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6.その船の上で 上
「ぐっ……!? うわっ!? うわァァァァァッッ!!」
突き飛ばされて船から大きく身を乗り出してしまった海賊が、高高度から海へと真っ逆さまに転落していく。
はるか下の方で水柱が立つが、それを見て顔を顰める人物はこの海賊船のなかでは圧倒的少数だ。
「また仲間殺しをしてやがんのか……?」
「無駄だニューゲート。こいつらに言ってやったところでどうせ明日にゃ同じことが起きる。
いちいち反応してたらストレスがたまるだけだ」
「……ちっ」
その筆頭であるニューゲートは馬鹿ではない。義理と人情を重んじるニューゲートだが、それだけではやっていけないというのも同時に理解している。『ここはそういうところだ』と割り切らなければこの船で生活することなど土台無理な話なのだ。
「そのうちハゲるぞ」とは、将来の彼の姿を知っているため言わないことにした。
「シィ~キィ~♪」
と、そこへ楽しそうに靴音を響かせながら近づいてくる人物が一人。
大柄なニューゲートよりもさらに大きく、それに比例するように私のものよりも遥かに大きなモノを実らせた、この男ばかりの海賊団では珍しい女海賊。
「リンリン。どうかしたか?」
「またおれとお茶をしないかって誘いに来たのさ」
兼ねてより付き合いのある将来の『四皇』、シャーロット・リンリン。
彼女にまだ子供がいなかった頃くらいからの戦友で、数少ない女海賊という事もあって度々彼女の船にお邪魔することもあった。
ニューゲートはどうやらリンリンの事が苦手なようで、私の肩に手を回して自分の体にぐっと近づけたリンリンから少し距離を取った。
……私より二つも年下なのに、この差は一体何なのだろう。
前世も今世も女として生を受けたために、高身長で良いスタイルをしているリンリンに若干嫉妬してしまう。
そんな考えを、将来の彼女の姿を思い浮かべることで振り払う。
「そうか。なら、久方ぶりの女子会と洒落込もう」
「いいね、いいね! それじゃ、シキは借りていくよ“白ひげ”」
「……あァ? そいつがどこへ行こうがおれの知ったことじゃねェだろ」
足取りの軽いリンリンと共に、基本的に人の多い船内を歩いていく。
実力でいえば最強格の私とリンリンの道を阻む不届き者はおらず、私たちはスムーズに部屋へと入っていった。
リンリンの部屋は他の船員の部屋よりも広く、そして賑やかである。
尤も、部屋が広いのは両隣の部屋の奴らを殺して奪い取った部屋を、壁を取り払って無理矢理広くしただけなのだが。
「フギャー! フギャー!」
「オギャー! オギャー!」
「ウギャー! ウギャー!」
「この子たちが今年生まれた子たちか?」
「あァ、右からモスカート、マッシュ、コンスターチだ」
部屋の中に乳母や女中がいない事から、既に自分で思考し、行動することができる上の兄弟たちはともかく、まだまだオモチャなどで遊びたい盛りな子供たちの面倒をリンリン一人で見ているという事実が発覚して驚愕している私を尻目に、リンリンはお茶の準備を整えていく。
「あぁ、そうだ」
私は部屋を見渡して、隅の方で私たちの事をじっと観察している上の男四人兄弟に近づき、お菓子の入った袋を取り出した。
「みんなで分けて食べろ。まぁ、それぞれの好物が分かれて入ってるから、取り合いにはならないと思うが」
と言ってそれを差し出せば、長男のペロスペローがおずおずとそれを受け取る。
カタクリとダイフクとオーブンの三兄弟がその中身を覗いて目を輝かせている中、匂いに釣られて他の兄弟たちもそこへ集まり始めた。
「いつも悪いね」
「私の能力なら、いくらでも略奪できるからな。
数少ない同性の話し相手なんだ。このくらいさせてくれ」
「そうかい。さ、座っておくれ」
リンリンにそう促され、部屋に備え付けられた椅子に腰かける。
そうして、いつも通りの彼女との女子会が幕を開けるのだ。
「――――それで、今もお腹の中に子供がいると」
「あァ、そういうことさ。……ところでシキ、お前、子供を作る気はねェのか?」
「――――ごふっ……!!? けほっ、けほっ、な、いきなり何を!?」
