艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』 作:黒瀬夜明 リベイク
鎮守府本庁舎の正面玄関に車を回したビスマルクとプリンツ。それを見た背中にランドセルを背負った秋雨たちと、肩掛けポーチを持った白がやってきた。そして、彼女たちを見送りに深海と時雨の2人が少し遅れて玄関から出てきた。
「じゃあお父さん、お母さん!行ってきます!」
「行ってきます」
「おとーさん、おかーさん、行ってきます行ってきます行ってきます!」
「………!」
「気をつけてね、ちゃんと勉強してくるんだよ?」
「ああ、気をつけてな。ビスマルク、プリンツ、頼むぞ」
「わかったわよ!あんたはダラダラ、農作業に勤しんでなさい」
「ビスマルク姉さまと白さん、秋雨ちゃんたちの事はお任せください!」
そう言って6人は車に乗り込むと、ビスマルクは車を発進させた。深海と時雨の2人は車が見えなくなるまで見送っていた。そして車が見えなくなると、深海は工廠の方へと向かって行った。
「俺は大鳳を見送りに行ってくる。時雨、農作業の準備をしておいてくれ」
「うん。わかったよ提督」
時雨はそう言って本庁舎の倉庫へと戻っていった。一方の深海は工廠へと歩を進めるのであった。
その頃、学校近くの駐車場に着いた秋雨たちは車を降りていき、ランドセルを背負い直した。
「ビスマルクさん、プリンツさん、白さん、行ってきます!」
「行ってきます」
「お買い物、楽しんで来てね来てね来てね!」
「早く行きなさい。遅刻するわよ」
「勉強、頑張ってね!」
「………!」
「それじゃ、学校が終わったらまた迎えに来るわ。必ず、この駐車場に来なさいよ?」
「はい!ビスマルクさんたちも気をつけてくださいね!」
そしてビスマルクは車を駐車場から発車させた。そして駐車場に残された秋雨たちもまた、一路学校を目指すのであった。
「秋雨おねーちゃん!今日は商店街でガンプラバトルした後に、何を買いに行くの?」
「お父さんとお母さんへのプレゼントだよ!」
「今日、お父さんとお母さんの、特別な日」
「あー!そっかそっかそっか!えへへ、楽しみ楽しみ楽しみ!」
と、ご機嫌な会話をしながら3人は校門をくぐるのであった。
一方のビスマルクたちは、車を走らせつつ買い物の話をしていた。
「それでプリンツ。貴女、一体何を考えてるのよ?」
「え、何がですか?」
「今日は買い物行く予定なんかなかったでしょ?」
「ビスマルク姉さま、今日はアドミラルと時雨ちゃんにとって大切な日ですよ?いつもお世話になってるんですから、何か送ってあげないとじゃないですか」
「………!」
「ほら白さんも、お兄ちゃんの好みは私に任せてください!って言ってますよ」
「…はぁ、仕方ないわね……海原デパートに行きましょ」
こうしてビスマルクたちは海原市最大のデパート「海原デパート」に向かうことになった。
そして、工廠へと向かった深海は明石と夕張に出迎えられた。
「提督!大鳳さんのお見送りですか?」
「ああ。大鳳は…もう出撃ドックか?」
「ええ、艤装のチェックと艦載機の搭載がついさっき完了したので出撃ドックに向かいましたよ」
「わかった。お前たちも、いつもありがとうな」
深海のお礼の言葉を聞いた明石と夕張は、いえいえ!と少し照れ臭そうに笑った。すると深海はある事を思い出し、夕張に尋ねた。
「そうだ夕張、大鳳に搭載した艦載機は何だ?」
「あ、はい!ちゃんと軍縮に対応した艦載機を積んでありますよ!」
そう言って夕張は、大鳳の装備が書かれた書類を深海に手渡した。深海はそれを手にすると、納得した様な表情を見せた。
「うむ、「試製烈風後期型」が30機、「流星」が24機、「彩雲」が32機か。問題なしだな」
「軍縮で「対空」「爆装」「雷装」の数値が「+10」より上の艦載機は軒並み解体が進んでますからね」
「ああ。だが終戦を知らない姫級の深海棲艦たちは、これからも現れるだろうから本格的な軍縮には向かえていないがな…中枢棲姫でも深海棲艦の全部は把握できていないし、彼女がすぐにその姫級を説得することも出来ん。難しい問題だな」
「
終戦に伴い、海軍では軍縮が進んでいる。しかし、戦争が終結しても終戦の事実を知らない「姫級」の深海棲艦が度々出現することが、これまでにも多々あったのだ。それを受け、本格的な軍縮は依然として進んでいないのである。
「ありがとうな夕張。じゃあ俺は大鳳を見送りに行ってくる」
「了解です!」
そう言って深海は工廠を後にした。そして、深海が工廠を後にしたことを確認した明石と夕張の2人は、再び作業を再開したのだった。
「夕張、何としても今日中に仕上げるよ!」
「ええ!腕が鳴るわ!」
それからしばらくして、出撃ドックにやってきた深海は早速大鳳を探した。だが出撃ドックは広いが構造が単純だったため、深海はすぐに大鳳を見つけた。
「大鳳」
「あ、提督!来てくれたんですね!」
出撃ドックの一番奥である出撃口がある場所で海を眺めていた大鳳は、とても嬉しそうな表情で深海を迎えた。
「間に合ってよかったよ、大鳳」
「提督っ」
「うおっ、た、大鳳…どうしたんだ?」
深海を迎えた大鳳は、そのまま深海に抱き着いてきた。抱き着いてきた大鳳に少し驚く深海だったが、深海はそのまま大鳳を抱きしめ返した。
「いえ、ごめんなさい。提督と時雨さんの特別な日に一緒にお祝い出来ないのが、少し寂しくて…」
「ああ、そうだったのか…いや、気持ちだけでも嬉しいさ。ありがとうな大鳳」
「提督っ」
大鳳の髪を優しく撫でていく深海。すると、出撃ドックにアラートが鳴り響いた。深海と大鳳が時計を見ると時刻は9時55分となっていた。
「大鳳」
「はい、行ってきます。提督」
「哨戒任務とは言え、危険がないわけじゃない。気をつけて行ってこい」
「はい!」
そして大鳳は出撃ドックに立った。
第一機動部隊、旗艦大鳳!出撃します!
