

 恐らくは後者だろうから、ハッキリと言う。

 

「モニカ様以外の二人の女性だ。

私が聖女と呼んだ赤味がかった茶髪の女性と、角度によっては緑に見えなくもない茶髪の女性だよ」

 

 ここまで言うと、ツンツン頭な主人公君は明確に警戒心を露わにしてきた。

 

「二人をどうするつもりだ」

 

「どうするつもり、か。

敢えて言うのなら何もしたくない。

神王教徒もこの村にまでは、未だ手を伸ばしていない。

だからこそあの二人には、目立つ所へは行かず、この村で過ごして貰いたい。

その護衛を君にお願いしたはずだが」

 

 幼馴染枠の村一番の美人が、いきなりやって来た貴族に見初められるという事への警戒心だろう。

 世の中の事実としては、女性本人や女性の家族の側が貴族に見初められた機会を逃さない様に、それまでの平民男性との関わりを断って距離を取る場合が殆どだ。

 しかし女性側はそれを言わないから、貴族が悪役にされた話ばかりが民衆には広まってしまう。

 貴族男性だって、貴族女性相手の方が良いに決まっているが、平民女性からの性的なアプローチに負けてしまう事がある。

 

 本来、功績を上げ続け、同格の貴族と競い続けなければ存続出来ない貴族の遺伝子と、ただ生きて増える事を推奨されている平民の遺伝子には、明確な平均値の差がある。

 平民の方が母数が多い為に、稀に貴族の平均を超える天才は生まれるが、平均値で見れば貴族の方が優秀だ。

 だからこそ、子の為にも貴族同士の婚姻は平民との婚姻よりも推奨されるが、それは貴族側の話で、平民女性からすれば人生一発逆転のチャンス故に、貴族男性には媚びる者が多い。

 そして上手くいった場合に、平民女性側の両親が急に降って湧いた立場に調子に乗って問題を起こすのだ。

 

 故に、貴族男性にも媚びそうにないヒロインの様な女性が、貴公子達には新鮮に映るというのが、乙女ゲーでよくあるロジックだ。

 

「エレンとサラに手を出すつもりじゃないのか?」

 

「モニカ様の護衛をしながらミカエル様の所へ向かう最中に、村娘に手を出す男と思われたのなら心外だ」

 

 立ち寄った村で性欲を抑え切れず、無秩序に性行為を行うリスクは私には背負えない。

 先ずは娯楽のない村で数少ない楽しみとして、そういった行為は、厳格に貞操が管理される貴族女性と比べて遥かに多いだろう。

 当然性病リスクもある。

 そして何より、実際にやってしまったら、平民女性に諸子の認知を求められた時、認めるのも消すのも厄介だからだ。

 

「そうか、悪かったよ」

 

「理解してくれたのなら、問題ない」

 

 

 明らかにホッとした様子だった。

 このまま聖女には、幼馴染ルートで終わって欲しいものだ。

 

「ところで、聞いていいか?」

 

「答えられる範囲なら」

 

 すると少しミスター主人公君はニヤニヤとし始めた。

 

「あのお姫様とはどういう関係なんだ?」

 

 周囲に目線だけ走らせると、多かれ少なかれ似たような好奇の視線を此方に向けていた。

 

「君主の妹君であり、臨時で護衛をしている」

 

 本当にそれだけだ。

 昔は遊んだ事もあったが、貴重な外交カードである君主の美人な妹の周りに、男の影があるのは良くない。

 それを理解してからずっと距離は作っている。

 

「本当に?」

 

 仮に違ったとしても、それは答えられない範囲となるので、結局は同じ解答をする他はない。

 実際に違わないから、問題も無いが。

 それともこの平民の男は、モニカ様と逆玉の輿を狙っているのだろうか?

 だとすれば身分を考えるように躾けなければならない。

 そうしなくて良いように、平民(野犬)にはずっと聖女のスカートに噛み付いていて貰わなくては。

 

「本当だと言って信じて貰えないのなら、次に何と言えばいい」

 

「そうか。分かった」

 

 もしこの世界が乙女ゲーではなく、この男を中心とした冒険譚であれば、立身出世したこの男がモニカ様と結婚する物語なのだろう。

 世界を救った英雄というネームバリューを、ロアーヌに組み込むというなれば、私は諸手を挙げて賛同する。

 しかし、この世界は乙女ゲーだ。

 

 主人公が何人もいるなんてあり得ないし、間違いなく聖女が主人公だろう。

 ならばこそ、モニカ様の婚姻はミカエル様に任せて、ミカエル様の御相手には姉さんを推して、聖女にはこの男を宛てがうのが最善と考える。

 

 

「そういえば改めて名前を確認したい。私はウェフエル・ラウラン。

ミカエル様に忠誠を誓うしがない貴族だ」

 

 何時までも褐色とかインテリとか主人公とか呼ぶ訳にもいかないし、何よりミカエル様に名前も知らない相手を紹介する訳にはいかない。

 

「俺はユリアン・ノール」

 

「俺…私はトーマス・ベント」

 

「俺はハリードとでもトルネードとでも呼んでくれていい」

 

「私の事は店長でもマスターでも良いです」

 