リンリンの話がひと段落して、いい香りを放つ紅茶を口に含んだところで、彼女の口からとんでもない言葉が飛び出してきた。
「子供はいいもんさ。裏切らねェし、下手にそこいらの海賊を手下にするよりよほど従順だ。
シキも、素体は悪くないし、強さも一級品。子供も強い子が生まれるだろうね。ただ、女の華は長くは続かねェ。早いうちに相手を見つけねェと、永遠におひとり様になっちまうぜ」
「……私はまだ、そういうのは」
「ふぅん、そうかい。まぁ、そいつはおまえの自由だからね。好きにしな」
色々と規格外なリンリンならいざ知らず、私に子供なんてできたら人並な身長も相まって戦闘などできなくなってしまうだろう。
一応前世からの憧れもあるにはあるが、今はその時ではない。
そんなこんなで、リンリンの部屋でしばらく時間を潰した私は、お茶会をお開きにしたところで自室へと帰った。
「……戻った」
「あ、おかえりなさい!」
部屋に入ると、パトラの声が私の耳に届く。
書いていたらしい日記を静かに閉じて、椅子から立ち上がると、私に近づいて羽織を回収し、それをハンガーにかけていく。
テーブルの上にはサンドイッチが置いてあって、それはお茶会で地味な量のお菓子を食べたせいで若干お腹が減った私の胃袋を丁度満たしてくれそうな、絶妙な大きさのもの。
「いつもすまないな」
「いえ、私がしたくてこうしてるだけです」
「じゃあ、遠慮なく頂こう」
「はい、どうぞ」
「いただきます」と手を合わせて、置いてあったサンドイッチを頬張る。
キャベツのシャキシャキ感と、卵の丁度良い半熟さが、私の口の中を満たす。パトラにサンドイッチを作らせたら、この世で右に出る者はほとんどいないだろうと思えるくらいには、パトラのサンドイッチは美味い。
「うん。いつも通り、美味いな」
「ふふっ、ありがとうございます」
パトラへそう告げれば、彼女は年相応の表情で顔を綻ばせながら顔の前で手を合わせた。
最近になって、漸くみられるようになってきたパトラの笑顔。
こんな可愛くていい子が、つい数年前まで
挙句、その天竜人にお遊びで食べさせられた『悪魔の実』のせいで、今もなお海賊と海軍の両方から命を付け狙われている。
「……っ?」
――――コツ、コツ。
と、そこへ誰かが部屋に近づいてくる気配を感じる。
パトラを守るために咄嗟に身構えるが、その気配の詳細を探ったところでその心配が杞憂だったと警戒を解除した。
「何の用だ、ニューゲート」
扉を開ければ、そこに立っていたのはニューゲート。
そして、その脇には気絶したカイドウが横たわっていた。
「グララララ。威勢のいいクソガキを揉んでたが、ぶっ倒れちまってな。コイツ、お前のところのヤツだろう? この船の船医は信用ならねェ。あれは患者を使って人体実験でもしてるクチだろう。
なら、おめェのところに持ってくのが一番だと思ってな」
「そうか。持って来てもらって感謝するよニューゲート」
「あァ……――――ソイツは、なかなか見所があるガキだった。ただ、育て方を間違えればいずれ脅威になり得る。気ィつけな」
「……それは、私が一番分かってる」
「それだけだ。じゃあな」
ニューゲートはそれだけ言い残して去っていった。
私はボロボロのカイドウを引っ張って部屋まで入れて、殺さないように加減されていたとはいえ外から見ればかなりの重症なカイドウを見て溜息を吐く。
「今回のは酷いな。流石はニューゲートと言ったところか。……パトラ、頼めるか?」
「はい! お任せください! ……――――
パトラの掌から、青いドームが広がっていく。
それは、パトラが海賊から付け狙われる原因となった強力な『悪魔の実』である、〝オペオペの実〟の力だ。
自分の親の友人で、度々家に来て、スタイルのいい和服美女が、来るたびに自分たちの為にお菓子を持参するとか、性癖ねじ曲がりそう。
カイドウのアンケート接戦過ぎて草
見習いのカイドウくん
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独立して五番目の海の皇帝
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四皇の最高戦力として活躍