してんのっ! ~魔王軍四天王のお仕事はアイドル活動~   作:ぶしゅくろ

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第3章:世界アイドル大戦編
第20話:首輪付きになったのっ!


 ユーフィ救出作戦から一夜明けた昼下がり――。 

 一週間ぶりに全員が揃い、四天王たちの執務室(楽屋)は和やかな空気に包まれていた。

 

「はい、ユーフィちゃん。あ~ん」

「あ、あ~ん」

 

 ロザリーが、ニコニコと満面の笑みでお菓子を差し出す。

 少し恥ずかしそうにしながら、ユーフィが口を開けてそれに応じた。

 

「ふふ~。かわいい。おいしい?」

ふぁい(はい)ほいひい(おいしい)です」

 

 もきゅもきゅと頬張るユーフィに、また次のお菓子を差し出すロザリー。まるで、ひな鳥に餌付けしているような微笑ましい光景であった。

 

「い、いや~、無事ユーフィも戻ってきたし、平和やなあ……」

「そ、そうですわね。本当、よかったですわ」

 

 そんな二人の様子を()()()()()()()()()()()()()()、平和な日常が戻ってきたことを喜ぶコレットとエリーゼ。だが、その言葉とは裏腹に目が泳いでいる――。

 

「なにもよくないんですけど!? 見てないふりしてないで助けてくださいよ!」

 

 ジャラリ、と首輪から伸びた鎖を鳴らしながらユーフィが叫んだ。

 

 ユーフィの首につけられた鎖の先はロザリーの右手にしっかりと掴まれている。

 いつの間にかユーフィは犬にジョブチェンジしたらしい。メイドになったり犬になったり忙しいやつである。そりゃこんな状況、誰だって見なかったことにしたい。

 

「すまん! ウチらにできることは何もない!」

「大人しく飼われてくださいな」

 

 二人に助けを求めるが、触らぬ神になんとやらといった感じで見捨てられてしまった。

 なんてことだ。四人で一緒に力を合わせ、勇者や大賢者といった強敵たちと戦った絆はどこにいってしまったのか。ユーフィは人の心の移ろいを嘆いた。大人になるって悲しいことなの?

 

 ――そもそも、勇者や大賢者と戦ったのは親衛隊の皆さんなので戦歴詐称である。しかもユーフィは、どちらかといえば敵を超強化した戦犯であった。

 

「ひどい! ボクたち仲間じゃなかったんですか!?」

「その仲間に、何も言わずにこっそり抜け出して誘拐されたのはユーフィちゃんだよね?」

 

 ハイライトの消えた目で瞬きもせずジーッと見つめてくるロザリー。

 わあ。深い井戸の底みたいな吸い込まれそうな瞳だよ。深淵につながってそう。

 ロザリーは幼馴染系正統派美少女だったはずなのにヤンデレになってしまったらしい。ヤンデレは妹系美少女の進化先ではなかったのか。空っぽの鍋かき混ぜる感じで。

 

「だから、勝手にどっか行っちゃわないようにしないと。ね? これはユーフィちゃんのためなんだよ? もう怖い目に遭うこともないからね」

 

 今! まさに! この瞬間! 怖い目に遭ってるんですけど?

 

「ま、まあ少し付き合ってあげてください。ロザリーは本当に心配してたんですよ。数日たてば、きっと落ち着くと思いますから」

 

 落ち着くと思う(首輪が外れるとは言っていない)。

 しかも数日待たないといけないらしい。そんなの無理無理かたつむりである。トイレとかどうするんだ。というか、紅茶いっぱい飲んだからトイレにいきたくなってきた……。ヤバい。

 

 ただ、黙って出かけて行方不明になったことは、素直に申し訳なく思う。心配するのも当然だろう。

 ……全部あいつ(勇者)が悪い気がするが。

 

「そのことについては、心配をかけてしまって悪いと思ってます。それに助けに来てくれて、とても嬉しかったです。ありがとうございました」

「ユーフィちゃん……」

 

 ユーフィの言葉に感動したのか、ロザリーの目に光が戻ってきた。

 

 お、なんかいい感じの流れがきているぞ、とユーフィは思った。

 あとは、向こうでひどいこともされてないし、何も心配することはなかったんだよということをアピールしていけば、ロザリーも安心して首輪を外してくれそう。

 前の世界で、説得するゲームやったことあるから詳しいのだ。やあロザリー、君を助けに来たんだ!

 

「それに、誘拐されたって言っても、あっちでの生活は安全で何もされなかったので安心してください! 姫様もよくしてくれてたので!」

「へえー……」

 

 またロザリーの目から光が失われてしまった。

 一体どこで間違えてしまったのか……。コレガワカラナイ。

 

「あっちゃあ……。的確に地雷踏み抜いていったな」

「もう終わりですわね」

 

 あとの二人は、ユーフィたちの修羅場を観戦して楽しむことにしたらしい。

 実況はコレット、解説はエリーゼでお送りしております。解説のエリーゼによると、もう終わりだそうです。ざんねん! ユーフィのぼうけんはこれでおわってしまった!

 

「そういえば、そのお姫様と随分仲よくしてたみたいだね?」

「ええ、まあ。……はい」

「かわいかったの?」

「え? いやぁ……どうですかね~?」

「かわいかったんだ」

「……はい」

 

 かわいかったって素直に言ったものなら怒りそうだし、ごまかしても怒るしでどうしようもなかった。進むも地獄、退くも地獄ぞ。

 

 悲しいかな、ユーフィは前世で終ぞ女性に縁がなかったので、女心なんてネットで見た(ネタにされていた)知識でしか理解していなかった。

 たしか、リンゴの話をしてたら、そのリンゴを買った店をきくのが正解とかだったはずだ。……なんでだろう?

