自分を悪役令息と勘違いしたままロマサガ3で駆け抜ける   作:オリーブ冷麺

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乙女ゲー的な悪役令息(勘違い)
出生が悪役(ガチ)


天才ゲイ術家ってのは同性愛者が多い

「あなた、何処か伯爵に似てるわね。少しお時間頂けるかしら?」

 

 グラスを傾ける女性に柔らかな笑顔を浮かべつつ、内心これで数度目の誘いだったかを数えてみる。

 前提として女性の誘いに乗るつもりはない。

 だが、届かないレオニード伯爵の代わりで私で妥協する、みたいな態度の相手は流石に私のプライドを傷付ける。

 女性自身が美人かブスかと聞かれれば、普通に美人だろう。

 しかし、雑魚モテするタイプの美人だろう。

 好きになる事はない客の非モテ男性(収入源)にはモテるが、好きになったホストには店の中でしか逢ってもらえない(収入源としか見られていない)夜の女性といえば、それ程外れていないのだろうと感じた。

 恋愛カースト底辺(雑魚)にしかモテないとしても、自分にその雑魚と付き合いたい気持ちが欠片も無ければ、己にとってはその好意は完全な無駄モテなのだ。

 

 娼婦や飲み屋の女なら金になるだけ無駄ではないが、そうでない女性からすれば、望ましい相手と子孫を残すという生物としての目的から完全に外れており、ゴミ男からの好意など、不必要な存在と言ってさえ良いだろう。

 相手からの無駄なアピールに時間を割かれるという意味では、有害と言っても良いかもしれない。

 格下の相手が格上の此方を好きになっても、格上の此方は格下の相手を好きになる理由も必要性もないからだ。

 

 そしてそれは、大きくストライクゾーンが変わるとはいえ、男女を逆にしても言える事だ。

 勿論、モテる事そのものは気持ち良いが、その他大勢からの好意は、踏み込ませない範囲内に限る。

 それ以上は、やはり邪魔になるからだ。

 

 正直に言ってしまえば、前世で大学生時代にバイトとしてホストをしていた経験もあるし、地元のネームバリューや肩書や特異性もあって私よりモテている、即ち『CLUBポドールイのNo.1』であるレオニード伯爵から、No.1の座を奪ってやりたくはある。

 私は人より名誉欲が強いから、そのように考えてしまう。

 

 

 だがそれは出来ない。

 私はミカエル様の影武者や名代を行う立場故に、他の支配者の庭を個人的な感情で荒すことは出来ない。

 

 それに────────

 

「ウェフエル?

そうですかそうなんですね。

…もう、私退屈ですわ。

従者が相手をしてくれないので、どなたかお話してくださる方でも探そうかしら」

 

 私のお姫様が、私が女性に言い寄られる度に不機嫌になる。

 私は伯爵の代替品としか見られていないと言っても、それは通じないだろう。

 だからといって冗談だとしてもモニカ様が、有象無象の男に隙を見せて、万が一の事があっては困る。

 モニカ様は少なくともツヴァイク以上の国の国母となるべき、平和裏の前提の中ではロアーヌ最大の外交カードだ。

 何もなかったとしても、何かあったと思われるだけで傷が付く。

 そんなことになれば、姉さんにもミカエル様にも殺される。

 

 因みに無関係な話だが、同程度の資産や知能を持つ場合、遺伝子レベルで美形が多い民族は婚姻率が高く、遺伝子レベルで美形が少ない民族は婚姻率が低い。

 これは一定以上の容姿の相手が豊富にいて、自分も相手に好まれるだけの容姿があれば、容易に婚姻が出来て、その逆であれば己のストライクゾーンの相手が少なく、相手のストライクゾーンにも含まれない事が多くなるかららしいが、遺伝というどうしようもない事実と、民族毎にスペックが異なるという事実から、以前の世界では言ってはいけない事実とされていた。

 

 

 

 

 

 

 視界の端で、誰も聞いていない歌を歌う男がいた。

 

 男にしては甲高いが、女性程高くも滑らかでも艶やかでもない声で歌い終わった、女には全く相手にされていない男に拍手するモニカ様。

 美人には相手にされなかったのに、極上の美人に優しくされたら、こういった手合いは分不相応な期待(勘違い)をひてしまう。

 

