空飛ぶ女海賊   作:貮式

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15.強さの秘訣

 

 

「ぶわっはっはっはっは!! 派手にやられたようだな! ゼファー!!」

 

「あァ。想像以上のやべェ集団だったぜ」

 

 

 海軍本部の医務室。

 

 ロックス海賊団に返り討ちにされたゼファーは、体中に傷を作り、繃帯を巻きながらもガープと共に笑い合っていた。

 

 ガープと共に見舞いに来たセンゴクとつるは、笑ってはいなかったものの、一先ず同期の無事に胸をなでおろす。

 

 

「“白ひげ”と“ビッグ・マム”の合わせ技か。おれのゲンコツで止めきれるかなァ」

 

「厳しいだろうぜ。おれが全力で〝スマッシュ・ブラスター〟を打って、どうにか威力を落とせるくらいだ。あれは」

 

「なるほど……じゃあ、おれがゼファーのなんちゃらスターを上回ってやろう!! そうすればおれがロックス海賊団をぶちのめしてロジャーに専念できる!」

 

「ほう、ならばおれもお前に負けないように鍛えなければな」

 

 

「ぶわっはっはっはっは!!」

 

「ははははははっ!!」

 

 

「お前らは危機感というものを持たんかッ!!!」

 

「ほんとに、こいつらは……」

 

 

 ゼファーとガープのマイペースな会話に、静かに話を聞いていたセンゴクは怒り心頭と言った様相だ。対してつるは、怒ってはいないが溜息を吐いて呆れていた。

 

 もはやそれも、いつもの光景だった。

 

 

「はぁ、軍艦三隻が沈没、海軍中将が痛手を負って敗走、世間からのウチらの信頼はもう急降下さね。

 ロックス海賊団からも逮捕者は大勢出たけど、海賊団が壊滅していない以上、どれだけ逮捕者が出ても民衆からの信頼は回復しない」

 

「……最後の大詰めで、“金獅子”が復活したのが響いたな」

 

 

 ガープとマイペース会話を繰り広げていたゼファーは、気持ちを切り替えて当時の状況を振り返る。

 

 「もしも」や「あの時」なんて酔狂な世界は存在しない、と毎度つるから言われているが、それでもゼファーは「もしも」と考えざるを得ない。

 

 

「そうだゼファー。敵船に乗り込んだのだろう? “王直”はどうだった?」

 

「“金獅子”の生存及びロックス海賊団残留は今話した通り確実だ。だが、あの時“王直”の姿は確認できなかった。

 見聞色で探ってみたりもしたが……それでもいなかった。つまり――――」

 

 

「離反したか、死んだか。という訳だな」

 

 

 ゼファーの言葉を遮って、ガープはいつの間にか取り出した煎餅を食べながら言葉を続ける。

 

 ロックス海賊団にこそ逃げられたものの、最高戦力の一人であった“王直”の不在の確証が取れたのは海軍にとってこれほどまでにないプラス要素であるのは確かだった。

 

 

 

 

「――――根回しは私がしよう」

 

 

 

 

 センゴクが椅子から立ち上がり、三人が彼へ視線を向ける。

 

 

「世界政府の転覆なんて、短期決戦でなければ成し得ない。海賊たちがロックスに従っているのも、きっと近いうちに世界が取れると信じているからだろう」

 

 

 何故新世界の荒くれ者たちが、誰かの下へついて海賊行為を行おうという事になったのか。

 

 それは、少しの間だけロックスの下にいるだけで何でも手に入り、何でもすることができるようになるからだろう、とセンゴクは結論を出した。

 

 

「“王直”がいなくなったことで、ロックスも焦っているはず。

 ……多く見積もって二年。それまでに、奴らは世界をひっくり返そうと仕掛けてくるだろう」

 

 

 最高戦力の一人であった“王直”がいなくなる、即ちこちら側の大きな戦力と戦う人物が一人減ったというのは、向こう側にとっては大打撃になっているはず。

 

 ならば、向こう側の動きは“王直”の分を補うように過激になり、そして最後には向こうの全戦力を以て政府転覆を仕掛けてくるだろう。

 

 

「ならば、我々もそこに合わせて海軍の全戦力をぶつけられれば、ロックス海賊団の野望を阻止することができる。

 

 そのためには、今から準備が必要だ」

 

 

「……難しいことはおれには分からんが、センゴク。お前に任せとけば大丈夫だろう」

 

 

 ガープが煎餅をゼファーに手渡しながらセンゴクへ笑顔を向け、センゴクもそれに応えるように歩き出す。

 

 ゼファーも声には出していないが、その瞳からはセンゴクへの信頼が感じ取れた。

 

 

「全く、これが男の友情ってやつかい? あたしには分からないね。ただ、同期として、アンタに任せたよ。センゴク」

 

 

 つるも、分からないと言いつつもセンゴクを送り出す。

 

 

 

 

 

 

 海軍の新星四人の絆は、全員共に中将になった今も健在であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〝斬波(ざんぱ)〟ッ!」

 

 

 私が目覚めてから三週間ほど。

 今現在、ロックス海賊団は壊れた船の修理のために新世界にある造船所へ来ていた。

 

