騎影が行く   作:ごまぬん。

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一三八億光年の道も一歩から

 

【LIVE】pippi564さんが生配信をしています【6:20経過】

 

 なになに……。

 

 

 

 拝啓 pippi564様

 

 平素よりお世話になっております。

 株式会社Psygames(サイゲームス)ゲーム部門・『ウマ娘ウイニングダービー Re:Boost』開発チームです。

 

 さっそくですが、過日の公式発表でも申しました通り、我々はこのたび『ウマリブ』発売1周年を記念した大型アップデートを計画しております。

 新シナリオの追加配信や細かな機能改修に加えて、最大の目玉と銘打ち、往年のRPGをモチーフとしたミニゲームの実装を決定いたしました。

 『ウマリブ』本来のコンセプトとは無関係なミニゲームではありますが、『悠久の蹄跡』モードと『Re:Boost』モードに続く第3のゲームモードとも呼べるボリュームとなっております。

 

 その際、近くオンラインにてβテストを行う旨も告知しましたが、今回はpippi564様とゴールドシップ様のご協力に基づき、さらに先行してα版のテストプレイをお願いする運びとなりました。

 ここでは便宜上『α版』としているものの、開発とデバッグはほぼ最終段階まで進行しており、内容は(一部コンテンツのロックを除いて)製品版と遜色の無い状態となっています。

 尚、テストプレイにて得られたデータ及びご意見は、製品版の調整にフィードバックさせていただきます。

 

 世界最速の新モード体験版として、ぜひともお楽しみください。

 今後とも『ウマリブ』をよろしくお願い申し上げます。

敬具

 

 

株式会社Psygamesゲーム部門

 

『ウマリブ』開発チーム

 

 

 

 バキバキ企業案件じゃねーか!!

 

 え? ということはこの部屋に備え付けの諸々って、ぜんぶ経費で落ちてんの?

 逆に怖ぇーよぉ!! ガチすぎんだろ! サイゲは何と戦ってるわけ!?

 つーかゴルシお前……何勝手にこんな契約取ってきてんの……、私の人権はどうした人権は。

 

 あと、そもそも案件以前に、1周年アプデ自体がヤバい。

 新規のシナリオ追加とかは全然わかるんだけど、んん? ゲームモードが増える? ちょっと何言ってるかわかんないですね。

 しかもRPGて。全然毛色違うやん。元からFateとポケモンの抱き合わせみたいなゲームなのに、さらにドラクエがオマケで付くんですか!?

 

 Psygamesさん……本当に、いいんですね? やっちゃうよ? やっちゃいますよ?

 それじゃあ不肖このピッピが! 世界最速で! ウマリブの新モード、やっていきたいと思いま〜す!!

 

 

 

 ほい、ポチッとな。

 おぉー……。最初にモニターに流れてた異常なクオリティのオープニング、これだったのかぁ。ミニゲーム用の力の入れ具合じゃないですね。

 うっわ、東京燃えてる。ジャンルは現代ファンタジーなのかな? そうだね、現代日本を舞台にするならやっぱり東京は燃やしたいよね。

 お! 微妙に見たことあるような無いような顔! すげぇ……マジで戦ってるぞ! よく許可取れたなこの絵面で……!

 

 そうそう。ソシャゲのウマダビと違って、ウマリブは肖像権やら何やらの都合で、実在のウマ娘たちは3DCGモデルになってるんですよね。

 CVもウイニングライブの音源以外はプロの声優さんが当ててますし。特に企画に協力的な子なら、オリジナルキャストで出演してくれてたりもしますが。

 実は、うちのゴルシも本人役やってるんですよね〜。あとマックイーンちゃん(メジロマックイーン)役とオグリキャップさん役とエキストラも少々。今でこそオリキャスに更新されてますけど、初期バージョンの頃は何故か恐れ多くもルドルフ様(シンボリルドルフ)役に抜擢されてたりな。この手のゲームでご本人ボイスが実装されて逆に安心するとか初めての経験だわ。

 

 余談ですが、ウマリブにはマンハッタンカフェちゃんも出演してますよ!

 本人役のみならず割と色んな()を演じてましてー、クールで落ち着いたイメージのカフェちゃんから繰り出されるキュート全振りボイスに脳を焼かれたトレーナーは数知れず!

