拙い文章ですんません……。
――――力が、入らない。
――――何も、考えられない。
空高くから自由落下していく。
私の腕の中にはしっかりとパトラが居て、未だに何が起きているのかわからないと言った表情で私の顔を見ていた。
体の奥からこみ上げてきたものを耐えきれずに吐き出すと、それはドス黒く染まった血液。
「……げほっ…」
「シキ、さん? ……ッ!! シキさんッ!!」
パトラが何かを叫んでいるようだが、聞こえない。どうやら内部破壊の影響で鼓膜が破れてしまっているようだ。
「っ、RO―――! シキさんッ!?」
「ッ……駄目、だ」
能力を使おうとしたパトラの腕を握って止める。
いくらカイドウが守ってくれるとは言っても、その能力を島から大勢の海賊が見ている中で使ってしまえばパトラの身の安全が保証できなくなってしまう。
だから、パトラに此処で能力を使わせるわけには行かない。
それに―――、
「私はまだ、戦える」
体はガタガタ、内臓はボロボロ、意識だって朦朧としている。
正直、いつ意識がとんでもおかしくない状況だ。
だが、だからといってこんなところで倒れるわけにはいかない。私がここで倒れれば、パトラとカイドウに危険が及んでいくだろう。
そんなことはさせない。
なぜかって? そんなの簡単だ。
「私は――――“金獅子”のシキだ……ッ!!」
『私』は『“金獅子”のシキ』。
『“金獅子”のシキ』は『私』。
もう、原作の影を追いかけるのはやめた。
私という人格が入り、男から女になっている時点で原作なんて存在しないのと同義だ。
「『金獅子海賊団』の船長として、部下には手を出させない」
「おれはそういうところが嫌いなんだ、“金獅子”ィ……!」
私の台詞を聞いた“王直”が、あからさまに不快感を露わにするのが分かった。
真っ赤に染まった視界が、“王直”を捉える。
……この感じじゃ、今後の戦いに視界は役に立たないだろう。
「ぐッ……!!」
「仁義がどうとか、友情がなんだとか、仲間がいるだとか、おれァそんな力を持ってるのに甘ったれた連中が大ッ嫌いなんだよォッ!!」
「がはッ……!!」
「シキさん、もういいですっ!! 死んでしまいますっ!!」
腕の中にいるパトラを的確に狙ってくる“王直”から彼女を守りつつ、見聞色をフル稼働させる。
『疑うな、信じろ』
私の見聞色ではまだ未来を見ることができない。
せいぜい気配を感じ取って、それにどう対処するかを一秒にも満たない時間で考えることしかできない。
だが、それでは遅い。遅すぎる。
一瞬にして自分の位置を変えて攻撃を仕掛けてくる“王直”相手では、その一秒に満たない時間でも考えている隙に次の攻撃が飛んでくる。
普通の見聞色では、“王直”に勝つことなどまず不可能に近い。
私が一度だけ見切れた攻撃も、“王直”が油断していただけに過ぎない。自身の手の内がバレてしまった今、“王直”が気を抜くことなどまずありえないだろう。
なら、私の思考時間をマイナスにしてしまえばいい。覇気には、それだけの力がある。
未来を見てしまえば、“王直”が攻撃を仕掛けてくる前にそれらを見切れる。
“王直”の攻撃が、背――――……
「“
「あぐァッ!!」
“王直”の拳が私の背中にめり込む。恐らく、背骨の何本かは折れただろう。
今度は、わき腹に――――……
「“
「ぐッ……」
今度はわき腹に突き刺さった。肋骨が悲鳴を上げたが、まだ耐えられる。
『くたばれッ!! “
武装硬化を纏わせた拳の乱打。
頭に、背中に、足に、腕に、“王直”の拳が飛んでくる。
そして、私が雪の彫像の中に閉じ込められているカイドウを開放し、カイドウが“王直”へ向かって肉薄して――――……
――――
「“
赤で塗れた視界に、一筋の光が差したように見えた。その光に吸い込まれるように、私は斬撃を放つ。
「くたばれッ!! “
