してんのっ! ~魔王軍四天王のお仕事はアイドル活動~   作:ぶしゅくろ

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第22話:ゲーム配信するのっ!

「みなさん、こんにちは~! 四天王のユーフィです。今日から始まりました『ユーフィちゃんねる』、生放送でお送りしています。みなさんのコメントも表示されるので、どんどんコメントしてくださいね」

 

 ――『はじまった!』『ユーフィちゃ~んこっち見てー!』『これほんとにコメント表示される?』『うおおおおおすげえ』『四天王みんないる!』

 

 ユーフィの放送が始まると、さっそくコメントがたくさん送られてきた。送られたコメントはちゃんと表示されているようだ。

 新しいシステムが無事に稼働していることを見て、マネージャーのユウさんや裏方の技術スタッフたちは、ホッと胸をなでおろした。

 

「記念すべき初配信ということで、四天王のみなさんも応援に来てくれました。ただ、ゲストとして一緒にゲームをやっていくというわけではないので、そこはご了承ください。きっと生放送コメントシステムが気になって見に来たんだと思います。うまくいったら他の番組でも取り入れるかもしれないとのことなので」

 

 ユーフィの紹介を受けて後ろの三人が画面に向かって手を振り、コメントも盛り上がる。

 その中には、『絶対一人でやらせるのは不安だからなんだよなあ』『保 護 者 同 伴』『参観日かな?』『末っ子心配お姉ちゃんズ』といった、真実に気付いている鋭いコメントも見受けられた――。

 

 

 

 

 

 四天王勢ぞろいの理由は、数日前に遡る――。

 

 ユーフィの言っていた『ゲーム配信』というスタイルが、なんとか再現できそうだということがわかった際、ユウさんたちの頭に一つの懸念が浮かび上がった。

 

 ――それは、ユーフィに生放送をさせて大丈夫か、ということである。

 

 従来通りの形式なら何かあっても編集でカットできるのだが、配信ではそうはいかない。そのまま流れてしまう。

 ユーフィは、だいたい何かやらかすので、保護者たちは皆心配になったのだ。

 

 そのことについて、ユーフィが「大丈夫です! そういうことはちゃんと気をつけてるんですから。ボクが今まで不用意な発言をしたことがありましたか?」と、いつもの自信満々ドヤ顔発言をしたので、不安になった四天王たちも一緒に参加する(見守る)ことにしたのであった。

 

 

 

 

 

「――今日は『スーパーマオウ2』をやろうと思います。放送は一時間を予定しているので、一人目か二人目の四天王を助け出すところまでかな~と思ってますが、簡単だったらもう全クリしちゃってもいいかもですね」

 

 ――『スーパーマオウ』シリーズは、勇者にさらわれた四天王をマオウが助けに行くというシンプルな横スクロール型アクションゲームである。

 

 囚われの四天王(ヒロイン)は、現実の四天王をモデルにしたであろう『レコット(コレット)』『ロザーリ(ロザリー)』『エリー(エリーゼ)』だ。

 開発時期的に、当時の四天王はユーフィではなくビッチィだったので、最後は『ピーチィ』となっている。……この名前大丈夫か? ファイナルオリジナルネームだから大丈夫だ。問題ない。

 ちなみに、マオウは現実の魔王をモデルとはしておらず、没個性的なキャラになっている。そこはやっぱり、『四天王を助ける主人公(ヒーロー)はキミだ!』という制作陣の配慮だろう。

 

 ユーフィの発言を聞いたコメント欄が、『ドヤ顔ユーフィちゃん』『ドヤ顔助かる』『あっ…(察し)』『ぽんこつですねわかります』『普通に難しいんだよなあ…』『クリアできなくて泣いちゃわないか心配』などと騒ぎだす。

 

 それを見て心配になった四天王たちがユーフィに声をかけた。

 

「ねえ、ユーフィちゃん。そのゲーム難しいみたいなんだけど、本当に大丈夫なの?」

「『自分もやったけど、クリアできずにあきらめた』って言ってる人もおるで」

「今のうちにもっと簡単なゲームにしましょう? オセロとかどうですの?」

 

 舐められたものだ。どうせゲーム好きなだけのプレイ下手系女子とでも思ってるんだろう。

 こちとら前世で多種多様なゲームをやってきた歴戦の猛者だぞ。この世界よりも、もっと進んだゲームに触れてきたんだ。レトロゲーなんて楽勝だ。プレ〇テ5とか知らないだろ!

