ハイスクールDxD わたしへいきだもん! 作:膝に矢うけたった
過去最長の文字数になりました。
ちょっと、話の順番の変更を追記しました。
駒王学園、オカルト研究部部長リアス・グレモリーにとって、兵藤一誠というのは頭の上がらない相手だ。彼は学園での評判がすこぶる悪い。変態、スケベ野郎、覗き魔と、変態行動が多く、その度に多くの女子から制裁を受けている問題児だ。
そんな相手だが、彼女にとっては恩人であった。なにより大事な眷属が彼を信用し、時折恋する少女のような表情を見せるのだ。その眷属曰く、変態だが真剣な時の彼は別人のようなのだと言う。そして、様々な問題から力を受け入れられなかった、その子を救ってくれたのが兵藤一誠という少年だった。
「はぁ、この前も彼には助けられてしまったわね……」
手元の書類に目を通しながら、彼女はため息を吐いた。その書類には下僕の悪魔を逃がし、地上で被害が出るにも関わらずそれを隠蔽していた冥界の貴族に関する報告が書かれていた。悪魔というのは一部に地上の人間を家畜程度にしか考えていない者がいる。彼女からすれば嫌悪してしすぎるということはない程に唾棄すべき存在である。
「小猫のこと、はぐれ悪魔のこと、これだけ世話になってて挨拶しないわけにもいかないわよね。でも、下手に『赤龍帝』に関わって、グレモリーが『赤龍帝』にすり寄ったと思われるのも問題だし。悩ましいわね」
グレモリーというのは悪魔の貴族、その中でも魔王を輩出した家として注目を集めている。ちょっとしたことで、魔王となった兄の足を引っ張ることになるかもしれない。そう考えると、どうしても二の足を踏んでしまう。
「はぁ、嫌になるわね。これじゃ、あの貴族達と何も変わらないわ。もういっそのことお兄様に相談してみようかしら。でも、お兄様からも兵藤家を刺激しないように言われてるのよね……」
兄への相談を考えるが、同時に兄に今年初めに言われたことを思い出す。兄は彼女に兵藤家を刺激しないようにと伝えてきた。それに加えて、兵藤一誠の妹二人が今年から駒王学園に入学することなども話に含まれていた。
彼女としては立場さえなければ、すぐにでも菓子折りの一つでも持って挨拶に行きたいくらいなのだが、世の中とはままならないものである。
「今回も小猫を通してお礼を言うしかないかしら。さすがに次に何かあったら、その時は自分の足で会いに行きましょう。これ以上恩が重なるようなら誰も文句は言えないでしょう。それを恩だと理解できない連中はもう、諦めましょう」
そう言いながら、彼女は兄に向けて手紙を一通したためる。今回の自身の中で出した結論を伝えておくためだ。政治が絡む以上、無断でやるわけにもいかない。なにせ相手は『あの』赤龍帝なのだ。未だ、あの龍に思うところがある悪魔は少なくないのだ。
彼女の通学している学校の入学式を翌日に控えた、そんな日の出来事であった。
搭城小猫という少女が兵藤一誠と出会ったのは、半年より少し前くらいの時期だ。出会い方はあまりよかったとは言えない。彼女が悪魔としての仕事を終えて、帰りにコンビニに寄った時だった。時代錯誤と言ってもいい風体のヤンキーにナンパされた。
彼女にとってはとても面倒ではあっても、脅威にならない相手だった。軽くあしらおうとするが、相手が思った以上にしつこかった。そこに現れたのが兵藤一誠だ。
『お前らなぁ。そんな小さい女の子に何やってんだ、見苦しいからやめろよ』
その後はよくある展開で、激怒したヤンキーが殴りかかり、それを彼が軽く叩きのめして相手は逃げ出す。これだけなら、ジュース一本分くらいの恩ができただけの話だっただろう。
『ありがとうございます』
『おう、夜ももう遅いし、『小学生』があんま夜に出かけない方がいいぜ』
そう、それだけだったら問題はなかったのだ。確かに小猫は身長が低い。小学六年生の平均よりも低いくらいだ。そして、彼女はそれにコンプレックスを持っていた。しかも、目の前の少年は彼女が怒りを我慢している間、扉の向こうに見えるコンビニ店員の大きい胸を凝視していた。
だから、気付いたら、加減に加減した拳が出てしまっていた。
