艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』 作:黒瀬夜明 リベイク
爆炎が晴れ、防空埋護冬姫はその場にゆっくりと停止した。艤装の砲身は中程から折れているか、原形を留めない程に吹き飛んでいる、そんな状態だった。防空埋護冬姫はその場にがくりと項垂れたように俯いていた。
「防空埋護冬姫の機能停止を確認したわ!」
矢矧の声が周辺海域で戦っていた艦娘、深海棲艦問わず届けられた。砲声は止み、穏やかに吹く風が硝煙の臭いを払って行く。深海はゆっくりと防空埋護冬姫の元へと向かった。矢矧が深海に声を掛けようとしたが、深海が、手を出すな。とハンドサインを送り、防空埋護冬姫と一対一の話をする為、ゆっくりと近づいた。先に口を開いたのは、防空埋護冬姫だった。
「ウソダロ…?ワタシッ、シズムノカ…ッ!?」
弱々しい言葉が彼女の口から零れ落ちた。悔しさが滲みだしたようなそんな口調の言葉に、深海は黙って耳を傾けていた。
「ツチノナカデハ、ナク…ミズノナカニ……ウミノソコヘ……」
スズッ…!スズゥッ!!
彼女の口から零れ落ちた「スズ」という言葉。彼女にとって、大切な言葉。それがなんなのか、深海には分からない。深海はジッと、そんな防空埋護冬姫を見つめていた。だがその時、防空埋護冬姫はハッとした表情で、のろのろと顔を上げた。
「…ッ?スズ、ツキ…?」
「ッ!?」
その瞬間、深海に電流が走った。今、防空埋護冬姫が口にした「スズツキ」という言葉。それは深海もよく知った言葉だった。深海棲艦は、彼の大戦で沈んだ艦船たちの後悔の念が形となった存在だ。という説がよく話に持ち上る。そして深海棲艦たちは、後悔の念と同じくらい、強い記憶を抱いている。それが彼女、防空埋護冬姫にとっては「スズ」という言葉だったのだ。そして今、その言葉は「スズツキ」へと昇華した。深海は気がついたら、防空埋護冬姫に右手を差し伸べていた。
「……コノ手は、ダレ…?」
防空埋護冬姫の問いかけに、深海は優しく答えた。
逢いに行こう
「……?」
「大丈夫。きっと出逢える。お前には――」
波を蹴って走れる力があるんだからな
「ッ!!ワタシッ、私、また涼ト、イッショニッ…!光の下で、波ヲ蹴ッテ…私ッ!」
その瞬間、防空埋護冬姫の左手が深海の右手に振れた。深海はその手を確かな力で握りしめ、彼女を引っ張り上げた。その瞬間、防空埋護冬姫が煌びやかな光に包まれた。その場にいた全員が、眼を覆って光が収まるのを待った。やがて光は治まり、光の中から、雪のような白い髪の少女が姿を現した。その少女は、やがてゆっくりと目を開け深海と視線を重ねた。そして凛々しい言葉で告げた。
「秋月型防空駆逐艦、八番艦、冬月、参る。涼、随分と待たせたな。提督、共に守ろう――」
大切な……ものを
深海はフッと口元に笑みを浮かべ、安堵した表情を見せた。
続く