艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP43 北九州沖へ

佐世保を出港した深海たちは、深海、ネ級改、高速軽空母水鬼、近代化戦艦棲姫、潜水鮫水鬼の順に単縦陣を組んで北九州の沖合へと向かっていた。潜水鮫水鬼は今はまだ敵勢力圏外と言うこともあって海上を航行をしている。海軍施設の監査で久しく海上へ出ていなかった深海は、久しぶりに海の上に吹く風を心地良さそうに味わっていた。交渉に失敗すればこれから戦闘になるかもしれないと思ってはいるが、やはり自分の中に流れている深海棲艦の血の影響なのだろうか。深海は肌を流れる風を浴びて少し感傷に浸っているようだった。

「どうした深海。緊張感のない顔をするとは」

深海の背後からネ級改が深海に尋ねてきた。深海は口元に笑みを浮かべてネ級改に返答した。

「なに、しばらくぶりの海上なんでな」

「ああ。なるほどな!」

深海の返答にネ級改も笑みを浮かべた。自分とは戦時中に何度も刃を交えてきたネ級改だからわかる感情なのかもしれないな。と深海は不意に思ってしまった。深海の中ではネ級改もまた、気を許せる相手。の内の1人なのだ。そして、それからしばらくは5人とも会話の無いまま南シナ海を大陸方面へ向けて北上していった。やがて五島列島の東側の沖を通り過ぎた頃だった。

「……赤色化した海面が増えてきたな」

「そろそろ相手の勢力圏内だからな」

海面が血のように赤く染まった海域「赤色海域」へと深海たちは足を踏み入れていた。赤色海域となった海は無数の深海棲艦が跋扈する非常に危険な海域で、姫級や鬼級と呼ばれる深海棲艦が姿を現すと、それに呼応して赤色海域は広がっていく。更に嫌な点を挙げると、赤色海域内にいるイロハ級と呼ばれる深海棲艦たちはその発生源となっている姫級や鬼級の深海棲艦の指揮下に入ってしまう。ネ級改のような一部例外なイロハ級はいるものの、最悪の場合戦闘が発生してしまう。というのは、そう言うことなのだ。

「潜水鮫水鬼、対馬海峡が見えたら潜航してくれ。先に俺たちが防空埋護冬姫と交渉するから、その間に俺たちとの距離を詰めてほしい」

「わかったぜ」

「出来るだけ交渉での解決を図る。合図があるまでは発砲はするなよ」

「了解」「わかった」

旗艦として深海は艦隊のメンバーに指示を次々送る。交渉に失敗してしまうと、北九州の沿岸に住んでいる一般市民にも被害が及びかねないからと、深海は考えているからだ。出来ることなら、佐世保鎮守府で伝えられた「月ハ欠ケタリ」という平文を打ちたくはない。だが、それは建前だ。いざとなれば必ず打つ。と深海は心に刻み、五島列島沖を北上していった。そしてその上空に1機の艦上偵察機。機体を白一色で染め、主翼と胴体横には赤い日の丸、胴体の日の丸の後ろには赤い縦のラインが2本、水平尾翼には「653-312」と書かれた番号を上下に挟む様に上に2本下に1本の赤い横ラインが入った「彩雲」が飛んでいたことに深海たちは気づいていなかった。

 

 

深海たちが北上している五島列島北東海域から列島を挟んだ反対側の海域を航行する船団がそこにはいた。6隻の大型輸送船が複縦陣を作ってゆっくりと航行し、その周囲に3つの航跡が三角形を形作って航行していた。輸送船団の先頭を行くのは、縁に沿って朱い飾りのついたノースリーブの白い弓道着に、肩口を紺色の糸で縫い付けた振袖。胸元には少し大きめの胸当てを付けて、腰の前に「づほ」と書かれた後甲板状の前掛けと、丈が短く赤に白いラインが入ったのもんぺを着用し太腿の辺りを金具で留めて、白い足袋と紅白のぽっくり紐を付けた焦げ茶色のぽっくりを履いている。左手には身の丈程はある和弓を携え、腰の裏には飛行甲板と艦艇部が合わさったような矢筒と「12.7㎝連装高角砲」を腰の左右に備えた艤装を装着した、額に紅白の鉢巻きを撒いてセミロングの茶髪を別の紅白の布で一房に縛ったポニーテールと、前髪左横に着けた桜の華を模った髪留めを風になびかせながら進む少女だ。すると少女は不意に右耳に右手を当てて頷き始めた。どうやら、先程飛ばした艦上偵察機「彩雲」が五島列島沖を北上する5隻編成の艦隊を発見したようだった。少女は耳に手を当てたまま彩雲の搭乗員となっている妖精からの報告を聞き終わると、顎に指を当てて考え始めた。

