空飛ぶ女海賊   作:貮式

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今回で一気に時間が飛びます。


3.能力殺しの大嵐

 

 

「“金獅子”のシキ!! 大人しく投降しろ!!」

 

 

 新世界、天候の穏やかなとある海域。

 

 その日の天気は、晴れときどき――――……

 

 

「……ジハハハ」

 

「な、なァッ!? た、退避ッ!! 退避ィッ!!」

 

 

 ――――軍艦。

 

 

 カモメのマークに『MARINE』と書かかれた帆が張られた世界の治安を守るための正義の軍隊、『海軍』の軍艦が空を舞い、意思を持っているかの如く他の軍艦へ落ちていく。

 

 互いにぶつかり合った軍艦は爆散して粉々になり、その様子を見ていた他の海兵たちはその出来事を起こした張本人であり、今現在軍艦に包囲された海の中心地でフワフワと浮かび上がりながら不敵な笑みを浮かべる海賊、“金獅子”のシキを打ち倒すべく、残った軍艦から銃撃の嵐を浴びせる。

 

 しかし、それらの銃撃は届く前に落ちるか、届いたとしてもすんでのところであっさりと躱されてしまい、当たる気配はない。

 

 

「中将がたったの一人……舐められたものだな。……斬破(ざんぱ)ッ!!」

 

 

 一閃。

 

 シキが抜き放った『木枯し』の一振りで、一隻の軍艦が真っ二つに切り裂かれた。

 

 しかし、真っ二つに斬られた軍艦は重力に従って沈んでいくのではなく、むしろそれに逆らうように浮かび上がり始める。

 

 勿論、それを操っているのはシキ。彼女は指を動かしながらその二つの軍艦を動かし、残った他の軍艦にぶつけていく。

 

 

 呆気のない戦闘。否、戦闘とも呼べない一方的な蹂躙。

 シキは内心「これが相手じゃ成長もくそもあったものではない」と毒づきながら海の藻屑となっていく海兵と軍艦を見ながら、少し離れた場所で停泊させていた海賊船と呼ぶには些か小さすぎる帆船へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――海賊、“金獅子”のシキ。懸賞金4億5000万ベリー。

 

 近頃名を上げ始めた女海賊。超人(パラミシア)系悪魔の実である『フワフワの実』を食した浮力自在人間であり、二刀流の剣士。

 現状仲間のような人物の報告は上がっておらず、単独で行動している海賊の可能性が極めて高い。

 大業物である『桜十』『木枯し』を所持しており、空の上から浴びせられる雨のような斬撃に注意されたし。

 

 また、こちらも近頃名をあげている海賊“白ひげ”やシャーロット・リンリンとの数度にわたる接触の報告あり。

 表立った抗争は確認されていない為、海賊同盟などを結んでいる線も考えられる。同様に注意されたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の初陣であるあの海賊たちとの戦いから、五年が経とうとしていた。

 

 五年という期間が短く感じる程に、私は今のこの生活に満足している。原作では海賊艦隊の提督と呼ばれていた私だが、今は左程『仲間』と言うものに興味が湧かないために五年経った今でも一人旅を続行している。

 

 

――――クワァ、クワァ……

 

 

 ふむ。たまにはこうして能力を使わずにただ波に揺られてみるのも悪くはない。

 この五年間で能力も大きく成長し、海軍の軍艦を何隻も同時に浮かばせ、それを同時にコントロールするくらいは簡単にできるようになったものの、やはり気を抜ける時には気を抜きたい。

 

 頬を撫でる潮風が心地よい。

 船をはじく波の音が気持ち良い。

 

 このただただ広大な海を、誰にも縛られることなく自由に突き進むことが、ひたすらに私の心を刺激する。

 

 

 ぎゅるるる~……

 

 

「……しまった。海軍の船から食料奪うの忘れていた」

 

 

 久々の海軍との戦闘で、軍艦が五隻も来たという事実に興奮したものの、中将が一人、それも腕の立つ人物ではなかったと勝手に期待を裏切られて腹を立てて食料も奪わずに沈めてしまった事はとりあえず反省しよう。

 

 仕方ないから船を浮かばせて飛んでいくとするか。暫く飛んでれば島の一つでも見つかるはずだ。

 

 

 よいしょ、と船の甲板へ手を当てて、能力を使う。

 ふわりと重力を無視して飛び上がった私の小さな海賊船は、私の意のままに進み始める。

 

