艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP22 ガンプラレース (後編)

同時にスタートラインを飛び越えたガンダムスターマックイーンとヒーローガンダムは、スタートライン直後の短い直線を横一線で駆け抜け、左へのカーブを曲がって山へと昇っていく坂路へと突入した。舞華と雨の2人が使うガンプラは、自立飛行が不能で小型スラスターの推力と脚力だけでレースをする機体だ。なのでこの坂路も、ガンダムスターマックイーンとヒーローガンダムは両腕を大きく振りながら、その足で一直線に坂を上っていく。

「現状は……舞華の方が僅かにリードしているな」

「はい。ここまではいつも通りの展開と言って良いでしょう」

「そうなのか?」

「はい。レース開始直後は、いつも舞華さんが先頭を走っています。次に私、最後尾に雨さんといつも続いています」

「雨おねーちゃん負けるな負けるな負けるなー!」

ガンダムスターマックイーンがヒーローガンダムよりわずかな差で先行していく。

(流石雨さん…今回も私の背中をしっかり捉えているわ)

操縦桿を前へと伸ばしながら右後方を確認する舞華。その位置には雨のヒーローガンダムが1メートルの距離を保ってピッタリと追随してきていた。そのままの状態でガンダムスターマックイーンとヒーローガンダムは上り坂を登り切り、左カーブを曲がってグネグネと蛇のように曲がりくねった下り坂へと突入していった。下り坂という事もあり、2機のガンプラの足が僅かに早くなるが、それでも2機間の距離が開くことは無く。そのまま右へ左へのくねった道を重心移動を徹底しながら駆け下りていく。

「凄いですね雨さん…舞華さんの後方を完全に抑えていますよ」

「今にも抜き去ってしまいそうな勢いだよ!舞華さん負けるなー!」

2人のレースを見て驚きを隠せない青葉と秋雨。その状況を見ている内にガンダムスターマックイーンとヒーローガンダムは下り坂を下り切り、左カーブを曲がってスタートラインのある直線コースへと入った。そしてそのまま1番がガンダムスターマックイーン、2番がヒーローガンダムの順番で1ラップ目を終えた。2機は再び直線の坂路へと向かって行った。

「1周目、舞華さんが勝ってる。よしっ」

「いっけー舞華さーん!」

「雨おねーちゃん負けちゃだめだよー!」

(すげぇ熱中してるじゃねぇか秋雨たち(こいつら)…それにしても……)

すっかり舞華と雨のガンプラレースに夢中になってしまった秋雨たちを横目に、レースの模様に再度目を向けた。そして、ある違和感を深海は感じていた。

(何なんだ?金剛じゃないが「喰らいついたら放さない」と言わんばかりのこのピリッとした感覚はッ?)

額から1粒の汗を垂らしながらレースを見ていた深海の隣に美帆が歩み寄ってきた。そして―――

 

 

気づかれましたか?黒野さん

 

 

「!?」

深海にそう言い放った。それを聞いた深海は思わず背筋をビクッとさせた。思わず深海は美穂に、なんのことだ?と尋ねてしまった。すると美穂は小声で答えた。

「まるで獲物に喰らいつこうとしている猛獣が放つ気迫のようなモノを感じたんじゃないですか?」

「っ!?」

深海は図星を衝かれたことに驚きを隠せなかった。自分の心の内を読まれたことなど殆んど無かった深海は、美帆に…いや、戦場を経験したこともない学生に図星を衝かれ衝撃を受けていたのだ。

「…何故わかった?」

「簡単ですよ。私たちはこの気迫にしょっちゅう追いかけられているからです」

「追いかけられているだと?」

「はい。さっきスタート直後の順位をお教えしましたよね?その一番最後を走っているのが誰か、覚えていますか?」

「………まさかっ!?」

そんな言葉を放ちながら深海はレースへと視線を戻した。既にガンダムスターマックイーンとヒーローガンダムは2ラップ目を終えてファイナルラップの上り坂を登っていた。以前として秋雨たちはレースを夢中で見ていたが、深海はある人物の方を向いた。