そして新型艤装を纏った大鳳は、青い海原へと駆けていった。
それから海原を進んでいた大鳳はやがて、哨戒任務に随伴する艦隊と合流した。
「あ、来てくれましたか」
海原の向こうから、キチンと整った黒いセーラー服を着た手足を覆った鎧と額の右側に反り返った黒い角、真っ白な肌と左側でサイドテールにした真っ白な長髪が特徴の、大鳳よりも背の高い赤い瞳の女性だった。それに続くように2隻の魚の様な深海棲艦「駆逐イ級」と「駆逐ロ級」の後期型が大鳳の目に入った。
「大鳳すまない、遅くなってしまったな」
「いえ、大丈夫ですよ空母棲姫」
彼女の名は「空母棲姫」大鳳とは戦時中から何度も航空戦で刃を交えていた深海棲艦で、今では大鳳の良き友人となっている。終戦となったものの、彼女は深海に残り今では艦娘と協力して哨戒任務で活躍している。
「それにしても、大鳳。お前、護衛も無しによく1人で来れたな」
「そう言う空母棲姫こそ、人のこと言えないんじゃないのかしら?」
「ま、それもそうだな。戦術的、戦略的に見ても正規空母を護衛なしで航行させるなんて普通ならありえん」
「それも、今が平和である証だわ。これはこれで良いと、私は思うな」
「フッ、そうだな……さ、早く行こう。南西諸島方面に来ている別働隊との合流に遅れてしまう」
「そうね、急ぎましょう!……ところで、合流する別働隊に知り合いでもいるの?」
「ああ。少し前に地中海で邂逅した地中海弩級水姫と欧州装甲空母棲姫だ。特に欧州装甲空母棲姫はお前と同じ装甲空母だ、仲良くなれるかもな」
「それは楽しみだわ!」
大鳳と空母棲姫、イ級とロ級は南西諸島海域へと向かった。
そして、鎮守府本庁舎に戻った深海は玄関で上下作業着姿の時雨と長門に遭遇した。
「大鳳は今出撃したのか?」
「ああ。さて、俺たちも仕事に取り掛かろう」
「その前に作業着に着替えて来い。大切な服、汚してしまうぞ?」
「あ、ああ。すまん、忘れてた」
深海は屋内に戻ると自室のロッカーに掛けられた作業着に着替えた。そして自室のチェストの上に飾られた自分と時雨の結婚式の写真が目に入った。堅苦しい服装が嫌いな深海は、結婚式でさえ私服を着て、時雨は真っ白なウエディングドレスを着て椅子に座っている。深海はその写真立てを手にして眺めた。
「もう、13年たったんだな……」
感傷に浸る深海だが、時雨と長門を待たせていることを思い出し、写真立てを元あった場所に戻し足早に玄関へと向かった。
「すまない。待たせたな」
「ううん。大丈夫だよ提督」
そう言って玄関から出てきた深海を、時雨が笑顔で出迎えた。時雨の笑顔を見て、深海も笑みをこぼした。
「さて、行くぞ。提督」
「ああ。行こう」
長門の一言を受け、深海と時雨、長門の3人は一路農場へと向かった。
「提督」
「ん?何だ時雨」
と、道中に時雨が深海に声を掛けてきた。深海が時雨に聞き返すと、時雨は深海の耳元に顔を近づけ、小声で言った。
「手、繋いで行こ?」
「……ああ」
そう言って深海は、時雨の右手を優しく握った。そして時雨も、優しく握り返した。
「提督、ありがとう」
「ああ。お安い御用さ」
そして2人は長門の後を追って歩いて行った。
……ああ、幸せだな
深海は心の底から、そう感じていた。
続く