騎影が行く   作:ごまぬん。

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あけましておめでとうございます!
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

1月中に投稿できてよかった……。



特別編:機影が行く(後編)

 

「行きなさい、ファンネル!!」

 

 ダスクローズの左背部、コンテナに収められた()()()()()()()()()()()()()()が飛び立った。

 絶対無敵ハッピーミーク号が装備していたものより小さく、また数が多い。ロックオンした敵機を複数基で包囲する機動を取り、擬似的に多対一の状況を強制する恐るべき兵器だ。

 補給と再使用の機能を持たない使い捨てだが、それ故に自壊すら厭わぬほどの瞬間出力を有しており、小型ながら総火力は高い。

 

「───……」

 

 ハルノエクリプスの視線が、電撃的な速度で周辺空間を走査する。

 レーザードローンは脅威として大きく目立つものの、()()()()()()()()()()()

 全方位から襲い来るレーザーの雨霰に、強烈な運動エネルギーを伴う実体弾が交じる。

 火力型アサルトライフルの鋭い一射、重機関銃のばら撒くような弾幕───恐るべきことに、そのいずれもがある意味では本命であり、ある意味では本命ではない。

 

「……、っ」

 

 見る目のある者が見れば理解できるだろう。ハルノエクリプスの駆るレギオンズワンは、ここまでに一手たりとも()()()()()()()

 重力と慣性を味方につけ、ステージの壁面を蹴りつけての即時反転──スカイファルシオンが見せた三次元戦法と同じ──も用いて、間断なく加減速を繰り返す。

 中量二脚型の限界を超えた速度、旋回性能を引き出し、被弾を最小限に抑え、最大限の火力を発揮する超人的戦闘機動(マニューバ)

 そして───それほどの挙動を実現して尚、()()()()H()P()()()()()()()()()()()()()ということに。

 

「さすが、よく動きますが」

 

 理由は単純。レギオンズワンの装備では、射程が足りていないのだ。

 主武器(メインアーム)は互いに汎用性に優れるアサルトライフルだが、レギオンズワンのそれは速射性で勝る代わりに火力──すなわちは弾速と射程──に劣る。

 拡散型バズーカとパルスブレードは共に近接迎撃用で、唯一有効なのは連装ミサイルのみ。それも、

 

「それでは追いつけませんよ。私のダスクローズには」

 

 四脚型UCは背面ではなく下半身に主推進器(メインブースター)が搭載されており、各脚部をフレキシブルに連動させ、地表や空中を滑るような高速移動が可能という特徴がある。

 突撃巡航推進(アサルトグライド)によって距離を詰めるのも難しい。スタミナ───もとい推進力(ブースト)ゲージの管理スキルはハルノエクリプスに分があるものの、身体の仕上がり───もとい素の機動性がこれほど違えば一筋縄にはいかない。

 

「……速い。それに」

 

 加えて、パイロットであるミホノブルボンの特性ゆえか、射撃精度が尋常ではなかった。

 ウーマード・コアの機体構成(アセンブル)において、武装との相性を考慮して火器管制システム(Fire Control System)を選択するのは当然の心得だが、実際の射撃精度は他に頭部カメラアイや腕部パーツの運動性にも影響される。

 しかし、ミホノブルボンのダスクローズは"重武装の高速機"という矛盾を実現するため、耐久性の欠如を承知でフレーム・装甲の重量を切り詰めており───それはすなわち、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()これだけの戦闘力を発揮していることを意味する。

 

「───先天性の高負荷競争環境適性者。"戦いを制する者(ドミナント)"か」

 

 なお、この一件でミホノブルボンは『やっぱりサイボーグなんじゃないのあの(ウマ娘)』という根も葉もない風評を受ける羽目になるのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「なんだかよくわからないけど……ふふ。ブルボンさんもえっちゃんも、楽しそうでよかった」

 

「……ミホノブルボンさんのUC……黒と紫のカラーリングに明るい青の差し色、名前が『夕闇の薔薇(ダスクローズ)』、ってことはつまり……。つまり、つまりつまりつまり!! おいマジかよ、夢なら覚め───ハウッ」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ここではないどこか─────。

 

 遠く果て無き星々と時空の彼方、ゆっくりと鼓動する巨大な意志のうねりがあった。

 

 それは待っている。

 今も、その瞬間を待っている。

 

 

 

〈勝利せよ〉

 

 

 

 そして、少女は大いなる声を聞いた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「これが今度の実験体かね?」

 

「あァ。資料では中央トレセン出身だとか」

 

「なるほど、例のルートからか……」

 

「死に顔は存外安らかだったそうだぜ」

 

「己が宿業に殉じたか……。フッ。だが、この実験で生まれ変わるさ」

 

「生きていれば、だがなァ」

 

「まっ、そういうことだな。では始めようか」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ハルノエクリプスの気配(スイッチ)が、切り替わる。

 静謐を旨とする暗殺者から───獰猛なる戦士へ。

 

「……!!」

 

 されど、ミホノブルボンもまた揺らがない。

 あくまでも冷静にレーザードローンを展開し、ライフルと重機関銃によるアウトレンジ攻撃に徹する。

 

「───……」

 

 掠れるような吐息を一つ。

 次の瞬間、純白のUC・レギオンズワンが、()()()

