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『――、こっちだよ』
『えー、――ちゃんまたお父さんの迎え? いいなー』
『私も親に送り迎えしてもらえれば楽なのになぁ……』
『あはは……じゃあね』
放課後の学校の駐車場、遊びに行った場所の駐車場、会社の駐車場。
私の行く先々に、父の車が止まっていなかったことは、一度もないと思う。
『今日は、随分と遅かったじゃないか。
お友達とどんなことをしていたんだい? 近頃のカラオケは危なくてね、連れ込まれて乱暴されてしまう子もいるらしいんだ。
あぁ、そうそう。スマートフォンはパパに寄越してね』
『うん。はい』
私が学校から帰れば、その日何が起きたのかを事細かに尋ねられ、それは友人と遊びに行った先でも、更には就職した後でも必ず
『――さんのお父さんの従弟のおじいさんが、昔よくない事をしていたみたいでね。
今後、付き合うことは控えた方が良いかもしれない』
『うん。分かった』
『それと、――くんは、成績があまりよくないんだってね。
――が無理に付き合う必要はないんだよ。距離を置いた方が良いかもね。――の今後に影響を与えかねない』
『うん。分かった』
『それから――――』
私の親は、所謂『毒親』と呼ばれる類のものであった。
娘である私の事を事細かに『管理』して、自分が先が見えない程長く長く敷いたレールの上しか走らせない人物。
私が何時何分に家を出て、何時何分に家に帰ってきて、何時何分に風呂に入り、何時何分にご飯を食べ、何時何分に歯を磨き、何時何分に部屋に行き、何時何分に就寝するのかを、父は毎日記録していた。
『三分も時間を過ぎているよ。
『アイツ』というのは、私の母の事だ。
私がまだ小学校にも行かないくらいの年齢の時に事故死してしまった、お淑やかで、美しかった母。
母の事を心底愛していた父は、娘である私を
馬鹿と天才が紙一重なのではなく、狂人と天才が紙一重だと、私は知っていた。
しかし、頭の隅から隅まで狂ってしまった人と言うのは、時に天才を遥かに凌駕するというのも、私は知っていた。
一週間の内、唯一私の行動が縛られない1時間にも満たない時間というのが、水曜日の放課後。
毎週水曜日だけは父の仕事の時間が一時間だけ伸びるので、その分だけ私の自由時間ができる。だから、その時間を使って私は近所の書店へ行って、毎週すかさず『ONE PIECE』を読んでいたのだ。
私とは正反対の『自由』を謳歌する少年と、それを支える仲間たちの冒険物語。
心躍らないわけがなかった。
私が読み始めたのはウォーターセブンとか、エニエスロビー辺りからだったから、それまでのストーリーは仲良くなった書店のおじさんに全部教えてもらった。
『ONE PIECE』を通して友人もできた。
父が仕事でいない時間帯を狙って、休日に映画を見に行ったりもした。まぁ、『靴の位置が違う』と言われてバレたけれど。
あの時の友人、確か名前は……池さんだったか。あの子は元気だろうか。
私の最期は……自殺だったような気もするし、事故死だったような気もする。もしかすると他殺の可能性もある。
はっきり言ってしまえば、死んだときの記憶がないのだ。
恐らく死んだであろう場面を思い出そうとすると、その日だけ靄がかかったように急に思い出せなくなる。不思議な現象だが、私の中にある『死』という生きる者なら誰しも恐れ、トラウマが確定してしまう経験を、本能が理解して思い出させないように制限をかけているのかもしれない。
……あぁ、そういえば。
『死』という単語で思い出した。
私は今どうなったのだろうか。
溺れて死んでしまったのだろうか。二度目の人生を、あんな形で終わらせてしまったのだろうか。
分からない。分からないが、この何もない真っ白な空間から出られないなんて、そんな不自由は嫌だなと考える。
私は、まだ自由になってない。
