してんのっ! ~魔王軍四天王のお仕事はアイドル活動~   作:ぶしゅくろ

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第21話:お便りを読むのっ!

 魔王城に帰還してから一週間がたち、ユーフィはロザリーの番組――『ロザリーのお部屋』――に出演するという約束を果たすため収録に臨んでいた。

 

 この番組のコンセプトは、『質問や悩み相談を通してロザリーとおしゃべりしている感じ』なので、スタジオのセットも部屋をイメージしたものになっている。

 ソファーにもちもちのクッションや大きなぬいぐるみが置いてあり女子力高めなお部屋がつくられていた。

 

 ソファーに沈み込んだユーフィは、ロザリーから「はい、これ」と大きなぬいぐるみを渡された。どうすればいいかわからなかったので、とりあえずぬいぐるみを膝の上に置き、転がって行かないように抱きしめた。

 

「――ということで今日はユーフィちゃんへの質問を中心に答えていきたいと思うよ! みんなが送ってくれた質問とお悩みは、それぞれこの箱に入ってるからね」

「はい、よろしくお願いします」

 

 ロザリーが、目の前にある『質問箱』『お悩み箱』と書かれたでっかい箱2つをポンポンと叩きながら説明する。この中から、質問や相談が書かれた紙を引き抜いて進行していくスタイルらしい。

 

「それじゃ、さっそくいってみよ~!」

 

 ロザリーが質問箱に手を突っ込み、勢いよく一枚の紙を引っ張り出した。

 

「『シャンプーは何をつかってますか?』だって。これは私でも答えられるね~」

「そうですね。ロザリーさんと同じやつです。ボクとしてはもっと安いやつでいいんですけど」

「ダメダメ! こういう風にユーフィちゃんは、ほっとくと安売りのシャンプーを買おうとするので私と同じやつを買ってあげてます」

 

 ユーフィ(元男)としては、シャンプーなんて別に何でも一緒じゃんと思っている。だが、それは女の子的には許しがたいことだったようで、今ではロザリーとお揃いのシャンプーを使わされていた。いい匂いするやつ。

 じゃあ、次はボクが引きますね、とユーフィが質問箱に手を突っ込み一枚引き出した。

 

「『イヌゥとヌコだったらどっちが好きですか』ですって。難しいですね……。う~ん……、ボクはイヌゥ派かな~。どっちも好きですけど。ロザリーさんはどっち派ですか?」

「私はハムリスーが好きかな! ユーフィちゃんに似てるから」

「イヌゥかヌコでって言ってるでしょうが!」

 

 質問を無視したロザリーの回答に容赦なく突っ込むユーフィ。

 今までは元男だとか、元大人だとか、そういった事情からどこか遠慮があったのだが、先日の一件(おもらし事件)以来、だいぶ吹っ切れたようだ。おしっこ漏らし合った仲だからね。黄金の絆。

 

 ――他にも『ラーメンは何ラーメン派ですか?』『目玉焼きには何をかけますか?』『四天王の曲の中で一番気に入ってるのはどれですか?』など様々な質問に答えていく。

 20分もすると、質問箱がほぼ空っぽになり、ロザリーが最後の一枚を取り出した。

 

「お、最後にいいのが来たよ~。『お互いの好きなところを教えてください』だって。ほらほら~、ユーフィちゃん言ってみて!」

「いや、そういうの改めて言うってなると、なんかいやなんですけど……」

 

 一緒に好きなところ言い合って噂とかされると恥ずかしいし……。

 

「え……。もしかしてユーフィちゃん、私のこと嫌い?」

「べ、べつに嫌いとは言ってないじゃないですか」

 

 ユーフィのくせにツンデレみたいなこと言いやがって……。

 ロザリーから「じゃあ、はやく言って言って」とせがまれたので、観念して口を開いた。

 

