海軍本部中将、センゴクは自身の執務室に運びこまれてくる大量の書類に頭を悩ませていた。
訓練兵時代より発揮されていた頭の良さを買われて『対ロックス海賊団特別部隊』のトップを任されたセンゴクだったが、次々と運び込まれてくる被害報告書の量を鑑みるに、成果はあまり芳しくないようだ。
「『“白ひげ”の震動による地割れや津波によって壊滅』、『シャーロット・リンリンの能力による火事や雷で消滅』……どれも一朝一夕で解決するものじゃないのが嘆かわしい」
運び込まれてくる報告書の一つ一つにしっかりと目を通しながら、センゴクはそれぞれにサインしていく。
生き残った住民の保護や支援、街の復興に際する海兵の派遣。
海賊たちを討ち取ることも大切ではあるが、こういった海賊に襲われてしまった街の復興支援を行うのも海兵の立派な仕事の一つである。
「やはり、コイツを止めないことには被害は収まることはないな」
センゴクの執務室の机の上に報告書が積み上がっていく原因の一つである、『ロックス海賊団の移動速度』の問題。
ロックス海賊団の移動速度の異常さは、全て“金獅子”のシキの能力が関わってくる。
“金獅子”のシキを止めなければ、ロックス海賊団の被害はとどまるところを知らないだろう。
「早急に、“金獅子”のシキへの対策を考えなくては」
“金獅子”が“白ひげ”と同じく穏健派だということは、
ならば、明確な弱点となりうる『そこ』を突けば良い。
“仏”の他に、“知将”という二つ名も持っているセンゴクは、書類にサインを施しながらその頭を回転させて“金獅子”を止める算段を立て始める。
人々を脅かす凶悪な犯罪者を捕らえるためならば、多少なり汚い手段を講じることも厭わない。
全ては、この海の平和を守るために。
――――
「〝獅子威し“地巻き”〟ッ!!」
海を越え、大陸を越え、ここは
そこで行われているのは、いつも通りの虐殺。ロックス海賊団所属の海賊たちが凶悪な笑みを浮かべて海兵や住民たちを斬ったり、銃弾を撃ち込んだりして殺していく。
だからか、最近はニューゲートやリンリンは戦闘に顔を見せず、これ幸いにと今までその二人の攻撃で全てが終わってしまって、人を殺す事ができなかった輩の活動が活発になった。
私はそんな奴らから少しでも多く堅気の人間を守るべく、能力で操作した土砂の中に空間を作って、その中に人を閉じ込めていく。
少しだけ分かりにくいように空気穴も作ってあるし、救助が来れば必ず助かるようになっている。
「相変わらず“金獅子”の姐さんは規模が桁違いだ! おれたちも負けてられねェ!」
「行くぞお前ら!! 殺せェ!!」
しかし馬鹿どもは、それに気付かない。
少しでも見聞色を使えば察知できるというのに、明らかに格下の相手に舐めてかかって覇気を疎かにしているから気付けないのだ。
「〝
「ぐあぁぁっ……」
こちらに向かってきていた海兵を切り伏せ、他に海兵の気配がなくなったことを読み取ってから海軍基地の倉庫を漁りに行く。
基地に置いてある金目のものも確かに大事だが、私が欲しているのは『悪魔の実』だ。
将来的にロックス海賊団が滅びて独立する時、私は再び急に発生するサイクロンに悩まされるだろう。
いくら能力を磨いたところで嵐に遭遇してしまえば一巻の終わり。海に沈んでご臨終だ。
それを解決できる可能性があるのが、
“覚醒”した
ならば、原作に登場した『ヒエヒエの実』や『ユキユキの実』、悪魔の実大全を持っていないのであるのか分からないが、『ハレハレの実』なんてものがあれば、将来的に仲間へスカウトした誰かにそれを食べさせることで『金獅子海賊団』を永遠の安泰に持ち込むことができる。
海賊団全体の命運をその能力者にゆだねてしまうのは些か不安が残るが、『フワフワの実』の限界がある以上はそれに頼るしかない。
「……ここも外れか」
暫く探してみたが、『悪魔の実』らしきものはここの海軍基地にはなかった。
まぁ、
他のクルーたちが金や食料漁りに夢中になっている中、私は踵を返して船へと戻る。
「おい、シキ」
月明りが照らす甲板の上。
そこで私に声をかけて来たのは、このロックス海賊団の船長であるロックス。
「お
「……私は、堅気を殺すのは嫌いだ」
やはり、ロックス程の人物となれば私が一般人を殺さずに生かしていることは丸わかりだったようだ。
しかし、今までそのことについて触れてこなかったのに、今更それについて言及してくるとはどんな心境の変化なのだろうか。
「ハハ……別におれはそれを咎めようって訳じゃねェ。『この船で何をしようが、お前たちの自由だ』と言ったのはおれだしな。
――――……ただ、お前のそれを快く思わねェヤツがいるってことを、よく覚えておきな。それだけだ」
ロックスはそれだけ言うと、自室がある方へと引き返してしまった。
何故今それを言うのか、そもそも船長直々に忠告してくるほどの事なのか、疑問は尽きなかったが、私に危険が及ぶイコール戦闘能力に乏しいパトラにも危険が及ぶと考えると、今後は誰だか分からないソイツの怒りを買わないように今までのような一般人を生かす戦闘は避けた方がよさそうだ。
私が人を生かしながら戦っていることに気付いている人物、ということは、少なくともかなりの手練れであるはずだ。
中途半端に対策したならば、必ず悪い方向に転がっていくだろう。
やるなら、徹底的に。確実にどちらかの立場に寄らなければならない。
――――と、堅気を殺すことを覚悟したはずだったのだが。
「おれが、必ずコイツを守る」
「―――――……は?」
「……え?」
耳がイカれたのかと思った。
カイドウのその言葉にパトラも意外だったのか、前髪の奥に見えるマリンブルーの瞳が大きく見開かれる。
「何度も言わせるな。おれが、コイツを守ってやるって言ってんだ」
「……本気か?」
「あァ。人一人守れねェようじゃ、
「カイドウ……」
まさかカイドウがそんなことを言ってくれるなんて思ってもみなかった。
そして、カイドウの中で私と言う存在がとても大きなものになっていると感じることが出来て、少しだけジーンと来てしまう。
「……それじゃあ、任されてくれるか、カイドウ」
「あァ、任せておけ。この船を降りるまでコイツを守り切って、おれの『強さ』を証明してやる」
「そうなったら、『見習い』から昇格ですね」
「ウォロロロ!!! 階級にゃ興味ねェが、そうなって貰わなくちゃ困るな」
最初はどこか他人行儀だった私たち『金獅子海賊団』が、漸く一つになり始めている。
パトラの心配はカイドウが引き受けてくれた。
なら、あとは私が好き勝手に暴れて、私たちの平穏を脅かそうとする輩を潰すだけだ。
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見習いのカイドウくん
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独立して五番目の海の皇帝
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四皇の最高戦力として活躍