騎影が行く   作:ごまぬん。

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オリモブウマ娘を掘り下げる予定は無いと言ったな。あれは嘘だ。
ちなみに筆者はぶっちゃけ現実の競馬には全然詳しくないので、彼女らには特に元ネタとかはありません。こんな競走馬を連想しました!みたいなのあったら是非教えてください。



怪物たちの饗宴

 

 府中市を襲った『百鬼夜行』からしばらく─────。

 

 

 

 あれほどの事件に見舞われた──尤もそれを記憶しているのはゴールドシップとエデソ、ハルノエクリプス、そして『()()()()()()』だけだが──にもかかわらず、ハルノエクリプスは平常運転だった。

 その後に出走したGⅡ・弥生賞を7()()()()()制したことを除けば。

 

 誤魔化しの無い事実を言うなら、それはもはや1()7()()1()の勝負に近かった。

 今回の出走ウマ娘には王道の先行と差しの作戦を得意とする者が多く、如何にハルノエクリプスが強力な存在と言えど、その行く道が()()()()()()()()()いては苦戦は必至だと。

 

 実際には、彼女は恐るべき集中力でもってロケットスタートを決め、初手から先頭(ハナ)を奪ってそのまま駆け抜けた。

 出走表にシュガールギンメやエコノアニマル───同世代で有力な逃げウマ娘たちの名前が載っていなかったことに、ほとんどの者が後から気づいた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ところで。

 

「─────あのっ!! それで今回、ハルノさんにはどのようなご指導を!?」

 

「いやぁ、運が良かっただけですよ。半ば賭けでしたし、二度目からは通じないでしょう」

 

 ハルノエクリプス自身は平常運転だったが、その周囲には少し変化があった。

 

「そんなの納得できな───こほん、ご謙遜をっ。私も出走表を見て逃げを打つ手は考えましたけど、激戦区を背にしてハイペースを維持させるよりは、いっそ後ろで脚を溜めさせた方が良いとばかり……!」

 

「皐月に向けた調整が上手くハマった形ですね。しかし私に言わせれば、そちらこそよく仕上げてきたものだと思います。あと3秒早くスパートを仕掛けていれば、バ群を抜けてハルノに食いつけていたように見えました」

 

 興奮気味にまくし立てるのは、舩坂の同期となったトレーナー・桐生院葵。

 トレーナー業の名門・桐生院家の出身であり、舩坂と同様、着任1年目の新人でありながら個人担当を持つことを許された才媛だ。

 現在は比較的珍しい白毛のウマ娘・ハッピーミークを担当に迎え、直近の戦績こそ振るわない──と言っても掲示板入りを重ねてはいる──ものの、デビュー戦にて勝利を飾っている。

 

 出会いはあの『百鬼夜行』よりしばし遡り、ハルノエクリプス初のGⅠレースであるホープフルステークスを目前とした頃。

 舩坂──もとい、舩坂金時という架空の人物を演じるにあたって『一見爽やか系悪役(ヒール)』という振る舞い(ロール)を己に課しているゴールドシップ──としては、経験が浅く脇の甘い葵から桐生院家の育成ノウハウを引き出せないか、と打算10割で近づいたのだが───。

 

「まぁ、もちろんトレーナーとして時流は読んでいるつもりですが……実際はむしろ、こちらがハルノの才能(スペック)に助けられているというのが本音でして。将棋に喩えるなら、私だけ一手に2マス動ける王将を使っているようなものですよ」

 

「えぇ……? ……、……。……ほんとにほんとですか?」

 

「ほんとにほんとです」

 

 結果的に、なんかそれどころでは済まない関係にもつれ込んでいるのが実情である。

 葵は舩坂が極めて効率の良いトレーニング方法を知っているのではないか、食事指導に工夫があるのではないか、はたまた何か常人には想像もつかない超常的な手段を用いているのではないかなどと疑っているが、ハルノエクリプスが『実はウマ娘ではない(正体は地球外生命体)』という一点を除いて秘密など何も無い。