『げぶはっ!』
軽く頬を擦る程度の、痕もできない程度のパンチではあったのだが、一誠は何故殴られたのか分からず困惑してしまう。
『私、中学生、来年には高校生です。ホント、最低です』
彼女はそう言って、彼を置いてさっさと家に帰ってしまう。家に帰ってから、一般人に拳を出してしまったことを酷く後悔した。
(次、会った時にはちゃんと謝りましょう……)
ただ、一つ、何故だか彼を殴った時の感触に僅かな違和感があったような気がしていた。
『この前はごめん!』
その三日後、同じコンビニで偶然彼と再会した時、真っ先に謝罪したのは彼の方だった。自分も謝罪しなくてはいけないと思ってはいたのだが、その時の小猫はそれどころではなかった。彼の連れている妹と紹介された二人、その内黒髪の少女を見て小猫は驚愕するすることしかできなかった。
『にぃに、それ、妖怪だけど悪魔、いつ知り合った?』
自分の正体を言い当てたその少女から感じるのは、巨大すぎて計ることもできないほどの力の奔流だった。それが何なのか、検討すらつかない。目の前にいるのは力と言う概念そのものなのではないかとさえ思ってしまう。
『そうなのか。まぁ、そこのとこはいまいちピンとこないなぁ。妖怪とか悪魔って言われても、普通に可愛い女の子にしか見えないし……』
それから、場所を移して話を聞いてみれば、この兄妹達は全員『裏』と無関係ではないと言う。聞いた話では兄は直接的にどこかの組織に関わっているわけではないが、所有する能力は間違いなく『裏』のものだ。
そんなこともあって、彼らとの付き合いが始まり、次第に仲良くなっていく。兵藤一誠という少年は尋常じゃない程のエロガキだった。すれ違っただけの巨乳に鼻の下を伸ばすわ、古本屋でエロ本を立ち読みするわ、兎にも角にも始終この調子なのである。仲良くなれる要因など、何一つないように思えるのだがそうでもない。
最初は自身の主の障害になるか知るために、軽く接触して様子を探ってみようという程度だったのだ。認識が変わったのは、知り合って一週間ほど経った頃に彼らの鍛錬に付き合った時だった。
黒い少女の用意した鍛錬場で行われる修行、傍から見れば少年がただ『拷問』を受けているようにしか見えなかった。徹底的に彼より何段も上の力で攻められ、少しでも気を抜けば激痛とともに地に伏すことになる。彼がひたすらに理不尽に抗い続けるだけの『拷問』だ。それでも彼は普段のスケベ顔とは違う、歯を食いしばり立ち向かう雄の顔をして何度も立ち上がる。
兵藤一誠という少年のもう一つの顔、『表』の姿からは想像できない強さを求める姿、小猫の周りにはいなかった泥臭い生き方しかできない雄がそこにはいた。身体には無数の古傷、拳には何度も潰したマメの痕、認識が変わってしまえばそれまで目に映らなかった面が見えてくる。
ただ動きは素人だし、鍛錬も身体能力の上昇は望めるだろうが、技術がまるで身についていない。だから、少しだけ手を貸そうと思ってしまった。拳の握り方から始め、格闘の技術を彼に教える。
これが、塔城小猫という少女が、兵藤一誠という少年の『表』と『裏』と出会った出来事である。その後、彼らと付き合う中で彼女にとって、自身を変えるほどの出来事に遭遇することになる。それは猫ショウとして、一人の少女として主である少女が喜ぶほどの変化をもたらすことになる。
余談だが、黒い少女の正体を知った時には、自分でも知っているビッグネームに頭を抱えたそうだ。
「そーいえば、三人は入学式の準備は終わってるのか?」
いつものように四人揃って、テレビの前で対戦ゲームを遊ぶ中、一誠が翌日に迫ったイベントについて質問を投げかける。
「私は終わってます。制服の合わせも問題ないです」
「我、万事は問題なし」
「お菓子の準備したよー」
最後の一人の言葉を聞いて、僅かに一誠の操るキャラが動きを止める。
「お菓子の準備じゃなくて、他の準備は大丈夫なんだよな?」
「イッセー先輩。制服さえ問題なければ、この二人ならあとはどうとでもなります」
信頼というか、諦めというか、フィーとディカのでたらめさに慣れてしまった小猫の言葉だった。
