騎影が行く   作:ごまぬん。

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お待たせしました、久々の掲示板回&レース回です。
前回はだいぶ様子がおかしかったですけど、今回はちゃんとした話になってるはず……!



Or point of no return

 

 ─────これは、正しい帰結を経た世界の物語ではない。

 

 多くの人々が共有し支持される正史(カノン)でも、あるいは並行する時空の"IF"(もしも)でさえない。

 海の砂と天の星の数だけ存在する可能性の粒が触れ合い、摩擦して飛び散った、火花の如き泡沫の夢に過ぎない。

 故に、やがては誰もがすべてを忘却することとなるのだが───。

 

 もしも大衆がこの世界で起きた出来事を記憶していられたなら、彼らはこう評するだろう。

 『この年の日本ダービーは、()()()()()()()()()()()()()()()()』と。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

【まるで】ハルノエクリプスファンスレpart92【レーザービーム】

 

 

1:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 15:03:28 ID:k9kkP6oSA

ここはハルノエクリプス及びハルノエクリプス陣営のファンスレです。

批判等はこちらへ→【ウマ娘】地球外ウマ娘特設災害対策本部【ハルノエクリプス】

 

中央トレセン公式サイト→https://www.jutcs_tokyo.ac.jp

 

公式ウマッター(船坂トレーナー)→https://umatter.com/kintoki_ame564

 

トゥインクル・シリーズに突如現れた新世代の流星、えっちゃんことハルノエクリプスについて語りましょう。

基本的にハルノエクリプスに関わることなら何でもOKですが、エリア51に連行されてしまわないよう、過激な話題は節度を守って程々にお願いします。

 

 

2:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 15:13:49 ID:aDsoiOx/r

 

 

3:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 15:24:29 ID:OyzWqoxMj

立て乙

 

 

4:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 15:34:17 ID:w7L7N1bDH

 

 

5:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 15:45:00 ID:WuJhNMBhJ

立て乙です しかし1週間近く経ってまだスレの勢い鎮火しないってこれもうわかんねぇな

 

 

6:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 15:55:21 ID:fipoWw2Jh

クラシック級のくせにあんなイカれたレベルの戦いを涼しい顔して制したんだから当たり前だよなぁ?

 

 

7:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 16:05:19 ID:fSzcQ4Dxz

「涼しい顔」って慣用句が文字通りの意味なんだから我らがえっちゃんには参るね…

 

 

8:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 16:15:26 ID:w4THe8wHp

>>7

えっちゃん「様」な

 

 

9:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 16:25:11 ID:xOxm3d/qh

親しみやすいのかそうでもないのかハッキリしろ

 

 

10:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 16:35:23 ID:SQ3aVJ4zw

えっちゃん様、インタビューとかでもクッソ真面目な顔してめちゃくちゃ天然ボケかます時あるし、案外俺らが思ってるより親しみやすいかも知れない

 

 

11:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 16:46:09 ID:GcphX9yNA

涼しい顔して勝ってはいたよねレース中にはね

なお

 

 

12:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 16:56:58 ID:wM23NV7Q1

マジで大事件だったもんな…冗談抜きでスレの消費速度が例年の三冠レースに比べても10倍くらいになった

 

 

13:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 17:06:40 ID:q0XkC8LIU

何かあったっけ?

ゴール直後のえっちゃん様が後続の子たちにン・ダグバ・ゼバみたいな顔してたことしか覚えてない

 

 

14:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 17:16:35 ID:ev4AH39Gk

ハルノエクリプスの貴重な笑顔シーン(ガチで貴重)

 

 

15:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 17:26:33 ID:jqyqSQIk/

>>13

完全に覚えとるやんけ!

