立花響の義父となりました、石動と申します。   作:CODEZERO

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はい、圧倒的サンジェルマン回です。


『娘』の訪問

響の体内のガングニールが響の身体を侵食し、いずれ死に至るという絶望を叩きつけられて一夜明け……石動は未だ動かず、カウンターに座ったままだった。

 

理由はわかりきったことだろう。

救う方法が思いつかないから。一睡もせず、食事も摂らず、ただ動かずに考えていても響を救う方法が思いつかない。

考えれば考えるほど追い詰められていくような感覚が石動の中にあり続けた。

 

そんな時、裏口の鍵が開く音が聞こえた。

この店の合鍵を持っているのは、響とクリス。

そして………

 

「……どうしたの、お父さん。電気も点けないで……何かあったの?」

 

自分の実の娘であるサンジェルマンだけ。

 

「……なぁ……サンジェルマン…?」

 

「なに?」

 

「俺って何のために生きてんだ?」

 

その言葉は、責任感が強過ぎるあまり全てを抱え込んでしまう石動だからこその言葉だった。

娘が…響が命の危機に侵されていたのにも関わらず、呑気に店を開いて……

もっと響に目を向けることができていたなら、あの子がこんなことになる前に対処できたのではないか?

その考えが一晩中頭の中を駆け巡り、『全ては自分の責任である』という結論以外を出すことを許さなかった。

 

それを聞き、サンジェルマンは……

 

「それ、お父さんの悪い癖よ」

 

嘆息した。

 

「お父さん。顔上げて、私の顔を見て?」

 

「……?」

 

「お父さんにとって私ってそんなに頼りづらいかしら?」

 

顔を上げて、見えたのは怒りながらも悲しんでいるような、不思議な表情を浮かべた娘の顔だった。

 

「私、お父さんとは誰よりも長い時間を過ごしてきたっていう自信があるし、お父さんのことでわからないことはないって胸を張って言えるわよ?

………助け合うのが、家族じゃないの?…いつまでも、お父さん一人で抱え込まないでよ……」

 

『一人でなんでもするんじゃなくて、助け合うのが家族だよ?』

 

唐突に、ルナアタックの日に響に言われた言葉が頭の中を駆け抜けた。

助け合うのが、家族……だが、それでも、俺は紛い物で…サンジェルマンの本当の父親でもない…!

 

そんなことを考えていた時、いきなり両頬を手のひらで挟まれ、サンジェルマンの顔を直視する形になった。

 

「……お父さんの考えてる事はだいたい察しがつくわよ…どうせ、『俺はサンジェルマンの実の父親じゃない』って考えてるんでしょ?

……そんなこと、小さい頃から気づいてたわよ」

 

「………え?」

 

「今となっては確認もできないけど…きっと、お母さんも気づいてた」

 

「なんで……」

 

「お父さん……『奴隷は主人の命令に黙って従っとけば良い』って言って、お母さんを孕ませた男が妊娠がわかってすぐに奴隷に頭を床にぶつける勢いで謝るって……おかしいと思わない方がどうかしてると思うのだけど?

それに、貴族至上主義だった人間が、産まれてもいない子供のために貴族の権威を全て捨てて、子供と母親の為に働くっていうのもよく考えなくてもおかしな話じゃない。……人はそう簡単には変われないわよ」

 

「ちょっと待て……どこでそれ聞いた?」

 

「小さい頃にお母さんが教えてくれたことを未だに覚えているだけ。

それと、お父さんの正体に私は興味無いわ。……だって、お父さんが何者であっても私の…『私たちのお父さん』はお父さんただ一人でしょう?」

 

「………娘の成長ってのは案外早いもんなんだな」

 

「あら、発言がおじいちゃんみたいよ?」

 

「一応何千年も前から生き続けてるジジイだからな?」

 

娘との……サンジェルマンとの会話で、ようやく石動の張り詰め通した心に僅かばかりの余裕ができた。

そして、余裕ができた今のうちにとサンジェルマンは切り出した。

 

「それで、お父さん。何があったの?」

 

「あぁ…実はな……」

 

それから石動は語り始めた。

響の胸の中にある聖遺物が響を侵食し、いずれ死に至ってしまうこと。

日本政府は響達を道具としてしか見ておらず、未だ戦わせるつもりでいること。

その他にも、沢山のことをサンジェルマンに打ち明けた。

それに対してサンジェルマンは……

 

「……なるほどね。

日本政府はおそらく結社の方で対処できるけど……響のガングニールに関しては『やってみなくちゃわからない』っていうのが正直なところよ。

政府の方は私自身が行くとして……二課の方にはカリオストロとプレラーティの二人を向かわせようかしら」

 

「……二課の方にはフィーネがいるけど…あの二人暴れないだろうな……?」

 

「大丈夫だと思うわよ?そもそもあの二人は結社の幹部としての肩書きはあるけど、実質的には私の部下兼同僚みたいなものだし。フィーネに襲撃された時も、あの二人が心配してたのは船が沈まないかってことと私が怪我しないかってことだけだったらしいわよ?」

 

「じゃあ大丈夫かぁ……」

 

「ええ、任せて。私は結社の方に戻るわ。………さて、私の可愛い可愛い妹二人を『道具』扱いした日本政府……覚悟しておくといい…!」

 

そのまま、サンジェルマンは裏口から出ていき、何かを割ったような音と同時に気配が消えた。

 

「さて……しばらく店は休業だな」

 

そして、カフェ『nascita』は再びしばらくの休業に入る……

セレナ生存or原作通り?

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  • 原作通り
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