騎影が行く   作:ごまぬん。

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キャラクター・セレクト

 

【LIVE】pippi564さんが生配信をしています【8:15経過】

 

 はい、はい、はい、はい。ヨイショ〜、『はじめから』〜。

 ふふっ……何だったんですかねあのサブタイトル。『競バ星人の逆襲』て。いや嫌いじゃないけどさ。

 

<西暦20XX年───地球は滅亡の危機に瀕していた。>

 

<宇宙の彼方から突如として飛来した競バ星人は>

 

 競バ星人!?

 

<その圧倒的な科学力で人類を征服し、荒廃した世界で奴隷として使役した。>

 

 えぇ? 競バ星人ならレースで勝負しろよ! 普通に侵略戦争仕掛けてんじゃねーよ!

 

<競バ星人の支配を免れたごく少数の人間とウマ娘は互いに手を取り合い、レジスタンス組織『黙示録の狩人(エンジェル・ダスト)』を結成。>

 

 何その無駄にカッコいい名前……。

 

<多大な犠牲を払いながらも果敢に抵抗を続け、競バ星人降臨の地である日本にまで前線を押し上げた。>

 

<ここは東京都府中市・日本ウマ娘トレーニングセンター学園。>

 

 あぁん? なんで?

 

<霞ヶ関に存在する競バ星人の拠点に対し、一大反抗作戦を決行すべく建造された前線基地である。>

 

 何らかの思想を感じる。ていうか府中と霞ヶ関だと微妙にアクセス悪くない?

 

<数多の勇者たちが叛逆の牙を研ぎ澄ますトレセン学園に、今日もまた新たな戦士が現れる……。>

 

 だいぶ物騒になったなぁ、トレセン学園。

 

 さて、えーっと? キャラクターと装備は10種類からの選択制ですね。いよいよダークソウルみてぇだな。

 これは体験版だけの仕様らしく、製品版だともっと細かくキャラクリ出来るみたいですが。

 

 どうしようかな〜。ピッピこういうの無限に悩んじゃうタイプだからねぇ。

 プレイヤーキャラはウマ娘だから、性別は固定として……ここはやっぱ芦毛の子がいいかな?

 おぉゴルシっぽいヤツが居るぞ。……何でインナー姿なん? 何で棍棒しか持ってないん? さすがにやめとこう……。

 

 

 

(5分後)

 

 

 

 ───よし、決めました! 今回はこのマックイーンちゃん(メジロマックイーン)風の『魔法剣士』で冒険に繰り出していきま〜す! キャラネームは入力速度を考慮して『ボーボボ』で!

 まぁ冒険っつーかシンプルに戦争なんですけれども。意外としっかりハードな世界観だな〜。

 

<はじめまして、ようこそトレセン学園へ!>

 

 お? 誰だこの美人さんは。素敵なお召し物ですね、目も覚めるような緑色で……へぇ、ターニャさんっていうの?

 ……さてはたづなさんだなオメー。こっちの世界でもチュートリアル担当なんですね。ピッピも赴任したての頃はお世話になりました。

 

<大変だ! 仲間が敵に襲われてるぞ!>

 

 そしていきなり敵襲! ある意味王道の展開!

 うへへ、さっそく出撃だぜ。たづなさん……じゃなかったターニャさんに良いとこ見せるチャンスだ!

 競バ星人がなんぼのモンじゃい! クソエイリアンの顔面にボーボボちゃんのレイピアを叩き込んでやりますよ〜!!

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ハルノエクリプスと『カノープス』が面識を持った段階から、時間は少々遡る。

 

 目標は大きくクラシック三冠。他にも出られる試合には全部出て全部勝つ───という、新人トレーナーと表向きには無名の1年生(誰も聞いたことの無い寒門の出身者)には壮大すぎる計画を立てた舩坂金時とハルノエクリプス。

 とはいえ、まずは現在のハルノエクリプスの能力を把握しないことには始まらない。

 脚質適性はどんなものか、目標に向けて必要なトレーニングは何か。あるいは、()()()()()()のか。

 

「とりあえず外に出よう。5分で着替えて来られるかな?」

 

「5秒あれば充分です」

 

 そう言って、ハルノエクリプスは右手の人差し指と中指で額を小突く。

 すると、彼女の着ている長袖の制服が、灰色の突起の集合体──ちょうど白黒のモザイクに見える──に変異し、さらに変形し、やがて学園指定の体操服と短パンに変化した。

 

「……。勝負服の採寸、どうしよう……」

 

「?」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 舩坂金時(ゴールドシップ)は考えていた。

 ハルノエクリプスは、人智を超えた存在である始祖の三女神が、直々に『世界の敵』とまで称した"生きもの"だ。

 単身にして地球全土に対する脅威と認められるほどの、絶大な潜在能力(ポテンシャル)

 そして、それらをすべてウマ娘としてのステータスに転化した時、一体どのような走力を生み出すのか?