 

 

16:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 17:37:20 ID:2i1rDHUlk

テレビの画面越しであの「圧」なんだから直接笑いかけられたら心臓止まるわあんなん

 

 

17:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 17:47:02 ID:+OY0MAUiB

ファン待望の瞬間だったはずなのに完全に空気が凍ってたの今思い出しても笑える(笑えない)

 

 

18:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 17:57:11 ID:VWG3Faz8c

前からぽつぽつ言われてたえっちゃん「様」って愛称が定着したのあれからだよね

 

 

19:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 18:07:21 ID:P46D1FhTX

あれその直後のウイニングライブではいつも通りの無表情に戻ってたのが完成度高いんだよな

 

 

20:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 18:17:49 ID:XLAoLlaXo

まぁ俺はメイクデビューの時から気づいてたけどなハルノエクリプスの素質に

 

 

21:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 18:27:54 ID:xjNb1VVZw

それはさすがに事後孔明…でもデビュー2戦目でアスター賞勝ってるな

ん…?あれ…?これ最初からヤバかったのか?

 

 

22:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 18:38:21 ID:T2eEra6Fi

>>20

あれ幻覚だったのかなって録画チェックした奴らがことごとくダグバスマイルおかわりで撃沈してたの芝なんだ

 

 

23:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 18:48:54 ID:O2b30s+hm

ハルノ様の貴重な笑顔やぞ

天上の美神すら羨む我らが王の竜顔を愚弄するのか?

 

 

24:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 18:59:26 ID:AWljBCSME

やべーぞ王国民だ!

 

 

25:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 19:09:23 ID:NRquc86ph

相変わらず短い文章で異常なまでの熱量を見せつけてくるなえっちゃん王国民は

 

 

26:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 19:19:53 ID:afI6pGk30

ライブの時ずっと無表情なのは散々言われてるけど、地味に歌唱力クソ高くない?

 

 

27:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 19:30:39 ID:ndH7CbsAl

あの顔正直興奮しts

 

 

28:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 19:41:15 ID:DFQQQgTI2

ウマッターでCDやライブの音源カラオケ採点にかけたら95点以上連発だったって言ってるやついたな

 

 

29:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 19:52:05 ID:5Qrd6Fly2

声音はずっと平坦なのに音程全く外さないから脳がバグる、ボカロかな?

 

 

30:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 20:02:26 ID:DLB5toZj7

君のせいで…俺は…俺は普通だったのに…君のせいで今大変なんだから…

なんとかしてくれよ…

 

 

31:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 20:12:29 ID:6w/F11Bb3

>>27 ミス

あのオリジナル笑顔正直めちゃくちゃ興奮したからもっとやって欲しい

 

 

32:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 20:22:19 ID:OJs0az/5W

5着以内までが全員レコード更新に迫るタイム出した皐月賞を再現すればまたしてくれるよ

 

 

33:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 20:32:56 ID:1zmg30tCF

>>31

わかる踏まれたい

 

 

34:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 20:43:26 ID:xYV5B+0J+

ウマ娘の脚力で…?

 

 

35:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 20:53:40 ID:opSN9rOiz

ハルノエクリプスもだけどスカイファルシオンとハッピーミークもちょっとそういう雰囲気あるよね

世代代表のうち3人がドMホイホイとか教えはどうなってんだ教えは

 

 

36:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 21:03:50 ID:uUoARwJsP

>>32

つまり今度の日本ダービーだな! ヨシ!

 

 

37:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 21:13:41 ID:6xcpVZErq

ハルハピいいよね…

 

 

38:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 21:24:06 ID:QoHxpTkys

いい…

 

 

39:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 21:33:56 ID:CUEv7kLEy

は?時代はファルハルだが

 

 

40:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 21:44:36 ID:qOxHNC1qo

ファルハル地雷です

ザグハルを讃えよ

 

 

41:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 21:55:20 ID:mWXlI5Dc8

ふ…舩ハルじゃないのん?

 

 

42:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 22:05:09 ID:jCv4Gx3u6

舩坂トレはトレセン学園と寝てるから………

 

 

43:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 22:14:55 ID:z6qcCkn8c

>>40

ザグ子にはシュガーお嬢っていう嫁が居るだろ!いい加減にしろ!

 

44:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 22:35:00 ID:+iiKNfYUs

イケメンで背が高くて足が長くて着任1年目から担当を持てるほどの秀才で性格も良くおまけに何故かやたらバラエティ慣れしておりユーモアセンスがある

何だこのトレーナー無敵か?

