空飛ぶ女海賊   作:貮式

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また予約投稿ミスってた、と思ったら今投稿予定のヤツ全部日付が一日遅れになってた……


今回はちょっと短め


7.その船の上で 中

 

 

 パトラと出会ったのは、何の変哲もない海の上。

 

 航海術の本を片手に新世界の海を渡っていた時、目の前からやってきた豪華な船からバズーカを放たれた。

 

 咄嗟にそいつらの船に打ち返してやったのだが、その船というのが天竜人の船。

 危害を加えれば海軍大将が飛んでくるという、()()()()()()()が目の前にあるのに使わないという手はないだろうとほくそ笑んだ私は、その船に乗り込んで好き勝手に暴れてやった。

 

 

『海軍大将を呼べるんだろ……? なら、早く呼んでくれよ』

 

 

 護衛の兵士も立ち向かってきた奴隷も全て無力化した私は、天竜人の男にそう言ったものの、ソイツは私の顔を見て泡を吹いて気絶してしまった。

 

 

『……しまった。大将呼んでもらえるように何人か残しておくんだったな』

 

 

 気絶している天竜人を叩いて起こすというのも考えたが、床に転がっていた奴隷たちの首輪を見て、原作でのレイリーを思い出し、急遽目的を武装色の覇気の特訓へと変えた。

 

 そうして武装色の内部破壊の特訓をしている最中に出会ったのが、船の奥の、更にその奥に幽閉されていたパトラだったのだ。

 

 

『あな……た、は?』

 

 

 今にも消えてしまいそうな、か細い鈴のような声。

 ボサボサに伸びていた髪の間から見える瞳には、凡そ生きる意志と言うものは垣間見えず、しかし死のうという感情さえも読めないような、何も宿っていない目だった。

 

 

『私は“金獅子”のシキ。海賊だ』

 

『“金獅子”の……シキ……?』

 

 

 外の情報など知らされない奴隷の身だったパトラは、私の名など知っているはずもなく。

 

 檻をこじ開けて入ってきた私に動じることもなく、パトラはただ体の力を抜いた。 

 きっとその行動は、いつも天竜人に対してやっている事だったのだろう。天竜人が自身の体を好きにしやすいように、ただ体の力を抜いて奴らが去るのを待つ。

 

 

 私が首輪に手をかけて、首輪が警告音を鳴らしてもなお、パトラは表情を変えることなくずっと体を脱力させていた。

 

 

 

『死ぬのが、怖くないのか?』

 

 

『もう……何も、わかりません』

 

 

 

 声に抑揚はなかった。前世で発達していた機械の声でさえ、もっと抑揚があっただろう。

 

 

 かつてはただの漫画の世界でしかなかったこの世界の腐った部分に、初めて触れた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『家族は?』

 

『……いません』

 

 

『知り合いは?』

 

『……いません』

 

 

『出身地は?』

 

『……分かりません』

 

 

 

『……行くアテは?』

 

『……ありません』

 

 

 

 

『……なら、私の船に乗れ』

 

 

 

『…………分かり、ました』

 

 

 他の奴隷たちを全て家族や知り合いの元へ帰したあとの船の上。

 

 

 水平線の向こう側へ沈んでいく夕焼けを眺めながら、私とパトラは仲間になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅぉ……」

 

「目ェ覚めたか」

 

 

 もうじき海の向こう側から日が昇ろうとしている時間帯。

 昨晩パトラに処置してもらったカイドウが目を覚ました。

 

 

「お前の処置はパトラがやった。後で礼を言っておけ」

 

「誰がッ………!! …………そうか」

 

 

 『誰が助けろと言った』と、言いかけたのを飲み込んだのだろう。

 出会って間もなかったころのカイドウなら遠慮なく言っていた台詞だが、それを飲み込んでいる辺り彼なりに成長しているのが伺える。

 

 そして、カイドウは私が腰かけているベッドで眠っているパトラを一瞥すると、得物である『八斎戒』を持って部屋の扉を開けた。

 

