騎影が行く   作:ごまぬん。

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今年最後の更新です。
それでは皆様、よいお年(残り1時間)を!



特別編:機影が行く(中編)

 

 封鎖ステーションの屋内───複雑に入り組んだ廃墟を、朱と紅の噴射炎が駆け回る。

 

 軽量級の機体構成(アセンブル)は双方同じ。機動性そのものは跳躍力に優れる逆関節機『グレイヘロン』がわずかに優位だが、近接戦闘に特化した武装ゆえ、エナジーライフルと粒子ミサイルを擁する『シリウスVII』には射程距離で劣る。

 

 そして何よりも─────。

 

「……正確な射撃、遮蔽を使うのが上手い……挙動に迷いが無い。おれと『グレイヘロン』が詰め切れないなんて」

 

 嫌な感覚だった。思い出すのは先立つ弥生賞と皐月賞、ハルノエクリプスが見せた驚異の粘り。数多の同年代、有象無象のウマ娘を薙ぎ倒してきた己の末脚(ぶき)が、まったく通用しなかった時と同じ感覚。

 勝ち気で語気の荒い口調とは裏腹に、相手は恐ろしく冷静で我慢強かった。

 

「っふー……、ハ。ヒヨッ子の分際で、なかなか怖がらせてくれるじゃねぇか。レースじゃ競り合いたくないタイプだな」

 

 一方、連射によってオーバーヒートを起こしたエナジーライフルの排熱を待ちながら、シリウスVIIのパイロット───シリウスシンボリは呟いた。

 今のシリウスVIIには高エネルギー粒子バリアと屋内の遮蔽物、二重の盾がある。とはいえ、安心できる状況ではない。

 全周囲防御型の粒子バリアは高い防御力を発揮する反面、展開から一定時間が経過するごとに強制排熱を行う必要──多くのエネルギー系武装に共通の弱点──があり、その間は使用不可能になる。

 グレイヘロンの攻勢はとにかく苛烈で、一瞬でも間合いの管理を誤れば、待っているのはあの超硬合金杭射突機(パイルバンカー)による一撃だ。

 致命傷を恐れて積極的な逆襲に打って出られないのは、シリウスVIIも同じだった。

 

「あは。面白い」

 

「つってもまァ───このまま逃げ腰ってのも性に合わねぇ」

 

 小休止を経て、グレイヘロンの推進力(ブースト)ゲージが回復する。

 それとほぼ同時に、シリウスVIIのエナジーライフルと粒子バリアの強制排熱が完了した。

 

「ここらで一つ、勝負しようかァ!!」

 

「は、はは───!」

 

 意識のギアを数段引き上げ、互いに遮蔽から飛び出す。

 鋼の青鷺が躍動する。バーストハンドガンと軽機関銃、プラズマミサイルの弾幕を散らしながら。ステーション屋内の床を、壁を、柱を、まるでスーパーボールのように跳ね回る。逆関節脚部の跳躍力をフルに活かし、推進器(ブースター)を一瞬だけ噴かすことで、エネルギー消費を最低限に抑えた三次元戦法。

 それを、赤光の巨星が迎え撃つ───グレイヘロンを追って暴れ回る照準(レティクル)から片時も目を離さず、エナジーライフルの射撃を重ねる。

 時に敵機の末端を掠め、時に回避を強要し、時にステーションの構造材を撃ち抜いて、少しずつ機動力を発揮する余地を奪っていく。

 

「……らあッ!!」

 

 シリウスVIIが、左腕のエナジーブレードを力強く振り抜く。

 それはとても"剣"の射程距離ではなかったが、新物質『スカーレット粒子』を用いた武装に既知の常識は通用しない。

 高エネルギー粒子で形成された刃は大きく伸長し、光の波と化してグレイヘロンに襲いかかる。

 

「そんな見え透いた攻撃───」

 

 次の足場に、と見定めていた支柱が斬断された。ブースターを噴かして後方へ逃れる。

 グレイヘロンの挙動がわずかに鈍った、その一瞬で充分だった。

 

「もう一発だ!」

 

「!」

 

 絶妙のタイミングで粒子ミサイルが放たれる。甚大な爆発を伴う必殺のチャージショット。

 対するグレイヘロン───鋼の鳥を駆るスカイファルシオンは、天性の才覚によって無意識の計算を終え。

 

