空飛ぶ女海賊   作:貮式

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原作であまり詳しい人物像が分かってない“王直”さんは、本作品ではほぼほぼオリキャラと化しています。


10.激戦

 

 

 船が揺れた。

 

 

 それだけではなく、船を中心にして海が大きく荒れ、竜巻と見紛うほどの強風が吹き、海賊たちが現在進行系で略奪をしていた住民のいなくなった島の木が大きく拉げ、耐えきれなくなったものは地面ごと吹き飛ばされた。

 

 それは、『王の資質』のぶつかり合い。

 黒雷がバチバチと音を立てて轟き、周囲に覇王色を振りまく。

 

 覇気が弱い者は次々に気絶し、耐えられる者でさえ、顔中から冷や汗を吹き出すほどの威圧感を感じ取って、その場から動けなくなる。

 

 

「おっ始めやがったなァ……」

 

 

 “白ひげ”も激突する覇王色に顔をしかめ、異常事態を認知した彼の部下たちが慌てて“白ひげ”の元へ飛んでくる。

 

 

「こ、これは一体……!!?」

 

「シキの野郎と“王直”だ。アイツら、『船を壊すな』っていう命令を忘れてやがるなァ……

 お前たち! 船から離れるぞ。この船の上にいたらあの二人の()()()()に巻き込まれるぞ!!」

 

 

 島に停泊していたため、船と島にかけられたランプウェイから次々に人が降りていく。

 

 二人の戦いは苛烈を極め、人が完全に船から降りた後の船内からは、銃声や剣戟の音が何度も聞こえてくる。

 

 

「ハハハ……こりゃァ、船の修理が大変だな」

 

 

 陸地から船を見ていた“白ひげ”の隣に、ロックスが立つ。

 その声と表情からは、船内で激戦を繰り広げているシキと“王直”を咎めるものは感じられず、むしろその戦いを楽しんでいるかのように感じられた。

 

 

「お()ェ……まさか」

 

「ハハハ。おれはただ、()()()()()()()()だぜ。ニューゲート」

 

 

 隣に立つ船長の男は『そういうヤツ』だったと“白ひげ”は思い出して、再び船内へと視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……!! ぐゥッ!!」

 

 

 受け身もできずに船の壁に叩きつけられ、肺の中の空気がすべて抜ける。

 それを気合でどうにかして、下手人である“王直”を探すも、私が飛んできた直線上にはすでに“王直”の姿はなく――――。

 

 

「〝天威(てんい)〟」

 

「がッ……!!?」

 

 

 真横から突如聞こえてきた声に、咄嗟に防御の構えを取るが、ニューゲートやリンリンとも張り合えるほどの海賊の一撃をそう簡単に受け止めきれるはずもなく、私は再び大きく吹き飛ばされた。

 

 そうと思えば、今度は飛ばされている私の直線上に現れ、その渾身の力を込めた剣の一突きを放った。

 

 

「〝斬流(ざんりゅう)〟ッッ!!」

 

「ッ!! ちッ!!」

 

 

 しかし、こちらとてそう簡単に命などくれてやるはずもない。

 来るとわかっていれば迎え撃つのみ。フワフワの能力で体勢を立て直して、愛刀二本を抜き放ち、斬撃の反動で攻撃を受け流す。

 

 

「〝斬流波(ざんりゅうは)〟ァッ!!」

 

 

 〝斬流〟の反動で上に飛び上がった私は、左手に持った『木枯し』で斬撃を放って勢いをつけ回転し、右手に持った『桜十』で“王直”へ向かう斬撃を放つ。

 

 回転の勢いを乗せ、波のようにうねる斬撃が“王直”へ殺到し、小さく舌打ちをした“王直”はその場から文字通り『消えて』回避した。

 

 

 どこに行った、と探す間もなくその声は私の耳に届いた。

 

 

「ぬんッ!!」

 

「ッ!? ぐっ……!!」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()、“王直”が私の真横から得物の銃剣で斬りかかってくるが、間一髪でそれを防いで体勢を立て直そうと正面を見据えた時には、既に“王直”の姿はそこにはなく、

 

 

「〝天葬(てんそう)〟」

 

 

 私の真後ろで銃剣の切っ先を向けながら、刺突の構えをする“王直”。

 “王直”はそのまま剣を私に肉薄させ、銃の引き金を引いた。

 

 私がそれを回避して一太刀入れようと踏み込んだ瞬間、私の見聞色が全力で警報を鳴らした。

 

 

――――反撃はするな、“王直”から距離をとれ、さもなくば『死ぬ』、と。

 

 

 反撃から咄嗟に回避に移れば、私が踏み込もうとした場所へ数発の弾丸が殺到した。船の床に穴が開き、穴の数だけ見れば7発以上も撃ち込まれているのが分かる。

 

 もしあのまま反撃しようと踏み込んでいれば、あのどこから撃ち込まれたのか分からない弾丸に頭から貫かれて死んでいただろうことは間違いない。

 

 

 しかし、あの弾丸は一体どこから……?

