よくある侵略系MMORPG   作:偽馬鹿

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こういう幕間的なものを挟みながら進めていった方がいいかなって思いました(まるい)


ハイハミルトンのファンタズムキラー初日

ハイハミルトンこと小早川宗次はプロゲーマーである。

基本的に入賞する程度の腕前であるが、時折勝利を重ねる所謂地味に強い枠である。

とにかく、生活に困らない程度には稼ぐことができる彼は、ついこの間βテスターを募集していた「ファンタズムキラー」なるゲームに当選した。

 

なんとこのゲーム、βテスターとしてプレイしているだけで給金が発生するという。

つまるところデバッグ班ということなのだろう、と宗次は当たりを付けていた。

 

「さて……ん?」

 

βテスターとしての仕事を始めようとしたところ、自身のスマートホンにメールの着信があった。

発信者を見ると、彼と付き合いのあるプロゲーマーからであった。

 

『本日はよろしくお願いします』

 

簡素な文章だ。

送り主はバッハレン。

女性である。

 

普段の喋り方はもっと独特なのだが、このような口頭での会話を除いたコミュニケーションでは丁寧語を使うのである。

最初は少々面食らったが、今では慣れたものである。

 

『こちらこそよろしく』

 

とだけ入力して返信。

返信は来ない。

いつも通りである。

 

 

 

というわけで、早速彼はハイハミルトンとしてゲームに没頭する。

フルダイブ式なのでヘッドセットを装着して寝る。

立ったままプレイするのは怖いものだ。

というか誰もやらないだろう、多分。

 

それはともかく。

ゲームにログインするとお決まりのチュートリアルが待っている。

流れるように表示される画面を流し見すると、中々えげつないスキルシステムのようである。

 

すたっとゲームフィールドに降り立ったハイハミルトン。

目の前には巨大な建造物。

所謂城である。

その城はハイハミルトン達の属している帝国ヒノモトのシンボルであった。

 

「白い城壁に赤い丸とか……」

 

センスが問われる。

 

さて、ここでハイハミルトンは配信モードを起動する。

このモードは彼の背後に不可視のカメラが登場し、彼の動向を撮影して生放送するという、動画配信に置いてとても便利なものなのである。

予告時間ぴったり。

スレッドを見ることはない。

エゴサは趣味ではないのだった。

 

さてさて。

彼はとりあえず自分の装備を確認した。

初期装備すらランダムだというこのゲーム。

彼に渡された装備はレイピアであった。

 

「ええー……」

 

レイピア。

鎧通しなどとも言われる細剣である。

鎧の関節部などを狙ったりして鎧の防御を貫通する武器として使われることが多い武器である。

人間相手にはかなり重宝する武器だろう。

 

問題は……序盤で人間相手に戦うことがないだろう、ということである。

つまるところ宝の持ち腐れであった。

 

 

 

しかし、手に入れたものは使わないのももったいない。

彼はレイピアが持つスキルを見る。

刺突系のスキルが多く、刺突を繰り返したりすると威力が上がる、というスキルが中々面白い、と彼は思った。

 

とはいえそこに至るまでのスキルポイントは存在しない。

とりあえず、モンスターを倒すことでスキルポイントを獲得しなければ始まらない。

彼はセンスが怪しい城を背に、森へと歩き始めたのであった。

 

 

 

「……む」

 

早々に彼の目の前の茂みが動く。

どうやらモンスターの登場だ。

彼はレイピアを構えると半身になった。

戦闘体勢を取ろうとしたら自然にそうなった。

なるほど、そういう感じなのか。

彼は納得してモンスターが出てくるのを待った。

 

「クマー」

 

出てきたのは、クマーと言いながら出てきた、無駄にリアルな熊。

 

「???」

 

困惑、そしてそれが致命的であった。

熊の凄まじい筋力で放たれたテレフォンパンチが、ハイハミルトンの顔面を襲撃。

頭がぶっ飛んで即死したのであった。

 

 

 

「いやあれは駄目だろ」

 

リスポーンした彼は、悪態をつきながらも先程の場所へと歩き始めた。

攻撃力はともかく、最序盤のモンスターだ。

恐らくはそれ以外のステータスが低いはず。

そう思ってのリベンジである。

 

しかし。

 

「でゅふふ」

 

その場所に戻ってみたところ、いたのは倒れた熊と、見知った女性の姿であった。

 