「───ここ!」

 

 回避機動を取らず、迫りくる粒子ミサイルに向けて()()()()()()()()()

 全力でフットペダルを踏み込む。推進力(ブースト)ゲージの大量消費と引き換えに、高速で長距離を移動する突撃巡航推進(アサルトグライド)───とにかく前へ。

 粒子ミサイルはチャージ状態か否かに関わらず高い威力と誘導性能を誇る反面、弾速と信管の精度に欠点を抱えている。

 

「っ、な……テメェ!?」

 

 機体とミサイルはたちまち()()()()、高エネルギー粒子の大開放が巻き起こる。

 生じた爆風に乗って、グレイヘロンはウマ娘にすら知覚困難な速度域へと到達した。

 左腕武器の換装は既に終わっている。超硬合金製の(パイル)が引き絞られ、射出基部に充填された炸薬への着火が始まっている。

 

「これで」

 

 彼我の距離がゼロになる。

 ターフでも戦場でも、ここまで来たのならやることは一つ。

 追い縋って、追い抜くだけだ。

 

「おれの、勝ち」

 

 グレイヘロンの機体性能で実現可能な最大速度で、UCの装甲をも容易く貫徹する金属杭が射出される。

 

「───なんてな」

 

 そして、シリウスVIIの全周囲を深紅の光の壁が覆った。

 粒子バリアの耐久力は折り紙付きだが、これほどの速度で打ち込まれたパイルバンカーの一撃を完全に防げるほどではない。

 それでも、シリウスシンボリには勝算があった───敵の攻撃に合わせ、タイミング良く防御コマンドを入力した際に生じる適正防御(ジャストガード)判定だ。

 ジャストガード補正(ボーナス)が加算された粒子バリアは瞬時に破壊され、パイルがシリウスVIIの右肩に直撃し、半身を抉って、そこで止まった。

 

「……!?」

 

「私相手によくやった! 褒めてやるよ鳥野郎ォッ!!」

 

 シリウスⅦの心臓(ジェネレーター)に火が灯った。産出されるスカーレット粒子の量が、空間濃度が上昇する。

 ジェネレーターの出力を極限まで上昇させ、機体各部に設けられた送受電用蓄電器(キャパシター)の安全弁を瞬時に開閉することで、擬似的な臨界爆発を引き起こす『攻性装甲(パージブラスト)』。敵機からの攻撃を掻き消し、同時に深刻なダメージを与える攻防一体の胴体(コア)パーツ搭載型拡張機能(エキスパンション)である。

 

「吹き飛べ」

 

 ジャストガードに成功したとはいえ、パイルバンカーの直撃によってシリウスⅦのHP残量は3ケタを割り込んでいる。また、パージブラストは自らの機体にも大きな負荷をかけるため、発動直後には相応の隙を晒すことになる。

 しかし、それだけのリスクを負って放たれるパルス爆発───否、スカーレット粒子の爆発反応は、近接志向で機動力に特化した軽量機ゆえ、重装甲を持たないグレイヘロンのHPを削り切って余りあるだろう。

 

「……()()()()()

 

 刹那、スカーレット粒子が生み出す紅い稲妻の最中に、一条の蒼い閃光が迸った。

 

「───っ!! ()()()、か……!」

 

 一度のチャンスにすべてを懸ける、近接型機体(インファイター)の真骨頂であった。

 シリウスⅦがパージブラストを発動する寸前、厳密にはパイルバンカーを放った直後、グレイヘロンもまたパージブラストを発動していた。ただ一度の接近で、敵対者を確実に葬り去るためのコンビネーション攻撃だ。

 

 二重の光と熱が、封鎖ステーションの一区画を丸ごと消滅させた。

 

 

 

 

Squad α 1-1 Squad β

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「おや。……ずいぶん熱心だな、タイシン。何を見ているんだ?」

 

「あぁ……うん。その。……正直に言うけど、これは凄いよ。ハヤヒデも見ておいた方がいい」

 

「ほう? ますます気になるな、どれどれ」

 

