してんのっ! ~魔王軍四天王のお仕事はアイドル活動~   作:ぶしゅくろ

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第2章・完!


第19話:姫様、立ち上がるのっ!

 リアージュ王国の王城では、オータク国に対抗するための会議が行われていた。

 最後の四天王、ユーフィの姿がついに明らかになったと思ったら、姫のメイドやってて目の前で踊ってたり、外部的には姫の婚約者候補筆頭になってたり、追跡&確保に失敗したり、それはもう話し合う内容がてんこ盛りのてんやわんやである。

 

「失礼します!」

 

 そんな会議室の扉をバーンと勢いよく開けてやってきたのは、この国の王女、クラリス姫であった。

 会議中に勝手に入ってきたのが、普通の相手ならつまみ出しておしまいにするところだが、相手は他でもないお姫様。皆、さすがに何も言うことができず国王の対応を待つことにした。

 

「クラリスよ。今は大事な会議中なのじゃ。ワシに用があるなら後に――」

「知っています。だから来たんです。お父様」

 

 普段は一人娘であるクラリス姫を溺愛している国王だが、今は公務中なので毅然とした態度で対応する。

 しかしクラリス姫は、そんなことは意に介さず、国王のたしなめるような視線を真正面から受け止めながら会議のために来たのだ、と力強く断言した。

 

「……何か考えがあるのかの?」

「はい! オータク国に対抗するために、こっちもアイドルを結成して四天王を打ち負かすのです!」

 

 クラリス姫の考えとは、王国もアイドルを結成するというものであった。

 

「何を馬鹿なことを。これは遊びではないのじゃ――」

「いえ、そこまで悪い考えでもないかもしれませんぞ」

 

 クラリス姫の突飛な発案を、馬鹿馬鹿しいと却下する国王。しかしそこに待ったが掛かる。

 王国の頭脳であるマジーメが、まさかの賛同の意を示したのだ。一体どういうことか、と皆が説明を求めてマジーメを見る。

 

「オータク国の強さは四天王の魅力によるものと判明しました。であれば、こちらがより魅力的なアイドルを用意することができれば、オータク軍も自然とこちらに降るでしょう。血を流す必要もない、完全な勝利が可能となります」

 

 そうかな……そうかも……。まあ、犠牲を出さずに済むならその方がいいし……。

 皆、マジーメの説明を聞いてなんとなくそんな気がしてきた。

 

「たしかにの……。実際、こちら側にも四天王のファンが増えてきておるようじゃし、このままじゃとこちらが取り込まれるだけかもしれんの。全く嘆かわしい」

 

 国王がじろり、と会議に出席している面々を見渡す。

 その中には四天王グッズを身に着けている者がちらほら見受けられた。ぱっと見でそうは見えなくても、じつはネクタイの裏面が四天王仕様だったり、普通のコップに見えてよく見ると四天王のロゴが入ってたりするので、隠れ推し活おじさんには油断ならない。

 王国上層部の現状を憂いて、国王は深くため息をついた――。

 

「お父様が言わないでください。あんまりふざけてるとその髭を引きちぎりますよ」

 

 国王は誰よりも堂々と、四天王Tシャツ(エリーゼちゃん)を着ていたのでクラリス姫にバッサリと切り捨てられてしまった。立場上、誰も突っ込めなかったのでクラリス姫のファインプレーが光る。

 ただ、そのクラリス姫もユーフィちゃんTシャツを着ているのでもうだめねこの親子。

 

「オホン! しかし、あの四天王に対抗できるアイドルとなると、そう簡単にメンバーが見つからんじゃろ……。そこはどう考えておるのじゃ?」

 

 一見ふざけた提案に思えたが、たしかに有効な手立てであることは分かった。

 だが、それはあくまで四天王に勝てるアイドルを用意できた場合の話である。あの四人の魅力に勝てる人材を見つけるのは簡単なことではない。

 

「私がやります」

「なんじゃと!?」

 

 そんなの当たり前でしょう、とでも言いたげな表情でクラリス姫は言い切った。

 

「ダメじゃダメじゃ! たしかにクラリスは世界一かわいいが、何かあったらどうするのじゃ! パパそんなの許しません!」

 

 ダメじゃダメじゃ~、とじたばた駄々をこね始めたおっさん(国王)を見てドン引きしながら、おい何とかしろよ、と目だけで押し付け合うお偉いさんたち。

 一部はもう諦めて互いの四天王グッズを自慢し合っている。いつもは「頭でっかち」「脳筋」といがみあう騎士団長と魔法士団長が、互いに四天王マグカップを使っていることに気づき「いいよね……」「いい……」と歴史的な和解を果たしていた。

 

 そんなカオスと化した会議室に、耳をくすぐるような艶めかしい声が響いた。

 

「面白そうな話してるじゃなぁい♡ アタシも~、ま・ぜ・て♡」

 

 皆がそちらへ振り向くと、扉にしなだれかかるようにして立っている桃色の髪をした蠱惑的なメイドが目に入った。

 ――もちろんその正体は、元四天王のエッチィちゃ……ビッチィちゃんである。

 

「お、お前は……!」

「知っているのか騎士団長!?」

「うむ、あれは王城にちょくちょく現れる、正体不明のえっちなメイドさんだ!」

 

 おお……正体不明のえっちなメイドさんか、と皆は感心した。

 正体不明なら野放しにするな。なんで王城に不審者がいるんだよ! 警備はどうなってんだ警備は!

