空飛ぶ女海賊   作:貮式

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戦闘がある時と、戦闘がない時で筆の進む速度が段違い過ぎて……

戦闘シーンもっと勉強しないとなぁ……


12.眠れる船の獅子

 

 

「……」

 

 

 奇跡的に無事だったロックス海賊団の船だったが、シキと“王直”が暴れまくったせいで船内は荒れに荒れていた。

 

 部屋を仕切る壁なんてものはところどころ意味がなくなっており、二人の覇王色の激突のせいで陶磁器やガラス、鏡なんてものは軒並み使い物にならなくなっていた。

 

 

「おい、“金獅子”ントコのガキ。そこどきな」

 

「……」

 

 

 あの戦いで、“王直”は死亡し、シキは意識不明の重体となっている。

 

 ボロボロになった船内でなんとか無事だった部屋の一室で、シキはパトラの治療を受けて眠っていた。予断を許さない状況であったのは、医学に疎いカイドウでもすぐに理解できた。

 

 

『私を、信じてください』

 

 

 大切な仲間であるパトラにそう言われてしまったカイドウは、シキとパトラがいる部屋の前で三日三晩毎日見張りをしていた。

 

 弱り切ったシキを仕留めようと幾人もの海賊が部屋に攻めてくるのを一人で捌き、その体に多くの傷跡を残しながらもカイドウは一歩も退くことはなく、そこに鎮座している。

 

 

 しかし、先日仕留めそこなった海賊共が今日は以前にカイドウに敗れた連中を引き連れてやってきた。

 

 

 現在いる場所が北の海(ノースブルー)だとしても、船に乗っている海賊は殆ど新世界出身の強豪揃い。覇気を修めている者も多くいる。

 

 そんな奴らが20人ほどの集団で、一人の子供に襲い掛かろうとしているのだ。普通ならばその時点で逃げ出してもおかしくはないが、カイドウはそれでも動かない。

 

 

「……やるなら来い。叩き潰してやる」

 

「相変わらずムカつくヤツだな……今日という今日は殺してやるッ……!! 野郎ども!! やっちまえッ!!」

 

 

 自分の得物である『八斎戒』を構えて迎え撃とうとするカイドウだったが、その体は限界直前であった。

 

 異様なまでのタフさを見せるカイドウでも、連日新世界出身の強豪たちとほぼ休みなく戦っていれば消耗もする。彼を動かしていたのは、もうほぼほぼ『仲間を守りきる』という信念のみだった。

 

 

 

「死ねェッ!!」

 

「前回の恨みィッ!!」

 

「船長の首を獲る前に、お前の首も獲ってやるよォッ!!」

 

 

 

 剣、刀、斧、槌、様々な武器を持った海賊たちがカイドウに襲い掛かる。

 

 

(テメェの体が動かねェなら、コイツらが疲れ切るまでおれの体で受け止め続ければいい……!!)

 

 

 もう体が思うように動いてくれないカイドウが出した最後の手段は、自らがタンクになることだった。

 

 海賊を蹴散らすよりも難易度が高いというよりも、半ば自殺しに行っているような強行策ではあったが、その策が実行される直前に、その声はそこにいた海賊たち全員の耳に入った。

 

 

 

「――――揃いも揃って、みっともねェ真似しやがって」

 

「――――まったくだ」

 

 

 

 空間が割れ、雷鳴が轟き、海賊たちを蹂躙していく。

 

 カイドウが声の聞こえた方へ視線を向ければ、そこには自分の船長であるシキがよく話していて、自分の修行相手でもある二人の海賊が立っていた。

 

 

「ニューゲート……リンリン……」

 

 

「クソ生意気なガキが、いっちょ前に覚悟見せやがって」

 

「海賊の世界に仲良しこよしはねェが、おれの子供たちが涙ながらに訴えて来たとなりゃ、親のおれが応えないでどうする」

 

 

 そして二人は笑みを浮かべながら、「そして」と続ける。

 

 

「「アイツがいなくなったら、酒盛り(お茶会)をするヤツがいなくなるからな。グラララララ(ママママママ)!!」」

 

 

 きっとそれは、シキが積み上げて来た人望と信頼。この船に於いて最高戦力ともいえる二人の大海賊を()()()()()()()、シキの人となりが為せる技。

 

 

 

「お()ェは下がってなカイドウ」

 

「こっから先は、おれたちがここを見といてやる」

 

 

「…………すまねェ、な」

 

 

 

 『八斎戒』を杖代わりにして、ふらふらとした足取りをしながらカイドウは部屋の中へ消えていく。

 

 そして、中に入った途端にバターンとぶっ倒れて、パトラの悲鳴が聞こえるところまで、外の二人は見聞色の覇気を使って眺めていた。

 

