艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』 作:黒瀬夜明 リベイク
黒煙の中から人影が飛び出し、背後の海面に着水する。
「クソッ!」
右頬の切り傷から滲み出た血を左手で拭い、爆炎の向こうから姿を見せた白いフードを被った怒りに満ちた黒い瞳の少女を見据える深海。
「キライダッ…スズト、ワタシヲダマシタオマエ……キライダァッ!!」
防空埋護冬姫の深海魚を思わせる艤装、そこから伸びる4門の砲門が再び咆哮をあげる。
「ッ!」
深海は咄嗟に身体を仰け反って至近距離から放たれた4発の砲弾を避けた。深海の背後に4本の水柱が奔騰し、深海は冷や汗が垂れるのを感じた。
「深海ッ!」
すると背後からネ級改の叫び声が聞こえてきた。それと同時に自分の周りを囲うようにして水柱が奔騰し、続けて先程の水柱よりも遥かに大きな別の水柱が時間差を置いて噴き上がる。更には、水中調音員を携わる妖精が「右170度、左170度方向より魚雷航速音!」と報告してきた。続けて見張り員を務める妖精が「左右の雷跡、本艦を挟んで直進中!」と報告を上げた。それを聞いた深海は口元に笑みを浮かべ、確信を得たように口を開いた。
「やってくれたな、潜水鮫水鬼!」
深海は直後に機関後進を掛け、自分を挟んで進む魚雷とすれ違う。直後、見張り員の妖精が「雷跡、前方へ抜けました!」と報告を上げ、深海はその場で身を翻して離脱を図った。直後に水柱が崩れ、防空埋護冬姫の姿が現れたが、既に深海は彼女の近くにはいなかった。防空埋護冬姫の目に、背を見せて後退する深海の姿が写り込むと、彼女は吠えるように叫んだ。
ココカラ、タダデカエサナイ!オマエタチヲッ、ナミトツチノシタニィッ!!!
そして、背を向ける深海に向かって三度目の砲撃を放った。
「平文で「月ハ欠ケタリ」と打電だ!急げッ!!」
防空埋護冬姫が放った三度目の斉射弾が飛来する中、深海は大音声で通信妖精に指示を飛ばした。
同時刻、関門海峡に面した下関の港で「月ハ欠ケタリ」との平文を受け取った一団がいた。北九州沖で赤色海域の発生が確認されてから、海軍によって関門海峡は封鎖され、そこを通る民間船舶は一隻もいない。今、その海峡の港に錨を下ろしているのは、戦う力を持った者たち―――
艦娘たちだった
その内の一人が誰かに尋ねるように聞いた。
「今の平文、そちらでも受信できたか?」
「ええ、勿論よ。どうやら、交渉は失敗したようだわ」
すると今度は別の艦娘が口を開く。
「まさか、あの人が交渉に失敗するなんて……」
「戦場に最も近い場所じゃけぇ、何が起こってもおかしないよ」
「は、早く助けに行かないと、危ないよぉー!」
すると、部隊内通信用の短距離無線機に通信が入った。5人の中で一番背の高く、黒髪を長いポニーテールにした少女は左耳に左手を当てながら短く答えた。
「こっちはいつでも行けるわ」
すると、少女の答えから数秒後、彼女たち5人の背後から声高に指示が飛んできた。
第二水雷戦隊全艦、抜錨!!
凛々しく発せられる言葉は続く。
「北九州沖にて交戦中の友軍を援護します!」
そう凛々しく言葉を発したのは、10人の艦娘で編成された第二水雷戦隊の総旗艦兼、5人編成の第一部隊の旗艦を務める能代だった。すると今度は短距離無線機を通して、第一部隊所属の各艦娘から、意気込んだ台詞が聞こえてきた。
「よっしゃ行くぜぇ!朝霜、抜錨だぁ!」
気合と共に一番最初に声をあげたのは第一部隊所属、第21駆逐隊の朝霜だ。
「駆逐艦乗りの意地、見せてやろうじゃない!霞、出るわっ!」
続けて同駆逐隊の旗艦、霞が力強く声をあげる。
「何とかして、深海提督をお助けしなきゃ…初霜、出撃します!」
第21駆逐隊の初霜も、強い意志と共に声をあげる。
「さぁ行くよ能代!最新鋭軽巡!阿賀野、出撃よ!」
阿賀野が、少し抜けているようで芯の通った声をあげる。
「阿賀野姉もしっかり付いて来てくださいよ!第二水雷戦隊旗艦、能代!抜錨しますっ!」
最後に二水戦と第一部隊の旗艦を担う能代がその錨を上げ、走り出した。
そして、少し離れたところで、黒い髪をポニーテールにした少女、矢矧を旗艦とする第二水雷戦隊・第二部隊のメンバーも錨を上げ始めていた。
「司令、待っていろ。今助けてやるからな…第17駆逐隊旗艦、磯風、抜錨する!」
胸の内の燃える熱い炎をたぎらせ、磯風が錨をあげる。
「行きましょう、提督を助けるために!第17駆逐隊浜風、出撃します!」
続いて浜風が、強い決意と共に錨を上げる。
「ほうじゃね、手のかかる提督さんをお助けじゃ!第17駆逐隊、浦風、出撃じゃ!」
浦風が小さな笑みと共に、錨を上げ―――
「ぴゃー!17駆のみんなにも、矢矧ちゃんにも遅れないよー!軽巡酒匂、出ます!」
子供の様な可愛らしい声をあげて、矢矧の妹、酒匂が錨を上げた。
「私たちが来るまで持ちこたえてみせて、深海提督ッ……第二水雷戦隊、第二部隊旗艦、矢矧、抜錨ッ!!」
力強く、そして深海が無事でいるようにとの願いを胸に、第二水雷戦隊・第二部隊の旗艦矢矧は錨を上げ、海を駆けだした。
続く