 それにしたって、ハルノエクリプス(『世界の敵』)が持つ()()()()()はその大半を封印しているのだから、彼女に可能なことは理論上ふつうのウマ娘にも可能なはずだというのが舩坂(ゴールドシップ)の主張だった。

 

「…………」

 

「…………」

 

 なお、お互いに無口で控えめな担当ウマ娘たちが蚊帳の外になっているのも、もはや見慣れた光景である。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 20██/3/█

 

 三女神様が言っていた『敵』を見つけた。

 名前はハルノエクリプス ←本名かどうか不明。というか明らかに偽名

 

 今すぐやっつけるべきだが、三女神様の『影』はこのあいだ一気に使ったせいでしばらく出せない。

 直接ケンカするのは、さすがに怖い というか

 

 いざとなったら何をしてくるかわからない。怪我はしたくないからしばらく様子見する。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ハルノエクリプス観察日記 1日目

 

 今日から彼女のことを監視していこうと思う。

 幸いトレーナーはあの子のトレーナーとねんごろだ。近づくのは簡単。

             ↑舩坂さん

 

 物静かな子だ。私もトレーナーもあんまり喋れなかった。

 というか、基本的に舩坂さんが指示をして、それに小さく返事をするばかりで、あの子が自分から喋ることはそんなになかった。

 これは収穫なしってことになる?

 

 ただ、言葉数は少なくても、あんまり困ってるように見えなかった。信頼関係があるってことだろうか。

 私もあんまり喋るのは得意じゃない。というかふつうに口下手だ。トレーナーとちゃんとお話しできてるか、時々不安になる。

 ちょっとうらやましい。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ハルノエクリプス観察日記 2日目

 

 今日は出来る限りあの子を見ているようにした。

 どう考えてもマナーというか、何かいけないことをしているような気もするけど、トレーナーも舩坂さんも快諾してくれたものだから問題ないことにする。

 むしろ、トレーナーに至ってはずいぶん喜んでいた。友達が居ないとでも思われていたのだろうか?

 

 確かに居ないかも知れない。

 人付き合いは最低限あるけど、入学してからずっとトレーニングをして、三女神様の言いつけに従っていたから。

 

 とりあえず、あの子が食堂でほうれん草しか食べてないのは本当らしい。あんな食事でどうやってあんな走りができるのかわからない。たぶん別の時に他のものを食べているんだろうけど。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ハルノエクリプス観察日記 3日目

 

 協力者? らしきウマ娘を見かけた。

 鹿毛で髪を丸く結んでるほうがコタツマルタマ、黒鹿毛でツインテールのほうがシナモリクリスタル。

 

 とはいえ、何かしら事情を知っているような感じではなかった。

 トレセンにずいぶんうまく溶け込んでいるようだ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 ハルノエクリプス観察日

 

 20██/3/██

 

 今日は久々に普通の日記をつけようと思う。

 

 弥生賞の本番だった。GⅡの。

 結果は

 

 3位。

 

 トレーナーの作戦は間違ってなかったと思う。この日のためにできる限りのことはした。三女神様の力まで借りて。

 でも3位は3位だ。2位の銀髪、芦毛の子 スカイファルシオンに負けたのはわかる。あの末脚は才能だ。トレーニングや作戦で簡単にひっくり返る差じゃない。でも

 

 おかしい。ハルノエクリプスは世界の敵のはずなのに。

 あの子は何もずるいことなんてしてない。ずっと見ていて、一緒に走ったからわかる。

 

 あの子と私で何が違うんだろう。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 ハルノエクリプス観察日記 13日目

 

 あの子がファル、スカイファルシオンにつきまとわれるようになって少し経つ。

 どう見てもうっとうしがられてるのに、何がそんなに楽しいのやら。

 

 見てて思ったけど、あの子は案外友達が多い。

 私や周りの子みんなが名前を知ってるようなGⅠクラスのウマ娘とも知り合いらしい。

 

 ↑その点は私も同じと言えば同じ? トレーナーが勉強熱心だから、たまたまお近づきになれた人も居る。

 友達ってほど仲良くはない。私もいつか、もっと ←それはさすがに高望み。

 

