今回は、みんな大好きクリスマス回〜!
は、既に一度投稿したので別のお話です。
何がクリスマスだよ、乙女は黙ってゲームしろ!
─────VRウマレーターというマシンが存在する。
その名の通り
サードパーティー製の拡張機能も充実しており、特にサトノグループ製作のソフトウェア『メガドリームサポーター』に搭載された『三女神AI』は、その完成度の高さゆえに発表から連日話題となった。
さて。
VRウマレーターは特にウマ娘のトレーニング用に調整されたものをそう呼称するが、機能としては通常のVR
他方、世間では『フルダイブ型の仮想現実システム』について実に多岐に渡る活用法が考案されており、その中には『まるで自分が物語の主人公になったかのようなゲームプレイ』というものまである。
すなわちは───。
「ヘーイ!! 今度もまたエルの勝ちデース!」
「ぬわーッ!! こ、このゴルシちゃんの"ウ魔王の座から転落し心機一転、再び修行を行い己を見つめ直して新たな境地に達した光落ち暗黒騎士ビルド"がァー!?」
「あ、次は私の番ですね。よーし!
「素のスキルでゲーム世界でも強いのは反則ですよねぇ」
「いや、グラスさんにだけは言われたくないと思うのだけれど……。
「にゃはは、やっぱり切った張ったの殴り合いなんて野蛮だよキング~。これからの時代は
トレセン学園、空前のVRゲームブームである。
◇ ◆ ◇ ◆
ハルノエクリプスが担当トレーナーを射止め、トゥインクル・シリーズに参戦してはや1年。
彼女の交友関係も広がり、もはやお役御免かと思われた『マーベラス同盟』だったが、何だかんだでたまに会っては話す程度の関係に落ち着いていた。
「いやぁ、それにしても……流行ってるね、VRのやつ」
そう切り出したナイスネイチャが食堂を見渡すと、やや大きめのサングラスのような装置を付けたウマ娘たちの姿が目についた。
最初に学園にVRウマレーターを導入した秋川やよい理事長が何だかんだ好評だったのに気を良くし、希望者全員に配布した簡易量産型VRゴーグルである。
「そうだね。ライス、こういうのは割と酔っちゃう方だから遠慮してたんだけど……
「お、意外というか何というか。ちなみにどんなのやってます?」
「うん。えっと、『ばんぶつの森』っていう……スローライフ? って言うのかな。喋る動物さんたちと一緒の村で暮らしててね。たまに困りごとが起きたら、森で素材を集めて、錬金術で色々作って解決してあげるの」
「『ばん森』かぁ! ライスらしくてカワイイじゃん☆ ネイチャはゲームしないのー?」
「アタシも酔うタイプだからちょっとねー。……と言いつつ、歌とダンスのやつはやってんだけどね。テイオーがさー、付き合え付き合えってうるさいもんだからつい……。ま、場所取らないからライブの練習には便利かも?」
その後もVRゲームの話題で盛り上がる『マーベラス同盟』。何ということも無い日常の一幕───。
だったのだが、ここで一つ問題が起きた。
「……………………、…………。………………。───……」
「……あれ? どうしたのブルボンさ───うわ!?」
というのも、彼女は異様なまでの静電気体質であり、触れた電子機器をことごとく爆発させることで有名だからだ。
「……、いえ。いいのです……これも宿命。何事も人によって合う合わないはあります。残念ですが……私には縁が無かったということで……」
「あー……いや、その……何かすいませんホントに。違う話しよっか……」
「じゃあ、何とかしましょう」
そして、困惑と悲哀の海を、暫定
「─────なんて?」
「何とかしましょう。現状でもスマートフォンくらいは扱えるんですよね? ならばどうにかなりそうです」
「本当ですか!?」
ミホノブルボンが珍しく声を荒げた。食堂中の視線が一瞬集まる。
ライスシャワーは、腐っていた時期の自分を一喝する彼女の姿を思い出した。あの時と同じくらいの声量だった。
「要は、電気を吸い出して鎮静化できればいいのですから……そうですね。あれをこうして……これをああして……」
某世界一有名な電気ネズミよろしく、頬の辺りに電気を溜め込む器官を一時的に創造する。
「ではブルボンさん、ちょっとこちらに」
「はい……はい!」
嬉々として駆け寄っていくミホノブルボン。よく見れば少しだけ口角が上がっている。
