艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』 作:黒瀬夜明 リベイク
海軍本部から車を走らせて数時間、深海たちを乗せた青葉の軽自動車と時雨たちを乗せたキャンピングカーは横須賀鎮守府近くの立体駐車場に止まっていた。深海たちは今、キャンピングカーの車内で抜き打ち監査の最終確認をしていた。
「………うむ、書類に関しては不備がないな」
「まあ、こんなところまで来て不備があったらそれはそれで問題でしょうけどね…」
監査に必要な偽造書類の最後の1枚を確認し終えた深海は、キャンピングカーに乗っている全員に話し始めた。
「みんな聞いてくれ。俺はこれから横須賀鎮守府に監査に行く。青葉、監査のサポートよろしく頼むぞ」
「はい!青葉にお任せです!」
青葉そう言ってウインクを飛ばした。
「時雨たちはその間、好きに行動してくれていいぞ…と言いたいが、秋雨たちの勉強を遅れさせる訳にもいかない。すまないが時雨、昼の間は秋雨たちの勉強を手伝ってやってくれ。たぶん本屋に行けば参考書が置いてある筈だ」
「参考書って、それなりの値段だと思うけど。大丈夫なの提督?」
「ああ。偽造書類の電話があった時に白河提督と相談したら、参考書の費用は私が出そう。って言ってくれてな。ほら」
「封筒?………ええ!?」
そう言って深海は茶色の封筒を時雨に渡した。そして封筒の中身を確認した時雨は思わず、驚きの子をあげた。封筒の中には何十枚もの1万円札が入っていたのだ。
「こ、これ本当に使って良いのかい提督!?」
「ああ使え使え。貰えるもんは有難く使って進ぜようじゃないかぁ」
「提督…」
(うわぁ…深海司令官、凄い嫌らしい顔してる…)
深海が見せたそのとても嫌らしいニヤケ面に時雨と青葉の2人は引いてしまっていた。
「じゃあそろそろ行くとするか。秋雨、梅雨葉、雨葉、しっかり勉強はしておくんだぞ?」
「うん!」
「はーい」
「うん!雨葉、頑張る!頑張る!頑張る!」
「ちょっと待って提督」
と、椅子から立ち上がった深海を時雨が呼び止めた。時雨は、渡すものがあるんだ。と言ってキャンピングカーの奥から大きな紙袋を持ってきた。
「…なんだよそれ?」
「スーツだよ。そんな私服で監査に行ったら変に思われちゃうよ」
「え?スーツ…」
スーツと聞いた深海はとても嫌そうな顔になった。深海は堅苦しいものがとにかく嫌いなので、スーツや提督としての正装を着たがらないのである。そんな深海を見て時雨は優しく微笑みながら歩み寄ってきた。
「大丈夫だよ提督。僕がちゃんと着付けてあげるから…さ、こっちに来て」
「…わかったよ」
時雨に迫られた深海は、やれやれ。とした表情でキャンピングカーの奥へ時雨と歩いていった。そして時雨がキャンピングカーの奥にあるベットルームを遮るカーテンを閉めながら、少し待っててね青葉。と言ったのだった。
それから数十分後、カーテンを開けて深海と時雨が出てきた。出てきた深海は私服ではなくスーツに身を包み、右目を覆っている髪を上げて両目が見えるようになっていてその額には伊達メガネをかけ、毛先だけで纏めていた髪は雨葉の様な一本の長い三つ編みに纏められていた。
「わぁー!おとーさんも三つ編みしてるー!」
「ふふっ、提督は三つ編み似合うと思っていたんだよね」
「うん!とっても似合ってるよお父さん!」
「お父さんじゃない、みたい」
「伊達メガネまでかけて…これなら変には思われることは無いでしょう。お似合いですよ深海司令官!」
「そ、そんなに褒めるな…はぁ…スーツきついなぁ……仕方ない、行くぞ青葉」
「はい、行きましょう!」
「提督、頑張ってね!」
深海と青葉は、早速青葉の軽自動車で横須賀鎮守府へ向かった。
駐車場から数分で横須賀鎮守府に到着した深海と青葉。2人を乗せた車はまず鎮守府の正門前で門兵に停められた。
「そこの車止まれ。ここから先は海軍の鎮守府だ、要件を言え」
そう尋ねられた深海は海軍本部の偽造書類を渡し、門兵に説明をした。