「こっちの白い逆脚、あれだけ動いてほとんど足並みが乱れてない。三半規管を鍛える訓練なんてトレセンじゃ滅多にやらないだろうし、天性の才能だろうね。対して、こっちの軽二はとにかく勘がいい。状況判断が的確で武装の選び方に無駄がない。最後のパージブラスト合戦も見物だったけど、光波ブレードで柱を叩き切ったのは震えたね。必殺のチャージ攻撃を障害物をどけるためだけに使うなんて、なかなか出来る判断じゃないよ。あぁ、あっちの重二は少し動きが固いね。あのアセンブルならもっと足回り軽く動けると思うんだけど……。とはいえ、筋は良いな。相手が悪いか? あのタンク、弾の管理もそうだけどまったく足が止まらない。あんな重装備であれだけ機体を振り回せるってことは、相当乗り慣れてないと出来ない芸当だ。中二の子は……不思議な動きだな。けど、立ち回りが丁寧だ。隙が無い。火力の吐き方が効率化されてる、この中じゃ一番相手にしたくないタイプかも。しかし、それにしてもあの四脚は嫌な戦い方するな……。アタシだったらあれをああして、これをこうして……」

 

「どうした急に」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ファルが落とされた。

 大抵何でも上手くやれるイメージのある子だ。ゲームとはいえちょっとショックかも知れない。しかし、そのファルを倒した強そうな人を道連れにしてくれたのは、さすが『世代四天王』の意地だろうか。

 

「さぁさぁさぁ、飛ばすわよ~!!」

 

 ───さて、問題は私の方だ。

 

「く……!」

 

 重装甲で大火力、機体の傾向は似ている。こっちは二脚型で向こうはタンク型だから、機動力はこっちが上で、防御力はあっちが上。

 いや、火力も向こうが勝っているかも知れない。あの大爆発を起こす大砲(グレネードキャノン)もさることながら、威力と弾速のある右手の銃(リニアライフル)と、近距離で受けるとたちまちHPが削られる左手のでかい銃(ガトリングガン)……左右で緩急のついた弾幕がかなり怖い。なんか定期的にミサイルの雨も降ってくるし。

 

「でも、一番怖いのは───」

 

 繰り返すようだが、さすがに機動力だけはこちらが上だ。メインの武器が重たい分、背中には軽くて接近戦に強い武器を載せているからだ。

 私もバ鹿ではないので、あんな武器のハリネズミみたいなやつと正面から殴り合おうとはしない。なるべく後ろに回ったり、射程距離でも勝っているので離れようとはしてみる。

 

「ふふふ、どこへ行こうというのかしら? スーパータッちゃんからは逃げられないわ!」

 

 ……が、あまり上手くいってないというのが実情だ。

 振り切ったつもりでもすぐに追いつかれるし、せっかく背後を取っても一瞬で急旋回して照準を合わせられる。これがレースだったらなるべく戦いたくないウマ娘だ。ふざけた機体名のくせに。

 

「ぐぬぬ」

 

 ─────悔しい。

 たかがゲームでも、こうなのか。

 

 遠方にチラリと見えるハルノのロボット───『レギオンズワン』の挙動は、はっきり言って意味がわからなかった。

 何も無い(?)ところから死角を突いて飛んでくるビームとか平気な顔して避けてるし、あのすばしっこそうなキモい四脚相手に追いついて、真正面から撃ち合いを続けている。なんかどう見ても()()()()()()()()()()()()()()()としか思えない瞬間もあった。

 

「……すぅ」

 

 逸る気持ちを抑え、息を整える。大事な試合で掛かりは厳禁だ。

 たかがゲーム───されどゲーム。これはゲームであっても遊びじゃない。いや、遊びにすら真剣になれないウマ娘が、この世の何の勝負に勝てるというのか。

 

「集中」

 

 大丈夫。『絶対無敵ハッピーミーク号』は、トレーナーと一緒に作ったメカだ。

 名前はスーパータッちゃんを笑えないほどダサいけど、ふたりで頭をひねって選んだパーツと、トレーニングの合間合間にやってきた練習は裏切らない。

 

「大丈夫……怖がっちゃだめ……」

 