「あー、うん、そうだな。それと、三人とも同じクラスになれるといいな」
「問題ない。同じクラスになるのは確定してる」
フィーに何をしたのか問いたい気持ちはあるが、あえて気にしないようにする。そもそも、今まで一切学校に行っていない上に戸籍すらないのに、どうやって入学できたのかすら謎なのだ。今更そこに突っ込むつもりはない。
「あ、やべっ、自爆した……」
「今日もにぃにが買い出しだね」
敗北者一誠がコントローラーを置いて立ち上がる。いつも通り注文を聞いて家を出る。家を出れば、外は眠くなるような春の陽気に満たされていた。彼はふと空を見上げて頭の中にある思い出を掘り起こす。思い出すのは妹と妹に出会った日のことだ。
仲のよかった幼馴染の『少年?』が引っ越ししてしまい、寂しい思いをしながら公園で遊んでいた時それは起きた。余談だが、彼はまだ紙芝居のおっちゃんとは出会っていない。
『空から!? え? なんで、空から女の子が!?』
空から女の子が降ってきたのだ。身長は彼より10cmくらい高いくらいの少女だ。落下してきた少女は地面に激突するが、何故か砂煙一つ上げることはなく無傷だった。少女をよく見ると、角度によって僅かに色が変わる綺麗な銀髪が目に映った。
『ねー、君大丈夫ー?』
彼が声をかけると、少女は身体を持ち上げて周りを見渡す。そして、首を傾げたあと、そのまま固まってしまった。
『大丈夫? 名前わかる?』
『なま、なまえ……、あえいでか……』
少年に問いかけられ少女はたどたどしい口調でそう告げる。彼は困ってしまい、大人を頼ろうと少女の手を握る。
『俺のうちにおいでよ。お父さんとお母さんに相談してみよう』
少女は少年に連れられるままに歩き出す。少女はうまく歩けないのか、何度も躓き、何度も転ぶ。少年が少女の足を見てみると、靴を履いていなかった。だから、少年は少女を背負って必死に歩く。ある種の火事場のバカ力というものだろう。牛歩ではあったが、なんとか自宅に辿り着いて、両親に少女のことを相談する。
『空から……? 一誠、それは本当のことなんだな。うーむ、さすがにこんな事例は聞いたことないなぁ』
両親は意外なことに簡単に信じてくれた。一誠の顔が大真面目だったからだろう。家族で話し合って、一応警察に届け出を出すことになったのだが、そんな時少女が動き出す。すると、少女の懐から一枚のメモが滑り落ちた。
――この子は家がないので拾った人が責任もって育ててね! 追伸、育て方間違うと世界が滅びます。
一家揃ってフリーズした。世界が滅ぶとか物騒なことが書いてあるせいで、現実感がない。こういう時に強いのが母というものだ。
『それじゃ、この子はうちで育てようかしらね』
少女がどういう環境だったのかはわからないが、今帰る家がないのは確かなのだろう。そう考え、とりあえずメモの通りに行動することにしたのだ。こうして『世界の命運?』は兵藤一家に託されたのだった。
それからの日々は忙しかった。戸籍もなにもない少女を育てるのだ、大変でないはずがない。その辺りが意外と雑でも問題ないのは、ここが駒王町だからだろうか。服を買い揃えたり、下着を着せようとしたりなど兵藤家の苦労は多かった。
中でも特に苦労したのが、少女の知能がとても低かったことだ。言葉は理解しているようだがまるで生まれたばかりのようで、反応がとても感情的だったのだ。トイレや風呂を初めとする一般常識にも疎く、兵藤夫婦は対応に追われることになる。
そんな中でも一誠が少女に嫉妬などすることがなかったのは、生来の優しさもあったのだろうが、遊ぶ相手ができたことと、とあるおっちゃんに出会ったからだろう。
三月ほどした頃、少女の知能が発達してきて、自分と周囲の関係に目を向けるようになった。
『ディカは俺の妹だから、だから兄ちゃんに任せろ!』
一誠はこの頃になると、兄としての自覚が芽生えていた。彼はディカを連れて出歩くようになり、一緒に色々な遊びをする。
『妹……、にぃに?』