 

 今は新世界のどのあたりにいるのかは全く分からないが、とりあえず人がいれば私の見聞色で察知できるから大丈夫だろう。

 

 船に積んであった最後の食料である干し肉を千切って食べながら、そこそこ広い範囲を見聞色で探し始める。

 五年間で私の覇気も十分に育ってきていた。何なら、あるとは思っていたが覇王色の覇気にまで目覚め、そのコントロールもできるようにした。

 

 

 原作の最終話を見ることは叶わなくなったが、ルフィが覇王色を纏ってカイドウを殴っていた所までは読んでいたため、今後はそれと同じ芸当ができるように鍛えていくことにしよう。まだ漸く覇王色の放出が任意でできるようになった程度だから、道のりは長そうだ。

 

 

 あと、私の適正はどうやら武装色らしく、見聞色はそこそこに武装色だけイヤに速く成長していった。

 私が剣を使うからなのか、武装色を伸ばした方が良い能力の使い方をしているからなのかは分からないが、まぁ伸ばせるだけ伸ばそうと最近はそちらにも力を入れている。

 

 

 

 見聞色に人の気配はない。まだ進み続ける必要がありそうだ。

 

 

 

 と、目を閉じて人の気配ばかりを気にしていたのが悪かった。

 

 

――――ゴロゴロ。

 

 

「あァ……これは、不味いな」

 

 

 目の前で急速に成長していく巨大な積乱雲を見て、私は急いで方向転換する。

 

 原作の通り、『フワフワの実』は大きな風にめっぽう弱い。

 私の能力はあくまでも『触れた物体を浮かせて、それに()()()()()指向性を持たせることができる能力』だ。

 

 その『ある程度』を越えた力に煽られれば、私のコントロールが利かなくなり、しかし空には浮いている状態になるのでまさに風に舞って飛んでいく紙のように成す術がなくなる。

 

 

 

「ぐゥゥゥゥッ!!」

 

 

 

 あっという間に、巨大なサイクロンに飲み込まれる。

 

 恐ろしく巨大な雨粒が、私と船にぶち当たるが、問題はそこではない。

 

 

 思っていた通り、風が強すぎる。

 

 

 雷鳴が幾度となく鳴り響き、中には私を掠めていくものもあった。

 

 とにかく、今はここを切り抜けることに全力を注ぐ。こんなところで能力が制御しきれなくなって溺れて死ぬなんてことは絶対に許さない。もっとこの世界で生きて、もっと自由を謳歌したい。

 

 

 

 が、私の思いとは裏腹に、どれだけ進んでもサイクロンの切れ目は見えず、突然それまでの風とは一線を画す突風が私を直撃した。

 

 

 

(や……ッばい……ッ!!)

 

 

 

 適当な島から盗んだ帆船が音を立ててバラバラになり、私は空中へ放り投げだされた。

 

 踏ん張るものも掴まるものもなくなり、私はただ只管に風の奔流にもまれ続ける。

 

 

 どうにか体勢を維持しようと画策するが、強すぎる風を前にして能力の制御が効くはずもなく、そうこうしているうちに。

 

 

――――ドボンッ。

 

 

(不味いッ……いつの、間に……ッ!!)

 

 

 風に揉まれ続けていた私は、いつの間にか急降下して海に近づいていたらしく、そのまま海面に叩きつけられた。

 

 そして、私は海水に触れたことで脱力していくのを感じながら、己の最期を悟る。

 

 

 

(まだ……やりたいこと……あ……った……のに……)

 

 

 

 サイクロンによって辺りが真っ暗なために、もうどこが水面なのかも分からないまま私は必死に手を伸ばすが、当然意味もなく。

 

 

 

 

「ごぼっ……ごぼぼっ……ごぼぁッ………………」

 

 

 

 

 暗闇の海の中で、私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オヤジィ!! 海に人が!!」

 

 

「あァ……? ちィッ、あの馬鹿、前々から言ってやがったのに遂にやりやがったか」

 

 

「どうするんだ!?」

 

 

「……仕方ねェ。……医学に心得のあるやつは今すぐに治療の準備しろ! そのほかはアレを引き上げろォ!!」

 

 

「「「「はいッ!!」」」」

 

 

 

 

 

「……テメェはその程度で死ぬタマじゃねェだろう? ――――シキ」




書いてて思ったけど、よく五年間も生きてられたな。
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