今回はちょっと短めです。
なので、前後編というわけでもありませんが、この後もう1話投稿します。
ハルノエクリプスがメジロドーベルの『アシスタント』に就任して数日。
「スラマッパギー、です。ドーベル先生」
「そんな挨拶どこで覚えてきたの?」
この度、メジロドーベル*1率いる同人サークル『トキメキビヨンド』の目標は、冬の有明で開催される国内最大規模の
メジロ家のコネクションをフルに使って印刷所を確保し、伸ばしに伸ばした〆切は、しかし既に来週にまで迫っている。
メジロドーベル自身は必要以上に大家の名を誇ることも無い自然体だが、その実はGⅠでの勝利経験すらある一線級のウマ娘であり、個人の趣味に割ける時間は決して多くないが故の悲劇であった。11月頃に敢行した『パルデア地方』への海外遠征も、
「トレーナーとの雑談でこの活動について話したところ、いくつか『まんが』を貸与していただきました。その作中に出てきた台詞です」
「あぁ、覚えたての言葉使いたかったんだ……。意外と可愛いとこあるな」
とはいえ、今回に限ってはどぼめじろうに危機感は無かった。ダメ元でスカウトしてきた
元より
いささか
「この調子なら日曜までには仕上がりそうね。ありがとうハルノさん、本当に助かったわ」
「金曜日が〆切では……」
「月曜の朝一番で入稿すれば同じよ。
───ハルノエクリプスは知っている。
アグネスデジタル*2によれば、普段のメジロドーベルはクールでややとっつきにくいが、それは幼少期の経験や名門一族としての重責に由来する態度なのだと。
そして、ひとたびその辺りの警戒心が解けると、身内に対してはなんか意外と図々しい感じになってしまうところがカワイイのだと。
◇ ◆ ◇ ◆
サンビーム先生へ。
お世話になっております。どぼめじろうです。
先日より打診していた新刊の件ですが、こちらの方で優秀なアシスタントが見つかったため、今回は先生のお手を煩わせること無く入稿に間に合いそうです。
ネームについてのご相談の時はありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。
どぼめじろうより。
「ぶっ……!! せ、先週までコマ割りすら怪しかったのに!? 一体どんな化け物を雇いやがったのだ……。これは詳しく知る必要があるのだ!」
◇ ◆ ◇ ◆
【配信中】一般トレーナーだけど世界救うよ!【ウマリブ新モード体験版 #03】
みなさま〜(天下無双)! こんにちは!
日本ウマ娘トレーニングセンター学園中央校所属、ゴールドシップの担当トレーナーも担当、pippi564ですぅ〜!
さぁ! 『ウマ娘ウイニングダービー Re:Boost』新モード、『競バ星人の逆襲』体験版! 今日も元気にやっていきますよ~。
前回はですね、基礎トレーニングをやりまくりーの、ダンジョン潜ってレベル上げたりしてたら、特に見せ場も無くお時間でしたがー……宝箱だと思って近づいたミミックに引っかかって、死ぬほど慌ててただろって? 言うな!
とはいえ、とはいえですよ?
奇跡的にぶっ殺した、おっとこういう言葉遣いは無しだった。んんっ、ん!
……奇跡的にミミックの討伐に成功したおかげで、レベルもだいぶ上がりましたし! レアドロップの指輪まで手に入ったしもう最高では!?
いやー、今なら何が来ても負ける気がしないね。今のボーボボちゃんに勝てる相手が居たら大したもんっすよ。
じゃあさっそくメインクエスト、進めていきまっしょい! ポチっとなー。
───の前に、いちお新聞だけ確認しときましょう。ボスのデータ載ってるといいな。
本屋さんへGO! そしてダンジョンで散々スライムをしばき倒して得たお金をドーン!
どうでもいいけど、なんで競バ星人がゴブリンやらスライムの姿してるんですかね? ツッコんだら負けか。
【天気予報: 午前中晴れ・午後から曇りのち雨】
【サトノ研究所、ハンター向け支援用人工知能を開発中】
【高価買取アイテム: エレキキャットのひげ】
ありゃ。特に目ぼしい情報はありませんでしたね。
つーか……ふふっ、サトノ研究所ってなに? サターンとかドリキャスの次世代機でも作ってんの? ちゃんと許可取ってんのかなこれ。
まぁ~仕方ない。グリズリー型については前に弱点聞いてますから、ひとまず手持ちのデータで判断するしかないでしょう。
では、今度こそ行きますよ~! 初見(ここ重要)のボスをやっつけに、いざメインクエストへっ!!
◇ ◆ ◇ ◆
自分はあまり人付き合いの得意な方ではない、と思う。
「今回は本当にありがとう。アタシに出来ることなんてたかが知れてるけど、このお礼は必ずするから……困ったことがあったら、何でも言って?」
だから───こんな台詞がスラスラと出てきたことに、自分でも驚いた。
ハルノエクリプス。桜色の髪と鏡色の瞳を持つ、不思議な雰囲気のウマ娘。
諸事情あって、ちょっとした協力関係を結んだ……新しい後輩。
生まれてから一度も陽の光を浴びたことが無いような白い肌に加え、表情も耳も尻尾も驚くほど動かなくて、最初は正直不気味だと思ったりもしたけれど……。
慣れてみれば、どうということも無い。端的な質問以外ではほとんど話しかけてこないし、こっちが作業に詰まってうーうー唸っていても気に留めないから、心置きなく執筆に集中することが出来た。
おまけにアシスタントとしてすこぶる優秀ともなれば、表情に乏しいくらいで文句を言うのは贅沢を通り越して失礼だろう。
ロボットとまでは言わずとも、何だかぬいぐるみみたいな子だった。しかも献身的なお手伝い機能付き。
そう考えると、これで世話を焼きたくならないわけも無いか。アタシは内心で勝手に納得した。
ハルノエクリプス───ハルノは、しばらく考えてから、ぽつりと答えた。
「でしたら……わたしの『勝負服』を、描いていただけませんか」
………………。
「え?」
「今度、GⅠレースに出るのに必要でして。簡単な要望と心理テストの提出でも構わないと言われたのですが、故あって
「えっ……いや、その」
「大まかなイメージだけでいいので。お願いします、
───アタシは、この娘のことを誤解していたのかも知れない。
他人に興味が無いようでいて……何という観察力だろうか。
アタシにだって多少の意地がある。その名前で呼ばれてしまったら、断ろうにも断れないではないか。
その日の晩、アタシはとりあえず