 

「この城の警備体制どうなっとるんじゃ……」

「ハハハ。国王、よく今まで無事でしたな」

 

 なにわろとんねん。

 

「その新しく作るっていうアイドルグループ、アタシも参加させてほしいわぁ。アタシぃ、これでも()()()()よ♡」

「ふむ……。採用ですな」

 

 意味深なことを言う謎のメイド(ビッチィ)に即採用通知を出すマジーメ。

 

「いや、待て待て待たんか。なんでマジーメが決めるんじゃ」

 

 周りからも、「そーだそーだ」「俺たちだって個人面接とかインタビューとかしてみたかった」などと声が上がる。

 

「当然でしょう。なぜなら、今後は私が(スーパー)マネージャーとして姫様や他のメンバーを支えていくのですから」

「「「「「な、なんだってー!?」」」」」

 

 どういうことだマジーメ!

 皆は困惑した。ずるい。自分たちだってマネージャーやりたいのに……。

 

「逆に聞きますが、私以上に適任がおりますかな?」

 

 周囲に問いかけるマジーメ。

 たしかに、立場、知略、そしていざという時の戦闘力。すべてを兼ねそろえているマジーメに敵う者はいないだろう。クラリス姫が活動するのであれば、護るための力は特に重要であった。

 ――そう、筋肉モリモリマッチョマンと化した(スーパー)マジーメのような戦闘力が必要なのである。

 

「というか、ず~っと気になっとったんじゃが……。なんでおぬしは筋肉モリモリマッチョマンになっとるんじゃ?」

 

 会議が始まってから、皆が気になって仕方がなかったことに国王がついに切り込んだ。

 昨日まで、線が細い『ザ・魔法使い』って感じの人が、いきなり上半身裸のマッチョマンになっていたら誰だって気になる。歩くたびに、ギュピッギュピッて効果音もなるし。

 だからといって国のナンバー2に向かって「頭大丈夫ですか?」なんて誰も聞けない。一人用の椅子ごとぐちゃぐちゃに丸められて宇宙にポイされそうだもん。

 

「いや、お恥ずかしい。まだ超賢者になったばかりで制御が難しく、戻れなくなってしまいましてな。そのうち自由に変身できるようになると思うのですが」

 

 自由に変身ってなんだよ。もうそれ人間じゃねえよ。とみんな思ったが命がおしいので黙っておくことにした。

 

「まあ、マジーメがマネージャー兼護衛として付くのであれば、安心できるのはたしかじゃの」

「マネージャーではありません。『(スーパー)』マネージャーですぞ」

「うるさいわい」

 

 もし不測の事態に陥ったとしてもマジーメが付いているのであれば対処できるだろう。

 なにしろ、勇者が瞬殺されたという四天王親衛隊の四人を相手に、互角に渡り合ったというのだ。……これ勇者いる?

 

「それで、クラリスとそのメイドさんの二人で活動していくつもりかの?」

「いえ、四天王に対抗するということなら、こちらも四人の方がいいでしょう。応援するにあたって、わかりやすさというのは大事ですからな」

 

 4vs4の真っ向勝負ということらしい。どうせなら水着で戦ってほしい。

 

「ふむ……。そうすると残り二人をなんとかして集めなければならんの。国民に御触れでも出すべきか――」

 

 どうやって残り二人を探すか――、と皆が考えを巡らせているとマジーメとメイドさん(ビッチィ)から声が上がった。

 

「ご安心を。私に一人心当たりがあります。教会のシスターなので大司教に話を通す必要がありますが」

「アタシも一人気になってる子がいるのよねぇ。こっちは普通の街の子だから大丈夫よね?」

 

 マジーメとメイドさん(ビッチィ)がそれぞれ候補者を挙げる。その候補者二人を採用できれば合計で四人になる。

 一応、これでメンバーの目処が立った。

 

「決まりね! お父様、私たちは必ず四天王に負けないアイドルになってみせます! そしてオータク国を無力化し、戦争を終わらせたあかつきには――」

 

 四天王を超える世界一のアイドルになり戦争を終わらせる、と宣言するクラリス姫。その堂々とした姿は、まるで神の祝福を受けて光でも差しているかのように輝いて見えた――。

 

 というか物理的に光ってた。マジーメの魔法による演出だった。さすが超マネージャー。

 あ、その姿(マッチョ)でもちゃんと魔法つかえるのね、と皆安心した。だって、うるせえよ魔法なんてねえよ、とかいって殴りそうなガタイだし。

 

「私とユーフィの結婚を認めてもらいます!」

 

 今ここに、戦争を終結させユーフィと結婚するため、リアージュ王国の王女クラリス姫が立ち上がった――!

 




第3章(最終章)『世界アイドル大戦編』へ続く。
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