 最大の火力を───自分の強み。どうすれば届くか。押し付けるためには。リスクとリターン。敵の死角。未来位置。彼我の性能差。

 場所は既に戦いの渦中、いちいちすべての思考を言語化して吟味している暇は無い。()()である必要は無い、ただ目の前の出来事に対して正確でありさえすればいい。

 今日までに詰め込んだ知識(攻略情報)、神経から伝わる感覚、精神(こころ)身体(からだ)の中を飛び交う無数の光の線を繋ぎ合わせる。

 ここがゲームの中、仮初の現実でしかないということを忘れさせるほどの現実感(リアリティ)が、私の鼓動と思考を加速させる。擬似的な極限状態が、脳をあるべき"領域(ゾーン)"へと導く。

 

「───さぁ。やるぞ」

 

 たぶんその日、私は噂の『領域』あるいは『権能(スキル)』の極意に開眼した。

 よりによってレース場のターフでもトレセンのグラウンドでもなく、ロボットのコックピットで。

 

「……! この、感覚───」

 

 たぶん何かしらの気配を察したらしい対戦相手、推定歴戦のウマ娘が息を呑む。

 ここがトゥインクル・シリーズの舞台でないことが惜しまれるが、恐らくその直感は正しい。

 

 アサルトグライドを起動。高速で駆け出す機体に反し、慣性によって身体がコックピットシートに押し付けられる。

 今は、本来煩わしいはずのその感覚すら心地良い。

 

「そう。決めたのね、覚悟を」

 

 スーパータッちゃんの乗り手もまた気配を変える。関係ない。このまま行く。

 たちまち縮まる距離。ガトリングガンの連射が襲う───重量二脚型の装甲で受け止める。

 ガトリングガンの瞬間火力と蓄積する衝撃値──UCの姿勢制御機能が受ける負荷で、被弾しすぎると体勢を崩して大きな隙になる──は脅威だが、対処には困らない。秒間何十発という凄まじい射撃レートは、それ相応の反動と銃身への負担をもたらす。

 アサルトグライドには、被弾時に受ける衝撃値を減少させる効果がある。さらに、ブースターの角度を調節し、わずかに斜め上の軌道を取るよう調節する。たったこれだけで被弾率は減少し、当たってもさほどダメージソースにならないという状況を作れる。

 

「甘いっ」

 

「……!」

 

 けれどもちろん、相手もただ立っているだけの案山子じゃない。

 より威力が高く、弾速も速くて命中率の高い右手のリニアライフルが火を噴く。瞬間加速噴進(アクセルブースト)で回避を試みる、少し掠った。

 ブーストゲージの余裕がある内にアサルトグライドを停止。そこへ、狙い澄ましたようにグレネードキャノンの一射が撃ち込まれる───予想できていれば問題ない。

 間髪入れずもう一度、アサルトグライドとアクセルブーストを同時に起動する。ミーク号に発揮できる最大の瞬発力で、炸裂するグレネード弾を背後に置き去りにした。

 

「ウップス! これは───」

 

 視界の端に、()()()()()()()()()ガトリングガンの多連装銃身が映る。一部の実弾武装にも設けられている、エネルギー系武装と同じ強制排熱時間(クールタイム)だ。

 この瞬間を待っていた。手始めに右手のバズーカを撃ち込み、すかさず硬芯弾投射銃に切り替えて連射。左手のレーザーライフルをチャージしながら、左背部の攻撃ドローンを起動して弾幕を張る。

 

「墜ち、ろ……!!」

 

「ンッフフ───あぁ、まだまだ退けないわね!!」

 

 レーザーライフルのチャージショットを見舞った瞬間、急速に展開した明るい緑色の輝きがそれを阻んだ。胴体拡張機能(コア・エキスパンション)強化装甲(エンハンスドアーマー)』のパルス防壁だ。

 ただでさえ堅牢なタンク型機体の耐久力がさらに増す。こちらから与えられる衝撃値も減り、一時離脱の隙を作られてしまった。

 引き剥がした距離でリロードを完了させ、再び撃ち込まれるグレネードキャノン。さらに今度は、左肩のコンテナから放たれるマイクロミサイルの群れと同時だ。

 

「つっ、ぁ……!」

 

 どうにか直撃は避けたものの、乱れ飛ぶミサイルに回避の余地を限定され、グレネードの強力な爆風に晒されることになった。

 それを見逃してくれる相手ではない。リニアライフルの追撃が来る。体勢が崩れたところに放たれたチャージショットが、胴体を庇って突き出した左腕を吹き飛ばした。

 同じ武器に被弾した場合でも、受けた部位でHPの減り方は違う───代わりにこうして、被弾した部位の機能が損なわれることはあるが。

 