 ハリードは恐らく偽名だろうが、名前等は所詮ソートする為の記号に過ぎない。

 本名か偽名かなんて、犯罪者を暴き出す時にしか意味はない。

 店長は、名前を隠す必要があるキャラクターには、ビジュアルからして思えないから、名無しのモブキャラクターなのかもしれない。

 実はツヴァイクの密偵()だとしたら、大したものだ。

 その時は此方に引き込みたい。

 

 

 

 さて、此処からどうやって聖女の事を聞き出すかだ。

 あまり聖女の事を聞き過ぎると、ユリアンにやっぱり女性として狙っていると勘違いされる。

 ここは、彼等の交友関係を含めたエピソードから、関係性を把握するべきだろう。

 

 後でモニカ様に、風呂で聖女とどんな会話をしたか聞いてみるとしよう。

 こちらもそこはかとなく嫌な予感がするが、背に腹は代えられない。

 さて、モニカ様が風呂から上がるまで男達と話すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話していて分かった事が

 ユリアンとトーマスとエレン(聖女)とサラ(エレンの妹との事だが、髪色が微妙に違うのは片親が違うとかそういった過去持ちか?)は幼馴染との事で、やはりユリアンはエレンが好きらしい。

 ユリアンはエレンとはよく模擬戦として、(格闘的な意味で)肉体的接触があるのだと聞いた。

 生殺しと言っても良いのかもしれない。

 ハリードは偶々此処に訪れた旅人ということだった。

 

 そうなるとトーマスとサラがペアになるのだろうか?

 田舎において、余った者が夫婦にならない事はあまりない。

 周囲のお節介がとにかく強いのが、田舎の特色だからだ。

 それに二人共容姿は整っているから、余り者でもないだろう。

 トーマスの会話からは、サラへとそんな雰囲気は見えて来なかったが、サラの方は分からない。

 勿論、トーマスが上手く隠している可能性もある。

 そこはインテリ鬼畜眼鏡だからあり得る。

 

 だがサラには残念な事に、この世界は乙女ゲーだ。

 エレンがルートに乗れば、お固いインテリ眼鏡も、女経験が無いチョロ男として攻略されてしまう。

 そういった意味でも、ユリアンの動きは重要だ。

 別に相手はハリードでも構わないが、その時はユリアンが枕を濡らすだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ウェフエル、お待たせしました。

貴方もお風呂を借りたらどうですか?」

 

 振り向くと我が君の妹、モニカ様がいた。

 湯上がりの姿だった。

 褐色枠は大体極端に好色で絶倫だし、鬼畜眼鏡やイケイケ主人公も性欲が強い。

 あまり見せておくのは良くないだろう。

 ここは速やかにモニカ様を寝室へと送るべきだ。

 私は席を立ち、男性陣から離れてモニカ様の方へと向かった。

 

 

「モニカ様。

朝になったら嵐が明け次第、休憩なく進みます。

先程店主から二階に寝室があると聞きました。

女性陣でお休み下さい。

私は一階で男性陣と仮眠を取ります」

 

 私がモニカ様の色気に反応してしまえば、他の男の色欲も許容する事になる故に、一切反応せずに寝室まで送る事にした。

 ついでに男性陣は一階で寝ると決めた。

 私がたった今、完全に決定した。

 二階に行かれてモニカ様に手を出す男がいては困るので、階段近くの場所は私が寝る場所とする。

 

 

 

 モニカ様は風呂上がりの赤面したままの顔を上げて、小声で私に言った。

 女性陣には聞こえているか聞こえていないか、といった声量だ。

 

「…私のナイト様は一緒に来ませんか?」

 

「誓って何もしませんが、それでもその様な可能性があったと思われる行為をすれば、ミカエル様と姉さんに殺されます」

 

 私とモニカ様はもう幼馴染としては交わらない。

 私などが(・・・・)モニカ様と交わってはならない。

 私の様な存在が(・・・・・・・)モニカ様と交わっては、聖王と共に戦ったフェルディナントの光を涜す事となる。

 私達は、ユリアンとエレンとは違うのだ。

 そうでしょう? モニカ様。

 

 

「…はぁー」

「…はぁ」

 

 聖女は思いっきり溜息をついた。

 聖女の妹も小さく溜息をついた。

 

 凄く馬鹿にされているのは、よーく分かった。

 期待外れだったのだろう。

 

 もし、私がモニカ様と同室になれば、他の女性二人は別の部屋になるだろう。

 もしかしてそれが狙いだったのか?

 乙女ゲーの主人公と妹だから、筋肉質な旅人の褐色外国人と一夜を愉しむ…なんて事は無いだろう。

 微妙に現実的だが、それは寧ろ男性向けのゲームだ。

 

 此処は乙女ゲーなので、もしかするとこの嵐の夜の男性との会話で親密度が変化して、ルートに影響を与えるみたいな話で収まるはずだ。

 

 寧ろ男性向けゲームなら、色白なモニカ様のビジュアルこそ褐色筋肉マンに蹂躙されるのが合うのだろうが、ハリードが何処ぞの国の王族でも無い限り、ロアーヌ最強クラスの外交カードを落とす真似は許さない。

 

 それはこの夜もそうだし、ミカエル様の所へ向かう道中もそうだ。

 

「エレン、サラ。もう寝ましょう」

 

 モニカ様は踵を返すと、二階へと上がっていった。

 モニカ様は聖女と妹と名で呼び合う程度には仲良くなったか。

 明日以降、聖女の話をモニカ様に聞いていく事にしよう。

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