 私は手だけで目の前の女性に断ると、モニカ様の手を取り歌う事にした。

 昔モニカ様と一緒に歌った歌だ。

 そのままモニカ様のもう片方の手も取り、回ることにした。

 フォークダンスというには上品だが、ワルツと呼ぶには作法を守らない流れの舞を始めた。

 

 モニカ様を迷惑にならない程度に引き付けると、周囲の男達を視線で牽制する。

 お前達に望みはないと、視線だけで心を折る。

 元より非モテ男共は、深層意識でイケメンには勝てないと感じているものだ。

 それを表面化させるだけでケリは付く。

 

 

 踊り終わる頃には、イケメンに勝てる理由など無いと、一部を除き、無駄な期待を抱いた男達の心をしっかりと圧し折れたのを感じた。

 勿論、それは視界の端で確認した。

 モニカ様と踊っているのに、その最中に余所見をするなどという不敬を行う訳にはいかない。

 

 少々燥いだステップだった為だろう。

 モニカ様が上気している。

 私の様に日夜鍛えている身では無い事による体力差と、男達に見せ付ける為に密着させすぎた気恥ずかしさによるものだと推察する。

 

 

 店内からの拍手を受けて、私は手で軽く周囲に礼をした。

 あわよくばとモニカ様に期待していた男達や、私を狙っていた女達の心は折れているようで、何ともまあ下手な貼り付け笑顔で拍手している。

 宿のバーにいる女慣れしていそうな店員から、喉が渇いただろうと、二人分の酒を奢られた。

 モニカ様の分はノンアルコールで頼むつもりだったが、テンションが上がったのか、モニカ様も私と同じお酒を注文した。

 

 乾杯をした私達に近付く男がいた。

 美形と呼べる顔の男…いや女かもしれない。

 

「二人共素敵な声とお顔で、実に歌劇の様でした。

私の名前はハオ……いえ、どうか詩人とお呼び下さい」

 

 ハオ…?

 転生しまくるシャーマンか何かだろうか?

 中性的な声で、それだけでは性別は分からなかったが、取り敢えず仮に男としておこう。

 本来職業名である詩人と呼べというのは、己が詩人オブ詩人という自負なのか、それとも本名を語りたくないのかだろう。

 

「貴方…本当に良いですね。

反転の宿命…。今回は本当に面白そうです。

破滅か栄光か、その両方なのか。

その物語を特等席で見せて頂きたい」

 

 詩人というからには、相当の教養があるのだろうが、それはそうとしても、まるで全知の上位者かの様な難解で意味深な言葉を重ねるのが、詩人という職業だから、それら全ての意味を考える方が無駄だ。

 本人もそれっぽい事を言っているだけで、意味を紡いでいる訳でもないのだろうから。

 

「闇の血は惹かれ合うのか、それとも…。

貴方という存在は、本当に興味深い」

 

 私の目を覗き込む様な視線…。

 こいつ、もしかしてホモ枠キャラだろうか?

 芸術家にはホモは多い。

 成る程…、距離を取らなければ。

 本能的にこの男の気配に拒否感が湧いてくるのは、私のホモ回避センサーのせいだろう。

 

「貴方について行かせて下さい。

いえ、勝手について行きましょう」

 

 …もしかして、ホモにロックオンされたのだろうか。

 少し…いや、かなり気持ち悪くなった。

 

 

 詩人の相手を無理矢理切り上げて、姫君を寝かし付ける事にした。

 近所に大きな飲み屋もあり、この宿にも飲み場が遅くまで開けてある故に、この宿には酔っ払いも多いだろうと考えた私は、敢えてモニカ様を一番奥の部屋にして、私はその隣の部屋にすると周囲に聴こえる様に頼んだ。

 モニカ様の部屋へ向かう者は、必ず私の部屋の前を通る。

 不埒な男がモニカ様の部屋に向かう事は許さない。

 

 

 モニカ様を部屋に送った後、私はベッドには入らず、扉の裏側に座って仮眠することにした。

 