 ……何より、

 

「来るわね」

 

 左腕が丸ごと、半ばから千切れるように損壊した。

 三度、アサルトグライドを起動する。自分とミーク号が一体になったかのような錯覚。己の背中で、ブースターの噴射炎が燃え盛っている感覚がある。

 

「速く……」

 

 敵機の腕の中で、リニアライフルとガトリングガンが鎌首をもたげる。

 銃口から火花が散るより早く、右手の硬芯弾投射銃を放棄(パージ)した。飛び出す。

 

「鋭く」

 

 接近しながら、左背部の攻撃ドローンを起動すると共に、攻撃後の回収・補給・再使用を行うための接続基部(プラットフォーム)をパージ。当然、再使用は出来なくなるがこれでいい。

 

「そう何度も……同じ手は、食わないわよ!」

 

 真紅のタンク型UC、スーパータッちゃんの履帯が唸りを上げ、その巨体を後方へと運び始める。

 押されれば引く、まったく道理だ。アサルトグライドはブーストゲージを大量に消費する。向こうはリニアライフルとマイクロミサイルで牽制し、こちらの息切れを待ってガトリングガンとグレネードキャノンでとどめを刺せばいい。

 

 でも。

 

「同じじゃ、ないです」

 

 如何にスーパータッちゃんのパイロットが運転技術(ドライビングテクニック)に長けていようと、根本的には重量二脚型のミーク号の方が速い。

 左腕、レーザーライフル、硬芯弾投射銃、攻撃ドローンのプラットフォームすべての()()()()()()今なら尚更だ。

 

「─────!!」

 

 リニアライフルの高速弾、ガトリングガンの斉射。受け止める。マイクロミサイルの爆撃は突っ切って当たらない。

 グレネードキャノンがこちらを照準するのが見えた。虎の子のエンハンスドアーマーを発動させる。直撃、爆風、轟音───視界を埋める激しい炎と煙を切り裂いて、ミーク号は駆け抜ける。

 

「なんてこと……皮肉なものね。この私が、スピードを忘れた結果が、これなんて……!」

 

 猛烈な勢いで減少していくブーストゲージが空になる直前、すべてを出し尽くすようにして、操縦桿を押し出した。

 スーパータッちゃんの眼前で、ミーク号が()()。跳ね上がる。ブースターの噴射炎を後方に残し───真紅の胴体装甲を、()()()()()

 

 タンク型は防御力と安定性に優れる。専用の機体構成(アセンブル)でもない相手の格闘攻撃を一度受けた程度で姿勢を崩したりはしない。

 最接近の直前で展開していた攻撃ドローンが、内蔵機関砲の弾丸を打ち尽くして沈黙した。

 

良い勝負でした(グッドゲーム)

 

 連鎖爆発する特殊弾頭が炸裂し、敵機の上半身を消し炭に変えた。

 

 

 

Squad α 2-1 Squad β

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「……はぁっ! はぁ……はぁ……」

 

「ミークっ!!」

 

「───え?」

 

 

 

Squad α 2-2 Squad β

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 絶対無敵ハッピーミーク号を屠り去った、()()()()()()()レーザー攻撃───その射手たちが、残存エネルギーの枯渇と共に爆散した。

 

 それは働き蜂を使役する群れの女王めいて、暗黒の宇宙を背に君臨している。

 漆黒と紫苑、逃れ得ぬ不吉を連想させる装甲。貴種の血脈めいて浮かび上がる青白いエネルギーライン。

 四つ脚の異形にありながらも洗練された細身の艶姿は、その身に携えた破壊と殺戮のための兵器にすらある種の気品を纏わせているようだった。

 

「さて……これでふたりきりです」

 

 異形の女王に対峙するのは、白銀の騎士。

 まるで御伽噺、あるいは英雄譚の一節が如く、遥か高みから見下ろす"敵"を油断なく見つめている。

 

「えぇ。決着をつけましょう」

 

 黒の女王───ミホノブルボンの『ダスクローズ』が銃口を向ける。

 白の騎士───ハルノエクリプスの『レギオンズワン』が飛翔する。

 

 並び立つ双星は、ついにロッシュ限界へ─────。

 





来年に続く。
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