ルフィたち『も』映像配信 電伝虫を拾って配信を始めたIF。
ルフィの配信をハンコックが見ていないはずもなく、
ウタを巡るやりとりを見ていたハンコックが動き出す。
https://syosetu.org/novel/298978/
本作は、セリフ等、一部引用がございます。
暁英琉さま、素敵な物語と三次創作の許可、ありがとうございました!
グランドライン 女ケ島アマゾン・リリーにて。
麦わらの一味の配信。
それが始まってから、九蛇海賊団には配信番という仕事ができた。
半分休憩のような当番で、電伝虫の前に待機し、不定期の麦わらの一味の配信が始まり、船長ルフィだったらハンコックに連絡するという業務だ。
「蛇姫様。麦わらの配信が始まりました。今日はルフィ様ですよ!」
「あぁぁあ、ルフィ。そなたは今日も元気そうじゃのう。私も会えてうれしい」
配信番の伝令を受けて、海賊女帝、ハンコックが飛び込んでくる。
油断すると吹き飛ばされるので、配信当番は冷や汗を流しつつ転がるように避けた。
「当番お疲れ様―。今日は姉さま待望のルフィなんだね」
ハンコックから遅れて、サンダーソニアもついてきた。続いて、ゾロゾロと手隙の者も集まってくる。
麦わら一味の配信は、娯楽に乏しい九蛇海賊団の中でも人気だった。
「ええ。姉さまが嬉しそうで何より」
配信当初、不定期の配信を見るために、ハンコックは電伝虫の前から片時も離れなかった。
なぜそれが変わったのか。そう、ルフィ以外の麦わらの一味も配信を始めたのだ。
配信が始まってルフィと会えると期待していたら、鼻の長い男が出てきた。
九蛇海賊団の船員ならば、誰もがそのときのハンコックの荒れ様は思いだしたくもない。
ゆえに、ルフィだった場合に、ハンコックに連絡をいれる配信当番ができたのだ。
『ウタってあれか? 髪がこんな感じに赤と白の半々になってて、こんな感じの後ろに回るヘッドホンつけてて、すぐ勝負でズルして、こんな感じで『負け惜しみ~』って煽ってきて、けど結構寂しがりやで、シャンクス大好きな、あのウタか?』
ルフィが出ていればハンコックはご機嫌。
ただ今日の配信の内容は風向きが違った。
初めて見る、涙を流すルフィ。
「わりいなみんな。ちょっと大切な宝に会いに行ってくる」
そして、配信の終了。
がくり。海賊女帝の膝が地面についた。
そのまま動かない。
「姉さま?」
動かない姉を心配して、サンダーソニアが近寄ろうとしたところで、ばたりと倒れるハンコック。
美しき、海賊女帝は白目を剥いていた。
「姉さま~~~~~!」
わっと場が騒然となる。
「誰じゃ、我が通り道に年上幼馴染歌姫ヒロインを置いたのは……」
そんな内容のうわ言を繰り返して、そのまま寝こむことがった。
ハンコックが復調したのは、麦わらの一味と海軍との戦争の全てが終わったころだった。
海賊女帝が進撃を開始する。
戦争も終わり、補給も終えた。
急ぐことはなく、サニー号は新世界へとエレジアの海域から戻り始めた道中。
ルフィとウタは無事の報告も兼ねて、のんびり船首から配信を始めた。
「負け惜しみ~」
「なんだとぉ!」
四皇と歌姫という肩書以下、見かけ以下の子供っぽいやりとり。
12年ぶりにあった幼馴染といいう事情からは、子供時代を思い出しているんだろうという生暖かい視線の中、本日の配信は続いていた。
『ルフィさんとウタさんは本当に仲がいいですね』
『どういう仲なんでしょうか?』
「さっきから何度も聞かれるけどよ、幼なじみだぞ」