「えーなにこんなのに負けてんのよわっ」

 

女性はバッハレン。

自称であり、本名は知らない。

 

ルビーのような赤い瞳に、シルクのような銀色の長髪。

いつもであればふんだんなフリルを使ったゴシックロリータファッションを披露しているのだが、今は簡素な布の服である。

身長は成人女性の平均程度だろうか。

胸はない。

 

武器は何も持っていないということは、彼女は素手で熊を倒したのだろうか。

驚きである。

 

「ふー満足。それじゃあね」

 

驚いている間に、バッハレンは立ち去った。

よく見れば服はボロボロだったが、それを感じさせない足取りであった。

すっげー足取りが軽い。

 

 

 

「流石にあれは、うん」

 

事故だな、と気を取り直して新たなモンスターを探すことにした。

落ち込んでいる時間がもったいない。

今は獲得スキルポイントアップ期間なのだ。

ガンガン稼ぎたい。

 

ガサガサと藪をかけ分けて進むと、粘着性の丸い塊を見つけた。

あれもモンスターのようだ。

うぞうぞと動いて草木を消化している。

 

「スライム……か?」

 

とりあえずレイピアを構え、様子を見る。

粘着性で防御性能は低く見える。

攻撃力は草木は溶かしていることから中々。

上手くいけばレイピアで倒せるだろうと当たりを付けた。

 

「シッ!」

 

レイピアを持って突きを放つ。

自分が放ったとは思えないほど速く突きは放たれ……レイピアはあっけなく折れた。

 

「げっ」

 

スキルがなかったのがいけなかったのか、それともタイミングが悪かったのか。

スライムの身体の中ほどまで進んだところで折れてしまった。

 

 

 

さてどうするか。

スライムがこちらを警戒する気配はない。

というか認識しているかも怪しい。

地上を動くクラゲのようなものなのかもしれない。

 

ハイハミルトンは上の服を脱ぎ、手に巻き付けて即席のグローブにした。

すると、目前にモニターが現れ、新しいスキルツリーが表示された。

 

「あ、格闘系のスキルか」

 

一応これも武器に入るんだ……と感心しながら、ぎゅっと拳を握った。

今度こそ、モンスター撃破を目指す!

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

少し経って。

何とか素手でスライムを撃破したハイハミルトンはその場で座り込んでいた。

撃破したと確信した理由は、最後の一撃がヒットした瞬間にスライムが破裂したからである。

 

インベントリにアイテムが入らないということは、直接剥ぎ取りをしなければならないのだろうが、何をどうすればいいのか。

しかし、スキルポイントを見てみれば何だか結構なポイントがもらえていることに気付く。

 

 

 

さて。

どんなスキルにポイントを振ろうか。

ハイハミルトンは考える。

 

格闘武器のスキルツリーの根底は3つあった。

格闘武器装備時攻撃力アップ

格闘武器装備時防御力アップ

格闘武器装備時回避率アップ

 

この3つの内、伸ばすなら何を選ぶべきか。

攻撃力アップを選ぶと、その先には攻撃系のスキルが多くある。

攻めて攻めて攻める戦いができるだろう。

 

防御力アップを選ぶと、その先には防御系のスキルが多くある。

守りを固めて堅実に攻める戦いができるだろう。

 

回避率アップを選ぶと、その先にはカウンター系のスキルが多くある。

上手く回避して大ダメージを狙うギャンブル的な戦いができるだろう。

 

 

 

……。

ハイハミルトンが選んだのは回避のツリーであった。

元々そういう格闘キャラを使うのが得意だった彼がそれを選ぶのは当然だったのかもしれない。

 

ちなみに、ハイハミルトンの"ハミルトン"は彼が良く選んだキャラのひとりであり、その強さから彼はハイ"ハミルトン"と呼ばれるようになったのである。

 

 

 

「さて」

 

スライムは何とか撃破できた。

問題は熊であった。

あの凄まじいテレフォンパンチは脅威である。

どうやって攻めるべきか。

 

しかしハイハミルトンは考えていた。

あの強さだ。

熊はレアエネミーなのだろうと。

故に今はスライムをちまちま倒してスキルアップして、次の熊にリベンジすればいい。

 

 

 

 

 

「と思っていたんだけどな―!!!!」

 

熊、再度現れてハイハミルトンの顔面をテレフォンパンチ!

あわれハイハミルトンはリスポーン地点に戻されたのであった!

 

 

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