 かく言うピッピもカフェボイスマヤノちゃん(マヤノトップガン)で10回は死にましたね。本人ボイスが来た時も20回は死にました。図鑑(ライブラリ)画面から両方聞けるシステムにしてくれた担当者にはノーベル平和賞を送りたい。

 

 おっと、そんな話をしていたらオープニングも終わりましたね。

 往年のRPGがモチーフとの話ですが、タイトルは─────。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 はーい、お馴染み3着? ナイスネイチャでーす。

 さて、我らがハルノエクリプス(えっちゃん)にトレーナーがついたことで仕事は減ったが、アタシたち『マーベラス同盟』の関係は未だ続いている。

 寮で同室のマーベラス(マーベラスサンデー)はともかく、高等部のライスさん(ライスシャワー)ブルボンさん(ミホノブルボン)とは普段あまり会わないから、この面子で集まると結構新鮮で面白かったりする。

 

「というわけで、手始めに『くらしっくさんかん』とやらを目指すことになりました」

 

 まぁ一番面白いのは当然こやつなわけだが。

 ついでに言うなら、今日は他のメンバーとお昼ご飯の時間が合わず、アタシ一人でこの暫定ウマ娘型エイリアンと心温まるコミュニケーションをやっている。

 

()()()()て。アンタ、自分が何言ってるかわかってんの?」

 

 "クラシック三冠(くらしっくさんかん)"───近代競バ発祥の地・イギリスの伝統的な重賞競走になぞらえ、『皐月賞』『日本ダービー』『菊花賞』という3つのGⅠレースを指してこう呼ぶ。

 この中央トレセンに居ると感覚が麻痺しがちだけど……世に言う重賞競走とは、たった一度出て勝っただけでも親族友人一同に自慢できるほどハイレベルなレースだ。いわんや、その中でも国内最高峰の格付けを誇るGⅠ級をや。

 

「知識としては。しかし、正直なところ実感はありません。『マーベラス同盟』へ加盟する条件として、トレーナー(舩坂金時)に提示されただけですから。"ウマ娘ならば誰でも一度は夢見るもの"だと聞いているので、偽の身分の上では妥当な目標だろうとは思います」

 

「言う方も言う方だけど聞いてる方はもっと性質(たち)悪いな」

 

 じゃあ逆に、そんなスゴいレースに3度も出られる実力があるなら存外どうにかなるんじゃないの、と思われるかも知れないが……事はそう単純な話ではない。

 件の3つのレースは、いずれも異なるレース場で行われる。もちろん距離が違えばコースも違うし、バ場の傾向だって一定じゃない。

 よく使われる言い回しでは、皐月賞は『最も速いウマ娘』が、日本ダービーは『最も運の良いウマ娘』が、菊花賞では『最も強いウマ娘』が勝つとされている。

 身体能力の絶対値が物を言うスピード、レースの流れを引き寄せる天運、如何なる難局をも突破せしめる総合力。このいずれが欠けても三冠には届かず、それらすべてを兼ね備えたウマ娘などそうは居ない。

 シービー先輩(ミスターシービー)とルドルフ会長を立て続けに輩出したあのへんの時代が異常なのは認める。

 

「……。選抜レースでは5着だったっけ?」

 

 別に丸っきりダメダメな数字ではないし、新入生とはいえ全国各地からこの中央トレセンに集った精鋭たちが相手だ。むしろ充分に健闘した方だろう。

 そのレースを直接見ていたわけでもない以上、アタシに何かを言う資格は無いのだが……一般論として、本気で三冠を志すには、いまいち不安が残る結果のような気もする。

 

「えぇ。少しばかり想定外の……。いえ、レースというものの経験自体、初めてでしたので。やろうと思えば理論上、33秒フラットでゴールできたのですが……」

 

「ほほう、若者の負け惜しみにしても大した自信ですなー。上がり3ハロン33秒ねぇ……自己ベストならそれくらいってこと?」

 

「? あぁ、違いますよ。1()8()0()0()()()()3()3()()()()()()()()という意味です。直線ならあと8秒は短縮できますね」

 

「なんて???」

 

「あくまで理論上の話です。脚部の筋繊維の81%、関節の67%を損耗させ、複雑骨折とカロリーの急激な消費を前提にすれば、ウマ娘どころか人間でも実現可能な範疇です」

 

「うん、さすがのネイチャさんもそんな命の危険を冒してまで1着にはなりたくないかな」

 

 やっぱ発想が宇宙レベルなんよねこの暫定宇宙人。

 こちとら腐ってもGⅠ出走ウマ娘だ。死ぬかと思うくらい自分を追い込むことにも抵抗は無いが、いくら何でも死ぬのが確定している状況下で走ろうとはならない。

 命を差し出して勝てるならそれでもいい、なんて考えのウマ娘も、一定数居るかもだけど……。

 友達とか、家族とか、地元の人らとか。アタシは何かと人間関係に恵まれているので、とてもじゃないがそんな危険な覚悟は持てない。

 

「───ホント、無茶だけはしないでよ、えっちゃん。アタシの知り合いにね、同年代の誰より才能あるのに、怪我でいっぱい辛い思いした子が居てさ」

 

「……」

 

「負けても死にはしない……なんて、そんな月並みな台詞で止まれるような生き物じゃないけど、ウマ娘(アタシたち)は。でも、そういう友達を見てきたアタシとしては、多少思うところもあるわけよ。だから……」

 

