艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP48 決着

防空埋護冬姫との砲撃戦は熾烈を極めていた。戦闘に介入した第二水雷戦隊は、防空埋護冬姫に苛烈な砲撃を繰り返し、水柱が奔騰しない瞬間など存在しないように見えた。深海は上空にチラリと目を向けた。熾烈を極める砲撃戦と異なり、空中戦は終息へと向かいつつある。空母ヲ級から発艦していった深海猫艦戦は、大鳳が送り込んだ烈風隊、雲鷹たちの九六艦戦改、利根と筑摩が放った強風改二隊と瑞雲隊、そして深海の烈風改二、高速軽空母水鬼の夜猫深海艦戦に押し込まれ、次々と黒い煙を噴いて墜落していく。制空権は完全に奪取できたと言って良いだろう。

「零式観測機、発艦!」

深海は即座に弾着観測用の零式水上観測機を飛行甲板側面のカタパルトから発艦させた。零式観測機はみるみる高度を上げていく。やがて零式観測機から「ワレ、弾着観測ニ入ル」との通信が入った。深海は41㎝三連装砲を防空埋護冬姫に向け、放った。

「くらえッ!」

一番主砲の2番砲、二番主砲の1、3番砲が巨大な咆哮を上げ、口径41㎝の砲弾を叩き出す。強烈な砲声が深海の耳を衝くが、深海は気にせず弾着を待った。そして弾着の瞬間、3本の水柱が、防空埋護冬姫を挟み込む様に屹立した。すかさず零式観測機から、「初弾、夾叉セリ」と通信が入った。初弾からの夾叉に、深海は一瞬だけ驚いたがすぐさま第一、第二砲塔の全門を先程と同じ諸元で俯仰させた。水柱が崩れた瞬間、深海は防空埋護冬姫と視線が重なった気がした。

「オマエェェー!!!」

防空埋護冬姫は、絶叫と共に砲撃を放ってきた。そして同時に深海の41㎝三連装砲も再装填を完了した。

「貫けッ!」

強大な砲声と共に深海の41㎝三連装砲が咆えた。6発の41㎝砲弾が防空埋護冬姫へと殺到する。防空埋護冬姫の弾着が先に来た。瞬間、深海の右腕に砲弾が直撃した。

「グゥ!」

砲弾の爆発が右腕を襲い、深海は一瞬苦悶の表情を見せた。幸いにも装甲は貫通していなかった。爆煙で深海の視界が失われたが、それも一瞬だった。深海の視界が晴れるや、防空埋護冬姫に閃光が走った。巨大な爆発の閃光は深海の41㎝砲弾が命中した証だ。周囲には4本の水柱が奔騰している。零式観測機からは「二発命中ス」と通信が入った。爆炎が晴れ、防空埋護冬姫の姿が露わになった。

「くそ、奴は依然健在だ!」

磯風の悔やまれる声が短距離無線機から聞こえてきた。

「なんて頑丈な奴なんじゃ…あれだけウチらの砲弾を受けとるのに」

「やはり姫級は侮れませんね…」

浦風と浜風も防空埋護冬姫の粘り強さに舌を巻いていた。だが、矢矧は毅然と言い放つ。

「どれだけ装甲が厚くても、限界はあるわ!」

矢矧の15.2㎝連装砲改二が咆える。彼女も既に夾叉を得ていた故に、全門の斉射だ。酒匂も負けじと15.2㎝連装砲改を放つ。

「クソクソォ!オマエタチミンナ、キライダァ!!」

防空埋護冬姫は怒りに任せるようにして砲撃を続けている。約2秒おきに見える交互撃ち方で、目に付くものに向かって砲撃を浴びせている。だが、各砲塔が個別の目標を狙っているせいか、狙いはかなり不正確だ。深海は再度の斉射を放った。すると深海の上空に大鳳の流星改が展開していた。流星改の先頭を行く隊長機がバンクをして合図を送っている。それを見た深海は、ニヤリと口元を歪ませた。

「良いだろう大鳳!」

その言葉を待っていたかのように、24機の流星改が一斉に高度を下げた。24機全機が深海の真正面へと舞い降り、真一文字に防空埋護冬姫に向かって突っ込んで行く。海面で沸き立つ波頭に、今にも激突しそうな超低空飛行だ。

(流石、黒野家(うち)のトップエースだな)