 ついにここから現代知識無双が始まるのだ――、とユーフィはほくそ笑んだ。

 あと、オセロなんてやらない。昔CPUに負けたもん。

 

「大丈夫です! 今回、なんでわざわざ『2』をチョイスしたと思ってるんですか? ボクはちゃんと事前に『スーパーマオウ1』をクリアしてきてるんですよね~。だから実力的に何も問題ありません」

 

 ――『なるほど』『かしこい』『……2はやってないということでは?』『1が簡単すぎって言われてできたのが2なんですが』『ほぼ別ゲーレベルで難易度違うんだよね』『わからせ不可避』

 

 相変わらず心配しすぎなコメントが流れているが、もうプレイで黙らせる(わからせる)しかない。ユーフィはゲームを始めることにした。

 

「ま、見ててくださいよ! 仮に難しいとしても序盤は大丈夫ですって。はい、スタート!」

 

 ユーフィがスタートボタンをおし、最初のステージが始まる。

 始まった瞬間、上から落ちてきた火球につぶされてマオウが死んだ。

 

 ――GAME OVER――

 

「!?」

 

 始まったと思ったら終わった。何を言ってるのかわからねーと思うがユーフィも何をされたのかわからなかった。だが、コメント欄を見ると予想通りだったようで驚いている人はいないようだ。

 

 ――『まあそうなるな』『予想通りで草』『戦場で足を止めたら死ぬぞっていうありがたい教え』『2は全ステージで常にメテオ降ってくるよ』『わからせktkr!』

 

「ふ、ふーん。まあ、初見殺しってやつですね。びっくりしましたけど、こんなの次からすぐ動けばいいだけなので何てことありません。ていうか一回死んだだけでゲームオーバーになったことの方が驚きなんですが。はやく1UPとらないとヤバいですね」

 

 初見殺しが搭載されているゲームで、まさかの残機1スタートは鬼畜すぎる。はやく1UPしたいと考えるユーフィの目に、絶望的なコメントが飛び込んできた。

 

 ――『今作は一回死んだら終わりだよ。残機増えない』『1UPとかない』『命は1つだけっていうありがたい教え』『カメドラゴン踏んで無限1UPなんて甘えは許されない』

 

「なんですかそれ! 魔王なんだから一回死んだくらいで死なないでくださいよ!」

 

 ――『草』『魔王は死んでも死んだらだめ』『今のセリフ録音しといてヤバいときに流せば魔王様何度でも蘇生しそう』『ユーフィちゃんネクロマンサー説』

 

 気を取り直して再スタートするユーフィ。

 進むたびに、初見殺しにきれいにハマって死んだり、単純にプレイングミスで死んだりしながらも、それでも少しずつ進んでいく。

 

「というか、なかなかグッズ出ないですね。チビマオウだと一発でやられちゃうからはやくおっきくなりたい」

 

 だいたいステージの序盤には出てくるはずの、グッズ――マオウのパワーアップアイテム。四天王のグッズをとると、体が大きくなって一発の被弾で死ななくなる――がなかなか出てこない。

 チビ状態だと一度でゲームオーバーになるので、安定のためにもグッズをとってデカマオウになっておきたいところだ。

 

「おっ、噂をすればやっと出ましたね。これは四天王のグッズなので、とることでマオウはパワーアップしてデカマオウになります」

 

 視聴者や後ろの四天王に向けて説明しながら、グッズをとるユーフィ。

 グッズに触れたチビマオウはデカマオウにならずに死んだ――。

 

「!?」

 

 ――『あっ』『それ偽物のグッズだよ』『海賊版のグッズとると死ぬ』『偽物は、ドットが一箇所だけ正規品とちがう』『偽物をつかまされるとはマオウは恥ずかしか!生きておられんご!』『ちなみに偽物と本物は、決まった場所から出るんじゃなくて完全ランダムだから1ドットを見極めるのは必須技能』

 

「そんなんわかるか!」

 

 とんでもない嫌がらせ仕様につっこみながらの再スタート。

 スタート地点から戻って来て、もう一度グッズを取る。もはや真贋の判別は不可能なので、50%の当たりに賭けた博打であった。

 今回は本物のグッズだったようで、無事にパワーアップしデカマオウになった。

 

「よしっ! これはもう安心感が違いますね。初見殺しがきたところで一回被弾しても大丈夫とか、もう何も怖くないですよ!」

 

 体が軽い。こんな幸せな気持ちでゲームするなんて初めて――。

 一回で死ななくなったことで、緊張から解放されたユーフィは軽快にマオウを走らせる。

 

 颯爽と穴を跳び越えようとジャンプしたマオウは、隠しブロックに頭をぶつけて真っ逆さまに落下していった。残念ながら落下死は問答無用の一発アウトである。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 ――『すごい声でた』『草』『絶叫助かる』『チビだろうがデカだろうが落ちれば一緒や!』『一回ミスしても大丈夫とはなんだったのか』『大賢者の罠きた』『これが有名な大賢者の罠よ』