「……いろいろ気にかけてくれて助けてくれたり、誰よりも一生懸命に努力したりしてるところですね」

「あれ~? 一緒にお風呂入ったときはもっと情熱的に告白してくれた気がするんだけどな~」

「うるさいですね……」

 

 あれは深夜テンションみたいなものだったので、ユーフィちゃん的にはイタイイタイなのだった。

 

「まあ、よく暴走するのは困りものですけど」

「でもそれって私の愛だよ」

「愛が重すぎる……」

 

 愛なら仕方ない、とはならなかった。

 

「はい! ボクは言いましたよ! 次はロザリーさんの番です」

「いいよ~。ユーフィちゃんの好きなところはね~、やっぱりまずはかわいいところ! でもそれだけじゃなくって、まだ小さいのに慣れない四天王のお仕事がんばってくれてるし、私が落ち込んでるとき励ましてくれるし、かわいいだけじゃないところかな! あと、よくドヤ顔してるけど全然ダメダメだったり――」

 

 恥ずかしくなったので、さっさとロザリーへとバトンを渡したが『ユーフィちゃんのかわいいところ』がポンポンと出てくる出てくる……。

 余計に恥ずかしくなり、慌ててストップをかける。

 

「も~、わかりました! 十分です! お悩み相談行きましょう! 次!」

「照れてるユーフィちゃんかわいい。写真撮っちゃお」

 

 この子は何かにつけて写真を撮ってくるが、一体何に使っているんだろうか。

 まあ、前の世界でも女子たちは、映え映えな写真を撮りまくってたように思うので、どこの世界でもそんなものなのかもしれない、とユーフィは納得した。

 

「じゃあ、そろそろお悩み相談に答えてもらおっかな?」

「バッチ来いですよ!」

 

 ロザリーがごそごそと『お悩み箱』から紙を取り出して読み上げる――。

 

「『僕の彼女は恥ずかしがり屋なのか、なかなか画面から出てきてくれません。お互い告白して結ばれたんですが、どうすればいいでしょうか。これでは、実家に紹介しに行こうにも行けなくて困っています』だって。いきなりすごいの来ちゃったよ」

 

 ごめんね画面からは出れないの~って相談が来てしまった。

 まさに人類永遠の難題である。それは異世界でも変わらなかったようだ。

 

「ふむ……。住んでる次元が違いますから、これは難しい問題ですね」

「あ、まじめに対応するんだ」

 

 まあ、半分以上ネタ相談なのかもしれないが、せっかくなのでズバッと回答してやろう。魔王城ご意見番の座を狙うユーフィは気合が入っていた。

 モテない男(決めつけ)からの質問だからというのもある。これがもし『うぃ~、彼女っちとぉデートいくところぉオススメないっすかうぇ~い』みたいな質問が来てたら「知らねえよ殺すぞ」の一言で終わっていた。

 

「こういうのって、魔法でなんとかできないんですか? 具現化するみたいな?」

「え、どうだろう? 多分難しいんじゃないかなあ。さすがに複雑すぎというか高度すぎ?」

 

 前の世界だったらVRとかの科学技術の進歩でアプローチしていくのだろうが、こっちだと魔法で割と何でもできそうである。

 しかし、残念ながらまだそういう魔法はないらしい。

 

「なるほどー。じゃあ、あなたは『二次元キャラを具現化する魔法』の研究に生涯を費やしてください! もちろん困難を極めると思います。誰からも理解されず、孤立し、孤独な晩年を過ごすことになるでしょう。でも、周りから狂人と言われながらも研究を続けるんです。そして、今際のきわに彼女の幻が迎えに来て、『ああ、やはり僕の研究は間違っていなかった……』て言いながら幸せな最期を迎えるんですね」

「迎えるんですね、じゃないよ! 何勝手に相談者さん死なせちゃってるの!」

 

 切なくも美しいエンディングを迎えたが、ロザリーには不評のようだ。みんな生きてるハッピーエンド以外認めない派かな?