 

 

「あのガキも、随分と変わりやがった」

 

「シキのヤツが育て上げたんだ。どんな頑固者だって、シキの前じゃ骨抜きにされちまうのさ。

 ウチの子だって、シキの前じゃ泣きもしない」

 

 

 

 シキの部屋の最強の門番。

 

 その日から、シキの部屋に手を出そうとする不届き者はいなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ッ!!」

 

「あ、起きましたか? カイドウくん」

 

 

 そこから丸一日経って、カイドウが目を覚ました。

 

 机に置いてあるノートに向かってペンを走らせていたパトラが近寄ってきて、カイドウを包み込むように『ROOM』を展開させると、カイドウは驚いたように目を開いた。

 

 

「パトラテメェ、能力者だったのか」

 

「はい。色んな人から狙われる能力だったので、シキさんから隠すように命じられていましたが……

 今のカイドウくんには、隠す必要性はあまり感じられないので」

 

 

「……そうか」

 

 

 起きたカイドウの容態を手早く確認したパトラに、カイドウは質問をぶつけた。

 

 

「それで、船長は?」

 

「……まだ、眠っています」

 

 

 カイドウが立ち上がって、部屋の中にあるベッドを見れば、そこには目を閉じて規則正しく息をするシキの姿があった。

 

 

「そういえば、カイドウくんにはまだ容態を説明してませんでしたね。

 ……内臓の複数が損傷、背骨、肋骨、他6か所の骨折、大量の失血。正直、生きているのが奇跡のような状態です」

 

 

 既にあの戦いから一週間近く経過しようとしているが、それでもシキが起きる様子はなかった。

 

 

「あ、これ、外で見張り番をしてくれてる“白ひげ”さんのところに持って行ってくれませんか?」

 

「あァ? ……仕方ねェ」

 

 

 パトラから手渡されたのは、得意料理であるサンドイッチ。

 どうやって作ったのか聞くまでもなく、部屋の奥には食料の入った箱が置いてあった。恐らく“白ひげ”かリンリンに持って来てもらったのであろう。

 

 

 カイドウがそれを持って部屋から出ると、“白ひげ”は扉近くの壁に背を預けて、『むら雲切』を肩に掛けながら胡坐をかいて座っていた。

 

 

 サンドイッチを座っていた“白ひげ”の傍に置いて、カイドウは“白ひげ”と扉を挟んで反対側に座る。

 

 

「……もう怪我はいいのか?」

 

「あァ……ウチには名医がいるからな」

 

 

「あの娘か。お()ェの治り方を見るに、『悪魔の実』の能力者だってのは推察できるな。

 それに、シキのヤツが隠せっていうくらいには厄介、あるいはそれに準ずるモノだってのも分かる。

 隠し通したいんだったらもうちっと真面目にやらねェと、おれみてェなヤツに見抜かれるぞ」

 

 

 サンドイッチを頬張りながら、“白ひげ”はパトラの能力に関することを大方当てて見せた。

 

 カイドウは表には出していないものの、かなり焦っている。

 

 

 その様子を見た“白ひげ”は、大声で笑い始めた。

 

 

グラララララッッ!! 別に誰にも言いやしねェよ。

 そんぐれェの常識くらい備えてらァ。お()ェも、顔に出しこそしなかったが、内心焦りまくってるだろう? ガキの癖にいっちょ前だと思ってたが、まだまだだな」

 

 

「テメェ!! ぶっ飛ばすぞコンチクショウ!!」

 

 

 “白ひげ”におちょくられたカイドウは怒りを露にするが、戦いに発展するまでもなくそれを収めた。

 

 今のが自分の実力不足だというのは理解していたし、何よりここで“白ひげ”に八つ当たりしても意味がないことくらい分かっていたからだ。

 

 

 用意されたサンドイッチの最後の一つを口の中へ入れた“白ひげ”は、「美味かった」と満足そうな顔を浮かべて、

 

 

 

 

 

「まァ、さっきのはハッタリだったんだがな。

 お()ェの焦り具合を見て、ただの箱入り娘じゃねェことは確認できた。礼は言っておくぜ」

 

 

 

 

 とカイドウへ向けて言葉を放った。

 

 

 

 

 

「…………テメェ!! やっぱぶっ飛ばしてやるッッ!!!」

 

 

 

 

 

 カイドウはキレて“白ひげ”に襲い掛かったが、手も足も出ずにあしらわれたらしい。




恐らく本小説で『カイドウくん』が『カイドウ』になることはないですね。

原作のあの怪物からヤバい思想取ったらただの気のいいおっさんにしかならないので。

見習いのカイドウくん

  • 独立して五番目の海の皇帝
  • 四皇の最高戦力として活躍
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