艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』 作:黒瀬夜明 リベイク
その後、深海たちが白露たちの住む家に到着したのは日が完全に沈んだ後だった。家の前にはキャンピングカーと白露たちの使っているのであろう自家用の軽自動車が1台止まっていた。空いているスペースに青葉は自分の軽自動車を停め、深海と一緒に車を降りた。
「ありがとう青葉。今日はつゆ姉の家に泊まっていくから、上がらせてもらおう」
「………」
深海が青葉に声をかけたが、青葉は無反応だった。何処かボーっとしていて、上の空のような表情が外灯の明かりによって照らし出されている。
「おい青葉!大丈夫か!」
「えっ…ひゃ、ひゃい!な、何でしょーか!?」
「ボーっとしてないで家に行くぞ。ほら」
「わ、わかりましたぁ!」
青葉がこれ程までに上の空になっている理由は言わずもがな、深海と手を繋いだ。である。深海に手を繋がれた後、コンビニの駐車場まで連れてこられるまでずっと手を繋いでいた為、青葉の頭は半分ショートしかかっていたのだ。
(ふえぇ~まだ心臓がバクバク言ってますよー!)
だが、当の深海本人は青葉の安全を考えて無意識の内に手を繋いでいたのだ。青葉からすれば、いい迷惑(?)である。そして、そんな青葉の内心を知らないまま深海は白露宅の玄関を開けた。
「ただいまー」
「お、お邪魔しまーす」
玄関で靴を脱ぎ、そのまま廊下をまっすぐ歩いてリビングへと向かう。そしてリビングを開けると―――
おとーさんおかえりー!!
「どわぁー!!」
いつも通り、雨葉が飛び掛かってくるのだ。雨葉を受け止め、そのまま廊下に尻もちをつく深海。それを後ろから見ていた青葉は、うわっ!と驚きの声を上げた。
「おとーさんおかえり、おかえり、おかえり!遅かったねー!」
「ぬぅぅ…あ、雨葉。いい加減にしてくれよ…」
「コラー雨葉!またお父さんに飛び掛かって!お父さんを困らせちゃダメでしょー!」
と、雨葉の後ろから秋雨の怒鳴り声が響いてくる。もはや深海が何処かへ出かけた後、帰ってきた時の恒例行事となりつつある雨葉の飛び付きと秋雨の怒鳴り声。深海も深海で、雨葉を避ければいいのだが、雨葉を避けたことで雨葉に怪我をさせる訳にもいかない。つまり、深海からしてみれば「詰んでいる」状況なのだ。だがともあれ、仕事を終えて帰ってこれたこと自体は深海にとっても嬉しい事だった。
「提督、お疲れ様。疲れてないかい?」
最愛の妻である時雨が深海の元へ駆け寄って来てくれたからだ。
「ああ。大丈夫だ…さて、そろそろ離れてくれるか?雨葉」
「むぅ…はぁ~い」
雨葉を抱えたままゆっくりと立ち上がる深海、そしてやっと離れてくれた雨葉。すると、リビングの奥にある台所から夕立と村雨が声をかけてきた。
「提督さん、おかえりっぽい!」
「今みんなの分の夕食を作ってるところだから、ちょっと待っててくださいね」
「ああ、村雨と夕立もしばらくぶりだな。元気そうで良かったよ」
そう言いながらリビングのテーブルに向かって行く深海と時雨。部屋の隅にあるテレビを囲んでいるソファの近くでは秋雨と雨葉が口喧嘩をしていて、それを梅雨葉と白が脇から見ている。そして深海と時雨は隣り合った椅子に腰かけた。
「それにしても提督も大変ね。家族全員を連れて全国の海軍施設を調査しないといけないなんてね」
「確かにっぽい!夕立だったら、絶対無理っぽい!」
「つゆ姉も無理だろうな。こんな面倒くさいことは」
「フフッ、確かに白露ならすぐ投げ出しそうだね」
「まあ、誰かがやらないとまた戦争になるかもしれんからな。そうなれば、もっとめんどくさくなる」
「それもそうね。ならせめて、今日はゆっくり疲れを取っていってね提督!」
「ああ。世話になるよ……青葉、お前もこっちに来いよ」
「あ、はい!お邪魔します…」
深海はリビングの入り口で立ち往生していた青葉を手招きし、テーブルの向かい側の席に座らせた。そして青葉も一緒にいたことに夕立は驚いていた。
「青葉さんも一緒っぽい!?提督さん、どーしてっぽい?」
「今回の調査に協力してもらっているんだ」
「そーなんだ!青葉さんも大変っぽーい」
「いえいえ!今日はお世話になります!」
「時雨ちゃんから話は聞いてるから、大丈夫ですよ青葉さん!ゆっくりしていってくださいね……さて、こんな所かしら。夕立ちゃん、味見お願いね」
「任せるっぽーい!」
そう言って夕立はスプーンを高く掲げた。リビングには鼻にツンッと来るがそれでいてとても食欲をそそる美味しそうな匂いが漂っていたのだ。
「この匂い…カレーか。村雨が作ったのか?」
「勿論!お久しぶりの、村雨特製カレーです!」
「僕も久しぶりに食べるなぁ…楽しみだよ村雨」
すると、廊下の方からドタドタと大きな音が響いてきた。無論、その場にいる全員が誰が立てている音なのかはわかっていた。そして―――
いっちばんに私に味見させなさーい!