『これからはどうなんでしょうか!!!?』
興味を抑えきれないという勢いで、とんできた会話に「んー」と考えこむルフィ。
海賊嫌いで通っていたせい?と考えて、罰の悪さを感じて視線をさ迷わせたウタは、水平線の先にあるものを見つけた。
「あ、海賊船だ」
みるみるうちに船は近づいてきた。四皇、麦わらの海賊旗を恐れずに近づく船は、巨大な二匹の毒ウミヘビに引かれていた。
見覚えのある船に、ルフィは喜色を浮かべた。
「ハンコックの船だ。懐かしいなー!」
「ハンコック? 知り合いなの?」
「ああ。すげえ世話になったんだ。海賊万博以来だな」
「おい。まずいんじゃないか? ルフィ」
「なにがだ?ウソップ」
配信をそばで眺めていたウソップは、ひそひそ声で話しかけた。
「だって、おまぇ、ハンコックは・・・」
ハンコックは、直接会って話をしたことはないものの、バルトロメオとは方向性の異なるルフィの信者と聞いている。ルフィのことを女として懸想されているらしい。
そのハンコックが、世界規模で広まってしまったウタを巡る話を知らないはずが無い。
修羅場。
そんな単語がウソップの頭をよぎる中、まだ船同士の距離がある中、海をものともせず、人影が飛び出してきた。
長い黒髪。理想的な女性らしい体系。美の体現者。
「ルフィ~~~~~!」
「おぅ、ハンコック! 元気そうだな。ウシシシ!」
船から船へと飛び込んできたハンコックは、勢いのままにルフィに抱き着いた。
微動だにせず、ルフィは抱きとめ、嬉しそうに笑う。
「あぁ、妾がお主に会うのをどれだけ楽しみにしていたか・・・」
「おれも会えてうれしいぞ」
「あぁぁ、ルフィ・・・うれしいなんて・・・天にも昇るような心地・・・」
「大げさだな~」
歓声を上げて、へなへなと脱力し、ハンコックがルフィへとしなだれかかった。
ルフィの反応も大したものではなく、海賊船接近の騒ぎに集まりだした麦わらの一味も話には聞いていたし、ルフィ関係でこの程度では驚かない。
だが、ここにある目線はそれだけではないのだ。
電伝虫の先には、万の瞳がある。
『本当に、海賊女帝、ハンコックだぁあああ』
『めちゃくちゃ美人!』
『え、麦わらさんとどういう関係なの?』
『ウタとのことはなんだったの?』
『うらやましい!』
つなぎっぱなしだった電伝虫からは、ひっきりなしに、驚愕、困惑、疑惑の声が届く。
ぎろりと、ハンコックは電伝虫を睨んだ。
「えぇーい。下郎どもめ! 妾は見世物ではないわ!」
『辛辣な言葉!』
『だけど、それも良い・・・』
『ハンコックさまは、ルフィさんの恋人なの?』
無責任に流れる言葉であっても、ハンコックはその手の単語を聞き逃せない。
「恋人?! 妾がルフィの恋人?! なんて素敵な響き。
なぁ、ルフィ。妾とそなたは恋人同士じゃったのか・・・?」
「違うぞ。なにいってんだ」
「ならば、やっぱり夫婦?!」
「前も言ったけどよ、結婚はしねえよ」
「ね。ね。もしかして、ハンコックはルフィのことが好きなの?」
疑いようもない、ハンコックの好意にウタは声を弾ませた。結んだ後ろ髪も跳ねている。
なにせこれまで、父親代わりのゴードンと廃墟の島で二人暮らしだったのだ。
エレジアの書庫の本や、電伝虫のメッセージ以外で初めて見た色恋沙汰。
しかも相手は幼馴染にして、いつのまにかかっこよく、男らしさを感じさせるまでに成長したルフィ。しかも只ならぬ関係と見た。
ハンコックとは初対面ではあるが、ウタの興味は尽きない。
