令和ちゃん、もう少し季節のグラデーションってものに気を遣ってくれない?
もう6年目だよ? 気温とかさぁ……、ねぇ……?
12月後半───GⅠ・有馬記念。
URA主催のファン投票によって選ばれたフルゲート16人、トゥインクル・シリーズの最前線で競うウマ娘たちが一堂に会する夢のグランプリ。
開催地である中山レース場一円には幾多の競バファンが詰めかけ、前日から大いに盛り上がりを見せていた。
〈明日の都内は本シーズン3度目の雪の予報となっています。車での移動には注意が必要な他、一部地域では積雪も───〉
天の星の巡り。
地の土と水と種の巡り。
そして、人の命と魂の巡り。
「では行ってきます。マーベラスさん、ネイチャさん」
「おう、頑張って行ってきなー。くれぐれもアタシに気遣ったりしないでいいからね?」
「ふふっ、それはちょっとイジワルだよネイチャ〜。けど、えっちゃんならきっと1着だって夢じゃないよ★ いつも通り楽しんできて☆」
始祖の三女神は、かつて実在したウマ娘の祖霊が、人々の祀りによって昇華された神性である。
故に、その存在は血脈という形で今も保存され続けており、神代の息吹遠ざかりし現在においてなお強大な力を持つ。
「おはよう、えっちゃん。結構早いね、まだ休んでなくていいの?」
「はい。この2年間、不測の事態が無ければ必ず午前5時に起床しています。30秒たりとも遅れたことはありません」
「素晴らしい心がけかと。我々も見習いたいものです」
関東全域の龍脈を掌握し、必要十分量の霊力を得ていながらも、さらに1ヶ月の雌伏に甘んじた。
天地星辰が揃う時、世の人々がウマ娘たちに思い馳せる時。すなわちは女神への信仰が最も高まる瞬間を待った。
「知り合いや『スピカ』の身内が居ない有馬も久々だな〜。まぁ、最近が調子良すぎたってことかも知れないけどね。みんなは今年、推しの子とか居るの?」
「世間の1番人気はパラドサタナエルよね。やっぱり何だかんだ言っても、一番強い子が順当に勝つんじゃないかしら」
「おいおい、だったらそこはハルノエクリプスだろ? 何てったって無敗の三冠ウマ娘だぜ! あのハンパねぇ末脚、まさに鬼気迫るって感じでさぁ。スペ先輩やテイオーみたいだよなっ」
「末脚と言えば、キュウビヌバタマさんとスカイファルシオンさんの新旧追込対決でもありますよね。あたしは、個人的にはキュウビさん派かな? 走り方こそ違いますけど、髪とか服装とか親近感湧くんですよねぇ」
「こっちは逃げだけれど、ステラドラコーさんとシュガールギンメさんもそうね。異次元を継ぐ者対決だなんて……ふふ。ちょっと気恥ずかしいわ」
「私は、うーん……あ! そういえばこの間、階段で転びそうになったところをザグレウスさんに助けてもらいましたよ。カッコいいですよね、ファンクラブが出来るのも納得というかっ」
「あははっ、たまには見るだけの立場も良いね。こうしてアレコレ気楽に予想したりなんか出来るし。マックイーンは?」
「さて、何と言ったものかしら。ドーベルやブライトと仲良くしていただいておりますし、ここはひとつ、ハルノさんを推しておくべきでしょうか?」
「え! 嘘でしょマックイーン、知り合い居たんじゃーん! 今度ボクにも紹介してよー!」
「おうお前らぁ、聞いて驚け? 今まで黙ってたけどな……実はこのゴルシ様もな〜、件のえっちゃん様とマブなんだぜ〜!」
「嘘つくんじゃねぇ。笑えるくらい性格真反対じゃねーか」
「そもそもどこで知り合ったのよ。アンタ適当なことばっか言ってると信用無くすわよ」
「ンだよチクショー!! くっそぉ、見てろ!? 今からダッシュで
すべては、悪しき『世界の敵』を討ち滅ぼすため。
「やっほーえっちゃん! ついに念願の有馬だねぇ、あたしはもちろんえっちゃんに投票したからね! 応援も絶対行くしっ、賑やかしは任せろーばりばり!」
「はい。ありがとうございます」
「相変わらずクールだ……。うん、私も応援してる。コンちゃん委員長と一緒に、うちのクラスがトゥインクル・シリーズ最強だって見せつけて来てよ」
すべては、あるべき平和を取り戻すため。
「わたしが───みんなを、守らなきゃ」
止めなければ。
◇ ◆ ◇ ◆
この日までに、やれるだけのことはやった。
待つだけは嫌になったから、答えらしいものも出した。
……もう一人の女神様とか、『世界の敵』とか、勇者とか。
改めて考えてみて─────そういうの、全部余計だ。
〈 そ か 〉
私は、勝ちたい。
あの子に勝ちたい。
