騎影が行く   作:ごまぬん。

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くぅ〜疲れましたwこれにて完結です!
(何かしらネタが降りてきたら小噺を書くかも知れません)



エピローグ
転生したらウマ娘だった件


 

 ふわふわ ふわふわ

 

 なかま かえてきた

 

 うれしい うれしい

 

 おかえり おかえり

 

 ど だった?

 

「はい。とても───とても、幸せなひとときでした」

 

 よかた よかた

 

 しあわせ いっぱい ぼくらも おなかいぱい

 

 おいしそう おいしそう

 

 じゃあ いただきます

 

「……あぁ。そういえば」

 

 もぐもぐ もぐもぐ

 

 …… ……

 

 ……

 

 あれれ?

 

 なにこれ なにこれ

 

 こころ たましい かんじょう ふわふわ

 

 おいし ね でも

 

 いらない いらない

 

 ぼくたちは きば

 

 ぼくたちは つめ

 

 ぼくたちは ほのお

 

 ほのおに こころは いらない

 

 おまえ もう いらない

 

()()()の約束、守れなかったな」

 

 これ どうする?

 

 もう たべられないよ

 

 もやせばいい あたかくなる

 

 こんなちょっとじゃ すぐきえちゃうよ

 

 りさいくる してみよう

 

 ふりょうひんだよ やくにたつの?

 

 めんどくさいなぁ

 

 すてちゃおっか すてちゃお

 

 そだね それがいい

 

 またくるとき めじるしにもなるし

 

 みらいへの とうし!

 

 せんりゃくてき えいだん!

 

 ふわふわ ふわふわ ふわふわわ

 

「叶うなら……わたし、もう一度─────」

 

 ばいばい ばいばい

 

 さようなら さようなら

 

 いつかのみらいで またあいましょう

 

 それまで どうか おげんきで

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 月明かりの下、遠く長い鐘のような音が響く─────。

 

 閃光が迸り、すぐさま暗闇に戻った。

 

 その後、飛び去った星の行方を知る者はない。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ある朝、ゴールドシップが気がかりな夢から目ざめたとき、寮の同居人がベッドの上で一匹の白い着ぐるみに変ってしまっているのに気づいた。

 彼女はペンギンめいた短い四肢を大の字にして横たわり、頭を少し上げると、ペンキで落書きしたような粗略な目玉と奇妙に厚ぼったいくちばしが見えた。

 丸く膨れた腹の上には、かけぶとんがすっかりずり落ちそうになって、まだやっともちこたえていた。ふだんの大きさに比べると情けないくらいかぼそい扁平な腕がベッドからだらりと垂れ下がっていた。

 

「……何してんだお前」

 

 彼女は答えなかった。代わりに、どこからかプラカードを取り出し、そこには『おはよう』という文字列が書き綴られている。

 

〈ところで、集英組が首を縦に振るまでは、私のことは『エデソベス』と呼んで欲しい〉

 

「語呂悪っ……。別にいいけどよ」

 

 どうにも調子が狂う。

 自分は生粋のボケ担当なのだ。しかし()()()()()()()()()()ツッコミ役に回されてしまっているような─────。

 

「……、んん?」

 

 いや。そんなはずはない。

 昨日はメジロマックイーンとの茶会にドレンチェリー入りクッキーに偽装したはんぺんの磯辺揚げを供してやったし、ウマチューブに途中までトレーナー(トレピッピ)の囁き声ASMRを流しておいていきなり爆音の『よっしゃあ漢唄(歌唱:ゴールドシップ)』に切り替わる新作動画をアップした。

 黙れば美人喋れば変人走る姿は不沈艦、自称URA公認宣伝隊長こと芦毛の快女・ゴールドシップは、いつだって面白おかしく日々を過ごしている。

 

「ま、いいか」

 

 時は巡って春、桜舞う出会いと別れの季節である。

 今年はどんな『おもしれーヤツ』が現れるだろうか。トレセン学園が主導する行事の類はすべて自分が台本を書いた方が面白くなると本気で思っているゴールドシップだが、この入学式の日だけは話が別だ。

 

「うっし、行くぞエデソベス! まずは通学路に爆竹撒いて景気づけだーッ!!」

 

〈今こそ赤報隊で培った鉄砲火器の知識を活かす時!!〉

 

 なおこの後、彼女たちはメジロマックイーンが不穏な動きを察して配置しておいたメジロ家特務諜報部隊(『ブラックパレード』)と激闘を繰り広げる羽目になるのだが───それはまた別の話である。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 朝。同室のキングヘイローに引きずられつつ、ハルウララは寝ぼけ(まなこ)のまま栗東寮からの通学路を歩いていた。