深海がそう独り言ちた時、流星改の突入を見計らったかのように上空の彗星二二型も一気に高度を下げ、急降下に移った。ダイブブレーキの音が海域をつんざいて鳴り響き、尖った液冷エンジンがグイグイと彗星二二型を引っ張っていく。それに気づいた防空埋護冬姫は彗星と流星改にそれぞれ砲口を向けたが、その直後だった。

「ガラ空きよ!」

矢矧と酒匂、そして磯風たち17駆の3人が一斉に砲撃を加え、何発かの直撃弾を得た。

「グァ!」

そして深海もまた41㎝三連装砲を振るい立てた。猛然とした砲声と砲煙が深海の目と耳を打つ。超低空飛行で突き進む流星改の頭上を飛び越した6発の41㎝砲弾は、内1発が防空埋護冬姫に命中した。矢矧たちの中口径砲、磯風たちの小口径砲よりも断然大きな威力を持った砲弾が命中したのだ。防空埋護冬姫は大きく怯んでいた。その隙を突いて、防空埋護冬姫にギリギリまで接近した流星改の下腹から、魚雷が次々に投下された。24機全ての流星改が魚雷投下に成功することなど極めて稀だが、矢矧たち、そして深海の砲撃がそれを成功させたのだ。次々に離脱していく流星改に続いて、彗星二二型も機首を次々に引き起こしていく。こちらも深海たちの作った隙により、24機全てが次々に投弾しながら離脱上昇していく。最初に彗星二二型の投下した航空爆弾が落下し始めた。4本目の水柱を数えた直後、防空埋護冬姫に直撃弾の閃光が走った。爆発光は連続し、防空埋護冬姫を爆炎が包み込んでいく。そこへ追撃とばかりに流星改の放った航空魚雷が突入した。爆弾と違って、直撃しなければ当たったのかもわからない魚雷だったが、防空埋護冬姫の右舷側から連続して水柱が上がった。1本や2本なんて少数ではない。深海が数えただけでも、15本は水柱を確認できた。

(素晴らしい命中精度だ)

深海は大鳳の彗星隊と流星隊に称賛の言葉を投げかけた。それと同時に深海の41㎝三連装砲が咆哮する。41㎝の砲弾が唸りを上げて防空埋護冬姫に殺到し、爆発光が二度光った。

 

イナイッ!?ナゼッ!?ナゼダヨォォッ!!

 

防空埋護冬姫に絶叫がこだました。

(誰のことを言っている?)

防空埋護冬姫の叫びに深海は思わず考えを巡らせた。だがその思考はすぐに中断された。

「二水戦全艦、魚雷一斉発射!防空埋護冬姫に止めを刺します!」

能代の声が短距離無線機から響いてきた。直後に矢矧の、第二小隊、了解。との言葉と共に、防空埋護冬姫の奥側から能代を旗艦とする第一小隊が単縦陣で突っ込んできた。矢矧たちの第二小隊も魚雷を放つ。防空埋護冬姫の左舷後方と左舷前方から放たれた無数の魚雷は、網を張るように防空埋護冬姫に殺到した。直後、巨大な水柱が何本も屹立した。命中した魚雷の数が多過ぎるせいか、何本命中したのかは分からなかった。しかし屹立した水柱はやがて巨大な炎に変わった。防空埋護冬姫は艤装から黒煙を噴き上げながらゆっくりと前進している。機関部をやられたのか、浸水を起こしたのか分からないが、彼女の航行速度は著しく低下していた。

「スズ…スズゥ……」

防空埋護冬姫は弱々しい声で誰かの名前を口にした。そしてその瞬間、残されていた最後の砲弾が彼女の主砲から撃ち出された。深海は戦いが始まる前の、防空埋護冬姫との会話を思い出していた。「スズ」という言葉が誰を指しているかは分からないが、彼女はただ静かに「スズ」と一緒にいたかっただけなのかもしれない。だが、あの状態では手の施しようがない。彼女の主砲は依然として健在で砲撃してくる。弱った状態とは言え彼女は姫級の深海棲艦だ。護送途中に暴れられたら味方にも負傷者が出かねない。深海は苦渋の決断をするしかなかった。

「すまない、防空埋護冬姫。すまない、スズ」

深海は防空埋護冬姫と、スズに詫びの言葉を投げかけると、41㎝三連装砲を放った。僅かな間を置いて水柱が奔騰し、防空埋護冬姫を爆炎が包み込んだ。

 

続く

 

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