 元より家具だの工芸品だのといった類を作るのは好きな方だが、生き物を育てた経験はあまり無い。ましてやそれがウマ娘となると───この期待感とスリルは、なかなかどうして面白い。

 アグネスタキオン辺りも、こういう感覚が好きで生体工学にのめり込んでいるのだろうか。

 

「まず、現状の君の能力を把握したい。ここ第7トラックは右回りの芝1600m。今回は競り合う相手も居ない。実際に走る前に自己分析を聞いておこう、どのくらいのタイムが出せると思う?」

 

「……、あの。ネイチャさん(ナイスネイチャ)に、『全力を出すのはいいが無茶はするな』と忠告されました。どんなレベルの活動を『全力』と定義し、どの程度の肉体損傷なら許容されるか確認しておきたいのですが」

 

「ん? あぁ、それは良い心がけだな。如何に頑健なウマ娘であっても、何かの拍子に怪我をして1ヶ月や2ヶ月休む羽目になることはザラだ。本来は故障などすべて回避するのが理想だが、どうしても間が悪い時はあるからね」

 

 これまでに大きな故障を経験したことの無いゴールドシップ(舩坂)が言うのも何だが───あるいは、そんな舩坂だからこそ言えることもあった。

 強い走りと息の長い競技生活は両立できる。要はちょっとしたコツの話だ。

 

「敢えて言うなら……練習では8割、本番では9割5分の力を発揮するつもりで臨むのがいいだろう。残りの何%かを引き出すのは、私たちトレーナーの仕事さ」

 

「なるほど。妨害を考慮せず、躯体(ボディ)の損耗を80%まで許容しての稼働が許可されるのでしたら、およそ27秒ほどでゴールできます」

 

「うん、多分何か勘違いがあるな」

 

 詳しく問い質してみれば、案の定『肉体の80%を引き換えにした出力で走ればそのくらい』という意味だった。

 死ぬわけでもなく療養に専念すれば完治する見込みだそうだが、やはり根本的なところで価値観や思考体系がズレている。ハルノエクリプスはまさに()()()なのだった。

 

「だいたい君、そんなバ鹿げた速度で走ってみろ。宇宙人だってバレてしまうんじゃないか」

 

「………………あ」

 

 このポンコツ電波少女は本当に三女神の言う『世界の敵』なのだろうか。舩坂はかなり真剣に始祖の三女神の託宣を疑った。

 

「ん~……、そうだな。ここは先人の知恵に学ぼうか」

 

 さっそくトレーナーらしい仕事が出来そうだ、などと思いつつ手元のタブレット端末を操作する。

 表示されたのは、過去にこの第7トラックで行われた模擬レースの記録だ。

 

「ラップ走法というものがあってね。ちょうど君の知り合い───同盟者のミホノブルボンが得意としている。出走するレースのレコードタイムから区間タイムを逆算し、それを上回るよう一定のペースを保って走るやり方だ」

 

「合理的な手法かと思います。実現性はともかく」

 

「君にやってもらおうってわけじゃない。考え方だけを応用する。君のその、あー、躯体(ボディ)の限界を考慮して……消耗は一晩で治る範囲に留めること。この条件ならどんなタイムになるかな」

 

 ハルノエクリプスはしばし小首を傾げていたが、やがておずおずとタブレットの画面に触れた。

 その生白い指は、絶妙に速くもなければ遅くもない───有り体に言えばごく平均的なタイムを示している。

 

「……。そんなもん?」

 

「そんなもんです」

 

「そんなもんかぁ。何か宇宙人らしい固有スキルとか無いの?」

 

「無くはないですが……。この躯体(ボディ)は潜入捜査用なので、身体機能よりも欺瞞性能にリソースを割いているのです」

 

「そうなんだ……」

 