 

 名物トラップにきれいに引っかかったユーフィにコメント欄は大いに盛り上がった。

 『大賢者の罠』と聞いて、あのおじさん(大賢者マジーメ)への殺意を胸に抱いたユーフィであったが、別に現実の大賢者がこのゲームに関わっているわけではないので冤罪である。

 

 

 

 

 

 わちゃわちゃと騒ぎながらもめげずにプレイを続け、ついにゴール目前までたどり着いたユーフィ。

 ゴール前の道は崩落していて、ダッシュからの大ジャンプが必須となっている。

 

「あ~、これ、わかっちゃいましたぁ。絶対あるでしょ、『大賢者の罠』。ほいっ、ほいっ、……あれ? ほいっ! ほらあった! 大賢者破れたり! ざまぁ!」

「ユーフィちゃん言葉遣い」

 

 崖から、ちょこちょこと小さく跳びだすふりをして隠しブロックを見つけたユーフィ。

 もし、何も考えずゴールへジャンプしていたら、隠しブロックに頭をぶつけて落下死。ゲームオーバーで最初からやり直しになるところだった。

 

 『大賢者の罠』を看破したユーフィは、イキりにイキってざまぁしたあげく、ロザリーから言葉遣いを注意された。アイドルの自覚を持とうね。

 

 ――『すごい』『かしこい』『天才』『さすがユーフィちゃん』

 

 コメント欄も、罠を見破ったユーフィを褒めたたえる言葉ばかりが流れている。

 それを見て機嫌をよくしたユーフィはゴールに向かって最後の大ジャンプを決行する――。

 

 見破ったブロックに当たらないコースで跳んだマオウは、さらに別の隠しブロックに勢いよく頭をぶつけて奈落の底へと落ちていった。

 

 ――『大賢者「今です!」』『計画通り!』『草』『大賢者流のブロック術は、隙を生じぬ二段構え!』『完全に開発の手のひらの上で踊らされたユーフィちゃん』『わ か ら せ 完 了』

 

「クソがぁ!」

「ユーフィちゃん言葉遣い」

「おクソですわ!」

「ユーフィちゃん!」

 

 思わず飛び出した暴言を再び注意されるユーフィ。

 今回はさすがにお口わるわるだったので、お嬢様言葉にして言い直した。さらに注意された。お馬鹿ですわ。

 

「エリーゼさんのお嬢様言葉を真似したのに……」

「……ユーフィちゃん、あとでお話ししましょうね」

「ひえっ」

 

 エリーゼは上品に微笑んでいたが目が笑っていなかった。ユーフィは恐怖に震え上がった。

 

 ――『これは教育やろなあ』『なぜお嬢様言葉にすればいけると思ったのか』『ユーフィちゃん生き生きしてるね』『楽しそう』『ゲームに熱中して、だんだん年相応の生意気なちびっこ感出てきてて好き』『尊い』

 

 年相応かについては議論の余地があるが、だんだん素が出てきたユーフィと四天王たちとの飾らないやり取りに視聴者たちは大喜びであった。

 

 

 

 

 

「――よっし! ゴール! クリアー! やったあ~!」

「お~、おめでと~!」

「おめでとさん」

「おめでとうございます」

 

 何度もゲームオーバーで最初からになりつつも、ついにユーフィは1ステージ目をクリアした。

 某アニメのテレビ版ラストみたいに四天王のみんなが「おめでとう」と拍手をして祝福してくれる。ありがとう。

 

 ――『おめでと~!』『よくがんばった!』『実際すごい』『まだ最初のステージだけどね』『ここまで1時間』『24時間配信来る!?』『明日国民の休日にしてクリアするまでやろう』

 

 全クリしたかのような達成感だが、実際はコメントで言われている通り、ただの1ステージ目をクリアしただけである。

 予定配信時間の1時間がたったが、当初の目標はまったく達成できていなかった。耐久配信を望むコメントも流れているが、ユウさんが『終了で』のカンペを出していたので締めに入る。

 

「ま、まあキリのいいところまで進みましたので、今回の配信はここまでにしたいと思います! ボクとしては24時間配信も余裕なんですけど、皆さんいろいろ忙しいと思いますので、今日はここまでです!」

 

 ――『おつかれ~』『おもしろかった』『いろんなユーフィちゃん見れた』『コメントできるの楽しい』『24時間配信も余裕、言っちゃったね』『言質とった』『楽しみ』

 

 このとき、不用意に24時間配信について口走ってしまったがために、伝説となる『24時間生放送~ユーフィは世界を救う~』をすることになるのだが、それはもう少し先の話である。

 

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