艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP42 深海、抜描

「うん分かった。明日の0800(マルハチマルマル)時に出撃だね」

その日の夜、佐世保鎮守府本庁舎の執務室で鈴村提督と深海は出撃の話をしていた。と言っても、出港時刻を深海から伝えるだけなのだが。

「勿論帰ってくるつもりだが、時雨たちの事をよろしく頼む」

深海は勿論無事の帰還をするつもりだが、その間自分は時雨たち家族を護ることが出来ない。その事だけが、深海の唯一の不安だった。

「そこに関しては勿論だよ、任せて」

鈴村提督がニコッと笑顔を作ってみせる。その表情を見て深海を少しでも安心させてあげようとしているようだった。

「そうだ、お兄ちゃんに1つお願いしたいことがあるんだけどいいかな?」

鈴村提督の口からその言葉が出たのと同時に、本人が少し真剣な表情になったのを見逃さなかった深海は、ただ一言、なんだ?と尋ねた。すると鈴村提督は頭にかぶっていた帽子を正すと、視線を深海の目線と交差させた。

「もし、深海棲艦との交渉に失敗したら平文で良いから「月ハ欠ケタリ」って無電を打って欲しいんだ。北九州沿岸の街に避難勧告を出さなきゃいけないからね」

鈴村提督の話を聞いた深海は、ほぉ。とした顔で鈴村提督の顔を見た。しばらく見ない間に、成長したものだ。とその顔が語っている様な顔だった。そして僅かに口元に笑みを浮かべた深海は返答した。

「わかった。交渉に応じた場合はどうすればいい?」

「その場合には「月ハ満チタリ」って無電をお願い。交渉に失敗して戦闘になって、戦闘が集結した時も同じものをよろしくお願いするよ」

「了解した。では、俺は明日に備えてそろそろ寝させてもらう」

「うん、おやすみなさい!」

執務室を出ていく深海を見送った鈴村提督は、ふぅ。と息を吐くと執務机の隅に置かれている黒電話を取った。ダイヤルを回して番号を合わせ、受話器を耳に当てる。しばらくすると、電話の向こうから声が聞こえてきた。しかし静まり返っている執務室には鈴村提督の声しか響いていなかった。

「…うん。深海お兄ちゃんに平文の事、ちゃんと伝えたよ…うん。沿岸の街の避難勧告の為って伝えてある……うん、うん。わかった、じゃあその時はよろしくね」

そう言って龍太は受話器を置いた。そして暗くなった窓の外に視線を向けながら呟いた。

 

頑張ってね、深海お兄ちゃん

 

そして翌日、6時に目を覚ました深海は時雨を起こさないように二段ベットから降りていつもの私服に着替えた。そして、部屋を出ようとドアノブに手を掛けた時―――

「行ってらっしゃい、提督」

「っ!ああ、行ってくる」

時雨の優しい言葉を背に受け、深海は部屋を出ていった。

「ちゃんと帰って来てね」

静まり返った室内で時雨は小さく囁くのだった。

 

 

時刻は7時40分を過ぎ、いよいよ出撃間近となった出撃ドックにはネ級改、潜水鮫水鬼、高速軽空母水鬼、近代化戦艦棲姫、そして明石よ夕張が待っていた。出撃ドックへと足を踏み入れた深海に最初に声を掛けてきたのは、意外にも高速軽空母水鬼だった

「よッ!久しぶりだな深海提督!」

「元気そうだな高速軽空母水鬼。今日の制空権確保は頼むぞ?」

「ヘヘッ!勿論、このアタシに任せろって!」

高速軽空母水鬼は親指を立ててニカッと笑ってみせた。

「マジ、あたしの砲撃もアンタらの制空権確保に掛かってんだから、ちゃんとしっかりやってくんなきゃ困るからね?」

すると今度は近代化戦艦棲姫が少しダルそうに話しかけてきた。

「んだよ近代化戦艦棲姫!アタシの戦闘機隊が信じられねーのか?」

「事実でしょ。戦艦は制空権が取れなきゃ、まともに戦えない。航空戦艦のコイツ(深海)ならまだしも、あたしは自力では制空権の確保も維持も出来ないんだ」

「そこもわかってるよ!ちゃんと制空権は取ってやっから、安心しろって!」

「はいはい」

(本当に大丈夫か、こいつら)

深海は率直な感想を脳内で呟いた。そしてネ級改と潜水鮫水鬼が話しかけてきた。

「深海、今日はよろしく頼むぞ」

「ああ。背中は任せたぞ、ネ級」

「任せておけ!」

「それにしても、お前と一緒に戦うのは久方ぶりだな。腕が落ちていないだろうな?」

「心配するな、艤装は変わったがぶっつけ本番で何とかしてやるさ。海中からの奇襲一撃は頼むぞ、潜水鮫水鬼」

「ノープロブレムだ」

深海はネ級改と、潜水鮫水鬼の自信にあふれた表情を見て少し安心感を覚えた。戦時中は幾度も刃を交えたネ級改と、終戦後からネ級改と共に3人でペアを組む様になった潜水鮫水鬼。この2人がいれば大丈夫だ。と深海は出撃の度に思うのだった。

「提督、ちょっとこっちに来てください!」

すると深海が明石に呼び出された。深海は2人の元へ向かうと、唐突に黒いロングブーツを手渡してきた。

「なんだこのロングブーツは?」

「深海提督の新しい艤装の為に新調したロングブーツです!今のそのスニーカーだと、機関の出力が上手く伝わらないことが判明したので!」

「なるほどな。確かにそれは一大事だ、有難く受け取らせてもらおう」

そう言って深海はロングブーツを受け取り、その場でスニーカーから履き替えた。すると、履き替えが終わった直後、ドック内にあるスピーカーから鈴村提督の声が聞こえてきた。

「まもなく出撃3分前!繰り返す、出撃3分前!」

スピーカーから聞こえてくるの龍太の声は、いつもの子供っぽさはなく、凛々しい指揮官としての声だった。その言葉を聞いて深海は、フッと口元に笑みを浮かべたのだった。

「さて、行くか!」

そう言って深海たちはドックの先にある「出撃」と書かれたパネルを踏んだ。すると足元に海水が流れ始め、海と繋がっているゲートが開いた。そして天井から深海の艤装の中央部と主砲が降りてくるとそのまま腰に装着され、続いて左肩に飛行甲板、ロングブーツの踵には舵機の形をしたパーツが取り付けられる。

 

改装航空戦艦深海、抜錨する。出るぞ!

 

新しい艤装を纏い、深海は海原へと駆けだした。

 

続く

 

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