「海軍本部の監査が目的だ。お――私は監査官の黒野深。ここを通してもらえるか?」
「ふむ…少しお待ちください」
そう言って門兵に詰め所に入って行った。それからしばらくすると先程の門兵が詰め所から戻ってきた。
「本日は海軍本部からの監査は予定されていないようですが?」
「それもそうだろう。本日の監査は海軍本部の抜き打ちによるものだ、事前に申告していては抜き打ちの意味など無いであろう?」
「確かにその通りではありますが……」
(白河の奴、門兵くらいには伝えておけよ…余計な手間取らせやがって)
深海は白河提督の段取り悪さに苛立ちを感じていたが、何とか抑え込んでいた。
「では海軍本部の白河洋一提督に問い合わせてもらえるかな?それでハッキリする筈だが…」
「承知いたしました!」
深海の説得に応じた門兵は再び詰め所へと戻っていった。そして門兵が詰め所へ入ったことを確認した深海は車の窓を閉め、舌打ちをした。
「まあまあ、落ち着いてください深海司令官」
「わかっている。白河の奴め…後で覚えてろよ」
「あはは…」
内心で滅茶苦茶キレているであろう深海を見て、青葉は苦笑してしまった。そんな会話をしている間に詰め所から先程の門兵が出てきた。深海は車の窓を開け門兵に問いかけた。
「確認は取れましたか?」
「ハッ!先程は失礼致しました!どうぞお通りください!」
「ありがとう」
そう深海が言ったのを確認した青葉は車を発進させ、鎮守府本庁舎の方へと向かった。それを敬礼をしながら見送った門兵は、先程の電話の内容を思い出して身震えしていた。
(監査の事を他言したら、海軍から永久追放されるって言われちまった。今回の監査、どんだけヤバい内容なんだよ!)
そんな門兵のことなど知らず、深海と青葉を乗せた車は本庁舎前に到着したのだった。深海は車のドアを開け、横須賀鎮守府本庁舎の前に降り立った。
「では私は車を駐車場に止めてきますから、先に行っててください」
「ああ。執務室で待ってるぞ」
そう言って深海は本庁舎正面扉を開けた。扉の先には赤絨毯が敷かれた中央階段と左右へと続く廊下があった。そしてその上り階段のすぐ傍に立っていた紫を基調としたジャケットに黒のネクタイを締め、同色のタイトスカートと白のサイハイソックス、膝近くまであるブーツを履いたロングの黒髪をサイドポニーに纏めている。長身でキリッとした目つきをした女性が深海に気づいた。
「そこのお前、一体何用でここへ来た!」
その女性は大きな声を発しながら深海に近づいてきた。深海は臆することなく海軍本部の偽造書類をその女性に見せた。
「お前は妙高型の那智だな。海軍本部から監査できた黒野深だ。桃田狼介少将にお会いしたい」
「………むっ!こ、これは失礼した監査官殿。桃田提督は執務室におられる、私が案内させてもらおう」
「よろしく頼む、那智」
彼女の名は那智。横須賀鎮守府に所属している武人然とした凛々しい性格の妙高型重巡洋艦2番艦の艦娘だ。戦争終結後も、彼女は姉妹たちと共に現役の艦娘として今も海を駆けている。そんな那智に連れられて、深海は横須賀鎮守府の執務室へと向かって行った。そして執務室に到着すると、那智がそのまま扉を開け深海も執務室へ入って行った。
「提督、失礼するぞ」
「なんだ那智?今度の演習の件なら足柄から―――」
「海軍本部から監査官殿がいらしているぞ」
「え?」
執務室には右側に赤いメッシュが入ったオールバックの黒髪に第一種軍装を着た身長が170㎝くらいの男「桃田狼介」と、紫を基調としたジャケットに黒のタイトスカートと白のサイハイソックス、ヒールのついたブーツを履いた首に無数の国際信号旗が描かれたスカーフを巻いている濃い茶髪に白のカチューシャを身に着けた隣に立つ男と同じくらいの身長の女性の「足柄」が書類作業をしていた。そんな2人に向かって深海は宣言した。
「これより、海軍本部による横須賀鎮守府の抜き打ち監査を開始する!」
桃田提督と足柄の2人は揃って、え?と口にしたのだった。
続く