しかしそれは“王直”には当たらず、ロックス海賊団の奴らが逃げ込んだ、私が作り上げた巨大な雪の彫像がある島へと一直線に飛んでいく。
……少し、逸れてしまったか。
能力の影響が弱まった船が、大きな音と水しぶきをあげて海へと戻った。
その様子を見て、“王直”は半笑いを浮かべながら私に語り掛けてくる。
「まァ、よくここまで粘ったと褒めてやるべきか。
ここまで戦った敬意を評して、苦しまないようにあの世へ送ってやろう」
“王直”の拳が武装硬化していく。
きっと、先ほどと同じ技を放つつもりなのだろう。
「なら、私からも礼を言わせてもらおう」
「ほう?」
抱えていたパトラが、私の思惑に気付いた。
そして私は、最大級の笑みを以て“王直”を見据える。
「私は、まだまだ強くなれる。その可能性に気付かせてくれたことに」
「は? 何を言って――――」
『それ』は、“王直”が背を向けていた島より飛来する。
私の、頼れる仲間。
「 “雷鳴”ィィィッッ!!! 」
「――――なッ!!!」
バチバチと、黒雷が棍棒から漏れ出している。
「 “八卦”ェェッッ!!!」
「カイドウ、よく来てくれた」
「ごああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!?!??!?!!?」
凄まじい勢いでぶっ飛ばされた“王直”が、水平線の彼方まで消えていく。
まだ『悪魔の実』も食していないカイドウだが、その潜在能力は既に開花しているらしい。
カイドウは元に戻っていた船の上に着地し、パトラを抱えていた私もそれに続く。
「すまねェ……おれが不甲斐ねェばっかりに」
「シキさんっ!! シキさんっ!!」
「カイドウ、頭をあげろ。パトラも泣くな。ただ少し油断しただけだ。事前にヤツの能力を調べておかなかった私の落ち度だしな。それに」
「――――……“金獅子”ィ……ッ!!」
「戦いは、まだ終わっちゃいない」
私の目線の先には、頭から血を流しながら私たちを睨む“王直”が立っていた。
「ハァ、ハァ、絶対に、殺すッ!!」
左斜め後ろからの銃弾――――……
「“
「ふッ、“
「――――なっ!? ぐァッ!!?」
左斜め後ろから飛んできた銃弾を躱して、お返しに斬撃を叩き込めば、“王直”はそれを防御することもできずに正面から食らう。
右からの刺突、真上からの銃撃、右斜め前からの拳――――……
「なぜッ……なぜだァッ!!」
右からの刺突も、真上からの銃撃も、右斜め前からの拳も、全て私には当たらない。
ボロボロなはずの体は、私の未来予知に応えてしっかりと動いてくれた。
真後ろからの掌底――――……
「ぐァァァァッ!!! “
「――――……そこ、だぁッ!!」
「なッ!? ぐぁっ」
真後ろから、件の武装色の内部破壊を繰り出されそうになっているのも、私は見えるようになった。
繰り出された掌底をひっつかみ、そのまま前方へと押し倒した。
「これで、終わりだッ!! “獅子・
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」
可能な限り腕を動かし、過剰ともいえる程の数の斬撃を“王直”へ飛ばす。
コイツがなぜ私たちを狙ってきたのかは分からない。だが、そんなものは分からなくてもいい。
私の仲間を害そうとした。
“王直”を殺す理由なんて、それだけで十分だ。
生気の宿っていない“王直”の姿――――……
「ハァ、ハァ、さらばだ、“王直”」
斬撃の雨の中から出て来た“王直”には、生気は宿っていなかった。
今回のMVPは間違いなくカイドウ。
もしかしたら作者はカイドウが好きなのかもしれない。
見習いのカイドウくん
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独立して五番目の海の皇帝
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四皇の最高戦力として活躍