 

「!? ……、いえ」

 

 何のことはない。瞬間加速噴進(アクセルブースト)を使い、建物の遮蔽に逃げ隠れただけ。

 ダスクローズのレーダーは未だ敵機を捉えたままだ。レーザードローンがレギオンズワンを追い続けている。回り込んで即座に追撃を───。

 

 バギン、ガオン、という異音が轟いた。

 

 機体レーダーが高熱源体を捉え、被弾警告を発したまではミホノブルボンも理解できた。それがレギオンズワンの装備している背部拡散型バズーカによるものであるということも。

 不可解だったのは、

 

「何を」

 

 封鎖された衛星軌道プラットフォーム(宇宙ステーション)

 レギオンズワンが遮蔽として隠れた、その構造体の一部が、

 

「こういうことも、出来る」

 

 ()()()()()()()()()()

 

「ッ!!」

 

 宇宙開発用の特殊合金で形成された()()()()()()、恐るべき大質量が襲いかかる。

 ダスクローズは咄嗟にアクセルブーストを噴かして回避したが、レギオンズワンの攻勢は止まらない。連装ミサイルによる牽制を交えつつ、パルスブレードや拡散型バズーカで()()()()()()()()()()、サッカーボールよろしく蹴り出してくる。

 

「く……、無茶苦茶な……!」

 

 迫る質量弾を回避し、回避し、回避し───時に、銃撃で破壊する。

 そうしている間にも、レギオンズワンは確実にダスクローズとの相対距離を縮める。舞い上げられた瓦礫と粉塵に身を潜めながら。

 這い寄る蛇の如く、白き流星はついに鋼の女傑の背を捉えた。

 

「追いつきました、先輩」

 

 拡散型バズーカの砲口が閃く。

 硝煙と共に吐き出された複数の成型炸薬弾が、優れた機動力の代償に重装甲を持たないダスクローズのフレームへと突き刺さる───。

 

「……いえ。()()()()()()()()()()()()、後輩」

 

 直前で、解き放たれた攻性装甲(パージブラスト)のパルス爆発が、砲弾を掻き消しながらレギオンズワンを薙ぎ払った。

 強烈な衝撃に姿勢制御システムが即座にダウンし、乾坤一擲の機会を無に帰す。

 舞うような所作で離脱していくダスクローズの背部に、高出力レーザーキャノンの光が灯る。

 

「これで、終わりです───!!」

 

 地形そのものを貫通するほどの超高出力レーザーが、姿勢を崩し回避も防御もままならぬレギオンズワンに直撃する。

 誰もが、塵一つ残さず消し飛ぶ白銀の騎士を目撃した。

 

 

 

 それでも。

 

 ゲームはまだ、終わっていない。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 会心の一撃だった。

 確かに手応えがあった。

 

 背部レーザーキャノンの青い閃光に灼かれ、跡形もなく消えた敵機(ハルノさん)

 

 なのにまだ───ゲームシステムは、勝敗判定を出していない。

 

()()()()

 

 激しく明滅する()()()()()が見える。

 機体が大破に至る深刻なダメージを検出し、瞬間的に展開される緊急シールド───胴体部拡張機能(コア・エキスパンション)最終装甲(ラストワード)』。

 

「……ファンネルっ!!」

 

 思考よりも先に手が動いた。

 最終装甲(ラストワード)の有効展開時間は10秒にも満たない。そして、あれが発動したということは、ハルノさんのUC・レギオンズワンのHPは既に1しか残っていない。

 このまま適切な距離を保ち、手持ちの武装すべてを叩きつければ削り切れる。

 

 1秒。

 レギオンズワンのライフルが吼える。

 

 2秒。

 こちらのライフルが発砲する寸前、()()()()()()()()()()()()()が内部機構を破壊した。

 

 3秒。

 想定外の負荷を受けた機体フレームが悲鳴を上げ、左腕の重機関銃の照準が大きくブレた。

 

 4秒。

 ラストワードのパルス防壁の明滅が弱まる。展開終了が近い。

 

 5秒。

 ファンネル(レーザードローン)各機の砲口から光が漏れる。レギオンズワンの左腕パルスブレードが明るい緑色の電磁パルスを発振し始める。

 

 6秒。

 敵機のパルス防壁が、ほぼ完全に消失して。

 

 

 

「秘剣───"燕返し"」

 

 

 

 7秒。

 緩やかな円を描いて振るわれた光の剣が、周囲を飛ぶファンネルをことごとく切り裂いた。

 

 7()()

 剣の射程からの離脱を阻む横薙ぎの一閃が、ダスクローズの前脚を切り落とした。

 

 ───7()()

 袈裟懸けに放たれたパルスブレードの一撃が、機体の(コア)を、コックピットの私を真っ二つに断ち斬った。

 

 

 

 

 

Squad α 3-2 Squad β

 

Squad α Win

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「…………。今更だけど、とんでもねー担当(ウマ娘?)預かっちまったなアタシ……」

 

「チーフ、英国から呼び戻します? 今ならスズカさんも一緒に帰国してくださいましてよ」

 

 ゴールドシップ(舩坂金時)は新たな決意を固めた。

 根性が結構上がった。

 

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