 それに、私にはやることがある。

 世界の敵を倒さなければ、あの人たちが犠牲になってしまうかもしれない。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 20██/4/█

 

 ハルノがザグレウスに口説かれて困っていたので助けてあげた。

 あの性格は、フジキセキ寮長あたりに憧れているらしいのでその影響? 悪い子じゃないけど引き際をわかってない。そこはまだ未熟。

 

 衝撃の事実。シュガールギンメの『シュガー』は『シュガー』じゃなくて『シュガール』らしい。

 何かの神話に出てくる、雷の竜神? の名前なんだとか。

 じゃあ残りの『ギンメ』って何? という話に当然なったけど、そっちはなぜか濁された。

 

 ハルノエクリプス観察日記 17日目

 

 特に何も無し。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 20██/4/██

 

 ファルとちょっと話した。

 正直、この子はあんまり好きじゃない。物静かに見えてけっこう毒舌というか、たまに怖くなる。

 ハルノのほうがいくらか可愛げがあるくらいだ。

 

 ファルの言うところによると、私の走りはつまらないらしい。

 ウマ娘は何のために走ってもいいけど、走るために走ってないやつだけはダメ、みたいなことを言われた。

 

 よくわからない。

 三女神様と取引しているから? 確かに、ずっと真面目にトレーニングに打ち込んでいる子たちからすれば、女神様からもらった力で走るのは卑怯だ。そんなの私が一番よくわかってる

 誰だって他人には言えない秘密のひとつやふたつ、

 

 笑っちゃう。

 トレーナーはよく私の素質を褒めてくれるけど、それってどこからどこまで私の力なんだ?

 

 考えがまとまらない。でも

 

 不真面目な気持ちで走ったことなんて一度もない。

 天才肌で、何でも自分の感覚で決めつけるファルにはわからないかもしれないけど、それだけは本当だ。

 

 ハルノエクリプス観察日記 26日目

 

 特に何も無し。

 あの子の監視を始めてもうすぐ1ヶ月、何だかすごく早かったような気がする。

 

 

 

 大事なことを書き忘れていた。

 明日は皐月賞だ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 4月前半。中山レース場、芝2000m、右回り。天候は昨日に引き続き晴れ。

 皐月賞───栄えある『クラシック三冠』の初戦、"最も速いウマ娘が勝つ"と称される春の大一番である。

 

 巷では『世代四天王』と呼ばれるハルノエクリプス、スカイファルシオン、ザグレウスが出走するということで、会場は大盛り上がりだ。四天王のもう一角、シュガールギンメは桜花賞への挑戦のため参戦しない。

 下バ評としては()()()()()であるハルノが今日も勝つと予想する声が多いけれど、ファルとレウス(ザグレウス)の下剋上に期待を寄せる人も多い。

 

 3人の様子はそれぞれだ。

 ハルノはいつも通りの無表情。表情筋の機能が死んでいるか、心臓にニンジンでも生えているのだろう。

 レウスはいつもよりテンションが高い。掛かっているようにも見えるが、会場入り前は緊張しすぎて調子の悪そうな子を励ましたりもしていたので、案外余裕なのだろう。鮮烈な真紅を基調として瑠璃の差し色が入る貴族めいた勝負服に相応しく、とにかく情熱的なウマ娘なのだ。

 ファルは……。……やっぱり、この子が一番怖い。表情はハルノと同じく抑制されているけれど、完全に目が据わっている。勝負服は──ハルノの白いロングコートと対になるかのような──鈍鉄色(ガンメタル)の、特殊部隊じみた戦闘服(コンバット・スーツ)風で、今から銃撃戦を始めると言われても違和感が無い。

 

 さて、いざゲート入り直前。

 私ことハッピーミークはというと……───。

 

「……ぁ」

 

「……ん」

 

 最悪だ。

 他人よりも鈍いというか図太い性格をしている自負はあるが、さすがにこの()()()()()()状態のスカイファルシオンと目を合わせる事態は避けたかった。

 