 

 

45:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 22:46:09 ID:IQWlk9aDV

でも毎週のように女と居るところ撮られてるぞ

 

46:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 23:06:33 ID:MERTv/A8j

担当以外で好きなウマ娘はゴルシだぞ

 

 

47:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 23:38:01 ID:a6DSB2d+O

>>45

週刊誌が無駄に騒ぎ立ててるだけで普通に職場の飲み会の帰りだったから…

 

 

48:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 23:41:52 ID:FdsFMLydG

>>44

ついでに趣味はカフェ巡りだし、季節の行事には毎回手作りの小物の写真アップしてるし、トレセンじゃ周りの職員や学生からファッションの相談とか受けてるらしいし

あれ?こっちがウマ娘なのでは?

 

 

49:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 23:44:01 ID:XcB9X0BoC

>>47

>週刊誌が無駄に騒ぎ立ててるだけで普通に職場の飲み会の帰りだった

そうですね そう信じたいですね

 

 

50:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 23:57:20 ID:GCaOqkIL6

雑誌の表紙で…俺たちのやよいちゃんにあんなッ…あんなメスの顔をさせてッ…!!

 

絶対許さねぇ舩坂金時

 

○してやるぞコパノリッキー

 

 

51:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 0:04:39 ID:JAYX5ng8M

コパッ!?

 

 

52:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 0:17:51 ID:qL+yojctB

実際…桐生院さんトコの葵ちゃんとは…どうなんですか?

 

 

53:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 0:48:50 ID:wfQxubeLT

ちょっと鳴き声が特徴的だからって事ある毎に擦られるリッキーに悲しき過去…

 

 

54:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 1:27:10 ID:C7QOBDHhZ

これ以上は危険や スレの流れを戻すぞ

 

 

55:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 1:37:34 ID:wbes5TOQp

>>44

ハルノちゃんのソロ曲のTHE FIRST TAKEが投稿されたと思ったら何故か舩坂さんが歌ってた事件ほんと芝

お前が歌うのかよ

 

 

56:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 1:48:15 ID:2nTQOiBQq

Way to the dawnすき

ryofuが作詞作曲って聞いた時はん?ってなったけどそりゃあの声なら合いますよね…令和も█年になってsupershellの新曲が聞けるとは(違う)

 

 

57:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 2:27:10 ID:khvVQbJM0

基本的に良識ある好青年なのにバラエティ方面への行動力が高すぎる

 

58:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 2:52:47 ID:lqvuggLCq

どうしてハルノエクリプスファンスレすぐ舩坂Tに話題すべりしてしまうん?

 

 

59:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 3:13:34 ID:mea05YEze

肝心要のえっちゃん様の私生活が謎すぎるので…

その反動なのか知らんけど舩坂Tがおもしれー男すぎるので…

 

 

60:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 3:34:53 ID:+3yQj29K9

もしかしてハルノエクリプスは忍者なんじゃないスか?

 

 

61:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 4:00:45 ID:+GJeyCufK

アイエエエエエニンジャ!?ニンジャナンデ!?

 

 

62:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 4:26:03 ID:P6Naz4aSU

ガチで無名の寒門出身(推定)なのに異常に強いのってそういう…

 

 

63:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 4:50:33 ID:EbZ85VpHd

隠されしニンジャ真実に直面したスレ民はしめやかに失禁

 

 

64:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 5:15:28 ID:CFVvdqI9d

そういえばもうすぐ日本ダービーやけどどないする?