あの子と一緒に、走りたい。
「いってきます」
誰も居ない寮の個室に向かって、出発の挨拶。大事なレースの前はいつもこう。
当たり前だが返事は無い。入学当初は多少ホームシックにも陥ったけれど、虚空に見送られるのもずいぶん慣れた。
〈 い て ら し 〉
ふと声が聞こえたような気がして。
私は、それを振り切って真っ直ぐに歩き出した。
◇ ◆ ◇ ◆
その日───府中市を覆っていた不可視の結界、この世ならざる魑魅魍魎の侵攻を阻む壁が破られた。
百鬼夜行を率いるは、白銀の
「開門」
その一声と共に、此岸と彼岸の
今日までに府中の結界を破ることは能わず、『敵』の所在も不明瞭なままだった。
故に芦毛の女神が取った戦略は、異界法則の敷衍───特殊な
すなわちは、内部を危険な怪異で満たされた、
「───……、……。ごめんなさい」
少なからず、巻き込まれるウマ娘にも犠牲は出るやも知れぬ。
芦毛の女神は召喚した怪異をほぼ完璧に使役できるが、それは自らの認知し得る範囲でのこと。生まれながらの神でない彼女には、東京都府中市から千葉県船橋市、中山レース場までの全領域をカバーできるだけの知覚能力が備わっていない。
それでも、やるしかないのだ。
「悪しき魂よ、散り候え」
『世界の敵』がどれほどの力を持っていようと関係ない。どこに逃げ隠れしても意味が無い。
攻撃の対象とした地上全土を、怪異の濁流で押し潰す───ウマ娘である限り回避不能、防御不能の大殺界が顕現する。
◇ ◆ ◇ ◆
「───とか、浅ぇこと思ってんだろうなァ」
「やー、思い切りましたねぇゴルっさん。けどビンゴです、
「よぅしお前ら、第一種戦闘配置ィ!! 衝撃に備えろオラァ!」
「『ハチャクエ』メインサーバーへのバックドア、開通完了……なァ、これマジでやンの? 後で色々とヤバいことになんねェか?」
「先に喧嘩売ってきたんは向こうっちゅう話やろ。なに遠慮することがあんねん、思いっ切りかましたろうや! な、オグリ?」
「うん。理由がどうあれ、頑張っている子を傷つけようとするのはよくない。少し怖くはあるが……私の力が役に立つなら、共に戦おう」
「あーあ、もっと強い魔法が使えたらあたしも街を守れるのに。ただの案内係なんてつまんないわ」
「ふふっ。でもスイープさん、それって一番大事な役目だよ? こっちのことは任せてね。きっとみんなで守ってみせるから」
「私はゴルシ君が前線に出るのは反対だがねぇ。いくら最高戦力だからって、総司令官が矢面に立つのは愚策じゃないかい?」
「そのために私たちが居るんでしょう。……ミークさんに託されたこの使命、必ず果たさなければ」
「各々方、統率を欠かないように。間もなく接敵です。隊長、指示を」
「おう。さぁお前ら、全力で正義の味方を遂行するぜ───作戦、開始!!」
◇ ◆ ◇ ◆
久しく無かった感覚を覚え、ハルノエクリプスは弾かれたように顔を上げた。
同時に、『よりによって今日なのか』という苛立ちも。
「……敵性反応。7、12、30、54……まだ増えるか」
あの日と同じ、百鬼夜行。
担当契約トレーナーにして『マーベラス同盟』の協力者でもある舩坂金時は、出来る限りの対応策は取ると言っていた。嘘ではないだろう。現にあれから1年近く、箸にも棒にもかからない小粒の怪異を除き、脅威らしい脅威に遭遇したことは無い。
ただ、それにもきっと限度があったのだ。何らかの閾値を超えて、トレセン学園の日常を守るためのヴェールが破られた。
「想定の範囲内、です」
───問題は無い。何一つ。
結局、記憶の復元についてはほとんど進展が無いままだが、肉体の最大性能とそれを操るスキルは大きく高められた。とてもではないが独学では辿り着けなかった境地だろう。
潜伏生活のために課した制限を取り払えば、50m級の宇宙怪獣にだって負ける気はしない。
意識を集中し、戦闘用形態へと変身しようとして─────。
ピロン。
スマートフォンに着信があった。LANEのメッセージ通知───しかし、不可解だ。
このようなメタ・フィールド内では、既存の通信機器は無効化されるはずなのだから。
「……?」
警戒しながら端末を手に取る。
画面のロックを解除し、表示されたメッセージ欄には───担当の舩坂から、ただ一言。
〈君は行け。私を信じろ〉
◇ ◆ ◇ ◆
【pippi564】く、クリスマスなんて…ッ!乙女は黙ってゲームしろッ!〜20██〜【ゲーム実況配信】
みなさま〜(天下無双)、おはこんばんにゃちは!!
