艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP37 呉鎮守府の監査(後編)

その後、折原といろはは深海と矢矧に降参し唐突に始まったガンプラバトルは終了となった。システムがシャットダウンされ、操縦スペースとプラフスキー粒子のフィールドが消えていく。深海と矢矧の目の前には抱き締め合っている折原といろはの姿があったが、やがて折原といろはは矢矧の前にやって来て、頭を深く下げたのだった。

「ご無礼を働いてしまった事、本当にすみませんでした。矢矧さん」

「私からも謝らせてください。私がもっとしっかりしていれば、貴女にご迷惑をお掛けする事も無かった筈ですから」

頭を下げる2人に矢矧は、ふぅ。と一息吐くと、落ち着いた口調で返事をした。

「もういいわよ……それよりも彼女の事。大事にしなさいね」

「ありがとうございます、矢矧さん」

折原といろはは頭を上げ、今度は脇で見ていた磯風の元へとやって来てまた頭を下げた。

「貴女の事を殴ろうとしてしまったこと、どうかお許しください」

「そうだな。以後は気を付けてくれ…艦娘である私たちに手を出せば、お前も相当な罰を受けることになるからな」

「ありがとうございますっ」

磯風もまた、自分に手を上げた折原の事を許すことにした。折原はもう一度頭を下げて感謝を述べた。そして最後に、折原といろはは深海の元へと歩いてきた。深海はスマホで何か調べ物をしていたが、折原といろはの存在に気づくと顔を2人の方へ向けた。

「貴方がいろはの心を動かしてくれなければ、僕は大きな間違いを犯してしまう所でした。貴方のご厚意に深く感謝します。ありがとうございます。そして数々の暴言、本当に申し訳ございませんでした」

深く頭を下げる折原に深海はフッと笑みを浮かべる。

「ああした暴言を吐かれることには慣れている、俺は気にしていないから君も気に病むな……それと1つ、尋ねたいことがあるんだが…」

「え?あ、はい。何でしょうか?」

折原が顔を上げるのと同時に、深海はスマホを操作し「株式会社愛光度(あいこうど)化粧品」のホームページに掲載されている「愛光度化粧品ガンプラバトルチーム」のページを折原に見せた。

「これは…我が社のガンプラバトルチームですね。彼らが何か?」

「俺はこう見えて海軍本部の監査官でな。訳あって今、全国の海軍施設をまわっている。詳しい内容は軍機に触れるから言えないが、ガンプラバトルで腕の立つファイターを探しているんだ。そこで、君たちの会社のガンプラバトルチームに協力を要請したいんだ」

深海は偽造身分証を折原に見せながら、いざという時の協力を要請した。

「そ、そうでしたか……あ~」

だが折原は歯切れの悪そうに口を開いた。するといろはが、言葉を詰まらせた折原の言葉を代弁した。

「私たちの会社のガンプラバトルチームのメンバー何ですけど…その、少し癖が強い人たちばかりで……自分たちより強い相手には敬意を払えるのですが、弱い相手にはとことん無礼を働いてしまうのです…」

「そのせいで、実力はあるのに周囲からの評判は軒並み悪いのです。ですので、彼らに1度バトルを挑んでいただく必要があるのです…それでもよろしければ……」

「(なるほど。一度、わからせる必要があるという事か…)構わない。監査の都合上また呉に来ることは難しいし、今年の冬季全国大会*1にも出場するのは難しいだろう。来年の夏季全国大会*2の一般の部で会えるのを楽しみにしているよ」

「わかりました。貴方がそう言って頂けるのであれば、こちらも予定を組むのが楽になります。感謝します監査官様」

「こちらから願い出た話だ。話を受けてくれたことに感謝するぞ折原社長」

そう言って深海は右手を出した。それを見た折原は、深海の右手を左手でグッと力強く握り締めて固い握手を交わした。

「では、僕たちはこれで…」

「ああ。また何処かで会おう」

2人が握手を終え手が離れた直後、いろはが唐突に深海に尋ねた。

「あ、あの…もし宜しければ、お名前を教えてもらえませんか?」

「……黒野深だ」

深海は本名を名乗るか少し迷ったが、結局偽名で答えることにした。いろはは何か確信めいたような表情を一瞬作ると、ありがとうございます。と言って、先に出口へ向かって歩いていった折原の後を追いかけた。そして2人の姿は商店街へと消えていった。

「さて、俺たちも帰るか」

「そうね。なんだか、私も疲れたわ」

「まさか、こんな事になるなんてな。俺も少し疲れたぞ」

そんな会話をしていると、磯風たちが深海と矢矧の元に歩いてきた。

「ようやく終わったようだな。司令」

「ぶち待ちくたびれたわー」

「では提督。一緒に参りましょうか」

「ん?ああ、わかった」

「あ、深海提督……私も、いいかしら?」

「ああ。構わない」

そして深海たちも夜の街に消えていったのだった。

 

 

 

翌日…

 

「……深海司令官。遅いですね」

青葉は呉鎮守府の正面玄関で深海を待っていた。すると、何故かよろよろした足取りで深海が呉鎮守府へ戻ってきた。

「あ、深海司令かーん!……て、あれ?どうしたんですか深海司令官…少し疲れ気味なのでは?」

「…大丈夫だ……少し、遊び過ぎただけだ……」

「え?」

すると正門の奥から、キラキラした磯風、浦風、浜風、矢矧が帰ってきた。それを見た青葉は、大体の内容を察したのだった。そして深海と青葉は、呉鎮守府敷地内の監査を1日かけて終了させたのだった。そしてその事を金田提督に報告に行くと、金田提督は深海に尋ねた。

「深海。お前、この後は佐世保に行くのか?」

「はい。それが一応仕事ですから…」

そうか。と答えた金田提督は少しの間何かを考えていたが、やがて口を開き深海に尋ねた。

「深海、北九州沖の赤色海域についてお前はどう思っている?」

「…あれは俺と深海棲艦たちで何とかしますよ」

「そ、そうか…なら、俺たちが増援を出す必要は無いという事か…」

「ええ。海軍本部でその打ち合わせをもう済ませていますので、大丈夫です」

「わかった。気を付けてな」

「ありがとうございます。さあ、帰るぞ青葉」

「了解です!」

そう言って深海と青葉は執務室を出ていった。本庁舎の廊下を歩いて正面玄関へと向かっていると、玄関前で磯風、浦風、浜風、矢矧と遭遇した。

「もう行くのか、司令?」

「ああ。またしばらく会えなくなるが、元気でな」

「はい、提督もお気を付けて!」

「提督さん。あんまり、無理したら駄目じゃからね?」

「ああ、わかっている。矢矧も磯風たちの事、よろしく頼むな」

「ええ。任せてちょうだい……ところで、深海提督……」

ふと、矢矧が深海に尋ねた。

「昨日の夕食代やガンプラバトルの代金、本当に全部貴方持ちで良いの?」

「ああ。昨日の全部ひっくるめて「監査」だからな」

深海はそう言って、悪そうな笑みを浮かべた。矢矧はそんな深海を見て、そ、そう。と苦笑するのだった。

 

続く

*1
第13回ガンプラバトル全国大会

*2
第14回ガンプラバトル全国大会

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