 

 

65:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 5:39:40 ID:626wv/87y

>>65

まぁ勝つやろ

 

 

66:通りすがりの競バ好き 20██/4/██ 6:01:46 ID:F7MBCNynt

なんだかんだ言われつつ今回もえっちゃん様が勝つに花京院の魂を賭ける

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 GⅠ・東京優駿───日本ダービー。

 

 開催地、東京レース場。芝2400メートル、左回り。クラシック級。

 本日の天気は快晴。午前中に開催された数度のレースで多少荒れてはいるものの、可能な限りの整備が施されバ場状態は良好。

 

 選ばれし18名の優駿が、生涯に一度のみ挑戦を許される『ウマ娘の祭典』。

 その歴史は古く、トゥインクル・シリーズが現在の形態に整備される以前から、既に国内最高峰の競技レースとして地位を確立していたほどだ。

 物の界隈には『最も運の良いウマ娘が勝つ』という言い回しがあるが、これはかつてフルゲート30人立てで開催されていた───すなわち、レースが横一列からのスタートとなる以上、大回りを強制されない内枠を引き当てることが必須だった時代の名残である。

 

 無論、幾度のルール整備を経た現代ではそうではない。

 勝利の絶対条件たる速度(スピード)も、長い直線が配された2400mのコースを走り切る体力(スタミナ)も、予測不能のレース展開を切り抜ける膂力(パワー)も、あらゆる意味で均整(バランス)の取れた高水準の能力が要求される。

 

 故に、『ダービーウマ娘のトレーナーになるのは、一国の宰相になるのよりも難しい』と評されるのだが─────。

 

 

 

 ───果たして、幾年ぶりであっただろうか。

 これほどまでに勝利を望まれ、そして()()を望まれたウマ娘の登場は。

 

 出走直前の緊張に沸き始めた会場の熱気が、しかしファンファーレを待たずして爆発する。

 万雷の喝采と、それに等量の()()()()()()()を一身に浴びて、我こそが天地星辰に祝福されし覇王とばかりに歩みを進める影がひとつ。

 

〈さぁ!! 大本命の登場です───1番人気、ハルノエクリプス!!〉

 

 四天王筆頭と呼ばれたのももはや過去のこと、今や世代最強の称号を欲しいままとする絶対者は、この日もまたいつもの無表情でターフに姿を現した。

 なお本人的には別に偉そうにふんぞり返っているつもりは一切無く、大衆の反応には内心『いい加減慣れたけどやっぱりうるさいなぁ』くらいの感想しか持っていない。

 

〈シップ……『世界の敵』って、こういう解釈でいいんですか?〉

 

「まぁな。ていうか舩坂金時(トレーナー)モードの時に話しかけんじゃねぇ」

 

 関係者控え室でその様子を見ていた舩坂トレーナー(ゴールドシップ)はひっそりと呟いた。

 これまでGⅠ含む多くのレースを制してきたハルノエクリプス陣営。最強の不正(チート)ユニットたる彼女(『世界の敵』)が走る以上、どんな戦いも勝って当然───と確信している舩坂だが、その実、本当に()()()()()戦いなど一度たりとも無かった。

 舩坂にはハルノエクリプスとの接触以前に詰め込んだ最新のウマ娘育成理論があるが、それは所詮()()()()()の知識だ。自身のウマ娘(ゴールドシップ)としての経験を含めても、これまで彼女の育成方針と目標レースの展開・作戦を読み違えなかったのは奇跡としか言いようがない。

 

レウスちゃん(ザグレウス)ファルくん(スカイファルシオン)はどう見ても既定路線だったけど、まさかシュガーのお嬢(シュガールギンメ)までオークス蹴ってこっちに来るとはなぁ。スカーレット(ダイワスカーレット)とウオッカが聞いたら何て言うかな。ブリッジコンプやトモエナゲも調子良さそうだし……ああなった相手は怖いぞ~」

 

〈えっちゃん、負けちゃう?〉

 

「勝つさ。呪術廻戦ね。やかましいわ。2回目だぞ呪術のネタは」

 

 まして、国内最高権威たる日本ダービーである。

 さすがの(彼女)も緊張を禁じ得なかった───舩坂の姿のままで、エデソと雑談に興じたくなるくらいには。

 

「……けど。やっぱり、一番怖いのは─────」

 

 1ヶ月前、長く一緒に居ながら初めて見た、担当ウマ娘の壮絶な笑みを思い出す。

 きっかり3歩、半バ身差。この1年間、トレーニング中の模擬レースですら不可侵であった、ハルノエクリプスの絶対領域。

 その牙城を崩した唯一の対戦相手───『もう一人の白』が、今日もまた流星の前に立ちはだかろうとしていた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「……あァ?」