 

「結構いい話だと思うんですけど。映画化してもいいですよ。『虹少女』(れいんぼーがーる)

「勝手にタイトルまでつけてるし……。これ、相談からお話をつくるコーナーじゃないからね? もっと具体的な方法はないの?」

「ん~……、あとは他の子に浮気(他キャラ攻略)とかしないでセーブデータをその彼女だけで埋め尽くしたらいいんじゃないですかね」

「なにそれこわい」

 

 それこそ、かの名曲で歌われていたから間違いない方法だと思うんだけど。初めてあなたに恋してくれるよ。

 

「ほら、自室の壁を好きな人の写真で埋め尽くすような人いるじゃないですか」

 

 まあ、そんな人はもれなくヤバい人だが。

 そんな人が近くにいたらまいっちゃうぜHAHAHA☆

 

「あ、なるほど。……あれ? ユーフィちゃん私の部屋来たことあったっけ?」

「えっ?」

「えっ?」

「……」

「……」

 

 聞かなかったことにしよう(超法規的措置)。HAHAHAHAHA。

 はからずも、ロザリーがよく撮ってくる写真の使われ方がわかってしまった。絶対ロザリーの部屋には行かないように気を付けよう。二度と出られなくなりそうだ。

 

「つ、次のお悩み行きましょうか!」

「う、うん! そうだね! え~と、次はね~――」

 

 お互い先ほどのことには触れないように、と次の相談を読み上げる――。

 

 そのあとは、真面目な相談からネタに走ったようなものまで、いろいろなお悩みを解決していった。

 ユーフィは相変わらず、どこかズレたぽんこつ回答を積み重ねていたが、それこそ部下(ファン)が求める姿なので問題なかった。

 

 

 

 

 

 やがて収録も終盤に差し掛かり、小休憩をはさんだ後、番組側が用意した質問やテーマについて話すコーナーがやってきた。

 

「そうそう、ユウさんによるとね、一番多かった質問が『ユーフィちゃんの担当する番組はまだ決まってないんですか?』だったみたいだよ。だから、ここで取り上げようと思って質問箱には入れなかったんだって」

「ボクの番組ですか……」

 

 就任してから今まで、他の四天王が担当する番組にゲストとして呼ばれていたが、確かにそろそろ自分の番組を持たなければいけないはずだ。

 そうは言っても、すぐには思いつかない。いっそ、マネージャーのユウさんが「こういう番組でいこうと思います」みたいに決めてくれたらどんなに楽か。

 むむむ、とユーフィは考え込んだ。

 

「そんなに難しく考える必要はないんだよ? 自分の好きなこととか、得意なことでいいんだから」

 

 他の三人は運動に料理、おしゃべりと、好きなことや特技を番組にしている。

 ユーフィは、自分が好きなものってなんだろう、と考えたがゲームくらいしか思い浮かばなかった。

 

 ――ちなみに、こっちのゲームは、前の世界で言うところのスーファ〇くらいの発達レベルとなっている。

 

「ゲーム配信……とか?」

「ん~? それっておもしろかったゲームを紹介するってこと?」

 

 前の世界では、それこそ数えきれないほどの人たちがゲーム配信をしていたが、こっちでは馴染みがないようで、ロザリーはあまりピンときていないようだ。

 

「いえ、リアルタイムでゲームしているのを流してる感じです。放送を見てる人はコメントを書き込んで、やってる人はそれに反応して――、みたいな。ボクのいたところではすごくメジャーだったんですけど」

「生放送は何とかなると思うけど、そのコメントを書き込むってのが難しそうかな~? どういうものなの?」

 

 生放送については、すでにライブビューイング(遠見の魔法)でやっているので技術的には可能だろう。

 コメントの書き込みについてはどうだろうか――、とユーフィは思いを巡らせる。

 この世界、どこぞのネット掲示板みたいなのあったよな……。

 