「………」

 

雨だ

 

操縦スペースの光に阻まれてよく見えないが、雨のその目つきは先程までの年相応のちょっと幼さが残る目つきとは違っていて、完全に相手を見据え、喰らいつく目だった。そしてレースの模様はと言うと―――

「舞華さんが雨さんを未だに突き放せていない?これはどういう事でしょうか?」

レース開始当初から全くと言っていい程変わっていなかった。先行するガンダムスターマックイーンの右後方1メートル、ヒーローガンダムはその位置から全く微動だにしていなかった。そして2機は上り坂を登り切り、下り坂へと入って行った。

(恐らく…そろそろ来ますね)

曲がりくねった下り坂を駆け下り、残りの曲道が2つになった時、舞華は再び右後方へと目を向けた。するとその瞬間―――

 

 

 

ッ!!

 

 

 

深海と舞華、そして美帆の3人は先程の気迫よりも、もっと深く重たい研ぎ澄まされたモノが解放され強大な風圧となって押し寄せてくるような感覚に襲われた。

 

来たッ!!

 

舞華と美帆の2人が小さく叫びをあげた。それに深海が気づいた時、彼はもう1つのことに気づいた。

あれはッ!!

ヒーローガンダムを操る雨の目元に、淡い青色の炎が揺らめいていたのだ。そしてレースが一気に動いた。ここに来て雨のヒーローガンダムは一気に足の動きを速め、1メートルあった差を一気に埋めに来たのだ。その差は数秒と立たずに埋まり、ガンダムスターマックイーンとヒーローガンダムは横一線に並びながら最後の直線へと入った。

おおおおおおッー!!!

舞華が叫びながらめい一杯操縦桿を前へと伸ばす、ガンダムスターマックイーンは右横に並んだヒーローガンダムのスピードに喰らいつき、ゴールを目指した。そして――――

 

ピィィー!!

 

とてつもない速度を保ったまま、ガンダムスターマックイーンとヒーローガンダムはゴールラインを越えた。

Winner Maika Meguro!

システムは、舞華の勝利を宣言した。

 

 

 

やっ、たぁー!!勝ったぁぁー!!!

 

 

 

両手を上げて喜ぶ舞華の声が部屋に響き渡った。

「ま…負けちゃったぁ」

そして悔しそうにちょっとだけ俯いた雨が呟いた。そして既に雨の目元に現れた「淡い青色の炎」は消えていた。

「おめでとうございます舞華さん。雨さんも良い勝負でしたよ、お疲れ様です」

「あ、ありがとう美帆さん!」

だが、美帆が投げかけた言葉で雨は、笑顔を取り戻してニコリと笑ってみせた。

「うわー!雨おねーちゃんが負けちゃったー!」

「舞華さんも、ほぼギリギリだったね」

「でも、おめでとうございます舞華さん!」

「ありがとう!よし、次も必ず勝ってみせるわ!」

一方の舞華も秋雨たちから称賛されてとても嬉しそうだった。青葉も白熱を極めたこのレースにまだ興奮を抑えきれない様子だった。

「練習でこんなレースを見られるなんて、青葉まだ興奮が収まりませんよ!ねぇ、深さん!………あれ?どうしたんですか?」

青葉が深海に声をかけるが、何故か深海は返事をしなかった。すると深海は、その場から歩き出すと美帆と談笑している雨の元へと向かった。そして―――

「米原雨」

雨の事を呼んだ。雨は唐突に名前を呼ばれて、ひゃい!と驚きの声を上げた。雨は少しビクビクした様子で深海の顔に目を向けた。そして深海は、単刀直入に聞く。と前置きをし、雨に質問をした。

 

君の母親は、深海棲艦じゃないのか?

 

「!?」

その言葉に雨は驚きを隠せなかった。それからしばらく雨は黙り込んでいたが、やがて口を開いた。

 

 

 

 

はい。

 

 

 

 

と、雨は小さく答えた。

 

続く

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