艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP36 呉鎮守府の監査(折原といろは編)

時間は少しだけ遡る。

 

矢矧がいろはの戦端が開かれて少し経った頃、深海と折原のガンプラバトルを観戦していた浦風がある不自然なことに気づいた。

「ねえ浜風、提督さんはなんで反撃せーへんのじゃ?」

矢矧が戦闘を始めるよりも先に戦闘を開始した深海だったが、浦風の言葉の通り相手である折原のブラックストライクフリーダムに対してほぼ反撃を加えていないのだ。

「確かに妙だわ。回避に関すれば被弾ゼロだけど、それにしても何で提督は…」

浜風も浦風と同じ考えのようだった。しかし磯風は何か違うものを感じ取っていた。

「あの司令の事だ。また何か企んでいるのかもな」

「流石にそげな事は……ありえへん。って言えへんのがウチらの提督さんじゃったね…」

「そうだった…何を考えているのかはわからないけど……きっとろくでもないことに違いないでしょうね」

 

そして当の深海はと言うと―――

「墜ちろ!」

ブラックストライクフリーダムの腹部から放たれたカリドゥス複相ビーム砲を横一回転で回避してみせた。それに続くようにして襲い来るスーパードラグーンの火線もひらりひらりと躱していく。そしてブラックストライクフリーダムが中型の対艦刀を持って突っ込んでくれば、深海は左手に逆手で握ったナイフで対艦刀を受け止めて弾き返す。

「何故貴様の様なガキが、彼女の隣にいる!その場所は私の物になる筈だったのだぞ!」

「なに言ってるのか意味が分からんぞお前!」

ナイフで中型対艦刀を押し返しながら深海が叫ぶ。

「言葉の通りだ!さっさと私の目の前から失せろ!邪魔者がぁー!!」

ブラックストライクフリーダムが再びカリドゥス複相ビーム砲を放ってくる。

(うーわ、こいつめんどくせ)

と、内心で呆れながら深海はカリドゥス複相ビーム砲の砲撃を回避する。するとそこに開きっぱなしの矢矧との通信回線からすすり泣く声が聞こえてきた。

(っ!?これは矢矧の声じゃないな。という事は…)

深海が内心で呟いていると、今度はハッキリとした言葉が聞こえてきた。

「…やっぱり、こんな弱い私なんかじゃ…か、彼に愛される資格なんてっ……うっ、うううっ……」

「………」

それはいろはの声だった。その言葉の内容を聞きながら、深海は迫ってきたブラックストライクフリーダムの中型対艦刀を再び受け止める。

「私には矢矧さんを愛せる資格があるのだ!その為に今の地位まで上り詰めてたのだからな!」

「………」

しかし深海に折原の言葉は届いていなかった。寧ろ深海は矢矧との通信回線から聞こえてくる、いろはの言葉に耳を傾けていた。すると―――

「…私と彼は、昔からずっと一緒だった。幼い頃から、学生の時も、社会人になっても……私はずっと彼の傍にいた。傍にいたかったから、私はずっと頑張って努力した。でも、彼は振り向いてくれなかった。そして彼は貴女に惚れて、後を尾けるようになった。その事を知ってても、私は彼の傍にいたくてずっと彼に協力していた……」

いろはの独白が聞こえてきた。そして全てに納得した深海は―――

「フッ、そう言う事か…」

「なんだと―――グワッ!」

突然ディオーシャ・改の右足でブラックストライクフリーダムを蹴り飛ばし、その勢いに乗ってスラスターを最大出力で噴射。一路、いろはと矢矧のいる宙域へと向かった。

「待て!」

それを折原もブラックストライクフリーダムのスラスターを全開にして追いかけた。その宙域に残された深海の置き土産に気づかずに。

 

 

「だからここで彼が貴女に負ければ、彼は私に振り向いてくれるかもしれない!そう思って―――」

 

ピーピーピーピー!!

 

突然いろはの操縦スペースに接近警報のアラートが鳴り響いた。

「「え?」」

突然なりだした接近警報に驚くいろはと、接近する物の正体に気づき驚く矢矧。そしてそれは一瞬の間に現れると、いろはのフリーダムガンダムジグブラックの後ろに回り込み両方のウイングバインダー基部を切り落とし、そのままフリーダムガンダムジグブラックを羽交い絞めにした。

「な、なに!?」

困惑するいろは。そして現れた物の正体に声を上げる矢矧。

 

 

深海提督!?