(あの辺りは確か、何日も前から赤色海域になってた筈…艦隊の編成は、航空戦艦1、戦艦1、重巡1、空母1に潜水艦1か……もしかしたら、赤色海域の発生源になってる深海棲艦に交渉しに行くのかな?)

少女はそこまで考えたところで、輸送船団の右後方で航行していた海防艦の艦娘「鵜来(うくる)」が少女に短距離無線機越しに尋ねてきた。

瑞鳳(ずいほう)さん。どうかしたのですか?」

「あ、うん。ちょっと私の所の偵察機が近くの海域を北上中の艦隊を見つけたから、どうしようかな。って考えていたの」

前髪に桜の華の髪留めを付けた少女「瑞鳳(ずいほう)*1は鵜来の問いかけに答えた。すると、今度は輸送船団の左後方を航行していた海防艦の艦娘「稲木(いなぎ)」が驚いたような口調で話しかけてきた。

「あの辺りは赤色海域です!そんな所に5隻で向かうなんて危険だ!」

どうやら、稲木の通信アンテナも先程の報告電は受信していたようだ。と瑞鳳は思った。

「確かにね……でも、私たちの任務はあくまで輸送船団の護衛…どうしようかな?」

瑞鳳は迷っている様子だったが、ふと先程の報告電にあった「ある単語」が引っ掛かった。

(そう言えば、航空戦艦1隻って報告があったっけ……伊勢や日向、それに扶桑型姉妹も退役してるから今海軍に航空戦艦なんて……)

瑞鳳はそこで記憶を辿ってみることにした。頭の中で目まぐるしく記憶のビジョンが流れていく。すると、ある一つの場面で流れは止まった。そして―――

(航空戦艦って、まさかっ!)

瑞鳳は口内で思わず驚きの声をあげた。瑞鳳の記憶の中から引っ張り出された航空戦艦の記憶は、ある人物と一致したのだ。

「だとしたら、放ってはおけないかな…」

瑞鳳は小さく独り言を呟いた。そしておもむろに、矢筒から1本の矢を取り出し、その矢を和弓につがえる。そして短距離無線機に向かって口を開いた。

「鵜来ちゃん、稲木ちゃん、私、あの艦隊を援護するね」

「え!援護って言っても、どうやって!?」

鵜来が当然の疑問を投げかけてきた。瑞鳳は落ち着いた口調で告げる。

「大丈夫、戦闘機隊を飛ばして上空直掩に当ててあげるだけだよ。その後私たちは佐世保に輸送船団を送り届けるの」

「なるほど。軽空母である瑞鳳さんだから出来る援護。という事ですか、稲木は異論有りません!」

「わ、私もです!」

瑞鳳の説明に納得した稲木と鵜来が返事を返してくると、瑞鳳は口元に小さな笑みを浮かべて、ありがとう。と伝えた。そして機関の出力を最大にした瑞鳳は、風上に向かって最大戦速で突進し、和弓を引き絞った。

 

653空、発艦始めてください!

 

凛々しい口調で矢を大空へ向かって放った。その矢が光り出すと同時に、先程の彩雲と同じ、機体を白一色で染め、主翼と胴体横には赤い日の丸、胴体の日の丸の後ろには赤い縦のラインが2本、水平尾翼には653空の航空隊番号と機体番号を上下に挟む様に上に2本下に1本の赤い横ラインが入った、熟練の搭乗員が操るスマートな機体「零戦52型」15機へと姿を変えた。編隊を組んだ零戦15機は、五島列島の上空へ向かって行くのを瑞鳳は見つめていた。

(お願い…あの子を護ってあげて)

瑞鳳は小さくなっていく零戦に向かって祈る様に投げかけた。

 

続く

 

*1
月華団の瑞鳳とは別人

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