「妾はルフィを愛しておる。誰にも負ける気はせぬ。おぬしがウタか」
「そうだよ、はじめまして! すっごく綺麗だね。あ、ルフィと同じ黒髪だ。もしかして、あなたもフーシャ村の近くに住んでたの」
「ルフィと同じ! 言われてみれば、そうじゃ。妾もルフィも黒髪。これは運命なのじゃ・・・」
「たまたまだろ。ワノ国には、黒髪いっぱいいたぞ」
「ルフィとの間に子ができたら、きっと黒髪じゃろうな。そんな日が来るのが楽しみじゃ・・・」
「ちょっとルフィ。そんな言い方はないよ! ハンコック、ルフィのこと、すごく好きなんじゃん。ルフィとはどこで出会ったの?」
「ルフィと出会ったのは、そう、妾の城の風呂じゃった……」
「はぁ、ルフィ。女の子のお風呂に入るって、どういうことなのよ!」
「それはよ。くまのやつに、飛ばされたんだって」
「妾は昨日のことのように思いだせる・・・・。それからはいつも頭の片隅にそなたがおるのじゃ・・・」
「そっかー。ルフィ、そういう人がいるんだね。私たち、大人になったんだなぁ・・・」
知ってはいたものの、エレジアにいた間に、ルフィは冒険を潜り抜けてきていたのだ。
ウタは自分より少し背の高いルフィを見上げた。
そして、一人の女としてルフィへの思慕を溢れさせるハンコックを見た。
「決めた! 私はハンコックを応援するよ。よろしく、ハンコック」
「ウタと言ったか。どうやら争いにもならんようじゃの」
いぶかしそうな、不審そうな表情を露わにしつつ、ウタが差し出した手をハンコックは握った。
「良い機会じゃから、宣言しておこう。ルフィの妻になるのは、この妾じゃ」
ギンと、ウタと電伝虫に向けて、ハンコックは威嚇した。
配信でのルフィの人気は高い。当然、黄色い声も多い。
「何度も言うけどよ。おれは結婚はしねえぞ?」
「あぁ、ルフィ。そなたのそのつれないところも愛おしい・・・。
良いのじゃ、そなたが自由と冒険を好むのは知っておるし、そんなそなたが好きなのじゃ。
それはそれとして、そなたの妻の座はゆずらんぞ」
「そっか。なら好いけどよ」
九蛇の海賊船が、追いついてきていた。サニー号の横を並走する。
「そうじゃ。実はルフィへの贈り物を用意しておるのじゃ」
「肉がいいぞ!」
「もちろん、肉も用意しておる!!」
「じゃ、宴だな! 九蛇海賊団のやつらとも久しぶりだから楽しみだな!」
「今から用意させるから、しばらく待っておれ」
ルフィに自分の海賊団のことを言われて、悪い気はしない。
ハンコックは機嫌よく、九蛇海賊団に帰っていった。
配信からはひっきりなしに、ルフィへのハンコックへの問い合わせが続き、飽きたルフィが無理やり終わらせるまで続いた。
配信からフェードアウトした先で、ウタはふらりと空を眺めていたナミの脇に立った。
「ねー、ナミ」
「何よ」
「ハンコックと話すルフィ見てると、モヤモヤするんだけど。私、心が狭いのかなあ」
「ふーん。そうなのね。大変だろうけど、がんばりなさいよ」
「なに、どういう意味?」
怪訝そうなウタに、ナミは笑って何も答えなかった。
船に戻ったハンコックにサンダーソニアが駆け寄る。
「姉さま、大丈夫だった? 手を出したら、ルフィは怒ると思うから」
「心配するでない。戦いにもならんかったわ」
ハンコックはちらりとサニー号を振り返る。
「ハリケーンの気配がするの」
「こんなに晴れてるのに?」
「気の迷いじゃ。忘れるとよい」
本作はこれにて、おしまいです。