 

「ん?」

 

「チッ……! ヤロウ、客に向かってなンだその再現性の無ェバグは……!」

 

「これから一生聞く機会のなさそうな日本語だ……どうしたのシャカール」

 

「どうしたもこうしたもねェよ……。ここ何日か前から、例の『三女神AI』の調子が悪いっつー話あンだろ。製造元のサトノグループも『原因調査中です』の一点張りで埒が明かないってんで、クラスの連中に様子見てくれって頼まれたんだよ。企業製の完成品をバラすのは気が引けるが、興味が無いっつったら嘘になると思って覗いてみたらコレだ」

 

「あはは、全然わかんない。まぁでも……ふ~ん……。確かに、なんかいつもより表情が硬いような……?」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 桜色の長髪。鏡面めいた魚目。生まれてから一度も日の光を浴びたことが無いかのような、真白い肌。

 これほどまでに特徴的な外見をしておいて、けれどレース中の──ラストスパート直前までの──ハルノエクリプスは、一種異様なまでに()()()()()

 

〈速い……! 速すぎる! シュガールギンメ未だ先頭! しかし誰一人として遅れていません!〉

 

 呼吸を浅く、最低限の動作で、衣擦れの音すら殺し、他者の視線を避け、闇へと滑り込むような走り。

 もちろん、物理的に実体を消失させているわけじゃない。観客席から見渡せば一目瞭然だが、しかし、同じレースに参加しているウマ娘たちは違う。

 全力疾走中の負荷に軋む心肺。酸素供給の滞った脳は過熱し、狭まった視界でハルノエクリプスを捉えることは困難だ。

 最も恐れるべきは、()()()()()()()()()()()()()使()()()、自前の体捌きのみでそれを実現する鋼鉄にして氷の理性─────。

 

〈このペースでスタミナは保つのか!? 中団、シャドウストーカーが一抜けた! トモエナゲが続く! まったく緩まない……いや、緩んでいてなお速い! 後方からブリッジコンプ! ハルノエクリプスまだ仕掛けない? ザグレウスじわじわ上がってきた!〉

 

 知っている。

 そんなこと、この日本ダービーに参加しているウマ娘なら、全員が承知している。

 

 ある意味で、それはハルノ以外の全員にとっての共通認識だった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()───故に、彼女と舩坂トレーナーの予測を覆す走りに至らなければならないと。

 

 いつも通りの、いや、いつも以上の大逃げを打ったシュガー。

 スタートダッシュは完璧だった。2番手で飛び出した子さえも大きく引き剥がし、8バ身近くリードを稼いだ上で、今は終盤に備えて足を溜めている。

 過去に逃げでダービーを獲ったウマ娘も、同じような作戦を採っていることが多かった。単純明快ゆえに穴が無く、けれど実行は極めて難しい作戦だ。スタミナは中盤の小休止で誤魔化せるにせよ、前にも後ろにもペースの基準になる他のウマ娘が居ないから、序盤に突き放したリードをキープするための正確な距離感覚が必要になる。

 トレーナー(桐生院トレーナー)はシュガーの性格上、それに体格(フレーム)の絶対値からして、クラシック級5月の時点で到達できる高みじゃないと予想していたけど……。

 

「……ハルノめ」

 

 彼女の存在が、火を点けたのだろうか。

 

 あの子はどうも、この世界本来の歴史に存在する"生きもの"ではないらしい。

 遥か外宇宙の果ての果て、誰も見たことのない星々の彼方からやってきた来訪者(ヴィジター)

 

 当たり前のことだけれど、彼女が居なければあのホープフルステークスや皐月賞の結果は変わっていた。

 ホープフルでは順当に、ミニキャクタスが勝っていただろうし……。

 正直、皐月の時の私だって、ハルノを意識していなかったら、レウスとファルの競り合いに切り込んでいけたとは思えない。

 