ただお尋ね者になっただけで、何も為せていない。
――――こんなところで、ぐずぐずしている訳にはいかない。
白い空間に、罅が入った。
ビキビキと音を立てて、空間が崩れ落ちていく。
やがて私が経っていた足場も崩れて、私は辺りにモニターのように浮かぶ前世の記憶と共に、暗闇へと落ちていった。
『――、わ――――、――――て――――から』
「目ェ、覚めたか」
「……あァ、お陰様でな」
目を覚ました私のベッドの横に座っていたのは、私が修行していた五年の間に何度か交流のあった“白ひげ”ことエドワード・ニューゲート。
見たことのある船員が私に近づいてきて健康状態をチェックしているあたり、どうやら私は『白ひげ海賊団』に助けられたであろうことは明白だった。
「――――……凄まじくデカい借りができちまったな」
「ふん、つまらねェ酒持ってきたら容赦しねェからな」
「ジハハ、酒でいいのか?」
「テメェに手ェ借りるような事態なんざ起きねェよ」
知らない間に癖になってた笑い声と共にニューゲートへ言葉を返すと、いかにも自信にあふれた声で酒を飲みながらそう返ってくる。
ニューゲートは私のライバルであり、互いに良い修行相手であり、飲み仲間でもある。
互いに貸し借りもなく、至って対等な関係を築けていたと思っていたのだが、思わぬところでどうやって返したらよいのか分からない程の大恩を受けてしまった。
しかし、その対価が酒でいいと言っているのだから、ニューゲートらしいと言えばらしい。
だが、仁義なくして海賊の世界は生きてはいけない。
勿論酒は用意するが、このデカすぎる借りは後で必ず返すとしよう。そうでないと私の気が済まない。
「おめェ、おれは前々から『気を付けろ』と言っていたはずだよな」
「……能力の過信は、良くない事だと学んだ」
「仮にもおれのライバルともあろうヤツが、無様なこった」
「むむ……? 今、私の事をライバルと認めたのか?」
「……余計な口叩くと今すぐ海に沈めるぞ“金獅子”」
「ジハハ、そいつは怖いな。……――――改めて、感謝する。ニューゲート」
ニューゲートは私の顔は見ずに、そっぽを向いたまま酒をぐびぐびと呷る。そして、空になった酒瓶を口から離して、小さく「あァ」とつぶやいた。
後にその名を轟かせる大海賊は、もしかしたら意外と感情豊かなのかもしれない。
暫くニューゲートと話した後、彼は部屋を後にした。
部屋に一人になった私は、窓から見える外の景色を見やる。
外に広がる海は相変わらずだだっ広くて、ひたすら青くて、見るものすべてを魅了している。
変わりやすい海の気候も、それをのらりくらりと躱しながら飛ぶカモメも、全てが私の心を刺激させるスパイスだ。
ふと、今は原作開始の何年前なのだろうかと気になった。
私のベッドの脇に置いてあった新聞を取って広げてみる。
“金獅子”のシキの記事に、“白ひげ”の記事、リンリンの記事もある。ほう、また子供産んだのか。
だが、それらの記事は新聞の一面を飾るほど大きくない。
私が海賊を始めて3年ほど経った時辺りから、新聞の一面はほぼ
『“海の悪魔”ロックス・D・ジーベック、海軍基地のある島を襲撃――――!!』
後の大事件の主犯格である海賊、ロックス。
海賊島ハチノスの元締めであることは確認済みだが、海賊船を作っていたり、ハチノスに海賊を集めていたりと言った情報は確認できなかった。
しかし、あくまでも私の直感ではあるのだが、私はこう感じる。
――――じきに、
ちなみに主人公の親は、『プロジェクトセカイ』というゲームに出てくる 朝比奈まふゆ というキャラクターの親を参考にして制作しました。
主人公は今後、
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このまま普通に歳を取る
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何らかの方法で老いを止める