艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』 作:黒瀬夜明 リベイク
深海から零戦52型と、搭乗員妖精を受け取った瑞鳳は、監査のことを深海に尋ねた。
「深海、鈴村提督から聞いたんだけど。今、全国の海軍施設を監査して回ってるんだよね?」
「あ、うん。海軍本部から厄介事を頼まれて、それで回ってる」
「じゃあ、次は…」
深海ははっきりと頷いて答えた。
「うん。父さんの鎮守府――今は、警備府扱いなんだっけ?」
「そっか…やっぱり帰ってくるんだね」
何処か暗い表情の瑞鳳。
深海はそんな姉の姿に気づいていたが、どうしてなのか。その理由を聞くことができなかった。深海はあえて明るく振舞った。
「でも俺、帰れると思ったらすごく嬉しんだ!またあの
すると瑞鳳は、ハッとした様子で顔を上げて笑顔を浮かべた。そして、元気のある笑顔を作って言って見せた。
「う、うん!また、お姉ちゃん特製の卵焼き。作ってあげるからね!もちろん食べるでしょ?」
「当たり前だろ!づほ姉の卵焼き、何年ぶりだと思ってるんだよ!」
「あはは!じゃ、腕によりをかけて作らなきゃね!じゃあ、
瑞鳳はそう言って、手を振りながら去っていった。深海も瑞鳳が見えなくなるまで手を振り返していた。
そして、瑞鳳が見えなくなったところで深海は手を下ろし、少し悲しそうな表情を見せた。
(ああは言ってるけど、づほ姉から父さんを奪ったことは、俺も絡んでるからな…)
深海はそう言うと、鎮守府本庁舎の正面玄関へと歩いて行った。足取りは、少し憂鬱そうだった。
深海は歩きながら思いを巡らせた。
深海の父親である海軍提督「
深海は、両親である海と空母水鬼、そして義姉である瑞鳳や、鎮守府所属の艦娘たちの愛を受けて育った。
だが父親である海は、空母水鬼との交際が海軍上層部に露呈して拘束され、取り調べの後、「見せしめ」として銃殺刑に処された。
空母水鬼は幼い深海を連れて逃亡したが、逃亡の末に海軍陸戦隊の手によって深海の目の前で殺害された。
その後深海は現在の鎮守府に流れ着き、深海棲艦との戦争を終結へと導いた。だが、戦争が終結しても、深海は生まれ育った鎮守府に帰ろうとは思わなかった。新しい家族が出来たからではない。
(帰れる訳ないだろ…どんな顔してづほ姉に会えっていうんだよ…)
深海棲艦との戦争が終結してからしばらく経ったとき、深海は海軍本部勤めとなった白河から、瑞鳳の「とある話」を聞かされたことがあった。
深海とは腹違いの姉である瑞鳳。
彼女は、海が海軍提督となる前に結婚していた女性との間に「人間」として生まれた。しかし瑞鳳の母親は、出産時の疲労が祟って衰弱してしまい、そのまま息を引き取ることとなった。
海は男手一つで、瑞鳳を育てたのだ。瑞鳳はそんな海を心の底から慕っていて、海が海軍提督となることを告げれば、彼女は通っていた高校を中退してまで艦娘になって追いかけてきた。共に暮らした深海にも、海と瑞鳳の深い絆はハッキリと分かった。
(『そんなことは知ってる』って、俺は白河に言った。でも、話はそこからだった)
そして海と空母水鬼の間に、深海が誕生した。だが、幸せは長く続かなかった。
海は空母水鬼との交際をした「人類の裏切者」にされ、「見せしめ」として銃殺刑に処された。
この「見せしめ」の対象は、勿論この国に暮らす人間たちが対象だった。だが、その中には特別枠として、「瑞鳳」も含まれていた。
刑が執行される日、「最後の面会」と称して海軍本部へ出頭した瑞鳳は、面会場所である刑場へと通された。そして――
お父さんッ!
と瑞鳳が声を張り上げた瞬間、刑が執行されたのだ。乾いた銃声が響いた直後、放たれた弾丸は、棒に括りつけられた海の心臓を貫いた。海はやがて動かなくなった。
その瞬間、瑞鳳は凍り付き、やがてこの世のものとは思えないような叫び声をあげた。動かなくなった海の体にすがり、嗚咽交じりに何度も何度も、まるで壊れた機械のように「お父さん!お父さん!」と叫んでいたという。
その話を聞いた深海は凍り付き、声にならない声をあげた。海の処刑に立ち会った白河も、その光景が目に焼き付いて、今でも離れないという。
瑞鳳はその時のショックで、一部の記憶が消えてしまい、それからしばらくは廃人のような状態が続いた。と白河は語ったのだ。
(俺のせいで、あの優しかったづほ姉が壊れた。なら俺は次、どんな顔して会えばいい?)
深海はそう思った。そして戦争が終わり、深海は瑞鳳と再会した。
久しぶり深海、元気だった?
瑞鳳は深海に優しく微笑みかけた。先ほど、執務室で再会した時と全く同じ様子で――
うん。俺は元気だよ、づほ姉
と深海が返すと、瑞鳳は、そっか。と執務室で再会した時と全く同じ笑顔で、ニコリ。と笑って見せたのだ。
だが深海は気づいていた。優しさにあふれる瑞鳳の笑顔。だが、その瞳だけは少し虚ろだったことを―――
深海はその瞬間、瑞鳳を壊してしまったのは自分なのだと、実感させられた。
続く