日本トレーニングセンター学園東京中央校所属、チーム『スピカ』も所属のぉ〜、ゴールドシップのトレーナーつまりトレピッピことpippi564ですぅ〜!
いや〜……、……クリスマス・イヴ。ですねぇ世間は。
この配信をご覧になっている皆様も、楽しんでますか? まぁこれ見てる時点でこう、その、事情は各々察せられる感じですけども……それはさておき。
毎年恒例、トレピッピの極楽地獄クリスマスゲーム実況配信にようこそ! パートナーや家族と団欒の予定があるあなたも、そうでないあなたも、ピッピは愛すべき全人類を歓迎しますよ〜!
さて、今回プレイするタイトルはこちら───『ウマ娘ウイニングダービー 激闘!!ハチャメチャ大冒険』です!
最初はプレステとかで配信してる『ウマ娘ウイニングダービー Re:Boost』のミニゲームとして世に出た往年のRPGパロディなんですが、紆余曲折あってスマホでもゲーム機でもVRでも遊べるオープンワールド・MMORPGとして再出発した……いやこの説明いる? 散々流行ってるし四六時中CM打ってるのに。
まぁ、ともかくいつものポチポチ配信ですわ! これだけあれば勝ちですわ! ですわですわ〜! ……マックイーンちゃんごめんなさい。
それでですねぇ、クリスマスイヴの朝っぱらからこんなアラサーオタク女の配信に群がってる寂しい連中(断定系)のぽまいらはご存知かと思いますが……、『ハチャクエ』のね。運営がね。やってくれましてね。
そう!! 今回は昨日の公式生放送で唐突に発表され、そのまま日付が変わった午前0時からスタートした狂気の
つっても2日間限定なんで、そんな大したギミックがあるイベントではないですね。
まずは限定マップにポップする鹿の子……もとい『トナカイ娘』を倒して、ポケモンよろしく仲間に加えます。
すると同じエリアにレイドボス『ブラックサンタ』が登場するので、こいつをプレイヤーみんなでボコり倒して報酬をたんまりいただくって寸法でさぁ!
……これ、今日の午後までに一段落つくかなぁ?
いや、今日フツーに有馬じゃないですか。……有馬なんですよ……そうだよ有馬記念だよ!
今年は残念ながら『スピカ』から出てる子は居ませんけど、それはそれとしてね! 年の瀬の大一番、我らが夢のグランプリでしょうが!
開催時刻になったらさすがに中断してそっちの実況配信に移ろうと思いますが、うん! もとい、有馬記念が始まるまでに! ブラックサンタブッ殺してみんなで中山行こうぜ!
始めるぞ役立たずども!! 愉快な遠足の始まりだ───ッ!!