 ……そして、これはちょっと意外な発見だったのだけれど。

 何にせよ後輩は可愛いものだ。たとえ、相手が得体の知れない宇宙人であったとしても。

 

「もし辛くなったら、たまには立ち止まって、振り返ってみて。きっとみんな付いてるから。アタシたちは『マーベラス同盟』、でしょ?」

 

 えっちゃんは相変わらずの仏頂面だ。表情筋どころか眼瞼筋も耳と尻尾の神経まで死んでいる。えっちゃんと比べれば、ブルボンさんが感情豊かな幼子に見えるくらいだ。

 だが、どことなく柔らかい感じというか、フワッとしたオーラみたいなものが放出された……ような気がした。

 

「ご心配、ありがとうございます。くれぐれも気をつけます」

 

「ん。素直でよろしい」

 

 ふむ……。

 何というか、思い出しちゃうなぁ。実家の弟のこと。

 とにかく元気で純粋でね。顔も性格も、やたら手が掛かるところ以外は、えっちゃんとは全然似てないのにな。

 今はもう反抗期に入ってしまったのだろうか? 次に帰省した時には、どんな顔で出迎えられるかな。

 

「……、……?」

 

 ───などと、一時的なホームシックに罹っていたのがマズかった。

 

「……。……、あ」

 

 アタシはめちゃくちゃナチュラルに手を伸ばし、えっちゃんの頭を撫でていた。

 うっわ髪の毛サラサラだ何このキューティクル……って違う違う!

 

「ごっ、ごめん! これはその、あの、実家の弟思い出しちゃってつい……!」

 

「はぁ」

 

「……、怒ってる?」

 

「怒った方がよいのですか。すみません、まだ地球の風習や礼儀には不慣れで」

 

「それは……ま、まぁ、人による……かな? 親子とか恋人とか……よっぽど仲の良い相手には許す、感じ。アタシらにはまだちょーっと早かったね、ははは。ごめんねー……」

 

「なるほど。特に問題無いのでは? 我々は重大な利害関係で繋がった同盟者ですよ」

 

「あー、うん。そう言ってもらえると助かる」

 

 案外天然だな、この暫定宇宙人。というよりは地球の物事を知らないだけか。扱いやすくて助かるが───。

 

「では、わたしからも。失礼します」

 

「ちょいちょいちょい待って待って待って」

 

 前言撤回、別に扱いやすくなかった。手をわきわきさせてアタシの頭に迫る後輩。

 景気良く先輩風吹かせられたと思ったらコレだよ! ちくしょうアタシのバカ!

 

「───あ、ネイチャ見つけたよー」

 

 !!

 嘘だろ、その声は……。

 

「おや。例の後輩さんと一緒ですよ」

 

「ほんとだ。ふふっ、お邪魔かなぁ私たち」

 

「ターボあの子初めて見た! おーいネイチャー!」

 

 瓶底眼鏡に尻尾みたいな三つ編み! "鉄の女"ことイクノディクタス!

 ゆるふわエアリーなセミロングと、右耳が貫通したキャスケット帽! "おマチちゃん"ことマチカネタンホイザ!

 青いツインテール、ギザ歯、オッドアイ! 未だに属性盛りすぎだと思うツインターボ!

 

「げえっターボ!? そ、それにタンホイザとイクノも……!」

 

 そこにアタシを加えれば、はい、チーム『カノープス』の完成である。

 ……いや完成してどうすんのよ! 何なんだこの状況!

 

「どうして逃げるのですか。我ら『マーベラス同盟』は対等な取引をしている間柄です。礼節には礼節で返さねば無作法というもの」

 

「ちょっ待っ、えっちゃん! 気持ちは嬉しいけど、アタシにもチームリーダーとしての威厳ってものが!」

 

「えっちゃん? そっか、はじめましてえっちゃん! ターボはツインターボだよ! ネイチャと同じ『カノープス』に入ってるんだ〜。二人は何やってるの?」

 

「はじめまして、ツインターボさん。ハルノエクリプスです。『えっちゃん』でも『ハルノ』でも好きにお呼びください。これは先ほどネイチャさんに親愛の証として頭を撫でていただきましたので、そのお返しを試みているところです」

 

「おー? それはいいなぁ! ターボもネイチャのこと撫でたい!」

 

 ツッコミ不在の恐怖。うえぇ、何てこった……。

 

「てか、そっちの約2名もどうして黙って突っ立ってんの!?」

 

「え〜? いいよいいよ、私たちにはお構い無く。ねぇイクノ」

 

「お待ちくださいタンホイザさん。親愛の情、つまり日頃の感謝を示すという点であれば、我々にもネイチャさんを撫でる権利があるのでは?」

 

「ブルータスお前もか!」

 

 イクノォ! アンタがボケ始めたら『カノープス』はいよいよおしまいだよ!

 

 結局その日のランチタイムは、気の置けないチームメイトと新しく出来た後輩にもみくちゃにされる羽目になるのだった。

 









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