「ん~……、こっちでも掲示板ってあるじゃないですか。あれが画面の横にくっついてるみたいな感じで、常に更新されて表示されてるって感じです」

「あ~、なるほど! おもしろそうだねそれ! 初めての試みだから、ユーフィちゃんのイメージを再現できるかどうかはユウさん次第だけど……」

 

 二人でちらり、とスタッフ側にいるユウさんを見る。

 ユウさんは猛烈なスピードでメモ帳に何か書き込んでいたが、二人の視線を受けて『ゲーム可。システムは要検討』と書かれたカンペを出してくれた。

 

「とりあえず、ユーフィちゃんの番組の大枠は決まったね!」

「そうですね。ゲームにしようと思います」

 

 生配信みたいなのが難しそうだったら、録画する番組形式でいこう。

 前の世界でも生配信だけじゃなくて、なんか課長か部長かが頭冷やすシート貼りながら難しいゲームをクリアするやつも人気だったし。いけるいける。

 

 あれは難しいゲームをクリアまで長時間挑戦し続けるのだが、ユーフィはのん気なものであった。

 

「いや~、今日はみんなのいろいろな声に答えたね~」

 

 空になった箱を振りながら、締めに入ろうとするロザリー。

 しかし、パサパサと箱の中から微かな音が聞こえてきた。まだ残ってるのかな、と箱をのぞき込んでから手を突っ込む。

 

「ありゃ。まだ一枚残ってた。……『耐久トレーニングのときに役立つので、二人交互に10秒のカウントダウンをしてほしいです』だって」

「筋トレとかですかね?」

 

 プランクとか空気椅子のときに使うのかな? でも最後の10秒だけって使いにくい気がするけど……。ユーフィは訝しんだ。

 ユーフィはそっちの知識(音声作品)には疎かったので、巧妙に偽装された罠に気づくことはなかった。

 

「じゃあ、最後はカウントダウンしてお別れしようかな?」

「いいですね。そうしましょう」

 

 「じゅ~う」「きゅ~う」と二人で交互にカウントダウンしていく。

 

 どうせなら意地悪してやろう、とユーフィは思い立った。

 ベンチプレスの動画でも補助してる人が10回で終わりと見せかけて「はいもう1回!」「ラスト2回!」とかやって筋肉を追い込んでるの見たことがあるし。あと10秒で終われると思ってたら長くなった方が効果的なはずだ。

 

「な~な」

「は~ち!」

「!? ……な~な」

 

 突然カウントが戻り、ロザリーが驚いてユーフィを見る。「この子は、また変なことして」とでも言いたげな目で見ていたが、カウントダウンを続けた。

 その後もユーフィのいたずらで、何度かカウントが足踏みしながらも0が近づいてきた――。

 

「に~い」

「い~ち」

「い~ち!」

「……い~ち!」

 

 最後の0にいかずに1を繰り返してみたら、ロザリーも悪ノリして同じく1を繰り返してきた。

 おもしろくなってきて、二人で1を繰り返しカウントする。どちらが先に0を言うかのチキンレースみたいになってきた。

 

「ぜろ~!ぜろぜろ~!」

「ゼロゼロゼロ~!」

 

 ついに、どちらからともなく0をコールする。

 ようやく0にたどり着いたので、おめでと~って感じになって二人して0を連呼した。いっぱい()っちゃえ♡

 

「も~、ユーフィちゃんがふざけるから全然カウントダウンにならなかったじゃん。これじゃきっとトレーニングに使えないよ」

「ロザリーさんも、最後ノってきたじゃないですか。こうやって筋肉を追い込んだ方がいいんですよ。ボクは筋トレ詳しいですから」

「腕立て3回なのによく言うよ……」

 

 放送後、この何の役にも立たないようなカウントダウンは、なぜか『めちゃくちゃ使える』と大好評だったようだ。

 そのことを聞いたユーフィとロザリーは首を傾げた。

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