 

 

「悪いが、大人しくしてもらうぞ」

ガンダムディオーシャ・改はフリーダムガンダムジグブラックを羽交い絞めにした。

「いろは!」

そこへ遅れるようにして折原が駆るブラックストライクフリーダムが姿を現した。

「…貴様、女性を人質にするとは。卑怯だぞ!」

「徹!」

いろはが駆るフリーダムガンダムジグブラックを人質に取った深海に、折原は至極真っ当な言葉を言い放った。だが、深海から返ってきた言葉は常識とはかけ離れた内容だった。

 

 

やっと2人が向き合ったな

 

 

「なに?」「えっ…」

折原といろはの2人は困惑した声を上げるのだった。深海は言う。

「こんな状況で悪いが、追い込ませてもらうぞ」

直後、折原のいる操縦スペースにロックオンアラートが鳴り響いた。

「ロックオンだと!?何処だ!」

折原が慌てて周囲を見回した時、そこには4基のドラグーンがブラックストライクフリーダムを囲む様に展開していた。

「なっ!?いつの間に!」

「お前が急加速した時にドラグーンをバラ撒いたのさ。勿論、未稼働の状態でな」

「クッ、姑息な真似を…ならば私も―――」

だが直後、再びロックオンアラートが鳴り響いた。折原がロックオン方向に目をやると、そこにはルプスビームライフルをブラックストライクフリーダムへ向けるウィンドフリーダムガンダムの姿があった。

「なっ!や、矢矧さん。貴女が何故私に銃口を向け―――」

折原の言葉を遮るように矢矧の言葉が飛ぶ。

「すぐ近くに貴方の事を好いている相手がいるのに気づけない人に言われたくないわ」

「な、なんだと?」

矢矧に指摘され困惑する折原。その間に深海はいろはに声をかけた。

「聞こえているか?黒いフリーダムのファイター」

「あ、な、なにを?」

「悪いがお前の話を盗み聞きさせてもらった。お前が内に溜め込んだ物を吐き出すなら、今だぞ?」

深海の言葉を聞いたいろはもまた困惑していた。無理もないか、と深海は内心で呟く。だが深海は続ける。

「今ここで気持ちを伝えなければ、お前は一生前へ踏み出せない。その気持ちを抑え込んだまま、胸の内の苦しみに耐え続けることになる。それでいいのか?」

「………」

深海の言葉にいろはは顔を落とす。だが深海は黙って彼女の返事を待った。

 

「すぐ近くに私を好いている者がいるとは、どういうことですか!私は貴女さえいればそれで―――」

「じゃあ私から言うわ。あんたの事、私は好きと思ったことないわ。勝手な自己判断で私の気持ちを捏造しないで欲しいわ」

「なっ!?」

矢矧の言葉に心を抉られたような感覚になる折原。だが矢矧は言葉を止めない。

「そもそも私は、中身のない外面だけの軽薄な人は嫌いなのよ。私にだけは上品に振舞っても、さっき私の部下に見せた横暴な態度、忘れたとは言わせないわよ?」

「………」

矢矧の言葉に折原が黙り込んでしまった。すると―――

 

 

徹くん!

 

 

いろはの大声が3人の操縦スペースに響いた。それと同時にフリーダムガンダムジグブラックのスラスターが少し噴射されたのを深海は目にした。それを見た深海は羽交い絞めを解き、フリーダムガンダムジグブラックを自由にした。すると、フリーダムガンダムジグブラックはゆっくりとブラックストライクフリーダムの方へと漂って行き、やがて正面からブラックストライクフリーダムを抱きしめた。そして、折原の隣で操縦していたいろはが、折原の操縦スペースに入って来ると彼女もまた折原にギュッと抱き着いた。

「い、いろは?」

「ごめんなさい徹くん。でも、私……」

いろはの目には涙が浮かんでいた。そんないろはを見た時、折原はようやく気付いた。

「君…だったのか?」

「……私、怖かったの…ずっと好きだったけど、断られたらもう隣に居れないって思って…だから、だからっ」

いろはは涙を流しながら折原に告白した。折原は驚いた表情を一瞬見せたが、やがて悔しそうに告げた。

「私……いや、僕の方こそごめん。今まで、いろはの気持ちを無視してしまってて」

だがいろはが優しく折原を諭す。

「もういいの、徹くん……傍にいさせてくれれば、私は……幸せだからっ」

「いろは!」

そう言って、徹はいろはを抱きしめ返したのだった。

 

「やれやれ…」

深海は、ふぅ。と息を吐きながら両手を振ったのだった。

 

続く

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