◇ ◆ ◇ ◆
舩坂から送られてきた『君は行け』というメッセージの意味を、ハルノエクリプスはすぐに知ることとなった。
〈おい! あのトナカイ娘、ゲージ供給持ちだぞ!〉
〈マジかよ人権じゃねーか!! 絶対ゲットしねぇと!〉
異界化した街のあちこちで、既に怪異との戦闘が始まっている。
怪異と戦う勢力の出で立ちは千差万別だったが、概ね『光る人型』をしているように見えた。無尽蔵に湧き出る怪異に倒されることもあるが、すぐに再出現して果敢に突撃していく。まったく死を恐れていない。
「相似した2つのものは呪術的に同一である、ってな。『
〈アッハッハッハッハッハ!! シップと来たら本当にウマ遣いもとい槍遣いが悪い、さすがの私も過労気味ですが致し方無し! エデソちゃん、本気出しちゃいますよ〜!!〉
先頭に立つのは、短槍と剣で武装した長身のウマ娘。
その身を包む強大な
「これは───」
「あっ。見つけた! あなたがハルノエクリプスね?」
声の方を見やる。小柄で、少々気の強そうな印象のウマ娘。
服装は中央トレセンの制服だが、奇妙な三角帽子を被っている。
「そうですが……、あなたは?」
「ふふん。あたしはスイープトウショウ、人呼んで魔法少女スイーピーよ!!」
スイープトウショウと名乗ったウマ娘───『魔法少女スイーピー』は、さぁ一緒に来て、とハルノエクリプスの手を取った。
さしものハルノエクリプスも事態を飲み込めず呆然としていたところ、共に駆け出したスイープトウショウは言う。
「いい? あたしたちはこれから、怪物たちの追撃を振り切って中山レース場に向かう。ここは異次元だからもちろん電車とかタクシーは使えない、でも代わりに、
「……察するに、量子マグネタイト力場を利用した空間圧縮転送ですか? この惑星の技術水準で実用化していたとは、寡聞にして存じませんが……」
「りょう……何? ごめんなさい、東洋呪術についてはまだまだ不勉強なの。けど安心して、何度か実験して安全なのはわかってる。中山にまで着いちゃえばこっちのもの、
向かい風を受ける三角帽子をぎゅっと被り直し、スイープトウショウは朗らかに笑った。
「ほらっ。この程度、GⅠウマ娘ならウォームアップにもならないでしょ? 急ぐわよ!」
小さな手に導かれるまま、ハルノエクリプスは破局的異次元空間と化した東京を走る。
アパレルショップの姿見に飛び込むと、見知らぬ図書館のグラスウォールに繋がっていた。水溜まりに落ちれば、駅前の大型液晶から転がり出た。
〈あら? 誰かと思えば───いえ、今は『
〈はい? ちょっと、いきなり現れて何なんです。あなたみたいな不躾なプレイヤーに物言いをつけられる謂れは、───ジェンティルドンナアアァァァ!!〉
〈待って待って待って姉さん!! 純魔ビルドの姉さんがソロで突っ込んで勝てるわけないから! そもそもイベント用NPC連れずにレイドボス殴ってるその人がおかしいだけだから!〉
〈あっはは!! 大丈夫だよ
〈堕落せし聖者よ、退け! 俺とて何度となくアナタから希望を授かった身、恩人と相争うのは忍びない。だがもし、アナタが尚も厄災を振り撒くのを止めぬと言うのなら───ワタシの雷皇魔銃・オメガケラヴノスが、骨すら残さず貴様を灼き尽くす!!〉
〈か、か、か、かっ……こいいぃ……! 私たちも負けてられないわねっ、行くわよライトオ! 輝け我が聖剣───絶世嵐刃・オラージュデュランダル!!〉
〈フン、言われるまでもない。イベント開始に出遅れたのはとてもとてもとても痛手だったが、10時間の遅刻など20時間分の働きで返上すればいいだけのこと。私なら20時間分の戦果なぞ5分……いや、3分あれば余裕で獲得可能! すなわちは最速最短で500時間戦い抜いてみせるッ!!〉
〈
〈にゃはははははは!! よいよい、一番槍こそ武士の誉れ!