「……、その。今日は、よろしく」

 

 とはいえ、私の図太さもまだ捨てたものではなかったらしく。

 レウスの真似をして、精一杯スポーツマンシップに則ってみる。もちろん柄ではない。ないけど、臨戦モードのファルに話しかけられるなら、それはまだ心が折れていない証拠だろう。

 私だってウマ娘だ。たとえ『世代四天王』が相手でも、戦う前から諦めるようなことはしたくない。

 

「少しはマシな顔になった」

 

「はぁ」

 

「でも、まだどっちもどっち。不純物を背負ってる方が強い奴も居るのは、まぁ、おれだって認める。たぶんレウスはそういうタイプなんだろう。シュガー(シュガールギンメ)が抱えてるのはひとつだけど、その重みが他とは違う」

 

 ……どっちもどっち?

 不純物、って。それは─────。

 

「そう言うファルは?」

 

「さぁ。誇りとか気合いとか……その手の講釈を垂れてくる連中に、おれより速い奴は居なかった」

 

 中性的な癖毛気味のショートカット、怜悧な艶のある銀髪(芦毛)の下で、蛇すら睨み殺せそうなアイスブルーの視線が動く。

 既にゲート入りを完了した四天王筆頭、世代最強の背中へと。

 

「だからおれはハルノが好きだ」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ファンファーレが鳴った。

 普段なら気になる実況解説の声も、観客席の騒々しさも、今日は何もかもが遠い。

 加速する意識、重油のように粘ついた時間感覚の中で、周りの様子を窺う。

 

 四天王筆頭、ハルノエクリプス。

 トゥインクル・シリーズに突如現れた特異点(シンギュラポイント)としか言いようの無かった彼女について、しかしデビューからおよそ10ヶ月が経った今、その強さの秘密は徐々に解明されつつある。

 

 突出して最高速度に優れるわけでも、荒れたバ場を無理やり踏み越えられるようなパワーがあるわけでもない。

 ただ、スタミナ管理が神懸かり的に上手い───あるいは、途轍もなく()()()()

 レース序盤から中盤にかけては影か幽鬼の如くバ群の中に沈み込み、ここぞというタイミングで一挙に脚を解放してすべてをぶち抜く。煌めきは刹那、気がつけば先頭に立っているその姿こそ、"流星"の異名の所以(ゆえん)だ。

 ハルノはマークすべき相手を、仕掛ける好機を間違えない。ミスをしない。だから強い。

 

 一方、同じく四天王のザグレウスもまた先行・差し戦術を得意とし、ハルノとは対照的にバ群内での立ち位置を一定させず、またある種の『凄み』(プレッシャー)で全体のペースを支配する術に長けている。これはもう生来の気質、固有の異能(スキル)と呼んでも過言ではない。

 ()()()()に使っている相手が激しく動くようになるため、ハルノにとっても厄介なワザらしい。

 

 ……そして、もうひとり。

 

「───……っ!」

 

 残り600m。間もなくレースも終盤を迎えようかというところで、後方から膨れ上がる凄まじい()()が首筋を撫でた。

 

「あは」

 

 ファル───スカイファルシオンとの対戦経験はある。過去のレースを見たことも。

 しかし、これはそのいずれの時とも違う。レウスの振り撒くプレッシャーは競争の"熱"だが、ファルが放射する獰猛で、されどひどく鋭利な気配は……冷たい死神の刃だ。

 

「"首斬り判事(ウォッチ・リーパー)"……!!」

 

 ほとんど横並びに走っていた誰かが、そう呟いた。

 クラシック級に上がり、またひとつ白星を挙げ4戦3勝。これまでかの曲剣(ファルシオン)の一閃より逃れられたのは、世代最強(ハルノエクリプス)ただ一人。

 末脚勝負の後半型という点ではハルノとよく似ているが、その肉食獣じみた異様な加速度は、ウマ娘なる種族の平均値・限界値を鼻で笑うかのようだ。

 