 

 

「ふむ……よけられたか。流石は“金獅子”と言ったところか」

 

「どういうタネか分からないけど、厄介な能力を持ってるってことは確かだな」

 

 

 “王直”の表情からは余裕は消えない。それどころか戦いを通して更に余裕の表情を強めている気さえする。

 

 そのことが癪に障らないと言ったらウソになるが、それで気を乱されて相手のペースに持ち込まれればそれこそアウトだ。

 

 

 まずは“王直”の能力がどういったものなのかを正確に見極める必要がある。

 それが出来なければ待ち受けているのは『死』の一択だ。

 

 今までのやりとりでそれは確実なものになった。

 

 “王直”には私やニューゲートと同じような最高幹部待遇で迎えられるだけの度量も技量も力量も備えている。

 

 

 相手の能力の術中にはまってしまったら終わり。

 

 なら、私もそうさせてもらおうじゃないか。

 

 

「……ふんッ!!」

 

「やはりそう来たか」

 

 

 甲板に手を付けて能力を発動させ、船を空高く浮かばせる。そうして船をひっくり返せば、“王直”は船に片手でぶら下がりながら私を上から見下ろす形になる。

 

 “王直”が能力で私に勝負を仕掛けるのであれば、私も能力で勝負を仕掛けようじゃないか。

 

 

 フィールドは私の得意な空中戦。

 

 

「これで優位に立てたと思っているのならば、相当頭が弱いらしい」

 

 

 私を見下ろしていた“王直”が、消えた。

 

 

 

「〝天威(てんい)〟」

 

 

「流石にッ!! ――――……対応できるか」

 

 

 

 消えたと同時に私の死角からくる攻撃。

 

 先ほどの戦いの応酬で学んだ“王直”の攻撃の前兆ともいえる『消える』という特徴的すぎるもの。

 

 

「だが、お陰でだいたいお前の能力は把握できたッ!! 〝斬波(ざんぱ)〟ッ!!」

 

「っ、〝天葬(てんそう)〟」

 

 

 私の攻撃を正面から逸らしながら、“王直”は銃剣の引き金を()()引いた。

 

 

 

 

「――――やはり、そういうことか」

 

 

 

 

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、私は“王直”の能力が何なのかを理解する。

 

 

 

「……ククク、ハハハハハッ!! おれの能力を躱し続けて、あまつさえそれを見破ったことは褒めてやろう“金獅子”」

 

 

 

 私と“王直”の視線が交錯する。

 “王直”は今、空を飛びながら私と会話している……のではない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだろう。

 

 

「冥途の土産に教えてやろう」

 

 

 “王直”の口角が歪に吊り上がった。

 全てが計画通りに進んだとでも言いたそうな表情を浮かべる“王直”。

 

 

 

「おれは『()()()()()()』を食べた瞬間移動人間」

 

 

 

 納得がいく。

 『消えた』直後に『現れる』なんていう現象は、瞬間移動をするくらいしか再現できない。

 

 

 海軍やCP(サイファーポール)が修めている体術の一つである『六式』の一つに『(ソル)』なんてものがあるが、あれは瞬間移動に見えるだけでただ高速移動しているだけだ。

 

 故に道筋が分かれば対処のしようがあるが、道筋なんてものが存在しないワープは、確かに厄介極まりない。

 

 

 

 “王直”が放った銃弾が急に訳の分からない方向から現れたのも、能力の影響だろう。

 

 

 

「おれが『一度触れたモノ』を自由自在に転移させることができる」

 

 

 

 そう言いながら笑みを深めた“王直”が、銃剣を納刀して手に武装色を纏い始めた。凄まじい練度の武装硬化。極めて強力な内部破壊も会得していることだろう。

 

 

 だが、タネが分かれば簡単に避けられ――――……

 

 

 

 

 

 

「〝天零砲(てんれいほう)・〟」

 

 

 

 

 

 

――――……『一度触れた()()

 

 

 

 

「まさか――――ッ!!」

 

 

「例えば、()()()()()()()()()()

 

 

 

 全速力で“王直”へ飛ぶ。

 

 能力の性質上、常に先を読み続けなければならない為、“王直”は非常に狡猾な人物だ。

 

 

 

 だからきっと、あの構えた掌底が直撃する位置に来る。

 

 

 

「〝帝衝(ていしょう)〟ッッ!!!」

 

 

 

パトラッッッ!!!

 

「……えっ……?」

 

 

 

 

 転移してきたパトラを抱きかかえて、パトラを“王直”の攻撃から身を守るように背を向けて庇う。

 

 

 

 

 

 

 

「――――……がはァッ………………ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 武装色の凄まじい内部破壊が、私の体を壊していくのが、手に取るように分かった。




アンケートに2000件も回答を頂き、誠にありがとうございました。

アンケートの結果、僅差で『カイドウくんは残留する』の方に決まりましたので、そちらの方で進めさせていただきます。

投票していただいた方、ありがとうございました!

見習いのカイドウくん

  • 独立して五番目の海の皇帝
  • 四皇の最高戦力として活躍
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