彼女が『にぃに』と呼ぶようになったのもこの頃だった。ある日、彼はトイレに行きたくなり、ディカに動かないように言って公園のトイレに走っていった。
『お前、我とグレート・レッド倒しに行く』
彼が戻ってきた時、妹が深淵ごとく黒い髪の少女に話しかけられていた。
『まぁまとぱぁぱが一人で遠く行っちゃダメって……』
黒い少女は、その答えを聞いて残念そうな顔をしているような気がした。表情がまったく変わらないので、雰囲気でなんとなく感じることしかできなかった。
『あの、君は誰? 俺の妹に何か用なの?』
一誠が話しかけると、黒い少女は彼を目を細めて見つめる。愛らしく、可愛い見た目の少女に見つめられて、少し頬が熱くなる。
『ドライグも一緒にいく』
自分が何を言われたのかが理解できない。『ドライグ』とは何なのか、彼には覚えのない単語で呼ばれ、どこかへ連れて行こうというのだ。自然と妹を庇うように二人の間に入り込む。
その時だった、笛の音が公園に響き渡った。その音色は彼の師とも呼ぶべき者が現れた合図である。
『おっちゃんの笛! ディカ、行くぞ!』
一誠は妹の手を引いて、その場から逃げるように去っていく。ただ、そこは子ども、同じ公園内に逃げたところでそれほど意味はなく、結局黒い少女もついてきてしまった。
『ん? 坊や、その女の子たちは坊やの彼女かい?』
『ちがうよ、おっちゃん。こっちは俺の妹のディカ、それで、こっちは……』
『我、名はオーフィス』
黒い少女が名乗ったのを聞いて、ディカは首を傾げる。そうして、小さな声で何かを呟いていた。
『オーフス、オーフィー……』
名前をうまく言えないらしい。それを見かねた一誠が助け舟を出す。
『オーフィス……、フィーってあだ名はどうだ?』
『フィー、我の呼び名? フィーで構わない』
反応を示したのは、意外なことにあだ名を付けられた本人だった。そこには呼び名に興味などないという、彼女の意志が宿っていたように感じることができた。その後は何故か、三人でおっちゃんの『おっぱい紙芝居』を見ていた。
それが終わり、おっちゃんが帰っていくと、フィーは立ち上がって二人の顔を見た。
『我、今回は帰る。また来る。次は一緒にグレート・レッド倒しに行く』
そう言って、一瞬でどこかへ消えてしまった。黒い少女は翌日も、そのまた翌日も、毎日兄妹の前に現れた。気付けば、両親はフィーをディカの友達だと認識しているほどだった。
最初はディカを誘いにきて、その後しばらく無言でそこにいるだけ、帰りにまた誘うだけだった。だが、いくらか月日が経つと、来訪時に誘い、一緒に遊んで、夕方にまた誘って帰るというルーチンになっていた。
更に月日が過ぎると、ついには誘うこともなくなり、頻繁に兵藤家に宿泊するようになっていった。少女の中でどんな心境の変化があったのか、それは彼女自身にもわかっていないようだった。
そんな生活をしていれば、両親がこの少女の家族のことを気にするのは当然の出来事だったのだろう。だが、彼女から得られた解答は兵藤家の常識を覆すものだった。
彼女が話す内容は自分が無限の龍神というドラゴンであること、この世界には一般人が知らない『裏』があることだった。そして……。
『我、ずっと一人、約束した者達はいるけど、あいつらいつまでも約束果たさない。だから、我より強いディカ誘いにきた。でも、今、次元の狭間の静寂より、この家が好き。何故?』
自分でも理解できていない感情を抱え、その疑問を兵藤一家にぶつける。その表情はどこか困惑しているようだった。そんな少女を前にして、一誠は自然と少女の頭に手を置いていた。
『ドライグ、何してる?』
『何って、ん~、寂しそうだったから何となく?』
その日、一誠に二人目の妹ができた。二年近い交流期間を経て、龍神の中にどんな変化が生まれたのか、それは誰にも、本人にも理解できていない。ただ、なんとなくだけ一誠はそれを感じていたのかもしれない。
尚、妹になった翌日、フィーはディカを真似して一誠を『にぃに』と呼ぶようになった。あと、ドライグを無理やりたたき起こして、一誠を
(そういえば、ドライグと初めて会話したのって、それから少しした時だっけ?)