ハルノエクリプスはそんな彼女を、(無表情だが)慈愛の籠った視線で出迎え───ナイスネイチャとライスシャワーは、謎の既視感を覚えた。
「お願いします、ハルノさん……!」
「失礼」
「「あっ」」
「え」
「え?」
この日、『流星』の異名を冠する皐月賞ウマ娘は、3人目のGⅠクラスの先達と"濃厚接触"を果たした。
「──────領域展開、『
マーベラスサンデー、一か八か───0.2秒の領域展開。
0.2秒はマーベラスサンデーが勘で設定した、非マーベラス者が廃人にならず、後遺症も残らないであろうマーベラス空間の滞在時間。
これにより、トレセン学園食堂内に居合わせた人間・ウマ娘は全員が食事を口にしたまま気絶。だいたい5分くらいで社会復帰を果たす。
「ん……ちゅ、ぷぁ……」
「───!? んむ、ふぅっ……!」
なお目撃者の記憶は消去できたが、ミホノブルボン本人の記憶はバッチリ残った。
ハルノエクリプスは称号『キス魔』を獲得した。
◇ ◆ ◇ ◆
「……何してんの、ハルノ?」
「VRゴーグルの初期設定です」
「へぇ。意外ですわね、そういう娯楽には興味無いタイプだと思ってましたわ」
「娯楽とは限らないんじゃないかい? 元はと言えばトレーニングのために導入されたものだろう、これ」
「いえ、その……。……、知人と一緒に遊ぶ約束をしまして。ある意味、当然の誠意というか……どうにも断り切れず……」
「「「?」」」
◇ ◆ ◇ ◆
「ふん。近頃はこういうのが流行ってんのか?」
「あぁ。テイオーもツヨシも、あと何故かクリスエスもすっかりハマっていてね。私からの……ではなく理事長からのだが、クリスマスプレゼントということでどうかな」
「ケッ、似合わねぇでやんの。……ま、欲しがる知り合いも多そうだからな。とりあえず預かっといてやるよ」
「───あら? まぁ……まぁ、まぁまぁ! 珍しいこともあったものねぇ。明日はお札でも降るのかしら」
「あ? ……チッ、めんどくせぇのに見つかっちまった」
「マルゼンか。ふふ、何ならば君もどうだい? あまりこの手の新しい……失敬、世間の流行に乗っかるタイプではなかったように思うが」
「もう、失礼しちゃう。要するにバーチャルボーイのニューモデルみたいなものでしょ? さすがに知ってるわよそのくらい」
「アンタ、それ私らが相手だからまだギリギリ伝わってるだけだかんな。後輩の前で言うなよな」
◇ ◆ ◇ ◆
「ミーク! こないだ舩坂さんに教えてもらったゲーム、買ってきたよ!」
「またあの男から変な影響を……遊ぶためのものじゃないんですよ、本来。まぁ別にいいですけど、なんてゲームです?」
「タイトルはー、えっと、なになに……。───『ウーマード・コア』? だって!」
◇ ◆ ◇ ◆
◇ ◆ ◇ ◆
封鎖ステーション『マッチェム04』───半世紀前の『タヌキの火』に焼かれ、その機能を喪失したとされる衛星軌道プラットフォームのひとつ。
コロッセオめいた擂り鉢状のメインセクター外縁部に、3つの影が降り立った。
「こちらハルノエクリプス、UC『レギオンズワン』。目標ポイントに到達しました。システム、索敵モードに移行します。オーヴァー」
量産型アサルトライフルにパルスブレード、背部には中距離制圧用の拡散バズーカと、攻撃対象を半包囲する軌道で飛ぶ
汎用性を重視した──そしてハルノエクリプスと同じ──如何なる戦局にも堪え得る万能タイプだ。
「スカイファルシオン、UC『グレイヘロン』現着。周辺に機影無し、警戒を続ける」
UC『グレイヘロン』───
軽機関銃と3点バースト式ハンドガン、牽制用のプラズマミサイル、そして必殺の
「2人とも何でそんな手慣れてるの……。……、これもしかして私も言わなきゃダメ?」
「当然です。コールサインの無い現代軍の兵士なんて考えられません」
「そうだよ。呼び名が無いと不便でしょ」
「はぁ……。……、……。……たい……き、……ミーク……」
「「なんて?」」
「っ……! ───『絶対無敵ハッピーミーク号』! トレーナーが付けてくれたのっ、でも"ミーク号"でいいから……!」
UC『絶対無敵ハッピーミーク号』───『レギオンズワン』とは少し趣の異なる落ち着いた