 

 潮の匂いが部屋の中を吹き抜け、冷たい風が部屋を満たす。

 

 

「……素振りしてくる」

 

「あぁ、行ってこい」

 

 

 バタンと扉を閉めたカイドウの足音が遠ざかっていき、やがて聞こえなくなる。

 

 

 原作のいかついイメージしかなかったカイドウは、接してみればただ腐り切った世界を知ってしまっただけの子供だった。

 幼少のころから戦争の道具として使われ、更には政治の道具として政府に売り渡されそうになり、世界の不条理さを幼いながらに理解してしまったがために、自分が持つもの、つまり『力』で全てを変えようとしてしまっただけ。

 

 

 カイドウの根本を変えたいのならそもそも生まれた瞬間に干渉しなければならなかったが、それはもうできない。

 

 ならば、カイドウが私の下へ居続ける限りは、しっかりと面倒を見てやろうと思う。

 

 

 それでカイドウが私の下から巣立とうが、残ろうが、私はカイドウの意思を尊重する。

 

 

「……もう一眠りするか」

 

 

 眠っているパトラの隣へ寝転がり、静かに瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――数時間後、新世界のとある島。

 

 

 

 

「――――……船長命令だ。やれ、ニューゲート」

 

「ちっ……〝壊天〟ッ!!」

 

 

 堅気に手を出すことを嫌うニューゲートが、船長のロックスから命令されて渋々衝撃波を放つ。

 

 空間に入った亀裂が大気を揺らし、少し先に見えている島を大きく揺らす。

 地割れが走り、震動でうねる津波が島を襲う。

 

 何故島がそうなったのかと問われれば、『海軍基地』がそこにあったからというだけだ。

 

 

 民間人がいようが関係なく、私たちは基地があればすかさず襲撃を行う。

 

 

 なぜならば、ロックス、ひいては我々ロックス海賊団の野望を叶えるためには世界政府の打倒が必須。

 

 しかし、政府を倒したとしてもその機関の一つである『海軍』が残っていれば、そこにいる数多の将兵たちが私たちを攻めてくることは確実。

 

 だから予め世界各地の海軍基地を襲撃して海軍の人員を減らしているのだ。

 

 

「……やっぱり慣れねェな」

 

「まァ、堅気には手を出したくないっていうのは私も同感だな」

 

 

 『世界政府』を打倒して世界の王となる、というロックスの野望だが、この計画をやるにはどうしても短期決戦でなければならない。

 

 いつまでも時間をかけていれば向こう側も私たちに対抗策を幾つもぶつけてくるだろうし、何よりロックスが王になることを前提としてチームを組んでいるこの海賊団が、ロックスに不信感を抱いて空中分解を起こしてしまうだろう。

 

 

 私やニューゲートのように堅気に手を出したくない、というのは珍しい理由かもしれないが、そういうヤツも一定数存在する。

 

 そんな奴らはだいたい、『この計画が完了した暁には『天竜人』がいなくなる』ため、離れていないに過ぎない。

 

 

 空中分解が起き始めるまで、少なく見積もっても二年ほどだろうか。

 

 

「シキ」

 

「……なんだ」

 

 

「船を飛ばせ。赤い土の大陸(レッドライン)を越えるぞ」

 

 

「……了解」

 

 

 船に手を付け、能力を発動させる。

 

 ロックス海賊団の船はあっという間に空高くまで飛び上がり、見えて来た巨大な大陸の上を飛んでいく。

 

 

 私含め、新世界の怪物たちが乗った最悪の船が、新世界の外の海へ進出する。

 

 

 私たちにとっては夢への第一歩だが、私たち以外の民間人や海兵にとっては悪夢への第百歩であることは間違いない。




めちゃんこ難産……。

アンケートは三日後に締め切ります。

見習いのカイドウくん

  • 独立して五番目の海の皇帝
  • 四皇の最高戦力として活躍
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