艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP51 報告

深海と瑞鳳の視線が重なった。瑞鳳は深海に優しく微笑みかけた。

「久しぶり深海、元気だった?」

「うん。俺は元気だよ、づほ姉」

瑞鳳は、そっか。とニコリと笑ってみせた。深海はそのまま龍太が座る執務机へと歩いていった。

「龍太、今戻った。作戦は概ね成功、冬月との邂逅にも成功した」

「秋月型防空駆逐艦、八番艦「冬月」だ。鈴村提督、よろしく頼む!」

「お疲れ様お兄ちゃん!よろしく、冬月!ところで、僕のサプライズはどうだった!」

龍太は何処か、してやったり。とでも言いたげな表情で深海を見据えてきた。深海の口元に小さな笑みが浮かび口角が上がる。

「ああ、とても助かったぞ。やるようになったじゃないか、龍太」

「えっへへー!」

深海の言葉に龍太は子供のように笑ってみせた。年齢的には成人している龍太ではあるが、深海の前では、子供のように甘えてくる変わった性格をしているのだ。だが、龍太はやがて子供のような顔から、提督としての引き締まった表情へと戻った。

「それで、冬月の事はどうするの?佐世保(うち)で預かればいいのかな?」

「いや、冬月はこっちで預かる。その方が、冬月の為にもなると思うからな」

「わかった。冬月も、それでいいかな?」

「ああ、涼も一緒なら私は何処でも構わない!」

「了解、じゃあお兄ちゃんにお任せするね」

深海は龍太に、感謝する。と一言言うと冬月と共に部屋を出ていこうとした。それを見た瑞鳳もまた、龍太に礼を述べる。

「鈴村提督、私たちの補給ありがとうございます!」

「これくらいはして当然だよ。警備府までの帰り道も、気を付けてね」

瑞鳳はサッ、と敬礼をすると踵を返して執務室を出ていった。瑞鳳が執務室の扉を開け、廊下へ出ると、深海が待っていた。

「深海?冬月はどうしたの?」

「時雨たちの所に先に行かせた。ちょっとづほ姉と話がしたくて…」

そう言うと深海は、腰裏のポーチに手を回した。ポーチの蓋を開け、しまっていた物を取り出す。それを身体の前へと持ってくると、その物体が瑞鳳の眼を射た。白い機体に赤い日の丸マーク、そして尾翼の前に描かれた赤い二本のライン。茶色の飛行服と、飛行眼鏡を帽子に掛けた小さな妖精。瑞鳳の「零戦52型」と、その搭乗員だった妖精だ。

「あ…」

瑞鳳の口から驚きを含みながら、何かを察した様な弱々しい一言が零れ落ちた。深海は少しだけ気まずそうに言葉を紡いだ。

「戦闘中、俺に着艦してきたづほ姉の零戦…」

「……この子、だけだったの?」

「…戦闘が終わった後、艦載機の収容と合わせて捜索はしたんだけど…他に零戦はいなかった」

その言葉を聞いた妖精は、目に涙を浮かべ、深海の手の上から瑞鳳をじっと見つめ上げている。握り拳は強く握られ、悔しさが滲み出ているようだった。瑞鳳は深海の手から零戦を受け取るが、妖精はジッと涙を浮かべながら瑞鳳を見つめ上げるばかりで、深海の手から移ろうとしなかった。深海はチラと妖精の腕にはめられた腕章を見た。

 

薄い青色の二本の縦線

 

搭乗員妖精は、「薄い青色の縦線」から「黄色い斜め線」、そして「黄色い『く』の字二本線」へと、腕を上げるごとに腕章を変える。「薄い青色の縦線二本」の腕章を持つこの妖精は、まだ戦闘機に乗ってから日の浅い新人搭乗員妖精だったのだ。

(他の仲間、上官も含めて、帰ってこれたのは新人のこいつ1人だけ…さぞ悔しかったろう…)

深海は内心で独り言ちた。艦娘を補助する妖精は山ほどいるが、彼らも人間と同じで、同じ妖精は1人もいない。それぞれがそれぞれに性格を持っている。戦闘で未帰還となった艦載機乗りの妖精たちは、未帰還機と共に帰って来ることは無い。あの北九州沖での海戦で、瑞鳳が放った18機の零戦の内、17機が未帰還となり、彼らは北九州の沖に消えた。深海には申し訳なさそうに瑞鳳に詫びた。

「ごめん、づほ姉。俺が――」

「深海は悪くないよ。この子を連れ帰ってくれただけでも、私は嬉しいから」

瑞鳳はそう言って深海の頬に触れた。

「だから、自分を攻めちゃ駄目。この子の為にも、帰って来なかった子たちの為にも、ね?」

「うん…」

瑞鳳はやがて深海の頭を優しく撫でた。そして深海の手に乗っていた妖精に目線を合わせる、優しく微笑んだ。

「戻って来てくれてありがとう。お疲れさまだったね」

妖精は泣きじゃくりながら瑞鳳の肩に飛び乗った。

 

続く

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