艦これ×ガンダム ガンダムビルド艦隊これくしょん 深海の言葉『上巻』 作:黒瀬夜明 リベイク
深海はそのまま、憂鬱そうに歩いてキャンピングカーの元へと戻ってきた。姉である瑞鳳のことを考えると、嬉しいながらも拭いきれない罪悪感が同居してしまう。深海がキャンピングカーの前で足を止まると、車内から時雨が降りてきた。
「っ――どうしたの提督?」
時雨はいつになく辛そうな表情をしている深海に声をかけた。時雨の存在に気付いた深海は、繕った笑顔で答えた。
「ああ、大丈夫だ時雨。少し疲れただけだ」
「……そっか。それなら良いんだけど」
時雨の返事に若干の間があった。その間が何を意味しているのか、深海にはハッキリとわかっていた。深海は口内で、お見通しか。と独り言ちた。
そこへ、軽自動車に乗っていた青葉が降りてきた。昨日の佐世保旅行では一緒に行動したが、どういう訳か久しぶりに会ったような気がする。
「深海司令官、お疲れ様です!…て、なんか元気がありませんね…どうしたんですか?」
「青葉か。いや、少し疲れただけだ。気にしないでくれ」
「はあ……」
青葉も深海の違和感が分かったようだった。だがその内容まではわからなかった。深海はそのまま、青葉に言った。
「青葉、俺たちは明日。鹿児島にある警備府へ監査に行くぞ」
「え、明日ですか?深海司令官、お疲れなんじゃ…」
「いや、大丈夫だ。九州の海軍施設は、あとはその警備府だけだ。手早く済ませるぞ」
「わ、わかりました…」
何とも腑に落ちないような返事で青葉は答えた。
翌朝、深海は青葉が運転する軽自動車で佐世保を出発した。青葉はいつもの私服姿で、深海は監査官用のスーツ姿だ。時雨たちは、深海の監査が終わるまで佐世保で待つこととなった。
鹿児島までの道すがら、青葉は不意に深海に尋ねた。
「深海司令官。昨日の戦いで、何かあったんですか?」
「……ああ、ちょっとな」
「お話、聞いても?」
「……俺の姉に会ったんだ」
深海の返答に青葉は、え?と思わず声を上げた。その表情は、目の前にいる深海に、実は姉がいた。ということに驚きを隠せない表情だった。深海は青葉に顔を向けることなく、姉である瑞鳳のことを話した。
青葉は最初こそ驚きを含んだ表情だったが、いつの間にか瑞鳳と深海の身に起こった過去の話を、黙って聞いているだけになっていた。
そして深海は、まるで罪悪感の気持ちを吐露するように喋りだした。
「父さんを死なせてしまった一因は、俺にもある。づほ姉の心が壊れた原因の一つも、俺だろう」
「会うのは嬉しい。でも、どんな顔をして会えばいいのかわからない。そんな所ですか?」
「…ああ。今づほ姉の心を支えてるのは、きっと父さんとの思い出が残ってる警備府だけだ。そんな所に、俺が監査を入れる資格があるのか?」
「深海司令官…」
こんなに弱気になっている深海は初めて見た。と言いたげな視線を深海に投げる青葉。だが深海の表情はよく見えなかった。顔を逸らしたまま外の景色を眺めていたからだ。
(青葉には、何かを言えるような知識はない…すみません、深海司令官)
そんな青葉は、心の中で深海に詫びた。
そこからの更に数時間、軽自動車の車内に会話が沸くことはなかった。
やがて青葉と深海を乗せた軽自動車は、桜島を正面に臨む警備府へと到着した。正門で監査官とその助手であることを監守に告げ、車は警備府構内へと入っていった。
窓から臨む敷地内の景色に、深海は複雑な思いを感じながら独り言ちた。
「帰ってきたんだな…」
続く