 残り500m、全道程の4分の1。何は無くとも、他の子たちだってスパートを掛けてくる頃合いだ。

 私ももちろんその流れに乗る、乗るが───。

 

 ……遠い。

 

 最前線で競り合いに入ったハルノとレウスの背中だけではない。

 ファルが後ろの子たちを薙ぎ倒し、迫ってくるのがわかる。瞬きの内に逆転される未来が見える。

 

「は、は、は!」

 

 ついに私を抜き去ったファルが、こちらを一瞥もせずに遠ざかっていく。

 頭がぼんやりする。肺はとっくに加熱し切っていて、身体と脚が求める酸素量を満足に供給できていない。

 三女神様の力で下駄を履いていてさえ、これか。

 

 現実の感覚が削ぎ落とされ───世界の視え方が変わる。

 "たましいの生き物"であるウマ娘の視界に。

 

 レウス(ザグレウス)の纏う闘争の熱が渦を巻き、爆炎と化して暴れ狂う。

 ファル(スカイファルシオン)の眼光が凍てつく冷気を帯び、剣と斬撃の雨となって降り注ぐ。

 ハルノ(『世界の敵』)はそれらを見て、己が(うち)に秘める深淵の力を解き放たんとする。

 

 こんな怪物たちを相手に。

 私なんかに、何が、

 

 

 

「ミーク─────っ!!」

 

 

 

 いいや。

 

 まだだ。

 

 

 

 いつだったか。いっぱい走って勝つと、トレーナーに言った。

 たとえそれが三女神様の導きで、自分の力ではなかったとしても……この人と出会って、一緒に過ごした日々は、嘘にしたくないと。

 私のことを想って、いつも心を砕いてくれるあなたに、報いるためならば。

 

 弥生の時と同じ失敗はしない。

 あと1歩、あと1秒早く、速く───踏み出す。

 

「私を」

 

 ごめんなさい、三女神様。今は……今だけは、忘れさせてください。

 『世界の敵』と戦う三女神様の使徒じゃなく、私は……!

 

「───私を見ろ、怪物ども!!」

 

 桐生院葵のウマ娘、ハッピーミークだ!!

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 現実の時間に換算して、恐らくはコンマ数秒。

 

「……あぁ」

 

 ハルノエクリプスが有する領域、ウマ娘の権能(スキル)()()()()()()()()()()()()()()『何か』が、さらなる深度に達した。

 

「そうか。これが」

 

 途端、桜色の髪の少女が()()()する。

 

 ザグレウスと壮絶な先頭争いを演じながら、スカイファルシオンの猛追を背に浴びながら、そしてそれ以上の加速度で伸び上がるハッピーミークを目の当たりにしながら───ハルノエクリプスは、間違えなかった。

 

 2位との距離は、

 

「─────はっ! はっ、はっ、は……!」

 

 ()()()2()()()()()()()()()

 

「……、っ……! ……ふ、ぅ、っ……。は……」

 

 3分の1バ身、ほぼクビ差。

 

「……。……追いつき、ました」

 

 鏡色の目をした少女は、初めて人前で笑った。

 

























○オーバードスキル「鋼鉄の決意(Lv.3)」

レース中盤または終盤に前が詰まった時に強靭な意志を発揮し、持久力がかなり回復する。

○固有スキル「█ Brave(Lv. - )」

「世界の味方」「魔王殺しの神剣」としての権能。ハッピーミーク本来のスキルではない。
未だ無色で決まった形を持たないため、現状では三女神の使徒に与えられる基本的な能力──触れた毒物の浄化(調子『絶不調』にならない)邪な精神干渉の遮断(相手のスキルで根性と賢さを下げられない)女神の眷属『影』の使役(スキル『呪霊操術』)など──の総称に等しい。
また、世界に対する脅威に呼応して人々の"祈り"を収束させ(ファン数が増えるごとに)力に変える(ステータスを強化する)ことも可能……なのだが、ゴールドシップとエデソの妨害によって性能が劣化しており、精々()()()1()()()程度の強化しか得られていない。
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