艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP44 月ハ

それから1時間程が過ぎた時、深海たちは赤色海域の深部、北九州沖へと辿り着いた。周囲の海面は全て赤に染まり、ちらほらとだがピケット艦を務めているのであろう駆逐イ級やロ級、軽巡へ級などが姿を現していた。遭遇しても相手は発砲をしては来ない。深海棲艦が編成の大半を占めるうえ、高速軽空母水鬼や近代化戦艦棲姫といった鬼級や姫級がいることが理由だった。

イロハ級たち(あいつら)は姫級や鬼級に向かって砲や魚雷を撃ってくることを本能的に避ける。か)

深海は、戦争を終結させた後しばらくして、中枢棲姫から聞かされた言葉を思い出していた。深海棲艦と人間のハーフである自分がその枠に納まっていることに一度は驚いたが、今にして思えば自分の母親である「空母水鬼」も鬼級の内の一人だ。その血を引いている自分も鬼級の枠だ、と言われるのも納得である。そんな事を考えながら、視界の端を流れていくイロハ級たちを横目に海を進む深海。すると、正面方向に重巡ネ級に戦艦ル級や空母ヲ級が正面を、上空を深海猫艦戦が固めている艦隊が姿を見せた。そしてその最後方には白地に黒い焦げたような模様がはいったフードを被り、純白のドレスを身に纏うもその両腕は鎖で縛られた長い白髪の少女がいた。しかしその両脇には鋭い針状の牙と長い二門の砲身を持つ深海魚を思わせる艤装を纏っている。両腕を縛る鎖はその艤装と繋がっており、前かがみとなって項垂れるように海面に立つその少女「防空埋護冬姫(ぼうくうまいごとうき)」を、暗い海の底に引き留めているように見えた。そして防空埋護冬姫の姿を確認した深海は、後ろを進んでいるネ級改に目配せをした。ネ級改は黙って頷き、更にその後方に控える高速軽空母水鬼と近代化戦艦棲姫の同時に頷いた。すると深海は、機関出力を上げて増速し、防空埋護冬姫に単身向かって行った。

(頼むぞ、深海)

単身防空埋護冬姫の元へ向かう深海の背中を見つめながら、ネ級改は口内で独りごちた。

 

 

(頼むから撃たないでくれよ…)

深海は内心で少し怯えながら敵艦隊のど真ん中、防空埋護冬姫の元へと海の上を行く。周囲を固める重巡ネ級や戦艦ル級はこちらに砲門を向けている様子は無いが、戦闘が生起するとなれば袋叩きになりかねない。しかし深海はその恐怖を押し殺し、やがて防空埋護冬姫の元へ辿り着いた。

「………ダレダ?」

片言のような言葉で防空埋護冬姫が口を開いた。前かがみの態勢を直す様子は無く、フードの下から覗く、まるで生気を失ったような黒く虚ろな瞳が深海の顔を覗き込んでくる。

「俺は中枢棲姫の頼みでお前を連れてくるよう頼まれた黒野深海だ。防空埋護冬姫、一緒に来てくれるか?」

「………ソレハ、デキナイ」

「…それはどうしてだ?」

防空埋護冬姫の返事に深海は慎重に言葉を選んでから尋ねた。強い言葉は交渉の失敗を招きかねない。これまでに助けてきた「終戦を知らない姫級や鬼級たち」への説得で培った経験から出した深海の知恵だ。深海の言葉に返事はすぐに返ってこなかった。すると、防空埋護冬姫の表情が少し和らいだ様子を見せた。そして、自分の立つすぐ隣―――

 

誰もいない空間に向かって、微笑む様に語り掛けた。

 

「ソウダロ、スズ?ワタシハ、ドコニモイカナイ…ズットイッショニ………」

「?」

深海は思わず首を傾げたが、防空埋護冬姫は「スズと言う誰か」の幻覚を見ている。と結論付けた。防空埋護冬姫は続ける。

「ダカラ、イケナイ…スズガ、ココニイルカラ……」

「………」

深海は黙って防空埋護冬姫の言葉を聞いていた。頭の中で思案を巡らせて彼女に返答しなければならない。強い言葉は勿論NGだし、無理矢理になど以ての外だ。そして深海は少し考えてから口を開いた。

「なあ、防空埋護冬姫。スズに一つだけ聞いてくれないか、動けるか?と」

「………」

防空埋護冬姫からの返事は無い。深海は言葉を続ける。

「もし動けないのなら、俺たちが曳航する。スズも一緒に来てくれるなら、お前も構わないだろ?」

「……スズ、ウゴケルカ?」

「………(少しは信用してくれたか)」

深海は内心で少しホッとしていた。慎重に言葉を選んだ結果、事は上手く運んでいる。そう感じられたからだ。そしてしばらくして、防空埋護冬姫が口を開いた。

「ウゴケル、スズガ、ソウイッテル……」

「そうか!なら、ついて来てくれ。とりあえず、最寄りの港まで連れていくからな!」

「ワカッタ…スズ、イコウ」

(ふぅ……何とか一件落着だな)

深海が大きく息を吐きながら、「月ハ満チタリ」と打電するよう深海が通信妖精に指示を出そうとした時だった。

 

 

マズいぞ深海ッ!!

 

 

ネ級改の怒鳴り声が轟いた。それと同時に、自分たちが航行してきた方角の彼方から爆音が聞こえ始めてきたのだ。その爆音に感化されたように、深海たちの上空を旋回待機していた深海猫艦戦が、爆音の元へと向かっていく。そして深海は、その爆音の正体が何なのかすぐに理解した。戦時中に何度も聞いた、艦隊の上空を脅威の旋回力で飛び回り、並み居る敵機を叩き墜としてきた「格闘戦の申し子」が放つ音―――

 

 

 

中島「栄」21型

 

 

 

そのエンジンがあげる咆哮、そしてそれを積む戦闘機「零式艦上戦闘機52型」そのものだった。深海の肩の上で双眼鏡を持っていた熟練見張り員の妖精が深海に耳打ちをする。

「っ!?今すぐ避退させろ!これでは交渉が―――」

そう叫んだ直後、上空で一機の深海猫艦戦が煙を噴きながら真っ逆さまに墜落していく光景が深海の目に飛び込んできた。

ダマシタ、ナッ!!

深海はハッとして、背後を振り返った。そこには怒りに満ち、こちらを睨んでくる黒い瞳があった。

「ま、待て、防空埋護冬姫!俺たちは――」

「オマエモ―――」

 

 

 

 

ウマッテシマエェェー!!!

 

 

 

 

瞬間、深海の目の前に閃光が走った。

 

続く

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