 

 それから直ぐだった。

 廊下に足音が響いて来たのは。

 ドアの向こうを通り過ぎた瞬間に、私は外に出た。

 醜い酔っ払いの男がいた。

 

「此処から先にお前の部屋は無い」

 

 今なら勘違いで部屋を間違えた事にしてやるという温情をかけてやった。

 本来なら、平民如きがモニカ様に夜這いをしようと企んだのなら、生まれて来た意味を自己否定させながら殺すところだ。

 

 

「んなの知ってるわ。社会のレールから外れた者の、復帰を認めない国なんて最悪だ。俺達の税金で温々生きて来た女に責任を取ってもらうんだよ。どけっ」

 

 こいつはロアーヌ人、若しくは追放された元ロアーヌ人だったか。

 で、ありながらこの不敬の極み。

 …どうやら生かす必要の無い人間だったようだ。

 ロアーヌの至宝を穢さんとする男に、知性を残したまま理性が吹き飛ぶ。

 恐らく、今耳を触るとハッキリと形が確認出来るに違い無い。

 威圧と精神操作の為に、魔力を乗せて言葉を紡ぐ。

 

「ロアーヌは狭い平均台から落ちずに渡れとは言っていない。十分な広さがある橋から身を乗り出して落ちる連中を態々拾い上げる意味があるのかという話だ。

それに、お前達が払う以上に、お前達を態々生かしてやる為の税金が使われている。

それに、だ。

仮にお前達に千万オーラムを渡した所で何になる?

それを元手に、資産を数倍に増やす商才があるのか?

買った本で学んで、学者や官僚にでもなれるのか?

武器さえ整えれば、最強の戦士になれるのか?

高級な服装や化粧で、絶世の美人になれるのか?

違うだろう?

…違うと分かっているのだろう?

大丈夫だ、安心していい。

皆気が付いている事だ。

お前だけではなく、誰もがお前にそんな素質があるとは思っていない。

…はっきり言おうか。

成功するために必要とされる素質は、お前達には生来ない。

お前達に千万オーラムを渡したところで、精々生活に不自由が無くなるだけだ。

それなら、高い素質がある者を育てる為に使われる千万オーラムの方が価値がある」

 

 精神を抉る言葉を紡いでも、相手には反論する気力さえ湧かせない。

 魔力を込めた言葉により、本能的に格差を思い知らせたからだ。

 例えるなら、不満があってもカエルがヘビに反論出来るのか?ということだ。

 勿論、窮鼠猫を噛むとも言うが、虫ケラに一矢報いられるほど私は弱くない。

 

 彼等の様な低スペックを生かしてあげる事(福祉)こそ、彼等が気が付こうとしない税金の無駄遣いの本質だ。

 完全に福祉をゼロにすれば、税金は大きく引き下げられる。

 福祉は弱者の為だけにある。

 弱者が犯罪者になるというのなら、本来の最適解は、速やかに残虐に、隔絶した力の差で抹殺することだ。

 彼等が犯罪者に零落れない様に、治安の為に税金を使うよりも、犯罪者を全て抹殺した方が、短期的にも長期的にも、抑止としても有効だ。

 ロアーヌにはその選択肢がある。

 私にはそれが出来る。

 ミカエル様の許可さえあれば、私は何時でも執行する。

 それがロアーヌの利益となるのなら、その働きに喜びすら感じるだろう。

 だというのに殺さずに生かしてあげているミカエル様は、何と慈悲深いのだろうか…!!

 恐怖で縛るよりも良い方法があるという者もいるが、恐怖で縛ってやらねばならないような、低品質な民も存在する。

 叩いて躾けなければならない底辺はいるものだ。

 

 しかし、叩いても躾けられない底辺の底を抜けた者達には、最早叩き殺す他はない。

 

 私は昔から、視線だけで人を苦しめる事が出来た。

 力が制御出来なかった頃は、姉さんには本当に迷惑をかけた。

 

 姉さんは自身が傷付いても、血の繋がらない化け物みたいな…いや、真正の化け物を抱き締めてくれた。

 

