艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』 作:黒瀬夜明 リベイク
深海が烈風隊を発艦させた直後、アクシデントが唐突に舞い込んできた。たった今、防空埋護冬姫に向かって突撃を開始しようとした深海の短距離無線機に、雲鷹から通信が入ったのだ。
「深海提督、こんなタイミングでごめん!その零戦を貴方の所に着艦させてあげて!」
「なにぃ!?」
深海は唐突に上空を見上げた。艦隊戦の上空は、幾重もの飛行機雲が絡み合った乱戦の巷となっているが、そんな中、今回の艦隊戦が起こるきっかけとなった白い零戦が、フラ付いた様子で深海の方へ向かって来ているのだ。雲鷹の言葉は続く。
「その子、燃料切れ間近みたいなの!私たち、今は発艦作業中だから、お願い!」
「くそ……わかった!その零戦はこっちで引き受ける!」
「ありがとう、深海提督!」
深海はぼやきながらも、こちらに向かってくる零戦を受け入れることを決めた。元はと言えば、お前たちのせいだぞ!と言ってやりたいところだが、あの零戦を放った艦娘はそこまで考えてやったわけではないだろうと思い直す。深海は短距離無線で矢矧を呼び出した。
「矢矧すまない!もう少しだけ援護してくれ!」
「話は聞いていたわ!急いで!」
深海は再び風上に向かって全速で突き進みだす。こんな短時間に、連続して風上に向かって転舵したことは深海でもないが、艦載機を発艦、着艦させる時には必ず風上に向かわなければならない。深海は機関の出力を最大で発揮して全速で海上を走り、左腕を真っ直ぐ、前へと伸ばした。それと同時に、後方から白い零戦が着艦態勢に入った。主脚を展開し、ゆっくりと深海の飛行甲板目掛けて滑り込んでくる。やがて深海の飛行甲板にその零戦が着艦した。着艦フックが零戦の速度を更に落とさせ、やがて止まった。深海は着艦した零戦を見やった。そして驚愕した。
(こ、この零戦…「づほ姉」の零戦52型じゃないか!)
機体全体を白一色で塗装され、胴体部の日の丸の後ろに2本の赤い縦ラインが入ったその零戦52型は、一見すれば「零戦21型(熟練)」と同じ塗装だが、この塗装が施されている零戦52型を、現在の海軍内で使用しているのは「彼女」しかいない。
(づほ姉…)
深海の脳裏に、前髪に桜の髪飾りを付け、紅白の鉢巻きを撒いたポニーテールの少女の顔が思い浮かんだ。そして小さく独り言ちた。
「怒るに怒れないじゃないか、づほ姉…」
甲板に着艦した零戦に、整備員の妖精が取りつき、燃料を補給するため格納甲板へと下ろしていく。搭乗員だった妖精は深海の左手に乗っかると、ごめんなさい。と頭を深々と下げた。
「今までよく生き残ったな。乗り心地は悪いかもしれないが少しゆっくりしていけ」
深海はその妖精に向かってねぎらいの言葉を掛けた。搭乗員妖精はまた深々と頭を下げた。そして再び短距離無線機から矢矧の声が響いてきた。
「深海提督!まだ掛かるの!?」
「今そっちに行く!」
深海は今度こそ、防空埋護冬姫の元へと向かって行った。
続く