 ─────『世界の敵』。

 異次元より現れた、歓迎されざる客人(まろうど)

 

 私が知る限り、本当に良いトレーナーは、担当ウマ娘に絶対に無茶をさせない。

 シュガーがあの領域へ至るには、少なくともクラシック級の内にあの戦い方をモノにするには、尋常ではない量と密度のトレーニングが必要だったはずだ。

 トレーナーが言うところの『体格(フレーム)の絶対値』。シュガールギンメ陣営は、ハルノエクリプスを倒すために、その限界を超える決意をしたんだ。

 

 皮肉にも程がある───だって、ハルノが居なかったら、シュガーは()()()()()()()()()を最大まで実現できなかったかも知れないのだから。

 

「ハハ、これは遠いな……!」

 

 後方で何やら苦笑しているレウス……は、まぁ、ハルノが居なくてもあんまり変わらなかったような気もするが。

 ただ、友達だから知っている。気さくでとぼけた素の性格を、キザな仮面で覆い隠した普通の女の子───そのはずなのに、ターフの上でのザグレウスは、どうしても抗いがたいプレッシャーを纏っている。

 冒険者めいた自由で伸びやかな足運びと、周囲を巻き込む強烈な圧力が矛盾なく同居したその走りは、まさに王道を踏破する聖騎士の道行きそのものだ。

 ()()()()()には、()()()()()()()が必要だと相場が決まっている。

 

「ふ、ふ、ふ。───あは……!」

 

 スカイファルシオン。たぶん、ハルノを除けば同期で一番の天才。

 トレーナーの見立てでは、あの常識を超えた異常なまでの加速力は、いわゆる『ズブい』が故の反動───()()()()()()()()()らしい。

 スタミナも瞬発力もある。何でも小器用で物事を覚えるのが早い。総合力で言えばハルノさえ上回る万能の天才が、それでも追込戦法にこだわる……()()()()()()()()()()()()()()ことに執着していたのは……。

 

〈さぁ第3コーナーを廻って大ケヤキは目前! ここで仕掛けたのは……クラースナヤ! クラースナヤ、そしてスカイファルシオンだ!〉

 

 だが、今は違う。

 遠慮することなく本気を出しても、追いつき並んでくる好敵手が現れた。きっとハルノと一緒なら、全力を……全力のさらに先に行ける、と。

 羨ましくなるほどの信頼関係だ。

 

「───あぁ」

 

 楽しい。

 

 楽しいよ、トレーナー。

 出会いがどんな形だったとしても構わない。たとえ三女神様の導きによる偽りの因果だったとして、それが何だというのか。

 私をここまで連れてきてくれて、ありがとう。あの子たちと戦える私にしてくれて、本当にありがとう。

 

()()

 

 風よりも音よりも、光より速い魂のスピードで、空間を貫く声が聞こえた。

 ずっと警戒していた足音が変わる。重量が存在しないかのように軽やかで静かなステップから───重力ごと地面を踏み砕くかの如く力強い前進へ。

 

 遥か先を行くシュガーの背中が、小さい点としてようやく視認できた瞬間。

 王配めいて周囲の走者たちを従えるレウスが、一歩抜きん出るために加速した瞬間。

 第4コーナーを抜けた最終直線、高低差2mの『だんだら坂』を前にしたファルが大きく息を吸った瞬間。

 

〈───来たッ!! 来たぞハルノエクリプス!! ブリッジコンプ、ザグレウス、ソプラノリズムを一息に抜き去って前へ! 背を追うトモエナゲ、間に合うか!? シュガールギンメとスカイファルシオンはなおもリードしている! 差し切れるのか!!〉

 

 これだ。

 予測していても対応できない。わかっていても回避できない。

 だって、()()()()()()()()()()()()()()───ハルノエクリプスは、絶対に間違えない。

 

「そう来ると、思った」

 

 私にはシュガーのような驚異的なタフネスは無い。ファルほどの最高速度(トップスピード)も出せない。

 レウスみたいに他人を動かす才能も無いし、レース全体を俯瞰するハルノの視界なんて、どうすれば真似できるかの想像すらつかない。

 