 化け物に無駄な愛情を注ぐ愚かな人間の娘が苦痛に歪む姿が見たかったから傷付けたくなんて無かったから拒絶したのに、それでも姉さんは私を慈しんでくれた。

 もし、ラウラン家の為に姉さんが私を殺すのなら、私はそれを喜んで受け容れよう。

 

 だが、今私の前にいるのは、無価値な塵だ。

 何の苛責(愉しみ)もなく行える。

 

 死が怖いから生きているだけの人間に、死の恐怖を忘れさせて、死の優しさに溺れる様に視線で精神面を崩すか、姉さんにやってしまった様に、視線で裂傷を発生させるか。

 視線で締め上げても良い。

 そうだ、全て行おう。

 何れも生きる力を傷付ける、局地的かつ一時的な幻影体(・・・)による攻撃で、地相が悪しく歪んでしまうが、虫ケラ一匹消す程度なら、大した影響はない。

 さあ、死を讃えよ──────おや、邪魔が入ったか。

 

 

「何かありましたか?」

 

 こんな時間に、先程の詩人が通り掛かるとは。

 幸いにして、私は男に対して視線しか向けていない。

 神でもない人間では、私が何をしようとしたのかも分からないだろう。

 

「この男が酔い過ぎて、誤って不敬にもモニカ様の部屋に入ろうとしたから注意しただけだ」

 

 その男は既に痛みと恐怖で気絶している。

 後遺症は残ったかもしれないが、後遺症が無くても元より詰んだ人生だろう。

 

「そうですか。お姫様を大切にされているんですね」

 

「ああ」

 我が主君の妹君だ。

 当然だろう。

 

 

「面白い…!!

それこそきっと神々であっても万能ではなく、だからこそ人間の可能性は面白い。

魔王が世界を傷付け、聖王が世界を護った。

ただの人間が神にも匹敵する、いや神をも超える偉業を成し遂げた。

四魔貴族でさえ、あの二人を差し置いて主役にはなれなかった。

人間の可能性は素晴らしい。

もっともっと見ていたい。

…ところで何をもって人間と呼ぶのでしょうか?」

 

「さあ、私は学者ではない」

 

 言葉遊びに付き合うつもりはない。

 もし答えるとすれば、ロアーヌにとって価値がある者が人間、というのが私の見解だ。

 

「では、私と貴方は人間ですか?」

 

「下らない質問だ」

 

 

 肯定も否定もしない。

 私がロアーヌの役に立てなくなった時、私は己を人間とは呼ばないからだ。

 私がロアーヌの敵になれば、その価値はマイナスでしかない。

 勿論、その様なことは未来永劫ありえないが。

 

「では吸血鬼は? 人型の妖精種は?

魔王と闇の聖女の落し胤は?

 

 詩人に興味が無かったせいもあったが、最後の方は聴き取れなかった。

 音は拾えた筈なのに、脳が記憶していない。

 …疲れだろうか。

 流石にこれは良くないな。

 これがモニカ様に危険が迫る時であったならば、絶死に値するだろう。

 

「人間の定義などといった、定番の言葉遊びに用はない。

そんな事よりも、何をすればロアーヌの役に立てるかを考えろ」

 

「では、あのお姫様を護る運命を持った英雄を探しましょうか?」

 

 ふと、私の頭の中に緑髪のミスター主人公君が過ぎったが、頭を振ると共に意識を整理した。

 

「それは私の役目だ。

私が主君から命じられた仕事だ」

 

 私の忠義を執行することが、私の存在理由だ。

 モニカ様が然るべき御相手と結ばれるその日まで、清らかに健やかにあらされるよう、ラウラン家は尽くすべきなのだから。

 

 少し語気が強くなったが、目の前の男は怖気付く事なく、笑顔を浮かべていた。

 

「…この世界に見付けられて良かった。

貴方という存在は…、本当に、本当に興味深いだ」

 

 

 私には、この推定ホモ男に、とんでもなく得体の知れない気持ち悪さを感じた。




レガート・ブルーサマーズみたいな忠誠心。
自分はミカエルに重たい忠誠心向けておいて、ホモ疑惑の詩神相手に貞操の危機を感じる男。
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