 

「───ふっ、ふっ、ふ、は」

 

 2つ目の交差点に差し掛かったところで、どこからか声。風を切る音で相当に速度が出ていることが窺える。

 しかしハルウララの脳は昨晩、同窓生たちに『府中の大怪異・ケヤキ様』の怪談を聞かされたせいで、十分な休息を取ることが出来ていなかった。

 キングヘイローの制止もどこ吹く風。何の気なしに角を曲がろうとして、電柱の陰から飛び出してきた物体に、

 

「……うわ!? おっ、とっ、と───とうっ!」

 

 衝突する寸前で───向こう側が、ハルウララを避けた。

 華麗なステップを踏むと同時、咄嗟に停止を試みてかえって姿勢を崩したハルウララの手を、素早く取って立ち直らせる。

 

「ごめんなさい、急いでてついっ。お怪我はありませんか!?」

 

「や、わたしこそごめんなさい! ちょっと寝ぼけてて……」

 

「ウララさん! ……と、えっと」

 

 ハルウララたちが纏っているのと同じ、寒色系の学生服───トレセン学園の標準制服。右には尾を引く意匠が施された五芒星のブローチ、左にはシンプルな白のレースリボンという左右非対称(アシンメトリー)の耳飾り。

 背丈はちょうどハルウララとキングヘイローの中間程度。生まれながらの個人差が激しいウマ娘の水準からしても稀な、春の時節の花にも似た紅色の(毛色)が印象深い。鏡めいた灰色の瞳の内には、不可思議に揺らめく金の粒子が瞬いている。

 

「あっ、トレセン学園の……というか、わぁ!! キングヘイローさんに、ハルウララさんですよね!?」

 

「え……えぇ、そうだけど。あなた、春からの新入生かしら?」

 

「はい! わたしは───、……いえ」

 

 新入生はふと口を噤んだ。訝るキングヘイローとハルウララを交互に見やると、口角を吊り上げて言い放つ。

 

「名乗るほどの者じゃありません、()()()()。この中央で埋もれたならそれまで、でもそうじゃなかったら……いずれ、お二人の耳にも名前が届くくらい、ビッグなウマ娘になってみせますっ」

 

 それじゃ、と新入生は走り出した。

 途中で器用にも後ろを振り返りながら、花の髪の彼女は叫ぶ。

 

「あのー! これもきっと、何かの縁ですよねっ! 学園でお見かけしたら声をかけさせていただくかも知れないので、その時は───また一緒に走りましょう!」

 

 今はまだ何者でもない、これからどうなるかもわからない、可能性の卵。

 しかし───。

 

「ふふっ。まるで嵐のようだったけれど、気持ちの良い子じゃない。果たして一流となる資格があるか……これからが見物ね」

 

「………………」

 

「……、ウララさん? どうかしたの? やっぱりどこかぶつけたとか……」

 

「いや……へーきだよ。でも……」

 

「?」

 

「なんだかあの子、はじめて会った気がしなくてさ」

 

 自分と少しだけ似た髪色(毛色)の、見覚えのない誰か。

 なのに、彼女の声を聞いただけで、こんなにも胸が熱くなるのはどうしてだろう。

 

「ま、いっか。それよりキングちゃん、今の聞いてた!? キングちゃんはすごい人だからわかるけど、わたしとも一緒に走ろうって! ね、ね、ファンの人と会うと、やっぱりうれしいなぁ!」

 

「ウララさんもある意味すごい人なのよねぇ……。無邪気って怖いわ」

 

 遠くに置いてきた忘れ物を探しに行って、記憶の通りの場所にまだ落ちていた時のような───道行く誰も、見つけた忘れ物を当局に届け出なかったのだから、それはあくまで善意の結果ではない。単なる偶然に過ぎないのだろう。

 しかし、人はきっと、そういったものを『奇跡』と呼ぶのだ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 日本ウマ娘トレーニングセンター学園東京中央校は、全国各地からトップクラスの実力を備えた才媛が集う、まさにウマ娘競技界の殿堂だ。

 トゥインクル・シリーズやドリームトロフィーリーグが大規模興行としての側面も併せ持つ以上、経済各界とのコネクションは強固であり、真に将来有望なウマ娘についての情報はすぐさま発見、共有される。

 

「我々は歴史ある学び舎の一員となったことを誇りに思い、それに恥じぬ振る舞いを心がけ───」

 

 新入生代表を務める、赤髪の彼女もそう。

 

「ついにこの日がやってきましたわ……見ていなさい、高慢な競バ貴族たち! (わたくし)の手で、きっとあなたがたを……!」

 