 

 漸く繃帯のとれた私は、リハビリがてら愛刀二振りを手に持って海水を切り刻み、浮かばせていた。

 

 

「どうですか、体は」

 

「ああ。問題ない。流石はパトラの腕だな」

 

「いいえ、私は特に……シキさんの自然治癒力が高すぎるだけかと……」

 

 

「それでも、私を治療してくれたことに変わりはないだろう? 改めて、ありがとう。パトラ」

 

 

 私がそういえば、パトラは顔を朱に染めて微笑んだ。それはさながら天女のような美しさで、私も少しばかり見惚れてしまう。

 

 すると、誰かがこちらへ歩いてくる気配を感じてそちらへ視線を向ければ、『八斎戒』を手にしたカイドウだった。

 

 

「どうだ、船長。体は動くようになったか?」

 

「ああ。パトラのお陰でな」

 

 

 私に問いかけたカイドウは、どこかソワソワしているように見受けられた。まぁ、そうだろうな。私が長いこと眠っていて、更にはここ最近リハビリでまともに動けなかったからな。

 

 

「私と()りたいんだろう? いいぜ。病み上がりだが、まだまだカイドウには負けないさ」

 

「ッ!! ……ウォロロロ!! 全力で行くぜ……ッ!!」

 

 

 私の『木枯し』と、カイドウの『八斎戒』がぶつかり合う。

 

 ふむ、私が病み上がりなのもあるが、カイドウも死闘を経験したのもあってかかなり実力が伸びているように感じる。これは、今まで通りに舐めてかかったら痛い目を見るかもな。

 

 

 

「〝斬壕(ざんごう)〟ッ!」

 

「〝雷鳴八卦(らいめいはっけ)〟ッ!」

 

 

 

 互いにパトラを巻き込まないように気を付けつつ、少しずつ戦いの舞台をドックがある島から、砂浜で繋がっている無人島の方へ移していく。

 

 

 最終的にはカイドウが気絶して終わったが、私としては良いリハビリになったし、カイドウのレベルアップを実感できたしで大満足であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

 気絶したカイドウを引きずって歩いていると、道の先に見知った影が一つあった。

 

 それは、よく一緒にお茶をするリンリンの二番目の息子。ドーナツを頬張りすぎて口が裂けてしまったという変わった経歴を持つ男児。

 

 

「どうした、カタクリ」

 

「……」

 

 

 シャーロット家次男のカタクリは、俯いて何かを言いたげにしているが、中々言い出せないようだ。そういえば、前略奪した島からドーナツ持って来てたっけか。

 

 

「ドーナツ食べるか?」

 

「ほんとか!? ……って、そうじゃなくて!!」

 

「じゃあ、どうした?」

 

 

 一瞬揺らぎかけたが、どうやらそれ以上に大切な何かがあるらしい。

 

 

「ど……」

 

「ど……?」

 

 

 やっぱりドーナツが食べたいのだろうか。

 

 

「ど、どうやったらっ、シキ(ねぇ)みたいに強くなれるんだ!?」

 

「……へ?」

 

 

 自分の母親より年上なオバサンに向かって「(ねぇ)」はないだろう……じゃなくて、どうやったら私みたいに強くなれるか、か。

 

 普段はちょっと我儘で、人に何かを乞う事なんて滅多にしないカタクリが、私にそれを問いかけて来たという事はカタクリのその心を丸ごと変えてしまうような何かがあったのだろう。

 

 

 ただ、「私みたいに強くなりたい」と言うのであれば答えは簡単だ。

 

 

 現に、気絶して引っ張られているカイドウだって、その精神で強くなっていっているのだから。

 

 

 

「……ジハハハ、簡単さ。『自分の大切なモノ』を奪われないように、只管前向きに修行をしていれば、いずれ私みたいになれる」

 

「『自分の、大切なモノ』……」

 

 

 

 カタクリのあずき色のツンツンした頭を撫でながら、私はそう言葉をかける。

 

 私であれば『自由』を守るために。カイドウであれば『帰る家』を守るために、只管努力したのだ。

 

 

「それで『自分の大切なモノ』が奪われたんだったら……そん時は私を責めな。「お前のやり方じゃダメだった」ってな」

 

 

 そう笑いかけてやれば、カタクリの顔にも子供らしい相応の笑みが浮かび、「うん!」とこれまた元気な返事が返ってきた。

 

 

 帰るぞ、とカイドウを引きずっていた手とは逆の方の手をカタクリに差し出せば、彼は一寸も躊躇うことなく手を握り返してくる。

 

 

 

 その様子を見たパトラは満面の笑みを浮かべて微笑み、リンリンは呆れ顔をしながら「全くお前は」とため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シキ姉! 今日からよろしくな!!」

 

 

「……船長、なんだってリンリンんとこのガキがここに?」

 

 

 

「…………私が聞きたい」

 

 

 

 

 翌日から、私の手合わせ相手が、一人から二人に増えた。




ビッグマム海賊団からカタクリ取ったら戦力ガタガタになるので、流石にカタクリはあくまで一時的です。
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