〈ふっ。クリスマスの日曜ともなればと思ったが、存外賑やかだな。『W』、新調した装備はどうだ?〉
〈うんっ、ハヤヒ……『B』! これならどんなボスにも負ける気しないよ〜! 『N』も素材集め手伝ってくれてありがとう!〉
〈別に、ゴールデンラビットのマラソンやった時に比べれば大した苦労じゃなかったし。じゃあ始めるよ───ゼルムローグの針よ、混沌を断て〉
〈こういうのって男の子の趣味だと思ってたけど、やってみたら意外に楽しいね。危なくなったら
〈その呼び方やめろ。無駄口叩いてないで行くぞ、姉貴たちのクランはもっと先に居るんだ〉
〈アイコピー☆ 今回こそイベントMVPゲット、だねっ。勝利目指して、テイクオーフ!〉
〈『ムーンナイト』、鎧重くないの? アタシ持つの手伝おうか、その変な槍〉
〈『レディシービー』、心配は無用だ。あの子の手引きのおかげで要諦は掴めている。古の英雄英傑の如くとはいくまいが、皇帝の名に恥じぬ戦いを約束しよう。援護を頼むぞ、『プリンスイヤー』〉
〈───Roger that。任せてくれ、狙撃には自信がある〉
〈ファンのみんなー!! ゲームの中までファル子に会いに来てくれてありがとーっ☆ 今日はたくさん歌って踊って応援するから、みんな一緒に頑張ろうねー!!〉
アイドル風の衣装を着たウマ娘が呼びかけると、四方八方から響く巨大な
人智を超えた暴威をもたらす異界の軍勢が───しかし、ハルノエクリプスに近づくことすら儘ならない。
「一体、何がどうなって……」
「詳しいことは後! 前だけ見て走る!」
無人の幹線道路。現実では存在するはずの道が崩落している。だが、不意に身体の軽くなる感覚があった。二人揃って跳躍───重力が正常に働いていない。対岸へは容易く辿り着けた。
建物、電柱、標識が奇妙に折れ曲がり、灰色の荒地と化して行く手を阻む。スイープトウショウが袖口から取り出した
「もうすぐよっ」
小さな魔女の言葉通り。看板の文字は歪んで読めなくなっていたが、ついさっき通り過ぎたバス停は、間違いなく中山レース場の最寄りのものだった。
「ここまで来ればもう平気。あと少しで現実世界への浮上が始まるはず」
「……ありがとう、ございます」
「んっ。魔法少女スイーピーがここまでしてあげたんだもの、不甲斐ない走りしてたら承知しないからね。頑張んなさい」
周囲の景色の
そのまま、踵を返して走り去ろうとして───ハルノエクリプスは、ふと振り返った。
「あなたはどうやって、この亜空間から脱出を?」
問いかけに、スイープトウショウは振り返らなかった。
「心配要らない。誰かのために杖を振るう時、魔法使いは最強だもの」
視界が真っ白に空転する。
◇ ◆ ◇ ◆
─────色。
風。匂い。気温。人の声。街の風景。
すべてが戻ってくる。戻ってきた。
異界ならざる、現実世界。
年末の一大イベントの開催を待ち望む人々の喧騒は、ハルノエクリプスが虚空から吐き出された──ように見えたはずだ──ことなどまるで気に留まらない様子だった。
「よかった。間に合ったんだな」
そして、示し合わせたかのように現れる者が一人。
青銀の総髪を揺らす長身の男、ハルノエクリプスのトレーナーこと舩坂金時である。
「……、はい」
「怪我は無いか? 出来るだけの配慮はさせてもらったつもりなんだが」
「はい。駆体の損耗率、許容範囲内です。この後の出走にも影響ありません」
「ハハハ、さすがにタフだなぁ。君みたいな担当を持てて幸せだよ……。っと、そろそろ行こうか」
舩坂が回してきた自家用車に乗り、街を抜けて中山レース場へ。
受付にも労すること無く、すぐに現地入りは叶った。まるで先刻の出来事が夢か幻であったかのように。
「よし、それじゃあ最後の確認だ。中山の走り方はこれまで散々叩き込まれた通り、君なら一から十まで頭に入ってると思う。であるからして、今回の出走ウマ娘の中で特に警戒すべきは───」
中央に赴任して最初の担当ウマ娘を無敗三冠の栄誉に導いた正真正銘の天才トレーナー・舩坂の手引きはいつも的確だ。
「……作戦は以上だ。何か質問は?」
「はい」
だから─────。
「───
鏡色の瞳の少女は、鋼のように冷徹な声で言った。
○
STR:99/VIT:60/AGI:21/INT:40/LUC:30
強力な格闘スキルを得意とする
自己
◯
STR:30/VIT:25/AGI:40/INT:80/LUC:5
長女として妹たちを支えるため、遠距離攻撃と後方支援に特化した純魔法職ビルド。
……のはずだが、追い詰められると杖を放り投げて特攻しがち。
◯グランヴァーシュ ウォリアー/マーセナリー