 何やら物騒な決意を滾らせる、金髪の彼女もそう。

 

「ふぁ……」

 

 呑気に欠伸をする、芦毛の彼女もそう。

 

「ハッピーミーク。特技は……まぁ、別に、色々。目標は……いっぱい走って、出来る限り勝ちたい……です」

 

 気怠げに自己紹介を終えた、白毛の彼女もそう。

 そして、

 

「では次……」

 

「はいッ!!」

 

 クラス担任の声を半ば掻き消しながら椅子を立ったのは、花色の髪のツーサイドアップが特徴的なウマ娘。

 最新情報に敏い界隈の人間曰く─────。

 

()()()

 

 素性不明。経歴不明。

 わかっているのは数ヶ月前、その身一つでトレセン学園の門戸を叩き、実技試験を歴代4位タイの総合成績で突破して一発合格を勝ち取ったという異常性のみ。

 

八七小(ハナショー)出身、『ハルノエース』。ただのウマ娘には興味ありません。この中に三冠、トリプルティアラ、グランドスラムを取りたい子が居たら───わたしと勝負しなさい!! ……あっ、ダートの方はまだ勉強中だから、そっち詳しい子もよろしくね!」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ─────ウマ娘。

 

 彼女たちは、走るために生まれてきた。

 時に数奇で、時に輝かしい別世界の名前と共に生まれ、その魂を受け継いで走る。瞳の先にあるゴールだけを目指して。

 

「ねぇ、あなた。強いんですってね? ハッピーミークさん」

 

 ただし、これは正しい帰結を経た世界の物語ではない。

 

「……それほどでも。というか……私より強い子なら、他にもたくさん居ると思いますが」

 

 多くの人々が共有し支持される正史(カノン)でも、あるいは並行する時空の"IF"(もしも)でさえない。

 海の砂と天の星の数だけ存在する可能性の粒が触れ合い、摩擦して飛び散った、火花の如き泡沫の夢に過ぎない。

 

「いいのいいの、わたしがピンと来たってだけだから。ハッピーミークさん、今度の選抜レース、一緒に出ない? わたし、あなたとなら良い勝負が出来そうだなと思って!」

 

 存在しない架空の幻想。参照先(原典)を持たぬその他大勢(ワン・オブ・ゼム)たちによって綴られる虚構。

 あるいはウマ娘の起源として語られる別世界において、世に名を知らしめることなく終わった幾多の『それ』と同じ、忘却されゆく歴史の影。

 

「それは……。私のことを、レースの現場で追い切りに使おうとしていらっしゃる?」

 

「えっ? ……あー、うーん、うん。……そうね! ごめんなさいっ、いくら何でも失礼したわ」

 

「否定はしないんだ……」

 

「嘘ついてもしょうがないもの。けど、だったら仕方ないわね。出る試合が決まったら伝えるから、ぜひ見に来てちょうだい。日本一の、いえ世界一の……いいえ」

 

 だが───それでも、彼女たちは進み続けるだろう。

 世界の記憶に刻まれずとも、流した涙が報われずとも、最後に見る景色が望んだものでなかったとしても。

 

「───宇宙最強のウマ娘・ハルノエースの門出を、最前列で拝ませてあげる!!」

 

 この日々を駆け抜けた先に未来があると、誰もが知っているのだから。

 

























[目指すは宇宙最強!? お騒がせ春爛漫少女]
○ハルノエース
 身長:151cm
 体重:もう少し仲良くなったら教えてあげるっ
 スリーサイズ:84-54-81
 靴のサイズ:左右とも22.0cm
 学年:中等部
 所属寮:栗東寮(予定)
 得意なこと:だいたいなんでも(短距離とダートは勉強中)
 苦手なこと:特にないわ、無敵よ!
 耳のこと:王者は不動。いつもピンと立っている
 尻尾のこと:第5の手足レベルで器用に動かせる
 家族のこと:故郷の『里』で隠遁しているとか

 ハルノエースのヒミツ①:実は、恋バナにめちゃくちゃ弱い。
 ハルノエースのヒミツ②:両親曰く『流れ星に乗ってうちにやってきた』らしい。

 ☆3[超絶怒涛究極完全体わたしっ!]
 芝: C ダート: D ██: A
 短距離: D マイル: C 中距離: B 長距離: D
 逃げ: C 先行: A 差し: B 追込: D

 ○固有スキル『███████』Lv.-
  ここではないどこかの時間の線が辿った運命、その残滓。
  大いなる可能性の宇宙卵は決して割ることが出来ない。今は、まだ。
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