と叫び声をあげながら、白露がリビングへと駆けこんできた。のだが―――
「はふぅ~村雨の作ったカレー美味しいっぽ~い」
夕立に先を越されてしまっていた。
「だあぁー!いっちばんにカレーの味見するつもりだったのにー!!」
と、白露が絶叫する。
「作ってる時からリビングにいないんじゃ、夕立ちゃんに先越されるに決まってでしょ白露ちゃん」
「確かにそうだな。残念だったなつゆ姉」
「あ、提督帰って来てたんだ。おかえり!」
「ああ。しばらくぶりだな、つゆ姉」
「さて、それじゃあ夕食にしましょうか!」
こうして白露宅での夕食が始まったのだった。
夕食はとても賑やかなものとなった。昔の話から、最近の話。たくさんの会話に花が咲き、黒野一家にとって久方ぶりの家族団らんの時間が流れていったのだった。そして時間はあっという間に過ぎ、深海たちは入浴を済ませリビングでくつろいでいた。すると青葉が深海に話しかけてきた。
「あの、深海司令官。青葉は今日何処で寝ればいいんでしょうか?」
「ん?ああ、そうだったな。村雨、青葉の寝床はどうなってるんだ?」
深海が台所で片づけをする村雨に話しかける。
「お布団と枕は準備できてるから大丈夫!後で案内しますから!」
村雨はウインクをしながら答えた。
「恐縮です!」
「いえいえ!秋雨ちゃんたちと白さんは、昨日と同じ。2階の私たちの部屋でお願いね!」
「はーい!」
そして深海が時計を見ると、時刻は既に9時になっていた。
「3人とも、そろそろ寝る時間だよ」
と、同時に時雨が秋雨たちに早く寝るように促した。
「えー!まだ起きてたいよおかーさん!」
「駄目だよ雨葉。きっとお父さんたちは5人でお話がしたんだよ。だから、もう寝るよ!」
「お父さんたちの邪魔。しちゃ駄目」
「むぅぅ…わかったよぉ……おやすみなさーい」
と、駄々をこねた雨葉だったが、秋雨と梅雨葉に丸め込まれることになりそのままリビングを後にしたのだった。それに続いて白もリビングを後にする。
「………!」
「ああ。おやすみ、白」
白に向かって手を振る深海。すると―――
「じゃ、じゃあ青葉もそろそろ寝ようかなぁ!村雨さん、部屋まで案内してくれますか!」
「え?わ、わかりました…じゃあ案内しますね」
更に青葉も村雨に続いてリビングを後にしていった。深海は少し不思議がったが、たぶん空気を読んだのだろうと、勝手に納得をしていた。そしてしばらくすると村雨が戻ってきた。リビングには深海と時雨、村雨の3人が残っていた。
「みんな村雨達に気を使ってくれたのかしら?」
「たぶんそうだよ。僕たち5人が揃う事ってかなり久しぶりだしね」
「まさか秋雨たちにもそう思われているとはな…子供はやっぱり、親の事見てるんだな」
そんな会話をしていると、リビングに白露と夕立が入ってきた。2人の頭からは湯気がモクモクと昇っていた。
「ふぃ~村雨ぇ~お風呂お先~」
「ポカポカっぽ~い」
「はいはーい!じゃあ、村雨もお風呂行ってくるからね!」
そう言って片づけを済ませた村雨も、洗面所へと歩いていった。すると深海は、あることに気づいた。
「そう言えば俺は何処で寝るんだ?」
「僕たちと一緒に、離れで寝るんだよ」
「もっちろん!白露たちとも一緒だよー!」
「一緒っぽーい!」
はああぁぁぁー!?
深海の絶叫がリビングにこだました。
続く