STR:36/VIT:60/AGI:30/INT:24/LUC:30
あらゆる武器の扱いを得意とする
本人としては前線で華々しく近接武器を振るいたいのだが、姉と妹を投擲系スキルで援護している時が一番強い。
◯ドバイマスターV ダンサー/サモナー
STR:9/VIT:30/AGI:46/INT:32/LUC:63
特定のモンスターを
ダンスによる
◯
STR:32/VIT:20/AGI:50/INT:70/LUC48
メインウェポン『雷皇魔銃・オメガケラヴノス』は『ハチャクエ』屈指の大火力装備であり、調子に乗って連射するとまず間違いなく味方を巻き込むという素敵な特徴を持つ。
◯
STR:40/VIT:50/AGI:8/INT:22/LUC:30
典型的な重装タンクで、味方を守り共に攻める戦法に特化している。メインウェポンは『絶世嵐刃・オラージュデュランダル』。
メインジョブの
◯CLO アサシン/ウィザード
STR:8/VIT:5/AGI:99/INT:8/LUC:30
清々しいまでのスピード狂。
サブジョブに
◯エルピス ヒーラー/モンク
STR:16/VIT:40/AGI:14/INT:50/LUC:30
味方の回復に特化した
味方を守って被弾が嵩みやすいRolandとの相性は抜群。被弾=即死のCLOも、蘇生スキルが間に合えば人間爆弾として再利用できるので相性抜群。
◯ソウザサモンジ サムライ/アーチャー
STR:16/VIT:20/AGI:24/INT:10/LUC:80
メインジョブに
使用する槍・刀・弓矢・手裏剣・仕込み爪・含み針にはすべて毒属性か麻痺属性の付帯効果があり、極振りした幸運によって超高確率で状態異常を通すという卑劣極まりない戦法を取る。
◯B アーチャー/ウィザード
STR:12/VIT:40/AGI:50/INT:18/LUC:30
遠距離攻撃に優れた標準的な
余談だが、VRアバターだとリアルでは不可能な髪型が作れるので、実は仲間内で一番ファッションを楽しんでいる。
◯N シノビ/スミス
STR:18/VIT:60/AGI:70/INT:72/LUC:30
メインウェポンの機械式長刀『ゼルムローグの針』を除き、その場で状況に応じた武器(暗器)を鍛造しては使い捨てるという廃人特有の気が狂ったとしか思えない戦い方をする。
◯W ウォリアー/レスラー
STR:80/VIT:50/AGI:15/INT:5/LUC:30
清々しいまでの脳筋。どのくらい脳筋かというと、サブジョブに
女の子としては思うところが無いでもなかったが、友達が勧めてくれて自分の性格にもよく合っているので、今となってはすっかりお気に入りである。
◯ブロッサムロール ヒーラー/アルケミスト
STR:7/VIT:40/AGI:23/INT:60/LUC:20
味方への支援特化型に見えるが、毒物や
◯スーパーブラディオン ベルセルク/アヴェンジャー
STR:80/VIT:50/AGI:13/INT:7/LUC:30
敵の攻撃を真正面から受け止めつつ、被弾に伴って火力が増す
◯マーヴェリック ライダー/アーチャー
STR:7/VIT:40/AGI:40/INT:43/LUC:30
天翔ける
ちなみに、愛竜のニックネームは『トムジュニア』である。
◯レディシービー シーフ/トラベラー
STR:10/VIT:25/AGI:72/INT:16/LUC:37
自由気ままな旅の義賊。直接戦闘力は高くないものの、斥候伝令に高い適性を持つ。
LUC値に関係ない素のリアルラックが妙に高く、希少な素材を入手しては使い方がよくわからずにプレイヤー市場に流しているため、生産職界隈からは神の如く崇められている。
◯ムーンナイト ナイト/コマンダー
STR:50/VIT:50/AGI:24/INT:26/LUC:30
VRアバターの操作は同じ学校の後輩に習ったが、斧槍術の腕は自前。そんなのどこで覚えたのカイチョー?
◯プリンスイヤー ガンナー/ソルジャー
STR:32/VIT:60/AGI:40/INT:16/LUC:52
銃器による狙撃、ナイフを用いた格闘、罠や爆弾アイテムを駆使した地形戦を得手とする世界観が変なキャラクター。
意外にも高めのLUC値は
◯スマートファルコン ヒーラー/アイドル
力5/体30/速18/魔32/運30
『ハチャクエ』公式アンバサダー。
なお、公式アンバサダー就任以前にプライベートで遊んでいた時のアカウントも残っており、今でもたまにログインしては超火力の剣技でモンスターを薙ぎ倒しているらしい。