〈誰が! 誰が勝つ! 『雷光』か!? 『絶剣』か! 『紅炎』か! それともやはり『流星』か!! それとも───〉

 

 私も、()()()()()()()()()いた。

 経緯としては多少不本意だが、誰よりも近くで、ずっとハルノを見てきた。

 

 だから───ここで、踏み出せる。

 この場で最も勝利に近いウマ娘(ハルノエクリプス)よりも、ただ1秒だけ速く。

 

〈───ハッピーミーク!! ほぼ同時に飛び出した! 抜きつ抜かれつ、しかしハルノエクリプス振り切れない! ハルノエクリプスが振り切れません! ザグレウス、トモエナゲ! 各騎、だんだら坂を制して勝負の残り300m! テトラビブロスも上がってきた!〉

 

 そして発現する、過集中の領域(ゾーン)状態。

 黒雲から吐き出される稲妻。立ちはだかるものすべてを焼き尽くす業火。抜けば玉散る氷の刃。他にも峻厳な渓谷(フィヨルド)や金色の光で満たされた舞台(ステージ)など、多種多様な幻視が互いを喰らい合って鬩ぎ合う。

 

 ……()()だ。

 極限の集中状態にあるウマ娘が経験する、一種の変性意識体験。『領域(ゾーン)』『権能(スキル)』などと呼ばれるそれは、しかし()()()()()()()()()()『各ウマ娘に固有の現象』である。

 コントロールは極めて難しく、意識的な発現には単なる技術以上の習慣づけ(ルーティン)───平たく言えば『発動条件』が不可欠だ。

 

「……有象無象が」

 

 翻って。

 ハルノの領域は、『周囲の誰かが領域に入ること』を条件に発動する。

 言わば()()()()()()()()、他者の力を奪い取る捕食者(プレデター)の領域。恐らく、私たちに発現するものとは根本的に基本構造(つくり)が違う。『世界の敵』としての本来の能力を、ウマ娘という枠にはめて制御しているのだろう。

 私たち(地球の生物)と、対等に競うために。

 

 ターフの上に展開された、数多の魂の原風景。

 それらをすべて、一際強大な気配───昏い宇宙の冷たい闇黒、深淵なる星々の光彩が呑み込み、制圧し始める。

 

「させる、か……!!」

 

 止められるのは、私だけだ。

 三女神様の加護を稼働させる。ほとんど底を尽きかけていた体力が急速に戻り、脚が軽くなっていく感覚がある。

 頭の中が何もかも透明になったような高揚と全能感。思わず口の端が吊り上がった。

 かつてはあれほど遠かったハルノエクリプスの背中が、今、手を伸ばせば届く距離にある。

 

 私は─────。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

〈討て〉

 

 そして、少女は大いなる叫びを聞いた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ……ほとんど地面を削り取るような勢いで、減速をかけた。

 

〈勝ったのは……〉

 

 燃えるような熱を持った脚と心臓と頭も。

 ゴールラインを超えて揃い踏みする戦友たちも。

 東京レース場を満たす洪水じみた拍手喝采も。

 皐月の時の比ではなく、何もかもが遠く、薄ぼんやりとして。

 

〈─────ハルノエクリプス───!! 『白の勇者』を()()()で退け、無敗の二冠!! これが! これが世代最強の底力だ───ッ!!〉

 

 勝てない勝負じゃなかった。ゴール直前、私には()()一歩を踏み出す力が残っていた。

 生涯に一度の大舞台で、負けて悔しいという感情すら置き去りに。

 

「……はっ。はっ……は、は……」

 

 桜色の髪の彼女が近づいてくる。

 私はハルノが息を切らしているところを、ほとんど見たことが無かった。

 

「は……はっ……は、ふっ……。───ミーク」

 

 その時、目の前のあの子は、どんな顔をしていただろうか。

 

 

 

 あの瞬間、私は一体……()()()()()()()()()()()─────。

 

























そのへんの子供「あ、『初代勇者様』だー」

アグネスデジタル「Huh?」
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