 『世界の敵』の力さえあれば三冠など余裕だと考えていた舩坂(ゴールドシップ)だったが、ここに来て完全にあてが外れる形となった。

 世の中そう甘い話は無く、結局のところ地道な努力の他には栄光への近道など存在しない、と説教されている気分だ。

 

「ま、まぁ……うん。ここはポジティブに考えよう」

 

 やりようはある、それはそれで。むしろ、普通のウマ娘と同じ接し方で問題無いと考えれば儲け物だ。

 不合理な言い分でトレーニングを嫌がるタイプでもなさそうだし、当初期待していたような無法な異能(チート)など持たずとも───。

 

「そういえば、選抜レースの時の()()が君の『領域』ということでいいのか?」

 

「領域?」

 

「おっとすまない、俗語だ。こちらの業界の言い回しで……いわゆるゾーンとかランナーズ・ハイのお仲間さ。人間なら()()のパフォーマンスを実現できるが、ウマ娘のそれは往々にして()()()()の力を発揮しているように見えたりもする。君の場合は、()()がその状態に該当するのか」

 

「あれは……」

 

 基本的に即断即決を旨とするハルノエクリプスには珍しく、たっぷり30秒近く間が空いた。

 耳にも尻尾にも感情が現れず、まばたきすらしない彼女だが、所在無さげに虚空の一点を見つめる様には明らかな困惑があった。

 

「わたしは、あの時……。マーベラスさん(マーベラスサンデー)から言われたこと……『自分らしさ』のことを、考えていて。だから、メモリーの復元を試みて、断片的に記憶を取り戻したのです。それで……」

 

 ───そして今は、取り戻したはずの記憶に蓋をしている。

 桜色の少女は、自らの内に生じた論理的矛盾について、適切な解法を持たなかった。

 失われた記憶があるから思い出したいという欲求。その至極当然の思考に反して、これは()()()()()()()()()()という正体不明の感情。

 

「ふむ……。いや、違ったならそれでいいんだ。レースの度にあんな殺気を放たれていては、文字通り勝負にならないからね。我々『マーベラス同盟』にとっては、どんな種類であれ疑惑の目が向くことは望ましくないだろう? 元より封印しておくよう指示するつもりだった」

 

「……そうなのですか。パフォーマンスを向上させる、あるいは敵の戦力を削ぐための技能なら、習得しておいた方がよいのでは?」

 

「簡単に言ってくれるが、そもそも『領域』は技能というよりも半ば現象に近い。そう狙って発動できるわけではないんだよ。呪術廻戦の黒閃みたいなもので」

 

 サイレンスズカやシンボリルドルフ辺りは独自の習慣づけ(ルーティーン)によるほぼ任意での発動を可能としているが、彼女らは国内でも最上位の実力を誇る怪物だ。はっきり言ってまるで参考にならない。

 

「じゅ……?」

 

「失敬、咄嗟に他の喩えが思いつかなかった。要するに……敵が()()()にあることは警戒するにしても、自分の方はそんな博打じみたものに縋ってはならないということだ」

 

 極端な話、実力が100点あるウマ娘が『領域』によって120%のパフォーマンスを発揮しても、実力が150点あるウマ娘が80%のパフォーマンスを出している時と同等の結果(120点)にしかならない。簡単な算数だ。

 ましてや実戦での超集中によって100%以上の力を引き出すなど、それこそハルノエクリプスが言った『無茶』そのものだ。()()()()()()()にとっても知らない感覚ではないが、あまり連発していい代物でもない。

 

「ま、結局あれやこれやと理屈を並べ立てたところで、最後には一番強い奴が勝ち残るんだ。300点のウマ娘になってしまえば100点も150点も関係ない。先は長いが気楽に行こう」

 

「はい。では、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。トレーナー」

 

「承知した。さぁ、改めて現状把握に努めようか。今日のところはとにかくデータ取りだ、ここを走ったら休憩を挟んで─────」

 

 そうして走り、話し、また走る。

 正体を知る者たちにとってはあまりに異色のコンビは、しかしまるで普通のウマ娘とトレーナーのようにしか見えなかった。

 

 

 







 [☆2 微睡む星の獣]
○ハルノエクリプス
 芝: C ダート: D 宇宙: A
 短距離: C マイル: C 中距離: B 長距離: D
 逃げ: C 先行: A 差し: B 追込: D
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