連鎖爆発する特殊弾頭を用いたバズーカと、弾速に優れたレーザーライフルを携える重装高火力機。副武装に取り回しの良い硬芯弾投射銃、本体と独立して機関砲による弾幕を展開する攻撃ドローンを採用し、接近戦においても隙が無い。
「絶対無敵ハッピーミーク号……良い名前だ」
「絶対無敵ハッピーミーク号。わたしは好きですよ、ミーク」
「後で絶対泣かす……」
「───と、言ってる場合じゃない。来たよ」
広域レーダーに反応。急接近する高熱源体が3つ。
今回のオンラインマッチは3on3のチーム戦だ。
ハルノエクリプスら『アルファ小隊』に対峙する『ベータ小隊』、1機目は─────。
「……うん? 何だ、アンタか。意外だな……。アンタほどのウマ娘が、そんな眠てぇ機体に乗ってるなんてよ」
ダーク・グリーンの
無骨な印象のフレームとは裏腹に、装備は着弾地点に小爆発を生じるエナジーライフル、敵機を執拗に追尾する粒子ミサイル、強力な光波の刃を放つエナジーブレード、そして機体の全周囲をカバーするバリア発振器など───未知の新物質『スカーレット粒子』を用いた高エネルギー兵器で固められている。
「ふふ♪ 若いわねぇ、たまには安全運転で穏やかなドライブも
そう応答した2機目、スポーツカーめいた鮮烈な真紅のUCには
チャージ機構搭載の可変速リニアライフルと無類の瞬間火力を誇るガトリングガン、一射にして広範囲を爆砕するグレネードキャノン、多方面を同時に攻撃可能なコンテナミサイルを装備した殲滅戦の権化である。
「───『シリウス
そしてその通信が入った瞬間、2機の間を目にも留まらぬ速度で通過する機影があった。
「ンだと……ッ!? 待てお前、こんなところで突出すんじゃねぇ! 死ぬ気か!?」
「この声は……、いえ。シリウス、行かせてあげてちょうだい」
「……アンタの知り合いか? えらく跳ねっ返りが強いが」
「
◇ ◆ ◇ ◆
警告音。早期警戒センサーに感あり。
接近中の熱源は2、3、否───4。
「総員退避!」
視界の片隅、全天周囲モニターの下端に閃光がちらつくよりも先に、操縦桿を引く。
ファルはさすがの反射神経で、ミークはそれに少し遅れて、
わたしたちがその場から離れると同時、ついさっきまで立っていた施設外縁部の壁面が
「……っ!!」
「う……わ、……!?」
巨大な、青い火柱が立ち昇った。
衛星軌道プラットフォームの構造材を瞬時にして溶解させ、そのまま貫通して吹き飛ばす超高出力レーザー。
空間は紫電を帯び、陽炎を生じて揺らめいている。その最中へ悠々と浮上し、こちらを見下ろす影がある。
「───掠りもしないとは。ターフで見せる抜群の直感は、戦場でも健在ということですね」
一言で表すなら、そのUCは間違いなく『異形』だった。
大型アンテナを搭載した、空間把握性能に長ける
右肩でもうもうと蒸気を噴き上げているのは、先刻の超高出力砲撃を放ったレーザーキャノンだろう。左肩には比較的小型のコンテナのような装備が見受けられるが、詳細不明。
最大の特徴は───その異様に薄く細い
植物か鳥類めいた曲線的な造形は、火力・防御力・機動力を高いレベルで兼ね備えるUCという兵器にありながら、まるで一切の装甲が施されていないようにすら見える。
「ハルノ、あれ」
「えぇ。グレイヘロンとミーク号は後ろの2機をお願いします。
「ですが……あぁ。この時をずっと待っていた……」
半ば陶酔したような声が耳朶を打つ。
『
「さぁ、甘受なさい。逃れる術はありません───我が手、我が爪こそ、星の息吹と知るがいい」
「ふぅ……やっと追いついたぜ。ようヒヨッ子ども、ちょっくら付き合いな。私は今、ちっとばかし機嫌が良くないんだ」
「……あは。粋がってられるのも今の内だけ……。さっさと後進に道を譲ってもらうよ、先輩」
「言ってくれるじゃな〜い、Z世代ってやつかしら? けど、礼儀を弁えない悪い子にはお仕置きが必要ね!」
「なんか色々納得いかないけど……やるからには、勝ちます……!」
唸りを上げるジェネレーター。油断なく敵を睨めつけるカメラアイ。
恒星の光もまばらな外気圏の暗黒に、噴出する推進剤の炎が色とりどりの軌跡を描いて。
「─────私の"はじめて"の責任、取ってもらうんだから」
「レギオンズワン、ハルノエクリプス───目標を駆逐する」
今、ここに6つの鋼鉄が激突する。
☆年末特番に続く─────!