(おう、そうだな。目覚めてはいたんだがな。どうにも、相棒の貧弱さにショックで会話しようって気が起きなくてな……)
一誠は歩きながら、心の中でドライグと会話していた。そう言われてしまえば、彼としても言い返せない。当時の得た力に対する甘い考えは、思い出したくないものだった。当時は子どもだったと言えばその通りではあるが、それでも世界はそれを免罪符とはしてくれない。
兵藤一誠、彼がディカと出会ったのが約十年前だ。この出会いは幼馴染の『少年?』と別れたすぐ後だった。その後すぐにフィーとも出会った。ついでに運命の師が警察に逮捕されたりもした。そして、『赤龍帝の籠手』に覚醒したのは今から約八年ほど前である。彼が鍛錬を始めたのはこの時期だ。
その原因となったのは、はぐれ悪魔との遭遇である。あの日、彼はいつも通り二人の妹と公園で遊んでいた。だが、その日は少し帰るのが遅れてしまった。冬だったこともあり、空が暗くなり始めていた。
帰り道で裏路地から現れたのは、目の焦点が合っていない女性だった。すぐにフィーが前に出て二人を庇った。
『二人とも、下がる。我、こいつの相手する』
その言葉と同時に女性の身体が異音を立てて変化していく。音が鳴りやむと、そこにいたのは人間とは似ても似つかない化け物だった。一誠は自分の目覚めた力を使い二人を護ろうとするが、未だ覚醒したばかりでドライグとの会話すらしたことのない少年にできることなどなかった。籠手を纏いはしたが、初めて見る化け物に怯えることしかできない。
『――――、
そんな彼の後ろから聞こえたのは、もう一人の妹の声だった。その声と同時に、十近い線が化け物を通過する。通過した線はその身体のあちこちにその数と同じだけの穴を穿ち、化け物を絶命させる。
彼が後ろを振り返ってみると、そこにいたのは手を前に突き出した姿勢のディカだった。この時、彼は自分が彼女に護られたことを悟った。そして、最初に庇ってくれた妹は今、化け物の死体を一瞬で消滅させているところだった。
自分の弱さを思い知って、彼は自分を強くなることを決意したのだ。強くなろうとしたところで、フィーが籠手に指を突っ込んだらドライグというドラゴンの声が聞こえるようになったり、ドライグから『裏』の世界について話をきいたりした。その後、フィーが用意した鍛錬場での修行が始まった。
肉体がただの人間でしかない彼には辛く、厳しいものだったが、彼はそんなことよりもあの日の悔しさが勝り、がむしゃらに突き進んだ。彼自身は、あそこまでやってこの程度の力しか手にできなかった、とは言う。実際にそうなのかもしれないが、相棒がその力を何倍にも引き上げてくれる。
だからこそ、彼はただの人でありながら、悪魔を倒すことができるのだ。
(これからも頼むぜ、相棒! 俺だけだとぶっちゃけ修行だけで死ぬ)
(情けないことを、と言いたいが『アイツ』の鍛錬は無茶苦茶だからなぁ。あの妖怪の娘が加わってくれたのは本当に助かる)
そんなことを言いながら、歩いて行く。家では、今も三人が買い出しを待っている。今日はさすがにはぐれ悪魔も出ないようで、何事もなくコンビニに到着した。
彼は一度太陽を見上げて、明日から始まる、妹達と後輩との学園生活を思い浮かべる。ただ一つ、問題があるとすればクラスメイトの同士に三人のことなんて言えばいいのかということだった。
有能さとへたれさを醸し出すリアス部長のシーンがお気に入り。
本編前の諸々の出来事のおおよその話はこれで完了です。