 つまり、今回の場合は――。

 

「そのかわいいお姫様ってどこにいるんでしたっけ?」

「は? リアージュ王国でしょ。ふざけてるのユーフィちゃん?」

 

 全然だめだった。こういうのを火に油を注ぐっていうんだね。

 

「ん~、アホのユーフィはおいといて、これはどうするべきやったんやエリーゼ」

「そうですわね……。ここは、『キミの方がかわいいよ。ボクだけのお姫様』って言うべきだったと思いますわ」

 

 ユーフィはそんなこと言わない。

 きっとエリーゼの理想のシチュなんだろう。夢見る少女にとってお姫様扱いは嬉しいじゃんね。

 

「やっぱり悪い泥棒猫(クラリス姫)に連れ去られないように、つないどかないと……」

「そういうのじゃないんですって! はやくこれ外してください! ボクにできることなら何でもしますから!」

「え……。な、なん……でも……?」

 

 ちょっと真面目にトイレに行きたくなってきたユーフィは、もうなりふり構わず何でもするから外してくれと訴えた。薄い本も厚くなりそうな魔法の言葉である。

 

「え、これって誘ってる? オッケーってことだよね? ……いやいや、ダメだよ私。ユーフィちゃんはまだ子どもなんだから……でも――」

 

 ユーフィの言葉を聞いたロザリーは、頭を抱えながらブツブツと悩み始めた。

 きっと頭の中では天使ロザリーと悪魔ロザリーが戦っているんだろう。光と闇の果てしない戦い。消えろ闇の私! もちろん闇が勝った場合は、ユーフィちゃんはおしまい!

 

「じゃ、じゃあ、ね? エリーゼちゃんとコレットちゃんのときみたいに、私の番組にも出てほしいな……」

「え、そんなことでいいんですか? 出ます、出ます。いくらでも出ちゃいますよ~!」

 

 随分悩んでいたから、一体どんな要求をされるかと思ったら担当番組へのゲスト出演だった。そんなことで解放してくれるなら、とユーフィは快諾した。

 だが、ここまで躊躇するということは、もしかして何かヤバい番組なのだろうかと不安になってくる……。

 

「あの~……、どういう感じの番組なんですか?」

「え? えっとねえ、ファンのみんなからのお便りとかお悩み相談とかを読んで、答えていく感じだよ。あんまり派手じゃないから、ユーフィちゃんには面白くないかもしれないけど……」

 

 前の世界で言うところの雑談配信みたいな感じかな? ましまろ食べるみたいなやつ。

 料理したり運動したりする番組じゃないから、ちびっこにはつまらないかもと心配していたようだ。見た目はロリ中身は一応大人のユーフィには、いらない心配である。

 

 むしろ、お悩み相談なんて大人として生きてきた経験がある分、他の四天王よりうまく解決してしまうのでは? 魔王城のご意見番として確固たる地位を築いてしまうかもしれない。

 

「な~んだ。そんなの全然問題ないですよ。ボク、悩み相談とか多分得意ですよ!」

「そ、そう……かなぁ……? まあ、嫌じゃないならよかったよ」

 

 ロザリーは、謎の自信満々ドヤ顔ユーフィを見て「あ、これいつものやつ(オチ)だ」と思ったが、せっかく出演にノリ気になってくれているので気にしないことにした。

 

「じゃあ、これ外してあげるね。首輪つけたユーフィちゃんも可愛かったのに……」

「ふう~、トイレに行きたかったのでよかったです。はやく外してください」

「……」

「……あの~、ロザリーさん?」

 

 首輪を外そうとしていたロザリーの手が止まった。

 どうしてそこで止めるんだそこで! ユーフィだっておしっこ漏れそうなところ、首輪がトゥルル(とれる)って頑張ってんだよ! あきらめんな!

 

「ユーフィちゃん……、ハァハァ……、一緒におトイレ、行こっか♪」

 

 へ、変態だーー!!!!

 個室にまで一緒に入ってくる気でしょ。間違いない。どうしてこんなになるまで放っておいたんだ! 

 

「い~や~で~す~!」

「大丈夫! 一緒に入ってあげるから怖くないよ!」

「ちょ、ちょっと待ちなさい! さすがにそれは一線を超えすぎですわ! 早く離してあげてください!」

「初っ端からあまりにも特殊なプレイすぎやろ! 正気に戻り!」

 

 これには、さすがに今まで面白おかしく見学していた二人も止めに入る。

 そして、あーだこーだと言い合いながら、ユーフィを引っぱり合う四天王たち。

 ……おしっこを我慢している人をそんなに揺らしてはいけない。

 

「ちょっと、そんなに揺すらないでくださっ、ほんっとにヤバ――」

 

 ただでさえ貯水量が限界に近かったユーフィダムは、揺らされたことによりあっけなく決壊した。

 

「あっ」

「「「あっ」」」

 

 

 

 

 

 ――こうしてユーフィの首輪は無事に外されたとさ。めでたしめでたし。

 




ちなみに、ロザリーは怒ったユーフィに正座させられて1時間説教されました。
その結果、足がしびれてトイレまでたどり着けずにロザリーも漏らしたよ。
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